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1話目

ノリと勢いでドーン

一時創作初めてです。不定期更新ですが、がんばっていこうかなと思います。

 自分は世間一般で言う『普通』とは少しばかりズレた人間であることは自覚している。


 俺は、20歳で会社を興し、日本でもその分野では名前が知られるほどの会社まで成長させることに成功した父 (つよし)と、その剛と高校生の頃から付き合っていた母 里美(さとみ)の子、東雲(しののめ)家の長男 (つむぐ)としてこの世に生を享けた。


 小さな頃からあまり人と関わろうとはせず、動物や昆虫を見つけては、一日中それらと遊んでいた。


 友達なんてものも作ろうとも思わず、一人でいることに何の疑問もなく、周りの子供たちがみんなで集まって遊んでいた時も、俺は動物や昆虫がいそうな場所に足を向け、お目当ての物が見つかれば、それを触ったり観察したりして過ごしていた。


 子供ながらの好奇心等が、人や行事、物に向くことがなく、その興味の矛先はすべて人以外の生き物へと向かっていた。


 きっかけは子供の頃大好きだったテレビの影響だと思う。

俺は野生の動物や昆虫、鳥類、果ては水中に潜む生物たちを紹介するテレビが大好きで、毎週毎週そのテレビの日が来るのを楽しみに待っていた。


 そのテレビでワニの話をすれば、家の風呂場でワニを飼えないかと本気で悩み、クジラの話が流れればなんとしてでも一緒に泳いでみたいと駄々をこね、親を困らせていたものだ。

 

 子供の頃、たまたまテレビで見たキングコブラを自在に操る外国人を見て、それに憧れたことがある人間は少なくないのではないのだろうか。


 ライオンの子供とじゃれあう人を見て、自分も一緒に遊んでみたいと必死になって願った人間だって少なからずいるはずだ。


 ただ、普通の人々は、普通に生きて成長していく上で自然とそういった願望は小さくなっていく。


 子供の頃は平気で触れた虫たちがやがて気持ち悪くて触れないようになり、ライオンやワニやヘビを見ても飼いたいとは思わず、自然とただの動物園にいる観賞用の動物だと感じてしまう。


 だが俺はそうならなかった。

そうならないどころか、俺は年を重ねるにつれ、普通の人との価値観のズレが明確なものとなっていった。


 性質の悪いことに、俺は年を重ねるごとに、興味の矛先がどんどん刺激的、言い方を変えればより危険な物へと向き始め、それを手元に置き始めるのにそう時間はかからなかった。


 元々普通の子とは言えなかった俺である。

小学校、中学校と成績が良いとは言えず、そもそも学校に行く途中に、探索に出てサボることも珍しくなかった。ましてや自分から周りとの関わりを拒否するような人間だったので、他の子供たちからは半ばいないような者として扱われていた。


 最初の子供であるため、両親も最初こそ友達を作るように言ってみたり、何かスポーツでもやらせてみようとあれこれしていたが、時が経ち次男、三男と生まれ、成長するにつれ、完全に俺への興味がなくなってしまった。


 あれこれ言われても、手に生き物を這わせながら、ただ黙ってじっと両親の目を見続けるような子だった俺である。両親すら俺のことを不気味に思い、自然と、まるで当たり前であるかのように会話をすることがなくなった。


 次男や三男も、生まれてから何年かは慕ってくれてはいたが、次第に成長し、長男が少し異常なんだと気付いてからは、完全なるシカトを続けている。


 考えてみれば自分も大概だなと少し笑ってしまう。

他の子供たちがボール遊びをしている中、でかい百足を見つけては喜び、腕に乗せて百足に向かって話しかけていたり、どこから見つけてきたのか、どんな種かもわからないようなヘビを黙って自分の部屋に放し飼いにしているような子供だ。両親が不気味に思うのもしょうがないとは思う。


