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雨のアクセサリ  作者: 桃宮
その他
7/8

年越しネタ(2014)

・例によってパラレルです

 

 ◇ 1 ◇


 大晦日、そろそろ早めの夕ご飯という頃。

 私以外の家族は全員で居間の炬燵に集まり、熱々のホットプレートにまずは野菜を乗っけている。

 後は私がキッチンからこのお皿を持って行ったら準備万端だ。

 と思っていたら、後ろから肩をつんつんつつかれた。

 振り返ると、私の目線より僅かに高い位置から見下ろす、大きな青い目。


「…………」

「…………」


 えっ。


「な、なんでここに……あっ年末だからか」

「それ去年も言ってなかったか」

「言ったかもしれません」


 まさか今年もあるとは。





 居間に行くと、全員「あ」という顔をして私の後ろを見た。

 兄達が何も言わず横にずれて一つ席を作る。


「あ……えっとじゃあ、どうぞ」

「去年も来た子だよね」

「えっ何ですか? ……覚えてるのかって?」

「その顔はちょっと、忘れにくいわよねぇ」


 緊張気味に耳打ちされ、何故か同じ言語なのに通訳する。

 因みに我が家は今まさに、焼き肉開始直前だった。すいませんね、大晦日って言うと肉を食べる家で……でもほら年末って何か、打ち上げっぽいじゃん。

 という訳で私は、一つ増やしたお皿をやや手狭になった隣席に置いた。


「所で、どこか外国から来たんだったかしら?」

「親御さんは?」

「あ、その質問は……!」

「…………」


 黙り込んでしまった彼の様子に、一同がはっと口を押さえる。


「あっ、こ、これ美味しいとこだよ、食べて!」

「こ、これもどうぞ!」

「この辺ももう焼けたんじゃないかな!」

「うちの家族、誤魔化し方がワンパターン!」


 てんこ盛りの皿に戸惑いながら、結局彼は今年もすごく大人しくご飯を食べていったのだった。



 ◇ ◇ ◇



「これどういう仕組みでこっちに来てるんですか?」

「知らねーよ」

「ええ……あ、じゃあ思ったんですけど、醤油とか食べられるんですか? あと言葉とか服とかそもそもどうやって……」

「そういうの野暮っつーんじゃねーの」

「そ、そっか」


 ・アルスは日本にいたら結構楽しいと思います(髪色的な意味で)





 ◇ 2 ◇



 末っ子の人の姿が消え、廊下を探しても見当たらなかったので多分帰ったんだな(どうやって)と納得し居間に戻ってくると。


「……何やってんの?」


 家族が挙動不審だった。

 なんかお母さん着替えてきてるし。

 ていうかお父さん達も、気が付けばそそくさその辺片付けてるし。


「いや、このパターンだとまだ後続が来るかなと……」

「ちょっとコンビニ行ってこようかな……」

「待って俺も行く」

「えっ? お化粧? 直してないわよ」

「まともに答えてくれたのお父さんだけっていう」


 てか大丈夫だよ、どんだけ片付けてもあっちの人からしたらただの質素なお家だよ。城住まいだからな。


「美雨」

「わっ!」


 ぎょっとして振り向くと、廊下に件の王子様が立っている。

 途端に皆あたふたして、どうぞどうぞと居間に招き入れた。一度は逃げそびれた兄達が、タイミングを見計らって玄関を出て行く。

 私は母に引っ張られて、台所に引っ込んだ。


「美雨! アンタこれ持って行きなさい!」

「え、なにこれ……紅茶? こんなのあったの?」


 聞いて気づいたけど、こんなちょびっとしか入ってないお高そうな茶葉が家に常備されているワケがない。お母さん、前々から買ってきてたな……このクッキーもやけに高級そうだ。


「お母さん行かないの? お父さん、冷や汗かきすぎて干からびるかも」

「素敵ねぇ……お父さんは後で適当に回収するから、アンタあの人捕まえてきなさいね。あ、でもあんな人が親戚になったら緊張するかしら……」

「いや色んな意味で無理だからね」


 ていうかここでもこの扱いか。



 ◇ ◇ ◇



「えーと……これ母からです。というか私も食べていいですか?」

「勿論」

「ありがとうございます、台所からの視線というか沈黙というかが凄く気になるけど美味しいです。所で、どうやってこっちに……」

「それは言えない事になっている」

「そ、そうですか」


・手強い





 ◇ 3 ◇


 私と、大変我が家に不釣合いなその人は、居間のサイドボードの前に立っていた。


「えっとこれは多分、魔除けとか……ですかね……」

「ほう。ここには悪魔がいるのか?」

「さ、さあ、見たことはないですけど……」


 指差す先にあるのは、お父さんが会社の同僚からお土産で貰った謎のお面である。

 不気味なのであんまり触りたくない、っていうかよりにもよって話題がこれ?

