年越しネタ(2015)
・例によって(以下略)
・ネタ募集で書かせて頂きました
見捨てられた。年末なのに。
……泣くぞ。
私は家電の待機音しかしないダイニングで、それらを見下ろし溜息をついた。
テーブルの上に並べられているのは、薄情な我が家族達からのプレゼントだ。
彼らは今、他県の山奥のさる神社に初詣に行くとかなんとか言って旅行中である。
末っ子一人残してさぁ……連れてってよ……。
お母さんにそう訴えたら「あの人達来るかもしれないでしょ!」とバッサリ却下され、今に至るんだけど。酷い。
その母が置いていったのは、ティーセットの乗ったお盆とメモが一枚。
『冷蔵庫にケーキ入ってます。王子様達によろしくね。玉の輿ゲットだぜ! 母』
「…………」
しかもわざわざ筆ペンで。他に書くことなかったんだろうか。
とりあえず、このメモは早急に丸めて処分する事にした。
喋るくらいだし、どこの誰が日本語読めるとも知れないからね。親の恥は子供の恥。
グシャグシャやりながら、隣へ目を移す。
『いつもの所に新しいお酒が置いてあるので、皆でどうぞ。良いお年を 父より』
他に書くこと(以下同文)
「良いお年を」じゃないよ! そのお酒、某水色宛てを想定してるだろ!
酒と変態と愛娘一緒にしとくなんてどういう量見だよ!
ひとしきり嘆きつつその隣、上の兄から。
『夕飯これで何か取りな。残ったら美雨のお年玉にしていいよ』
「お兄ちゃーーん!!」
諭吉が二人入ってた。許す。
さてじゃあ下の兄は。
『がんばれ。困ったら神頼み、その他これを振ると吉』
「フザケンナー!!」
トランプ一組と、私が子供の頃好きだった魔法少女系アニメの、キラキラした星のステッキが置いてあった。
これで間を持たせろってか。
私はトランプの下からメモを抜き取り、床に叩き付けた。
カードはともかく、ステッキどうするんだ。罰ゲーム用ですか。
自棄になって振り回してみたが、シャララーンとか場違いな効果音が響くだけだった。
うっ、虚しすぎて涙出そう。
◇
夕食時、私は一人寂しく特上寿司を頬張っていた。
出前頼めたのはラッキーだった。年末なのに。
とか思っていたらインターホンが鳴りまして。
「…………」
「……今年も一番手なんですね」
玄関を開けると、黒いピーコートのポケットに両手を突っ込み、鼻を赤くした某王子様その一が立っていた。全くもって解せない。そしてなんか、ジーパンとか履いてるっぽいんですけど。驚きなんですけど。買ったんですか?
「えっと……とりあえず上がってください。あ、靴脱いでね……」
おお、靴もなんか高そうな革靴履いてるな……。
と、まじまじと注目してたら突然怒られた。
「お、お前、なんてカッコしてんだよ!」
「へっ!? 私!?」
自分じゃなくて?
「当たり前だろ! まともな服持ってねーのか!」
「えっ、まともな格好ですけどこれ」
シャツにセーターにスキニーパンツだ。私の普段着なんですけど。貧乏臭いですか、そうですか……
「違う! 脚!!」
チッ、とすごい舌打ちされてビビるが、その顔は真っ赤である。
脚っていうか、女性の膝から上らへんの形状が外から見て分かる、というのが彼の文化圏では大変に卑猥らしい。そんなこと言われてもなあ……。
「こういうのって、やらしいって言う方がやらしいんですよ」
「うるさい馬鹿早く着替えてこい」
仕方なく、私は手持ちの中からロングスカートを引っ張りだす羽目になった。
ダイニングに戻り、向かいに座った王子様に寿司でも勧める。
出前は一人前では持ってきてくれなくて、どうせ二人前あるからね。
でも彼はあんまりお腹減ってなかったらしく、少し手を付けたあとはお茶だけ飲んでいた。食べるより、「ありえない」とか「何考えてんだ」とかブツブツ言い続ける方に熱心だった。てか、自分の服装には何も疑問は無いんですかね。
そこんとこ突っ込んでみたけど、相変わらずものすごい不自然にはぐらかされた。
いいよ、もう聞かないよ……。
残ったお寿司を片付けて、私は冷蔵庫からケーキの箱を取り出す。
そろそろ二人目来るからね。そしたらこの子帰るしね。
しかし今日は一人目が消える前に、別の二人が現れた。
「美雨様! あら、アルス殿下もご機嫌麗しゅう」
「な、なんだってー!」
メイドさんだ! メイドさん達が来たよ!
