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14 あきれたピアニスト


ピアノはカンペキな楽器なんだそうだ。


それに比べて、ギターは実に未完成なんだそうで。

チューニング途中に他の弦が狂ったり、縦横変えただけで微細に変化してしまう。

だがそれがいい、という人間もいるだろうが、いわゆる絶対音感を持った者には苛立たしい。


「関東の人が変な大阪弁を使う」くらいにイラッとくるらしいのだ。


その点、僕は無頓着なので気楽なものだ。

さすがに音楽家として最低限の音感は持っているし、愛車のエンジン音を楽譜に起こす程度のことはできる。



しかしたまに変な関西弁を使ってしまい、スリッパで全力殴打されることもある。

新品のスリッパだとひどく痛い。

が、彼女が関西出身なのだから、妙に訛りがうつるのも仕方ないことではなかろうか。使いきれてはいないが。



彼女はまさにカンペキなピアニストだ。

幼い頃から賞を総なめ、留学先でもあたりまえのように1位を獲る。

どんなピアノでも、彼女が指をすべらせると温かくなめらかな音になって人々の心に染み渡る。

そんな音を聴かせられてはピアノ科にいられはしない。僕が指揮科にかわったのも当然だ。


だって無理だし。



ピアニストを目指していたのに今更指揮科? となじられたが

君が原因なんだから。あんな音はだせないから。


だから君の音をもっと美しく描けるよう、今、こうして作曲の仕事をしているのだって君の音が好きだから。

一番そばにいる僕が、一番きれいな君を描けるんだ、多分。



「あきれたピアニストさんだこと」



苦笑する君の声も、素晴らしい音階だ。


そうして空も雲も、森の木々も、この世界も

君の音で包み込みたい。


僕はそのために今日もピアノに向かう。



大きくなったおなかを優しく撫でる君の横で。



幸せを奏でよう、今日も明日も、


ずっと、ずっとね。


明日はなかよし家族のお話です。お楽しみに。

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