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雨のアクセサリ  作者: 桃宮
その他
6/8

年越しネタ(2013)

年末に拍手に載せていたパラレル年越しネタです。

短い&特にオチもありません。

両親+兄的な美雨の家族が出てきます。お嫌いでない方はどうぞ。


 

 

「まー! 可愛らしい子ねー」

「美雨のお友達? 外人さんかな?」

「…………」


 キャッキャと盛り上がる両親を尻目に、口を開けて固まる。


 何でこの子がここに……?


 いや、深く考えるのはよそう。きっとあれだ。年末だからだ(うーん……)。


「丁度よかったわ、今夜はすき焼きよー。一緒に食べたらいいわよ」

「お兄ちゃん、もう一人分お皿出してあげて」


 母の言葉を皮切りに食器が追加され、すぐに一人分の席が整えられる。

 ……えーとね、どこからとも無く忽然と現れた人間に対して、何で一瞬で食卓に加える気構えができるんですか。そこに疑問は無いのか。

 我が家族ながらこれは。若干不安を覚えつつ、私は彼に椅子を勧めた。


「それにしても、本当に可愛いわねぇ……」

「…………」


 彼は、ためつすがめつといった様子で集まる視線を居心地悪そうに受け止める。

 普段なら文句の一つも言いそうなのに、今は気の毒になる程おとなしい。


「写真撮っちゃだめかしら」

「もうちょっと髪が長かったら、完璧に女の子だね!」

「ほんと!」


 ニコニコしているが大分無神経な両親の言葉に、彼はこそっと耳打ちしてきた。

 曰く。


「え、何? ……女の子に見えない髪型?」

「…………」


 うっかり口に出せば、その頬がじわりと赤くなる。す、すまん。


「……リーゼントとか?」

「いやぁ、そこは丸刈りでしょう」

「ぶっ」


 兄達の言葉に、私は思わずお茶を噴き出した。

 もうやだこの人たち、変な想像させないで欲しい。


「……それはどんな」

「ちょっ」


 待て、早まるな。頼むから変なこと吹き込まないでくれ、この子案外ピュアなんだから!

 微妙に興味を示すその反応に警戒しつつ、私は念入りに釘を刺した。

 これ以上意味不明な事態は、もうお腹一杯です。




後日談:


「お人形みたいな子だったわねぇ。どこから来たのかしら」

「日本語喋ってるのが不思議だったね」

「あ、そこ突っ込み出すと、それどころじゃなくなるんで……」




 ◇ ◇ ◇





 炬燵に座っとる。

 王子様が。


 ちょっと今、これ以上の説明は出てこない。


「……誰? 人間?」

「妖精とかじゃない? 突然現れたし」

「いやぁ多分、天使だよ。クリスマスの日を間違えちゃったんだ」


 なんだその、ファンシーなうっかりさん設定。

 とりあえずその隣で正座しながら、私は入り口から覗いている兄達と父に内心で突っ込んだ。

 噂されている本人は、聞こえているだろうに顔色も変えず礼儀正しく座っている。

 ……ほんとごめん。変な家族で。


 どこからか湧いて出てきた末っ子が現れた時と同じように消えた後、

 今度はその兄が魔法のように尋ねてきた。やっぱり意味がわからない。


「お茶、お淹れしますね」


 下手に話も出来ず押し黙っていると、父と兄の脇を抜けて母が入ってきた。

 お茶を出してくれるらしい。横の席に座ると湯のみをセッティングして、急須にお湯を注ぐ。

 それをじっと見ていた王子様は、お茶が湯のみを満たすタイミングでふと顔を上げた。


「ありがとう」

「…………」


 どんな表情だったのかは不明だが、それを向けられた母の頬がポッと赤くなった。

 おいおいおいおい……。


「ってお母さん、お茶! お茶あふれてる!」

「ああっ!?」

「そ、そのまま待ってて! 拭く物持ってくるから待ってて!」


 狼狽える母とさっと懐から布を取り出した彼にそう言って、私は席を立った。

 その無闇に高そうな刺繍入りハンカチでお茶を拭くのは、私が絶対に許さん。




後日談:


「天使でも妖精でもいいんだけど、また来てくれないかしら」

「うーん、小悪魔、だったかなぁ……」

「誰が上手いこと言えと」




 ◇ ◇ ◇




「神だ……」

「神だ……」

「真打来た……」


 もはや「何故?」という言葉は封印しよう。

 3人目の来訪者と父と兄を居間に残し、ひとまずお茶を出そうとキッチンに立つ。

 母が既に、お盆に急須と茶碗を用意していた。


「美雨、頼むわね。お母さんちょっと、あの人にはお茶淹れらんないわ」

「ええ、なにそれ」

「確実にひっくり返す」

「あー……」


 さっきは溢してたもんね。

 かつて無いほど真剣な表情の母に気圧され、私は思わずお盆を受け取った。


「ちょっと、早く来て。兄貴たち石像になってる」


 台所に顔を出した下の兄が、小声で急かす。

 お盆をカタカタ言わせて部屋に戻ると、報告通り父と兄が、炬燵に並んで固まっていた。原因は勿論、その正面に座る人物だ。

 純金の髪と整いすぎた容姿が、ごくありふれた日本の一般家庭で強烈な違和感を放っている……いや、あれ。おかしいな。変なのはむしろ、この変哲のない部屋と父兄の方に思えてきたぞ。


「お、お茶です……」

「ああ、悪いな」


 何この状況。


「話してるすごい」

「美雨ちゃんすごい」

「…………」


 恥ずかしいから止めて欲しい。

 幾ら小さい声で言っても、目の前で話したら聞こえるからね。

 ボソボソ呟く庶民たちを前に、見るからにロイヤルなその人は楽しげに笑う。


「面白いご家族だな。お前とそっくりだ」

「それはどうも……」


 やけに爽やかな笑顔でそう言われ、私は空笑いで濁すしかなかった。

 ……これ、いつまで続くんだろう。

 少なくとも、絶対後一人は来るんだろうな……。




後日談:


「社長との面談より緊張した」

「お母さん、サングラスあったらいけたかも」

「さいですか……」




 ◇ ◇ ◇




 その人物は意外にも、器用に箸を使ってそれを食べている。

 つまり、年越し蕎麦を。


「とっても美味しいです。お母さん、お料理上手ですねー」

「やだ、恥ずかしいわー! おかわりあるから仰ってね」

「ありがとうございますー」

「あ、きみね。お酒飲めるなら、出してくるけど」

「わあ、宜しいんですか?」

「うん。僕達みんな下戸でね、手分けしないと空けられないの」

「じゃあ、お言葉に甘えて」



「……なんでそんなに馴染んでるんですか……!?」



 よりにも寄って、外見も中身も一番胡散臭い人物が、最も我が家に溶け込んでいた。

 解せない。髪の毛とか長すぎるし、水色だし。我々のように真っ黒なのは、髪ではなく性格の方だ。


「あ、調度良かった美雨ちゃん。お酒とお猪口持ってきてくれないかな?」

「持ってきたら、早く食べなさいね。お蕎麦伸びちゃうわよ」

「美雨さん、これ長寿を願って食べるお料理なんですね。僕、200歳くらいまで生きちゃったらどうしましょう」

「やだ、水読さんったらー」

「面白い人だねぇー」

 

 どの辺が。

 兄達も普通にテレビを見ながら寛いでいる。

 そこはツッコめよ!! と視線を送ったら「もう慣れた」だって。何に?

 薄ら寒く思いながら、私は食器棚から人数分のお猪口を出す。無論、自分の分は入れてない。こんな状況でアルコール飲むの怖い。

 ……てかこれ、年明けたら終わるよね? ずっと居ないよね?




後日談:


「え? すっごく良い人じゃない」

「そうだよ、話しやすいし」

「(遺伝子的に騙されやすいのか……)」




 ◇ ◇ ◇


・お粗末さまでした


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