私は、危うく取り落としそうになったケーキを寸でで留める。
「お茶をお淹れしに参りました」
たったそれだけの為にどこからともなく忽然と現れたと言うのですか。年末スゲー!
二人はテキパキ四人分の紅茶を淹れてくれて、私はケーキをお出しした。
五つしかなかったけど構わないだろう。残ったのは早い者勝ちで。
一人は紅茶の風味に感激し、もう一人はガスコンロに感激し、チョコレートケーキはそれを上回る好評ぶりだったのでミッションコンプリートである。
女の子にはやっぱり甘いものだね!
「お前今俺も含めただろ」
「滅相もない!」
◇
早々に覚悟を決めて次の王子様待ちをしていたら、今年は一気に来た。
「皆さんは普通にあっちの服装なんですね」
「服装?」
「お前、またこの魔除けとかいうモノが増えてないか?」
「うちのお父さん『厄除け』とか『魔除け』とか聞くと何でも貰って来ちゃって」
「意外と怖がりなんですねー」
うん、そうなんだけどその情報要る?
王子様は自分と私の服を見比べてるし、王様は妙な置物だらけの飾り棚を二度見してるけど、そこな水色が普通に来訪している所を見るに、魔除けもあんまり効果なさそうである。今度、処分した方がいいって父に言おう。
その棚の横で、無表情で突っ立って威圧してくる護衛の人のがよっぽど怖い。あ、いやこの家には絶対置きませんけど。
しっかし家せっま……。
さてここで、私は初めて下の兄に感謝した。
この持て余したロイヤルな空気。
家中を歩き回ろうとする変態。
気を遣ってお茶を淹れ続けようとする女子達! 魔除け!
全てを解決するにはトランプである。トランプはあらゆる世界を救うのだ。さあ諸君掛け給え、神聖なるババ抜きの始まりだ!
威勢よく始めたが、一つ問題があった。
「無くなったぞ」
「ええっ!? またですか!?」
某王様がべらぼうに強い。三回やったけど全て二ターンで一抜けする。戦略がどうこうじゃなくて、純粋に引きが強すぎる。おかしい、ゲームにならないよ!
あとその弟さん金髪の方、カード引く時じーっと見てくるのやめてください。私のなけなしのポーカーフェイスが決壊するんですけど。眼力の有効活用ですか? セコくない?
◇
色々問題はあったけど、カードゲームは一応盛り上がった。
黒髪の王子様と、意外とメイドさんの年下の方が勝負好きでこりゃ賭け事待ったなしである。残ったケーキ賭けます? 何にしても、女の子達がきゃあきゃあやってるのを見ると眼福だ。お兄ちゃん達残念だったね!
私はトランプ離脱組に日本酒とお寿司の残りを与え、足りないのでキッチンでおつまみも何品か作る。作るって言っても大したものじゃないですけど。あ、卵焼きは外せないよね。
ジュージューやっていると、手持ち無沙汰な数人がコップ(お猪口じゃ足りないらしい)片手にぞろぞろ見に来るから若干居心地が悪い。
「お前、こんな特技があったのか」
「……特技と言う程では」
普通に、家庭科レベルである。
王様は「ふーん……」とばかりにお酒飲んでて、特にそれ以上コメントは無い。
水色は居間とキッチンをウロウロウロウロ行ったり来たりするので、床が綺麗になりそうだ。
元々無口すぎる護衛の人は今日も無口で、横に突っ立って邪魔臭いので皿を持たせておいた。卵焼けたら頼む。本当はこの人こそポーカーフェイスなんだから、トランプやってればいいのにと思う。
さて宴もたけなわ、大変重大な問題が発生した。
つまり0時前、まもなく新年を迎えるというのに誰一人消えないのである。
「そんな馬鹿な……!」
困る、困るよ!
