決意
十六、決意
勝は星のお守りを見つめていた。本当のお母さんが作ってくれた、星のお守り。どんな願いを込めてこのお守りを作ったのだろうか?勝はお守りを見つめながら、そんなことを考えていた。
勝は本当のお母さんの顔を知らない。一郎伯父さんの家に行ったときに、昔の写真でも見せてもらえばよかったのだが、敢えてそれをしなかった。写真を見たら余計に情が移ってしまいそうだったからだ。顔も知らない本当のお母さん。自分の命に代えて僕を産んでくれたお母さん。星のお守りを見つめていると、母の顔が浮かんでくるようだった。
勝は星のお守りを見つめながら、最後の決断をしようとしていた。このまま古石家の長男として過ごすか、一郎伯父さんのもとへ行くかを。その答えをこの星のお守りが出してくれそうだった。
どのくらい時が過ぎたのであろう。突然、勝は星のお守りを握りしめ、父母たちのいるリビングへと降りて行った。リビングには駿介もいるだろうが、そんなことは関係なかった。すぐにでも父母たちに伝えたかった。
勝がリビングに入ると、父母は驚いた様子で勝を迎えた。
「どうしたの勝?」
母が心配そうに声を掛ける。
勝がゆっくりと、言葉を吐き出すように言った、
「僕はやっぱりこの家に残るよ。古石家の長男として」
父母はあまりに急なことに、すぐにはどうして良いかわからなかった。だが少しすると父が勝に言った。
「本当にいいんだな?」
勝が大きく頷いた。すると、母が勝に駆け寄り勝を強く抱きしめた。弟の駿介だけが、何が起きてるのかわからずにポカンとしている。
そして、勝の手には、星のお守りが強く握られていた。
完




