17 女神様のいたずら
彼女が財産目当てだってのは最初からわかってた。
かまわないんだ、それでも。
僕が彼女を大切に思ってることは確かなんだから。
誰かが言ってた。
人の見目形も、財産も、持って生まれた個性なんだから、とやかく言われる筋合いはない。
いかに自分自身を理解しているか、誇りを持って生きているか、それが大切だと。
だからお前がいわゆるイケメンであっても、財産があっても落ち込むことなんてない。
周りを信用出来ないかもしれない。
損得だけで寄ってくる輩だって多いだろう。
だからといって自分を見失うな。
お前の信じる道をゆけ。
もう、顔も覚えていない誰か。あの頃は僕自身、どうやって生きていたのかかあまり記憶がない。ただすべてが恐ろしくて、外界へ足を踏み出すこともできなかった。
僕の信じる道ってなんだろう。
随分考えたよ。
そして1つだけ、見つかった。
自分が大切に思う人たちのために生きること。
それが理由で、いいではないか。
僕はまた、歩み出すことができた。
彼女が財産目当てだろうと、僕は彼女のために生きよう。
それでいいんだ、と信じている。
わたしには誉められるものなどなにもないわ。
美人でもなんでもないし、賢くもない。
運動神経だって10人並だし、料理だって最低限のものしか作れない。
そんなわたしがあの人を好きになったって、恋が実るわけがない。
だから強がってた。
あの人の財産のためなら、きっとなんでもできる。
お金という魅力はこの世で最強。自分を偽ることができる。
偽ってたってなんの罪もない。人間はお金には弱いんだから。
それに……それに、振られたって別にかまわないんだから。
お金だけが目当てだったんだから。
あの人のことなんて本当はどうだっていいんだから。
あの人自身に魅力なんてないんだから。
どうだっていいんだから。
お金がなかったら、あの人なんて。
ほんとは違うのに。
あの人が無一文でも、どんな不細工でも、
わたし、きっと好きになってた。
照れたように微笑む、あのくしゃっとした表情が、
道行く野良猫に、誰にも気づかれないようそっと挨拶してるとこや、
目の前に降りてきた蜘蛛ににっこりわらって、そしてやっぱり他の人にわからないよう、
小さく手を振ってるとこや(挨拶してるんだと思う)。
三日月を見て、「月が笑ってる」って呟いて、後で恥ずかしくなって一人で真っ赤になってるところとか。。
わたしはそんな彼が大好きなんだもの。
二人とも、わざわざの演技。
女神様にはお見通し。
二人の上で呆れた顔で足をながめてる。
見え透いた二人の嘘に、女神様はいたずら心。
二人のハートと未来を、赤いリボンでギュッと結ぶ。
決して離れないように。
女神様は満足そうに頷いた。
明日もどうぞ、お楽しみに。