 当たり前の様にいない者となり、義務教育が終わると同時に当たり前の様に引きこもりになった。


 その頃には、自分の興味は2つの生き物に絞られていて、その2つの生き物は外に出たところで見つかることはないということを知っていた。だから引きこもり、その生き物を買って部屋に置き、それを眺めたり、手に乗せたりすることで幸せを感じていた。




――そして現在


 引きこもってから3年。18歳になっても俺は昔とあまり変わっていない。

少し変わったことといえば、俺は親父が汗水流して働いた金で買った豪邸には住めなくなったということくらいだろうか。


 俺は様々な生物に興味があったのが、だんだんと興味の対象が絞られていき、中学校を卒業する頃には、〈蜘蛛〉と〈蠍〉の事しか考えられなくなっていた。もはやその2種以外の興味がなくなってしまうほど惹き付けられた。

 それも有毒種にだ。更に手がつけられないことに、輸入が禁止されるレベルの、体格が何十倍も違う人間すら殺してしまえるほどの毒を持つような物までかき集めようとした。


 そんな物を家で飼いたいなんて思うような人間が数多くいるわけもなく、そもそも毒があろうが無かろうが、蜘蛛や蠍が同じ家いるなんて言葉を聞いていい顔をする人間がそう多くいるはずも無い。


 残念ながら家の人間たちからは理解を得られず、中学卒業時に自分の貯金から〈ゴライアスバードイーター〉と呼ばれる世界最大のタランチュラを購入し、嬉々として自分の部屋で飼い始めた辺りで、家族会議が行われたらしい。


 過去に色々な生物を部屋に連れ込んでは放し飼いにしていたという前例がある俺である。今までは気持ち悪いと思われるだけだったかもしれないが、その時ばかりは家族も必死だっただろう。

 

 もしもそんな物まで放し飼いにされたら?寝ていて顔が痒いと思って目を開けたら馬鹿でかい蜘蛛が乗っていたなんてことになったりでもしたら、正直普通の人からしたら発狂物である。


 そんな状況が生まれるかもしれないということから、どうしようと話し合い、結局俺は庭に作られた小さな小屋のようなものに住むことになった。


 俺を養子に出せないか、捨てることはできないか、俺に対しては無理でも気持ち悪がられているペット達を捨てれないかと色々考えたらしいが、不気味な俺に対して何かをした後の、あるかもわからない報復に怯えたらしく、それなりに広い庭の端にポツンと立てられた小屋に隔離するという結論に至ったらしい。


 まぁそんなこんなで、今は小屋の中で大量の大好きな蜘蛛や蠍のゲージに囲まれながら幸せな日々を送っていた。

 

 蜘蛛も蠍も、犬のように飼い主に簡単に懐くなんてことはない。自分が死んでしまっては愛で続けることもできないので、さすがにゲージには入れているが、咬まれたり刺されたりしても死にはしない種は平気で腕に乗っけて弄ったりするため、現在の俺の腕は古傷だらけである。


 死にはしないとはいえ、毒自体はあるので、何度か苦しい思いをしたり、そもそも牙で咬まれること自体かなり痛いので、散々な目にあったりもしたが、それも含めて幸せなので、こんな日がいつまでも続けばいいなと数あるゲージから、今日掃除する蜘蛛と蠍のゲージを取り出し、右腕と左腕に這わせながら目線を合わせ話しかける。


 「なんでこんな可愛いのに理解してくれる人が少ないんだろうな~」


 蜘蛛を見つめながら話しかける。タランチュラと呼ばれる蜘蛛は、意外と大人しい種が多く、案外腕に乗せても何もなかったりする。特に動く様子も無い蜘蛛を見て、反対の手に乗せている蠍を見る。


