魔法覚えました、一般人。
今回は、切り良くしました。
強引にですが……。
「転職の儀式……ですか。」
「そうです。では、これらの魔石を持って魔法陣の中へどうぞ。あ、荷物は其方の台の上に置いて下さい。」
先に刀を置き、風呂敷も背中から下ろし置く。
皮袋を受け取り魔法陣に向かう。
微かに光ってますよ、魔法陣。
そして、魔石の入った皮袋を開けてみる。
中身は、赤、青、緑、茶、黄、白、黒、銀、金、の九色の魔石。
何でしょうね、これ。
取り敢えず中に入りましょう。
「では、始めます。まず、魔法陣の中心に座って下さい。楽な姿勢で結構ですよ?。次に先ほど渡した魔石を目の前に、重ならないように置いて下さい。」
楽な姿勢……。
胡座で良いか……。
次に魔石を床に置く。
重ならないように、少し離す。
「では、儀式を始めさせて貰います。魔法陣の光が強くなったら、無理せず、目を閉じて下さい。良いですか?」
「わかりました。お願いします。」
すると、魔法陣の描かれている床と、一つになっている石碑?に触れる。
触れた石碑が発光しだした。
その光が、少しずつ小さくなり、床の方へ移動し始めた。
床に光が到達すると、突然、魔法陣が眩しく光り出す。
心の準備をしていなかった為、瞼を閉じるが間に合わず、目が痛い。
痛みを堪えて、待つ。
「もう大丈夫ですよ。」
その声で、ゆっくりと瞼を上げる。
周囲を見渡し、魔法陣の光がまた、微かな光に戻った事を確認して、体の力を抜いた。
すると、床に置いてあった、魔石の一つが光っているのに気付く。
その光は淡く、しかし、この部屋では、しっかりと自己主張をしている様だ。
何色が光っているか確認する為、他の魔石の色を調べる。
光っている魔石は、どうやら、銀色らしい。
お姉さんに聞こうと思ったが、何やら作業をしていたので、魔石を回収。
勿論光った魔石は別にして。
ゆっくりと立ち上がり、目眩や吐き気が無い事を確認し、魔法陣から出る。
お姉さんは、此方に背中を向け、まだ作業中……。
仕方がないので、置いていた刀を腰に差し、風呂敷を背負い直して、立ったまま、光った魔石を眺める。
「お待たせしました。」
そう言って、作業が終わったお姉さんが、何かを渡す。
カードだ。
確認すると。
ギルドカード
名前:タロー・キノモト
サブ職業1:探索者LV1
ギルドランク:10位
サブ職業2:なし
ギルドランク:なし
職業スキル:迷宮脱出
〔銀行預金額:0〕
「次に先ほどの魔石を、宜しいでしょうか?。」
「1つ光ってますけど、良いんですか?。」
「構いません。その魔石は、属性を調べる為の物なので……。光っているのが、その人の属性になります。」
「光っているのは、銀色の魔石何ですが……。」
「……銀色ですと、聖属性、力は再生ですね。」
聖属性、再生……、回復魔法かな?。
「聖属性、再生は、所有者本人にしか、効果はありません。」
本人だけ?。
……微妙だな……。
「後は、再生の力が何に宿るか、判らない…と言った所でしょうか。」
ナニソレ。
「判らないって……。」
「人、それぞれでして……。そうですね~、例えば、魔力に再生の力が宿った、魔導師の方が居ました。元々魔導術は、魔力ではなく、魔素を使います。しかしその魔導術を、魔力でも使様出来る様にしされたのが、アリーシャ・ストラウム、その人です。」
「アリーシャ……って事は、女性なんですか?」
「そうです、そして彼女の父親は、ここストラウム辺境伯、つまり、貴族出身の女性でもありました。」
「貴族……ですか???。」
「当時、貴族の女性は要職に就く事が出来ませんでした。しかし、アリーシャは、再生の力が宿った魔力によって、魔導術をより使い易く、また、今の魔導術の基礎までも、作りました。これが、王国に、莫大な富と、繁栄をもたらし、彼女は女性初の宮廷魔導師になったのです。」
「凄い女性ですね。でも、他の宮廷魔導師や貴族から、嫉妬とか凄かったんじゃ……?。」
「フッフッフ……。」
「……何ですか、いきなり」
「甘い、甘すぎます。そんな事を物ともしない。それが、後の大魔導師アリーシャ・ストラウム様であり、・王・妃・アリーシャ・アルフォート様なのです!。」
何か背後に爆発が見えた気がする。
気ノセイ、気ノセイ。
「王妃様ですか……。それじゃあ喧嘩売った貴族なんかは……、やっぱり?。」
「勿論、取り潰し、爵位降格、爵位剥奪。粛正、粛正の嵐だったそうです。」
「それは、また、随分と、風通しが良くなったんじゃ……。」
「当時の王国の経済状態は、最悪だったそうですから。随分ましになったでしょう。何せ、賄賂、横領、横流し、奸計、謀殺、暗殺まで、日常茶飯事だったみたいですし。」
怖い。
怖いわ~。
王侯貴族。
「話が横道に逸れましたが、この様に、聖属性は、巧く使いこなせれば、巨万の富も貴族の地位も夢ではありません……。」
巨万の富に、貴族か……。
……。
……。
無いな。
やっぱ、無理。
巨万の富?、命狙われるでしょうね。
貴族の地位?、戦争やら魔獣退治の時に、最前線送りになりそう。
やっぱ、聴かなかった事にして忘れよう。
「では、魔石とステータスカードをお借りできますか?。手続きは、まだ終わっていないもので……。」
「あ、はい。」
そう言って魔石とステータスカードを渡す。
「……。……。……完了。終わりました、カードをお返しします。」
ステータスカードを受け取る。
そして、確認。
ステータスカード
名前:タロー・キノモト
年齢:16
気力:100/100
霊力:20/20
職業:浪人
属性:聖
魔力:10/10
スキル一覧
ユニーク:なし
メインスキル:刀術LV2、歩行術LV2
サブスキル:言語学LV1
魔法スキル:なし
武技一覧
飛刀<燕>(ひとう<つばめ>)LV1
居合い<閃>(いあい<せん>)LV1
装備品:刀(無銘)、〔鞘(霊術:状態保持)〕
所持品:〔闇の〕風呂敷、〔拡張の〕箱籠、
「属性表示に、最大魔力、魔力残量。後は使用できる魔法スキル、が増えているかと思います……。どうでしょう。」
「確認しました。増えてます。」
「では、これで、転職の儀式、並びに手続きが終了となります。」
やっと、終わった。
次は、お弁当を買って、迷宮にGOだ。
「では、続きまして、魔法スキル習得の為、移動します。」
はっ?。
終わりじゃないの?
