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32 青い木漏れ日


1分、2分、確実に過ぎて行く時。

短く感じることも、長く感じることも。

「好きな子といるときは時が短く感じるだろう? それが相対性理論だよ」

とかのアインシュタインは言った。しかし実際のところ感じるだけで、時の流れは残酷なまでに変わらない。


意識を異世界(妄想ともいう)に転移しても、同じこと。

「静かな宇宙」がくるまでの何兆年間は、時は存在し続けるのだから。


僕には大好きな人がいる。

彼女とずっといたいと思う。同じ時を感じていたい。

1分1秒をとても大切にしているから、僕には相対性理論は通じないかもしれない。

だって、あくまでも「相対性」だから。「相対的」にだから。

僕の感じる1分と、彼女の感じる1分は違うものかもね。相対的に。

それが一致した時、はじめて僕らはひとつになれるのだろうか。


彼女が淹れいてくれるお茶のコポコポって音。

これも僕が聞こえている音と、彼女に聞こえてるのと同じだろうか。

そんなことを考えながら、頬杖をついてると、

「どうしたの?」

と彼女は微笑みながら声をかけてくれる。


彼女は僕とずっといたいと思ってくれているかな。

本当は別に好きな奴がいたりするのかな。



あ、いるかも!



でもこれは仕方ない。ベビーベッドですやすや眠っている小さないのち。ちっちゃなライバル。



「今日はどうする? おでかけする?」

彼女がたずねる。久しぶりの休みだ。それもいいだろう。

「君は? おでかけしたいの?」

首を左右にふって、彼女は答える。


「静かな日曜日って素敵よね」



そうだね。今日は二人と、愛しい愛しいちっちゃなライバルと過ごそう。




庭を散歩して、水やりをして。

小さなこの子はようやく首が座って僕でも安心して(比較的)抱っこできるようになった。ちっちゃな指で差すものをバカ丁寧に説明したりする。わかったようなわからないような、多分わかってないけれど、反応してくれたのが嬉しいのかな、キャッキャッとはしゃいでるよ。



日差しが強くなってきたなあ、なんて考えて。彼女は小さな子に日焼け止めを塗る。

彼女自身は帽子をかぶって。僕はほったらかしだ。


これから暑い暑い夏がくる。

また、「暑いってセリフ言ったら1回100円だからね」って100円貯金がはじまるんだろう。

それがぼくらのちょっとしたお小遣いになってゆく。



願わくば。

この体が滅んでも、心だけは君とともにずっと有りたい。

この世にある星々のすべてが光を灯さなくなっても。何も動かず、なにも変化のない、時さえ無意味な「冷たい宇宙」の時代がやってきても。


男は女々しくてどうしようもない。自覚してるよ。

「女々しい」なんて男のための言葉だもの。

ロマンティストで女々しくて。どう頑張っても君のように強くはなれない。


同じ時を感じ、「相対性」が一致し、

君とともに歩んでいければってやっぱ思ってしまうんだよね。



庭の木々は日増しに緑を濃くしてゆく。

水をまいたところから土の匂いがする。



静かな日曜日。


晴れた5月のある日のこと。

僕と君と赤ん坊と。


残酷な時の流れに抗うかのように、静かなぼくらだけの時間が流れ行く。



これが僕らの強さなんだ。

アインシュタインなんかに負けない。


3人で、笑いながら過ごす日曜日。


最高じゃないか。






明日もどうぞ、よろしくね

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