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23 僕のマクガフィン


「マクガフィン」ってなんだろう。

さっき、ファストフードでいい年のおっさんたちの会話に出てきた言葉。

マフィンでも食ってるのかと目を遣ったらそうでもない。



ここに戻ってくる際、手元のスマホで調べたら「物語を展開させるための小道具」らしきことが書かれていた。ふうん、じゃあほとんどの物語には必ず組み込まれているものじゃないか。改めて名付けるほどのものか?



白い建物に入り、右手の階段から地下へ。

奥から2番めにある扉をあけるとそこが僕の部屋。秘密の部屋だ。

15のこどもには得られるはずもない、モノがそこにはある。



あかりをつけると、白い壁が光が反射しハレーションをおこすため、一瞬目がくらむ。

中央には人影がひとつ。隅にデスクといくつかの機械モジュール。



これで多分僕は魔法使いになったんだ。いや、神かな。


人影は8等身の美女。いや9等身かもしれない。計ったことないからわからないや。

彼女は僕より少し背が高い。



彼女は黒く長い髪を垂らして、大きな胸をかくしている。

そしてほどよく締まったウエスト、

横に張り出した腰、長い足にハイヒール。


四方からの光を浴び、光り輝いて見える。

瞳は閉じたまま、決して開くことはない。

長いまつげが影を作っているだけ。

今にも音楽を奏でそうな唇も閉じたままで。

そういう風に作ったからね。



男ならだれでも触れたい、抱きたいと思うだろう。

まだまだこどもだって言われる僕だってそうだ。



だがこれは人形だ。ビニールでもシリコンでもない、ある種の金属でできた冷たい人形。

触れればそこだけ温かくなる。が、離せばすぐに室温にもどる。金属特有のそんな性質をもつ人形だ。

僕は人形相手にどうこうっていう趣味はないし、幸い外見がいいのでそっち方面で困った事はないし。現実の女って実にちょろいからさ。



そんな僕でも、彼女に虜なことは確かだ。認める。

現実の女にはありえない、美しいボディラインに惹かれているのではない。

胸に光るディスプレイとその中身にだ。



僕が開発したこの金属と、中に詰め込んだプログラムが魔法を起こしたんだ。



ああ、そうだ。

魔法といえばお小遣いで株を始めたときから妙だったんだ。



1度も負けてないんだ。株。

あっという間に一生遊んでクラスだけの金ができた。今は一生どころか、百回くらい大富豪で生きていけるほど。


それをこの金属の開発と、内部に仕込んだシステムにつぎ込んだ。


学校はさぼってるよ。テストの時だけ行くけどね、どう手を抜いても上位三位以内に入ってしまうから文句は言われない。


学校よりもこっちの開発のほうが面白かったからね。


既存のものから新しいものを作り出す。それもたった一人でってのがすっごい楽しい。



で、出来上がったのがこの人形だ。

新しいもの……といえば女神だろうってことで、こんなんかな、って外見にした。

この国の最高神だって女神だしさ。できるだけ美人に仕上げたつもりだ。



胸にあるディスプレイにはこの世界ではない、どこかの世界が映っている。

それは僕がプログラムした世界。

美しくもあり、醜くもある世界。

現実と見まごうほどの緻密さを備えて。



仮想空間によるゲームをプレイするのとはわけが違う。

もちろん、一般に開放して人の意識を転送し、アバターによるプレイができないわけではないよ。

一応その設定も考えて作っているけれど。

そしたらもっと儲かるだろうけどさ、お金ならもう十分にあるしね。



そもそも中に入って行動するのって面倒じゃないか。

こうして外から覗くのが一番楽だ。映画館で作品を見てるみたいにね。



内部に入り込まずとも、外部から干渉することならできるし。



この体を動かすならこっちの世界だけで十分さ。なんで他の世界でまで生きなきゃいけないんだよって感じ。



で、プログラムの中の世界には、多くの人がいて、文化があり、歴史があるようにした。

それはこっちの世界の既存データをちょっと変えて埋め込めばよかったし、難しいことではなかった。まあ一般の人には無理だろうけど。



多分、……やっぱり僕にはなんでもできる魔法でもかかってるんだろうか。

そうだよな、普通ガキにこんなの作れるわけないもんな。

ひょっとしてこうすべきよう導かれてしまっているんだろうか、何かに。


僕は見上げる。



もしかしてこの黒髪の女神に?



ディスプレイの世界は少しずつ進化している。目を離すとどこまで勝手に変化するかわかったもんじゃない。人類滅亡とかなったらもっかい組み直さないといけないので、そんな面倒はいやだから、その場合は干渉することにしてる。



ただでさえ世界全土が凍結したり、隕石ぶつかって生命体のほとんどが死滅したりしたんだから。

さすがにこれには焦った。

ほんと自分のプログラミング才能にあきれるよ。自立進化系にしてるとはいえ、こんな現象おこすとはね。

気を抜けないや。だから基本、僕はここで過ごすことにしてる。



えーっと。ってことは、僕の人生におけるマクガフィンはこの女神かな。

昼飯食った時のことを思い出しつつそんなことを考える。




輝ける女神よ。


我が汝を創りだしたのか、汝が我を生み出したのか。問うてみたいとこだね。

言葉を発する機能はつけてないけどね。



女神と僕とで創造した世界だ。これって僕らの子みたいなもんかな。

すごいね、有機体と無機物で生み出した新世界だ!



おっと、大分と文明が進化してきたね。

世界中に通信網が確立し……へえ、コンピュータができたのか。

面白いじゃないか。

いつか僕が生きている世界を超えることでもあるのかな。

黒髪の女神、どう思う?



女神は相変わらず目を閉じて黙っている。


ほら、向こうの世界でディスプレイを覗いている男の子がいるよ。

ただのプログラムだって知らずに、自分が生きてると思い込んで。ふふっ。



彼らにとって僕らは創造主だね。



ニヤリと僕は笑った。


見上げると黒髪の女神は、動くはずのない目を開いて微笑んでいた。


明日の夜も、どうぞお楽しみに。

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