「基本的に、魔法スキル習得までが、一つの流れですので……。」
「……わかりました。どこに行けばいいですか?」
「地下一階に戻ります。」
また階段か……。
仕方ない。
戻ろう。
はい、やって来ました、地下一階。
お姉さんは、階段傍の扉に入る。
ココにも魔法陣が……。
「では、また魔法陣の上に。荷物はそのままで大丈夫です。」
言われるがまま、魔法陣へ……。
「それでは、始めます。」
また、魔法陣が光るのかと、顔の前に手を準備しておいたが、魔法陣は、光らなかった。
代わりに、自分の体が、一瞬光った。
「これで終わりです。魔法スキルの確認をお願いします。」
ステータスカードを確認。
ステータスカード
名前:タロー・キノモト
年齢:16
気力:100/100
霊力:20/20
職業:浪人
属性:聖
魔力:10/10
スキル一覧
ユニーク:なし
メインスキル:刀術LV2、歩行術LV2
サブスキル:言語学LV1
魔法スキル:生活魔法[聖]
武技一覧
飛刀<燕>(ひとう<つばめ>)LV1
居合い<閃>(いあい<せん>)LV1
装備品:刀(無銘)、〔鞘(霊術:状態保持)〕
所持品:〔闇の〕風呂敷、〔拡張の〕箱籠、
「増えたのは、生活魔法[聖]だけですね。」
「!!!。」
今度は何?。
「本当ですか!?。」
「どうぞ。」
ステータスカードを渡す。
「……。ふぅ、すみません、まずは説明を。生活魔法[聖]は、身体や装備品、衣類などは勿論、自分以外の人にも使えます。効果は汚れを落とし、綺麗にする事です。」
ホウ、意外と使える魔法ですな。
お風呂イラズ、洗濯楽チン、もしかすると、トイレの後も大丈夫かな。
良いね、使える魔法だよ。
………っで後は?
「えっと、それだけですか?。」
「それだけとは?。」
「他の生活魔法は使えないのかな~って。」
「使えません。」
!?!?!?!。
使えない…ですと。
「何で使えないんですか?。」
「基本的に生活魔法は、各属性によって決まります。そして、普通の人は、2つか3つの属性を持ちます。」
「そうなんですか!?。」
「しかし、コレは、赤、青、緑、茶、黄の五色なら、です。後の四色、白、黒、銀、金、はどれか1つしか持てず、その上五色の方の属性は1つも持てません。」
何て事でしょう。
お掃除魔法だけとか、キツくない?。
「色と属性は、
赤が炎、青が水、緑が森、茶が大地、黄が雷、白が閃光、黒が空間、金が時間、銀が再生となります。」
「森と大地って、何?。」
「森属性は、風と泉と木の3つの魔法が、大地属性は、土と砂と岩の3つの魔法が組み合わさった物です。」
「3つもあるの?。」
「5属性それぞれに3つ。4属性は1つです。
炎属性は、
炎魔法、燃焼魔法、灼熱魔法。
水属性は、
水魔法、凍結魔法、氷魔法。
森属性は、
風魔法、泉魔法、木魔法。
大地属性は、
土魔法、砂魔法、岩魔法。
雷属性は、
雷撃魔法、雷身魔法、雷動魔法。
光属性、
閃光魔法。
闇属性、
空間魔法。
聖属性、
再生魔法。
神王属性、
時間魔法。
になります。」
色々、突っ込みたい所がある。
しかし、最後の神王属性って……。
「あの~、神王属性って何ですか?。」
勇気を振り絞って、聞いてみた。
勇気だよ、勇気。
自分で自分を讃えたい。
「神王属性は、未だかつて、この大陸の覇者、神王『ユウキ』皇帝しか、使い手が居ない属性なので、そう呼ばれております。」待った。
深呼吸……。
……。
神王?。
『ユウキ』?。
皇帝?。
……。
明らかに日本人でしょう。
「神王『ユウキ』皇帝ですか?。」
「はい。正確には、『ユウキ』皇帝ですが……。」
「えっ、じゃあ『神王』は?。」
「それは、ユウキ皇帝が使われていた魔法が、当時から現在までの、凡そ二千五百年間、誰も習得出来ない魔法だからです。その為今では、ユウキ皇帝を、神王と呼び、時間魔法もそれに合わせ、神王属性と呼ばれるようになりました。」
……。
……。
……。
御冥福をお祈りします。
合掌。
チーン。
お読みいただきありがとうございます。
まだまだ、迷宮は遠い……。