 「お前らの事がもっと理解できればな~。何考えてるのか教えておくれー」


 蠍のほうも特に動くことも無く、手の上で黙っている。俺の無限の愛が通じたのかどうかはわからないが、蜘蛛も蠍もそれなりの種類はに腕に乗せても大丈夫になった。


 「何で俺は人間なんだろうな~……絶対俺の前世はお前らのうちのどっちかだったと思うんだ。どう思う? お前らと同じようになれたらな~。色々分かり合えるのにな」


 答えてくれるはずも無い蜘蛛と蠍に向かって、一人で話しかける。蜘蛛も蠍も、黙って紡がいる方に顔を向けているだけである。

 そして、ゲージの掃除を始めようと、蜘蛛と蠍を下ろし、ゲージを外に持っていこうとした瞬間にそれは起きた。



――ヴォン


 「……ん?」


 何かが起動するかのような音が聞こえた。


 「パソコンか?」


 自身の住処にある数少ない文明機器に目を向けるが、特に問題はなさそうに稼動している。そもそも最初からつけているので、起動音のようなものが鳴ることはない。


 「……気のせい」


 かなと続けようとした瞬間にそれは起きた。


 「!? 何だこれ!!?」


 突如、自分の足元に血のような赤い液体で、ファンタジーなどでありそうな魔方陣のようなものが形成されていく。

 それも、自分の知らない、見たことも無い蜘蛛と蠍の2匹がものすごい速度で足元を這いずり回り、その2匹が通った道が、すぐさま血のようなものでコーティングされていくように魔方陣が出来上がっていく。


 「え? 何これ新種? すげ~始めて見た」


 紡はそんな理解不可能な状況よりも、自身が見たことが無い蜘蛛と蠍に興味を持っていたが、まもなく2匹が魔方陣らしきものを描き終え、動きを止める。


 「……いやいや、落ち着け俺。普通に考えてありえないだろこの状況。何これ」


 意味不明な状況に置かれ、完成した魔方陣のような物の真ん中で呆然としていると、突如魔方陣が光りだし、周りの景色が赤く歪んで、溶けていく。


 「…………は?」


 呆然と周りを眺めていても、元に戻るどころか歪みは加速する。


 「なん……っだこれ」


 自身の大好きな大好きな小屋にいる蜘蛛や蠍たちも、周りの景色と合わせてどんどん赤く歪んでいく。


 「ふっざけんな! おいやめろ。やめろよ!!」


 紡の愛する家族たちを助けようと、魔方陣を出ようとするが、なぜか円の終わりから出ることができない。


 「おい、これを今すぐ止めろ! 俺を出せ! ふざけんなよお前ら。同じ種族になんつーことしやがる」


 足元にいた、このわけがわからない現象を引き起こした、見たことも無い2匹を手に乗せ、怒鳴る。

 2匹はそんな紡の顔を一度だけ見つめ、同時に紡を咬み、刺した。


 「いっつ……ぁ、がぁああああああああああああああ」


 激痛なんて言葉じゃ表すことができない。どちらもやられたことある紡だが、そんなものをはるかに超すような痛みと苦痛が両腕に走る。


 「ふっざけんなぁ……うぁ……あぁああああああああああああ」


 叫び声が止まらない。まともに立つこともできず、魔方陣の中心に倒れこみ、自身の両腕を見て、更にわけがわからない状況に追い込まれる。


 「なんなんだよこれ……」


 刺され、咬まれたところを見ると、そこには7cm程の蜘蛛と蠍の刺青のような物が出来上がっており、その出来上がった黒い蜘蛛と蠍の刺青が、自身の体に向かって腕を這って動き始めている。


 「なっ……んだこれ……わけわか……くっそ」


 半狂乱で、涙を堪えて服を脱ぎ捨てる。蜘蛛と蠍の刺青が這っている場所から激痛が走るが、もう頭はパニック状態でそれどころじゃない。

 少なくても、刺青が動くことや、魔方陣が光って周りの景色を歪めるなんてことは、紡が持っている数少ない常識の中ではありえないことである。


 「いてぇよ……死ぬのか? ……なんなんだよこれぇ」


 意識が朦朧とする。生きて友達を愛でていたい。他なんてどうでも良い。だが、それだけは譲れない。そんな願いを他所に、蜘蛛と蠍の刺青が紡の心臓に到達する。


 「ぅあ……もっと色々なやつと……触れ合ってみたかったな」


 心臓に到達した2匹の刺青が、混ざり合い、胸の心臓のある部分に赤い刻印のようなものを刻む。最後まで状況の理解できないまま、紡は意識を落とした。




━━━━━


 