「大丈夫ですよ」
「何がですか」
「僕は美雨さんの部屋で大丈夫です」
「何言ってんだこの下衆、帰れ!」
いいぞ末っ子もっとやれ。でも家からそれを追い出してもらった所で消え失せないだろうし、ご近所にヒソヒソされるのが関の山である。早急に元のお国へ帰って頂かねば。
しかし待てど暮らせどそんな気配は訪れない。
なんでだ……私どうしたら!? こんな人数泊まれないよ家!
苦悩していると、お姉さんが星のステッキと紙切れを持ってきた。
「神頼みですわ」
……マジか。
◇ ◇ ◇
……というわけで、年明け直後真っ先に神社にやって来た。
今年は二年参りじゃなくて初詣になってしまった。そして勿論、全員連れてきた……というよりは私が付いて来たというか。え? 着替え? そんなのは楽勝ですよ、ちょっとステッキでシャララーンであっという間にこっち風コート着用ですよ。兄凄いな、何者だ。
メイドさん達は、ウールコートを着込んだらただの北欧風美少女である。
最寄りの神社の境内で、チラチラと周囲から視線を送られている。うむ、予想通り。
問題は男性陣ね。
「くれぐれもお願いします……」
「わかった。心配しないでくれ」
王様は若干はしゃいでる気がするので、頼みの綱は王子様だ。
暗色の防寒着に身を包むと、王族の皆様方はどう見ても海外お忍びセレブだった。王様、革の手袋が死ぬほど似合う。こんなのと一緒に歩けない、目立ちすぎて明日が怖い。
先に行って賽銭入れて手合わせて「国に帰らせてください」って言うんですよ。何度も繰り返し吹き込んだけど本当に効果あるんだろうか。人混みの中で頭ひとつ抜け出ているロイヤルファミリーの後頭部を見て不安を覚える。
護衛の人はどれだけ言っても無視し、私達の後ろから付いて来た。メイドさんどっちかのお兄ちゃん辺りに見えるかもしれないし、もう気にしないでおく。
水色はお着替えステッキを振ると何故か羽織袴になって引いた。
しかし髪はそのままである。引くわ、何のコスプレ。
無理やり兄のリュックを背負わせ、ファスナー全開で髪の毛全部突っ込んでやった。立派な不審者の出来上がりである。絶対に私の半径20m以内には入らないでくださいね、名前も呼ばないでくださいね!
果たして、神頼み作戦は成功した。
「帰してください、ですよ」
「わかったわかった」
「…………」
拝んだ人から順に、忽然と消えていく。そうだよ、これだよ。これでいいんだよ。
「美雨さんと僕が今後*******(自主規制)」
ゴルァ貴様ーッ! なんて事を神に頼んでくれるんだこのド変態!!
星のステッキで引っ叩くと、水色の悪魔も消え去った。素晴らしい退魔アイテムである。帰ったらこれを棚に飾ろう。
「美雨様」
メイドさん達がニコッと笑って振り返り、そして消えた。
恥ずかしいから、様とか付けないでって言ったのに。
あんなにどうしようと思ったのに、みんな消えてしまうと何故かちょっと寂しかった。
周りは、まだこんなに人でごった返してるのに。不思議だ。
◆◆◆◆◆◆
私は後悔していた。
もっと早くから初めておくべきだった。
水読の煩悩を払うべく、ヘッドスライディング並の勢いで除夜の鐘に突っ込んでいるのに、一向に鐘が突き止まない。多すぎるのだ、煩悩が!
「お嬢さん、もうお止めになった方が……」
「ま、まだまだぁー!」
爺さん似の住職が必死に止めてくるが、全ての煩悩が取り払われるまでこれは終わらないと決まっている。いや、終わらせてはいけない。それが世の為人の為、ひいては私の未来の為なのだ!
うおおおおー! ……!
