迷宮行きます、一般人。
漸く迷宮入り口に……。
次こそは、入ります。
「何をなさってますか?。」
はっ。
イカン、イカン。
「いえ。神王様にお祈りを……。」
「お祈り……ですか?。」
「昔の人だから、お亡くなりになってますよね?。だから、お祈りを……と。」
「……神王様の死亡は確認されておりません。」
死亡……確認……されてない?。
……。
「何で……ですか?。」
「それは、わかりません。ある日、忽然と消えたそうです。手紙も残されていなかったとか……。」
「やっぱり、暗殺とか毒殺が?」
「時間魔法の遣い手ですよ?。お休みの時は、時間の止まった部屋などで休み、正しく、休む事無く、国のあらゆる事案に、対処した程の方が……暗殺や毒殺ですか?。」
「いや、でも、何事にも絶対はないから……。」
「確かにそうですが……。しかし、私は、国が安定したから、居なくなった、と思っています。」
「何故ですか?。」
「その方が夢があるじゃないですか!。」
……。
だいぶ、壊れてないかこの人。
……。
……!。
そんな事より、迷宮、迷宮。
「話は変わりますが、もう迷宮に入れますか?」
強引に修正。
「……!、そうでした。迷宮には、入れます。場所は街の外になります、が……。」
「…?…。が、何です?。」
「街迷宮への移動は、専用の移動魔法陣を使用します。」
「専用の移動魔法陣……そんな物があるんですか?。」
「あります。今はギルド職員しか使用していない為、知らない方が多いですが……。」
「その魔法陣は?。」
「地下二階にあります。」
「案内をお願い出来ますか?。」
「構いませんが、一旦受付に戻ります。移動魔法陣の、使用許可を出しますので……。」
「わかりました。」
地下から地上に。
???。
何だ、二階が騒がしいな。
「もう、そんな時間ですか。タローさん、お昼はどうされますか?。」
!昼!?。
「お弁当を買ってから、迷宮に入る予定でしたが……。」
「でしたら、迷宮の入り口側にある、待機所で食べてはどうですか?。」
「待機所……ですか。」
「本来なら、順番待ちの為なのですが……。。ドロップアイテムの買取所も、ございます。買取と言っても、直接、買取額を受け取れません。防犯上、仕方のない事ですが……。代わりに、金額を書かれた買取書を、あちらの受付にお持ち下さい。金額を、お支払い致します。」
「わかりました。では、移動魔法陣の許可をお願いします。」
受付で許可を貰い(かなり時間を取られた)、二階へ。
……。
……混んでます。
お弁当買えるかな?。
……。
……。
食堂の受付とお弁当売り場、離れてて良かった。
受付まだ並んでる……。
金額は、銅貨四十枚で買えた。
さて、地下二階に行こう。
迷宮、初チャレンジ。地下二階は、複数の扉が在るが、今回用があるのは、そちらではなく、反対側のこちら。
壁を丸々1つ使った、巨大な扉
最早、扉と言うより、門だ、門。
まあ、迷宮直通だから、仕方ないけど……。
門の下、床に魔法陣の半円が淡く光っている。
この魔法陣を消さないと、開かないし通れない。
移動魔法陣は、迷宮からモンスターが溢れても、直ぐに逃げられるように認証をしていない。
その為、入り口に鍵を着けた。
ギルドで許可を出し、入り口で認証をしなければ、魔法陣の上を歩く事すら出来ない。
勿論、帰りは認証は要らない。
何故?、と思うかも知れないが、理由はある。
ドロップアイテムを盗まれない為だ。
上位の迷宮になると、ドロップアイテムも高価な物が多い。
その為、高価な物を狙って、盗賊や冒険者に襲われだした。
何故、冒険者が?、コレは冒険者が、迷宮に潜れなくなった為に起こる、ある種の弊害である。
冒険者は基本的に、魔獣や魔物の討伐で生活の糧を得ている。
彼等にとって、戦力の増強は生命線であり、最優先事項だ。
常に稼げる街迷宮は、彼らにも金の成る木であり、新人の育成、連携の訓練、新調した装備の試し、などにも活用出来る場所だ。
しかし、探索者ギルドが管理している街迷宮は、冒険者お断りである。
無論コレは、『災厄の時代』以降、探索者の人数が減った事とも、関係がある。
それは、
〈探索者が迷宮のモンスター討伐を怠った。〉
と言う、根も葉もない噂話の所為。
この噂話、実は、その辺の事情を知っている、冒険者達が流したモノだった。
コレに切れたのが探索者……ではなく、探索者ギルド。
次いで、冒険者ギルド。
〈デタラメだ。冒険者達が起こしたモノだ。〉
と、探索者ギルドが反論すれば、
〈事実、迷宮からモンスターが出てきたではないか〉
と冒険者ギルドが更なる反論をする始末。