 電化製品とかに興味を示されても、説明できないから困るけど。


「……面白いですか?」

「どちらかと言うなら、お前の家族の方が面白いな」


 そう言って笑う様子に、私は目を上げられないまま乾いたお愛想を浮かべた。

 後ろでビクビクしてるのバレてたね。

 父と読み間違えてうっかり帰ってきてしまった兄達が、そろーっと部屋に撤退しようとして失敗している。母は「お茶の用意するわ」とか何とか言って、もっと上手く逃げた。

 でもそう言えば前回は、私もあたふたしてたっけ。


「そう思うと私、成長したなぁ……」

「なんだ。年の瀬に自己回顧か」

「え、ええとまあ……というか年の瀬って。あっちとこっちでカレンダーが違うとかって話がなかったですっけ」

「気にするな。年末は年末だ」


 そうなんだ。



 ◇ ◇ ◇



「……あの、一つご質問よいでしょうか」

「駄目だな」

「ええっ聞く前から!? こうなったら、他の誰かに聞いてもらって……(振り返る)……あ、無理そうですね」

「そうか」


 ・どうやってこっちにきたのか聞きたい





 ◇ 4 ◇


「お母さん、お蕎麦食べに来ましたー」

「まあー、いらっしゃい」

「あ、いらっしゃい! もしかしてと思って、今年はちょっと良いお酒買っといたんだよ。『十六代白川蔵』! 年間本数限定!」

「わあ嬉しいです!」

「何で!? 何でそんな歓迎されてるの!? 呼び名が横文字じゃないから!?」


 そして宴会が始まり、お酒に弱い一同はそう間を開けることもなく良い頃合いに出来上がる。


「お父さん、お嬢さんを僕にください!」

「何言ってんですかお断りしますーーー!!」

「うーん……」

「悩まないでお父さん! 本人嫌がってるよちゃんと見て!」


 そこのロン毛はどうなのこれ、酔ってるの? 素で頭おかしいだけ?


「一回言ってみたかったんですよねこれ」

「どこで覚えたんですか。てかこれアレだよね? パラレルだよね?」

「美雨さん、あまりそういうメタ発言は……」

「同じ穴の狢ですよ!」



 ◇ ◇ ◇


「(コイツならきっと行ける!)あの、さっき他の人も来たんですけど一体どうやって」

「あ、時間切れみたいです。美雨さんまたー」

「ああっ逃げるな!」






 ◇ 5 ◇


「じゃあ、行ってきます」

「気をつけてね」

「帰る時電話して。迎え行く」

「はーい」


 という会話を起きてる人間だけで交わして、私はムートンブーツに足を突っ込む。

 高校の同級生数人と、これから近所の神社で二年参りだ。

 耳あてもしたしマフラーももっこもこに巻いたし防寒バッチリ、行ってきます! と、玄関を開けた所。


「…………」

「……ど、ども」


 まさかまだいたとは……!

 ドアの真横に、中々このマンションでは見慣れない背の高さの人物。

 淡色の髪、灰色の目。

 うわぁ、これどうしよ、家戻る……?


「お送りします」

「えっ」


 行き先も告げない内に申し出があって、正直戸惑う。

 うーん、この制服か……ギリギリ普通のコートに見えなくもない、かな、まあ夜だし……。

 という訳で街中へ。


「……すいませんね、なんかどこでも同じことさせて」

「いいえ」


 後ろを歩かれるとなんか不審なので、隣を歩いてもらう。

 うおおお慣れないこの人とこの景色!

 無言は今更気まずくないけど、若干近所の目が怖い。


 友達と合流する時はどうしようと悩みながら神社に着いた所で、気が付くと彼は煙のように消えていた。



 ◇ ◇ ◇


「ホントこれどういう仕組み……ってかどこまで突っ込んでいいのかな」

「独り言ですか」

「わっ! まだいたんですか!? いやダメってわけじゃないんですけどその」

「詮索は無用です」

「皆、何を知ってるんだ……!」



・お粗末さまでした

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