「……うーんうーん」
「大丈夫か?」
揺すられて目を覚ますと、ゴージャスな部屋が目に入った。
光るシャンデリア、そしてそれより更にキランキランな人が私を覗き込んでいる。
「んなッ……!? 王様!?」
「椅子で寝るなといつも言っているだろう?」
「いつも……?」
っていや、言われてたっけか……?
「そうでしたっけ、お兄様……」
お兄様??
いやいやいやいや。
私は自分で言った言葉に、大いに首を傾げた。しかし違和感の正体が掴めない。
確かに兄はいる。いるはずだけど……
「お兄様ってお兄様でしたっけ……」
「まだ寝惚けているのか?」
その人は笑って、私の頬に張り付いた髪を普通に払った。なにこれはずい。
「随分悪い夢を見ていたらしいな。うなされていたぞ」
「それはまぁ、はい……じゃない、ええ……」
確かに酷い夢だった。
でもそれよりおっかしいな、こんなレベル高い兄が居ただろうか。
「呆けていないで、そろそろ部屋に戻れ。あまりここへ入り浸っていると、また『今代の王は妹姫を囲って嫁に出さぬ』などと揶揄されるぞ」
「…………」
囲ってって。てか嫁って。「また」っていつですか、初耳ですけど。
よくわかんないけど、切ないんですけど。
◇
私の部屋らしき部屋で向い合って、私は彼からペン字を教わっていた。
「クラインも私のお兄様なんですか」
「そうらしい」
そうなんだ。
もう突っ込むまい、そういう“設定”なのだ。誰でもかれでもとりあえず「お兄様」と呼んでおけば失礼が無いだろう。「兄ちゃん」じゃ怒られるかもしんないけど。
そうは思っても、目の前の王子様は今日も王子様然として綺羅綺羅しい。うーん。
「お兄様とそうじゃない場合だと、どの辺りが違ってくるんですか」
尋ねると、彼はふと顔を上げた。さらりと零れた金髪が白い頬を撫でていく。
おもむろに席を立ち長椅子の私の隣に腰掛けると、彼は羽ペンを持つ私の手をそっと握った。
そして、こちらを向いて微笑む。
「こうなる」
「…………」
マジですいませんでした。
◇
アルス王子の電撃訪問は最早問題ではない。
でもそれはおかしい、おかしいったらおかしい。
「…………」
「……お兄様」
葛藤の末呼びかけると、私に負けず劣らず、向こうもなんとも言えない表情をした。
「いや、まあ……年齢逆ですしね……姉ならともかく
「俺はお前を姉とは呼ばない」
「それはいいですって、希望してませんって」
「呼ばないからな!」
クラインが幽かに微笑んで眺めている。
面白いですかそうですか。突っ込んではくれないのね。
◇
その後、所要で隣室に一時引っ込んだら某塔兵に捕まった。
「習字なら他に幾らでも教師がいる。王族の饗しをする必要はない。午前中はどこへ行っていた」
「あなたも『お兄様』ですか」
あの三兄弟はまだしも、この人は血縁どうなってるんだ。
カオスだよ、超カオス。しかもすごい喋るじゃん、どうしちゃったの。
「何を言っているのか分からない」
ジルフィーは私の額に手を当てて、眉をひそめた。
熱とかないです、おかしいのそっちです。
◇
「会いたかったです我が妹よ、僕が『お兄様』ですー!」
「帰れー!!!」
再び客間に戻ると、某水読が両手を広げて突進してきた。ので、咄嗟に蹴り返した。
「寝言は寝て言え。お前は天涯孤独が宿命だろう」
「ぐえ」
いつの間にか来ていたらしい王さ……『お兄様』が、水読の首根っこを掴んでいなしている。
なんか……もういいや、任せておこう。色々手に負えないし……。
ジルフィーを盾にして窺っていると、水読は怒られてめそめそし始めた。
「酷いじゃないですか、僕だけそんな理由でのけ者だなんて……僕も美雨さんと兄弟姉妹で一生一緒に末永く仲良く暮らしたっていいじゃないですか!」
「そんな兄弟姉妹嫌ですよ!!」
「俺はお前を姉とは呼ばないからな!」
「混ざってくるなややこしいー!」
突っ込み所がありすぎて、私の声は枯渇寸前だ。
なんだこれは、私のお兄ちゃんはここに居る誰でもなかったような気がするんですけど!
