35 僕の嫌いな14歳
中学2年生の頃、あれはたしか14歳。
おそらく、一番笑ってた最後の時間だ。
教室の机をくっつけてピンポンしたり(ラケットは平手だった)。大富豪をしたり、スピードしたりのカード遊び。男女混合でいつも楽しかった。
その年の冬は珍しく雪がつもり、赤旗が立っているのを無視してグラウンドへ出て雪合戦。
中に石を詰めたりもしたなあ……。
なにもかもが楽しかった。
そりゃそうだ、14歳だもの。
廊下を歩けば敬礼を受ける身になっても、あの頃のことは忘れられない。
もう顔もはっきり覚えてないあの友人たち。ただ笑顔だけが記憶に残っている。感情として覚えている。あの頃の自分に会ったとしても、記憶の中の私たちとは別人だ。
「僕ら」であって、私たちでない。
そう、わかっている。
どうしてあの頃のことを急に思い出したりしたんだろう。もっと大切なことがあるだろうに。
妻のこと、娘のこと。
14になった娘はどんな少女になっているだろう。
「僕ら」みたいに笑って毎日を過ごせるだろうか。それとも孤独な毎日を送るだろうか。
そもそも無事に育ってくれるだろうか。
考えだすときりがない。あのころの友も今、元気に過ごしているだろうか。
私がこんなになっているなんて想像もしていないだろう。
とうとう一度も同窓会に顔を出すことはなかった。
本当は会いたかった。
みんなに会って話をしたかったよ。
でもそんな暇はなかった。それに会いたくもなかった。
そう思おうとしていたからね。
早足で歩きながらヘルメットを装着した部下たちのチェックをする。
私より若い、真っ直ぐな目をした青年たちだ。
彼らにどうか、前途を。輝かしい未来を。
腕を振って指示をする。
出撃だ。
カタパルト発進は彼らも慣れてきているだろうが、やはり安定した地上発進より緊張は強い。
隊長機として僕は最後に出撃する。
大丈夫、君たちは何が遭っても無事に帰してやる。安心して指揮に従ってくれ。
私はそのためにこの地位まで上り詰めてきた。
1機とて撃墜などさせない。
君たちを守ること、妻や娘を守ること。それが私の使命だから。
未来はいつも、君たちの手に。
「僕」が14歳だったとき。それは子供時代の終わり。
15でこの道を選んだ。あんな風に無邪気に笑える世界と決別したんだ。
争い事は尽きることはない。しかし戦略でギリギリでも衝突は避ける事ができる。
そのための駒なんだ、私たちは。
戦うためじゃない、殺しあうことじゃない、これは駆け引きなんだ。
絶対失敗のできない、駆け引き。
だが、君たちは心配しなくていい。これは私たち上層部の人間が負う責任だ。
ああ、だからか。
綱渡りの重圧に日々苛まれているが故に思い出したんだ。14の、楽しかった日々。
幸せだっただけに思い出したくもない僕の嫌いな14歳の日々。
美しく編隊が空を征く。まっすぐに。鳥のように。
いつか14歳になる君のために。
いつか14歳だった君のために。
明日の夜も、どうぞお楽しみに。