元々、あまり仲の良くない両ギルド。
一触即発の中、コレを仲裁したのが、魔導ギルド。
両ギルドの資料や過去の文献、果ては国の機密資料まで調べた。
魔導ギルドに登録している魔導師達……。
元、或いは、現役の宮廷魔導師だ。
国の機密資料位、軽い、軽い。
結果は、昨日の受付のお姉さん(名前忘れた)が言った通り、冒険者側にあった。
この時は、一応冒険者ギルド側が、探索者ギルド側に謝罪し、噂話の否定を魔導ギルドが行ったが……、結果は分かりますよね?。
そう。・な・に・も・、変わらなかったんです。
人望やカリスマ性のある、冒険者や探索者は、皆死んでるんです。
例え、魔導ギルドや宮廷魔導師が違うと言っても、信じませんよね?、普通。
裏を読んで、
〈探索者ギルドが魔導ギルドと何か裏取引をしたに違いない。〉
な~んて話も出て来たみたい。
仲裁に調査までして、関係改善どころか悪化する。
良くある話です。
……で、終わらないのが両ギルドの上層部。
〈厭々頭を下げたのに、魔導ギルドから、未だに、あ~だこ~だ言われる。〉と思っている冒険者ギルド上層部。
対して、
〈我々は被害者なのに、何で此処まで叩かれる。しかも、登録者数も増えない。どうなってるんだ!。〉と思っている探索者ギルド上層部。
もう、この先の展開分かりますよね?。
ストレス溜めて、相手にぶつけるアレですよ。
ええ、始まりました、報復合戦。
冒険者ギルド側。
〇探索者とのパーティー結成、加入を認めない。
〇探索者の依頼を請けてはならない。
〇迷宮のドロップアイテムを商品にする、職人や商人の護衛や依頼を請けてはならない。
……etc.。
探索者ギルド側。
〇冒険者の迷宮進入を認めない。
〇冒険者に依頼された品を造る原材料の販売価格は10倍。
〇例え、親兄弟であっても、冒険者と関わりを禁止する。
……etc.。
今はもうありませんよ?。
こんなの守ってたら、生活出来ませんし。
実際暫くは、コレで遣ってたみたいですよ?。
勿論、即、国が介入して、上層部は皆クビ。
職を失った……、ではなく文字通り、首チョンパ、処刑されたみたいですよ?。
実際、国が潰れかけたみたい……。
それに、国民だけじゃなくて、傲慢で不遜で有名な貴族達も、苦情を国に出したみたい。
子供の喧嘩よりヒデェ。
取り敢えず、この辺の話は、許可貰う間に、受付のお姉さん(名前はミラさん)から聞いた話。
どこぞの魔王か…って突っ込み入れてしまった。
反省、反省。
因みに、魔王は居ます。
魔王は、諸悪の権現ではなく、魔族達の王だそうです。
ラノベでは定番の、他の種族も居ますが、割愛します。
まずは、迷宮です、迷宮。
門の横にある装置、例の、水晶玉の乗った台座の穴にギルドカードを入れる。
其れだけで、魔法陣は見えなくなり、扉も消えた。
扉は魔法陣によって、有るように見えただけだ。
でなきゃ、帰りや非常時に、開けらんないでしょ?。
扉が消えた部屋の中は、中央にある魔法陣の光によって、それなりに明るい。
他の魔法陣に比べて、明るいのは、稼働状態にあるからだと、聞いた。
取り敢えず、移動魔法陣の中心へ、行こうとしたが、出来なかった。
正確には、行き着く前に、目的地に着いたからだ。
「ようこそ、アルムの街迷宮へ。歓迎しますよ、新人探索者さん。」
声を掛けてきたのは、ギルド職員のボルトラさん。
見たまんまの、獣人さんだ。
しかも、虎族。
ゴッツいです
頭にトラミミ(ネコミミ?)が、お尻側に尻尾が付いてる以外は、普通の人。
怪我をしたため、冒険者からギルド職員になったとか……。
「あれ、仲悪いんじゃ?。」っと思ったそこの貴方、大丈夫。
ボルトラさんが就職したのは、探索者ギルド。
元々、奥さんが探索者ギルドの職員だった為、コッチにしたとの事。
結婚して、10年、子供は2人、8歳と6歳の女の子、最近上の子に男の影がなんたらかんたら……。
自己紹介から家族自慢へ、そこから、子供の成長とそれによる心配事、挙げ句の果てには、
「ヒマだから酒ないか。」
までしっかり付き合いましたとも……。
仕方ないでしょ?。
お昼食べてるんですよ?。
お陰で、旨そうだったお弁当は、味も余韻も無く終了。
日本人にとって、食い物の恨みは、末代まで祟るんだぞ、ボルトラさん。
…クックック…。
お昼も食べたので、早速迷宮へ。
ボルトラさんに第一層のモンスターを聞くと、これまた、ラノベ定番のスライムです。
取り敢えず剣は効くみたいなので、刀も大丈夫だろう。
さあ、スライム狩りだ。
お読みいただきありがとうございます。
戦闘シーン頑張ります。