何とかしてよお兄ちゃん!
と思ってふと手を見ると、なんと魔法少女系アニメの星のステッキを握っている。
こ、これだ!
「とにかくお兄様問題解決してー!」
シャララーンとステッキを振ると、全ての問題はクリアされるのだ。
だってほら、着替えとか出来た魔法の杖だし……。
◇ ◇ ◇
「……まあ、そういう流れってのは分かってたんですけどね……失礼ですが、お幾つですか」
「28」
おう。マジか……。
癖のある黒髪はちょっと長めで整えられ、青い猫目は更に眼光鋭くなって、色気的なものも増している。そして私を見下ろしている。
ご、ご立派になられまして、なんとも……ええと……。
「こ、これで妹って呼んでもおかしくなくなったんじゃないですか、みたいな……?」
うわぁピンポイントで解決!
とやっていたらすごい睨まれた。いや、すいません。怖いんで。
しかしなんでこんなことに
「……ってあれえ!? なんか変わってません!?」
他の面々を振り返って、私はリアルに半歩程後ろに飛び上がった。
王様が若い。ジルフィーも若い。水読も若い。クライン……は、多分何も変わってない。よかった。
そちらはお幾つですかと尋ねたら、15歳だそうです。平均値でトレードですか。これが対価というやつか。
しかし王様とかジルフィーとかは、既にかなり背が高い。
「お前が小さいんだ」
腕を組んだ王様が、快活に笑い飛ばす。
これって性格も年齢相応になってるのかな? なんか現在より更に明るい。コロコロよく笑う。眩しいのは相変わらずで、視線は悪戯っぽい好奇心に満ちている。アイドルか。
隣のジルフィーは、アイドルというよりヴィジュアル系バンドの人だった。顔立ちは怖くないはずなのに、なんでこうなってしまうのか。オーラが現在より更にギラギラしていて凶悪だ。あ、睨まないでくださいほんと怖いんで。
水読はただの妖精だった。王族比だと若干地味目だけど、お伽の国から出てきたようで大変に可愛らしい。が、中身が論外なので眼鏡も曇る。
さあどうしよう、更に手に負えない事態に……。
「良いんじゃないですか。私はどちらかと言えば年上の方が好みなので……」
「その外見年齢でそういう事言わない! なんかいかがわしいし夢が壊れる!」
ほざく水読をはたくべくステッキを振るうが、コンっと軽く小突くので精一杯だった。子供は殴れない。悔しい。
しかしその、もう一度ステッキを振ったという行為が良かったらしい。星の先から不思議なキラキラが飛び出してきたかと思うと、全ての景色が煙のように霞んでいった。
全部消えていく。
いいぞ消えてしまえ、私そんなに兄いらないし……。
◇ ◇ ◇
「……美雨? 蕎麦食べるよー」
「うーん……」
またうなされていたらしい私は、家のソファで目を覚ました。
「ご飯食べてすぐ寝たわね。太るよ」
「お酒飲んだっけ? それでじゃない?」
「いや、美雨は飲んでなかったよ」
食卓で年越しそばの準備をしながら、両親と兄達が喋っている。
私はむくっと起き上がって、兄二人の顔をまじまじと見た。
「ああそうそう、家のお兄ちゃんってあんな美形じゃなかったわ……」
「寝起きから喧嘩売られたんですけど」
その後星のステッキはどこを探しても出て来なくて、兄にも知らないと言われた。
謎だ。けど、よかった。
もう出て来ませんようにと念じながらお蕎麦を食べて、この話はおしまい。
↓頂いたネタ
・メイドさん達含め全員で初詣
・美雨が妹になって溺愛
・みんなでトランプまたは人生ゲーム
・美雨が初夢(糖度高め)を見る
・美雨が鐘をついて水読さんのたくさんの煩悩を払う。(←原文まま)
・キャラクターの年齢交換
どうもありがとうございました!