――カサカサ


 何かが動く音が聞こえる。


――カサカサカサ


 どうやら複数いるらしい。四方から音が聞こえる。


――カサカサカサカサ


 目を覚ます。ぼーっとする頭を無理やり覚醒させる。


 「そうだ……俺はわけわからない状況になって……咬まれて、刺されて……」


 胸を見てみると、謎の刻印のような刺青が、鈍い赤の輝きを放っている。


 「生きてる……痛くもないし、なんだったんだろこれ。病院でも行ったほうがいいのかな? まぁいいや、とりあえずゲージを掃除……何これ?」


 周りを見渡して、先程までの異常現象がまだ終わっていないことを知る。


 「……まじかよ」


 現在自分がいる場所が、周りを8本の台座に囲まれた、少し小高い場所で、先程見た魔法陣のような物の上であることも、もちろん驚くべきことだ。少なくても俺はこんな場所で倒れた記憶は無いからだ。


 その8本の台座の上で、人間だと思われる者たちが死んでいる(・・・・・)ということも、俺を十分に驚かせる。何人かは、宙で逆さに吊るされながら死んでいる。

 

 少し見て死んでいるとわかるほど、完全に死んでいる。だってそうだろう。誰が楽しくて、生きながらにして蜘蛛の巣に絡めとられ、口の中や、普通の人間だと体に穴が開いていない場所から大小、色取り取りの蜘蛛や蠍を出入りさせると言うのか。

 

 当然、ピクリとも動かない。


 だがそれよりも俺を驚かせるのが、俺のいる場所から見える景色が、少なくとも俺の中の常識では絶対にありえない光景だからだ。


 「……すげぇ」


 おそらく、それなりに広い洞窟なのであろうが、視界をどこに動かしても、蜘蛛と蠍しか写らない。上を見ても下を見ても左を見ても右も見ても、もういっちょ上を見ても、目に映るのは大小、色取り取りの蜘蛛と蠍。


 一体何万匹いればこうなるのか。もしかしたら、億になるのかもしれない。まるで、穏やかな海面のように、色取り取りの波が蠢いている。


 そして何より俺を驚かせるのが、大小と一括りにしたが、大が物凄い。物凄いなんて言葉じゃ表してはいけない。どんなに小さく見積もっても4mはあるだろう。

 

 自分よりはるかに大きい蜘蛛や蠍が洞窟を這っている。波の中にいても、壁に張り付いていても、やたらと目に付く。


 「……いや、すげー感動するけどさ、殺すならなるべく楽に殺して欲しいな」


 もうわけがわからない状況ながら、今後の自分のことを思い浮かべ、すぐそこにある死体に目を向ける。まぁ、もう間もなく自分もああなるんだろうなと思いながら、随分とのんびりしたように蠢く波に語りかける。


 そして、蠢いていた蜘蛛や蠍が一斉に紡に向かい始める。それはさながら津波のごとく、紡を飲み込むように押し寄せる。


 「あのでっかいのとは触れ合ってみたかったな~」


 それを目の当たりに、両手を広げながら、全てを受け入れるように呟く。波は止まらず、まるで吸い込まれるように、紡の()へと流れ込む。


 「……え?」


 自身の影に、大量の蜘蛛や蠍が吸い込まれていくのを、呆然と眺め続ける。気付けば何匹いたのかわからない群れは全て消え、残ったのは散々な状態の死体と、まったく状況が理解できない紡だけとなってしまった。


 「……え?これ誰か説明してくれる人とかいねーの?」


 紡の呟きは、誰もいない洞窟に寂しく消えていく。


 


 

 


  


 


 

 


 

 



 




 


 


 


 

 

 

 


 

 

 

 

 

導入部分ってなんか一番難しい気がしました。

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