表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
7/11

第7章

第七章

 1


 男は環状八号線を横切り、南蒲田の寂れた商店街に入った。

 途中にある惣菜屋に寄って、今日の夕飯用のコロッケとハムサラダ、それと明日の弁当のおかずにするシャケの切り身と竹輪を買い求めた。

「まいど、合計で四百六十円ね」

 店のおやじに小銭を払い、また疲れた足どりで歩き始めた。

 もう辺りはすっかり暗くなっている。

 つなぎの上にジャンバーを羽織ってはいるがやはり寒い。油で爪の中まで汚れた手を擦り合わせた。

 このところの不況で出勤は週三回に削られていた。更に寒さが身にしみる。

 商店街を二百メートルほど歩いたあと、右折をして路地に入った。

 その路地をしばらく歩くと小さな古いアパートがある。二階建てで八部屋あるが、埋まっているのは二階の二部屋だけだ。

男は錆びついた階段を上り、一番奥の部屋に入った。

 木製のドアが不気味な音を立てた。

 部屋は四畳半にトイレと台所がついた質素なもので、風呂などはない。

 電気ストーブをつけて、テレビのスイッチを入れた。

 部屋はわずかだが暖かさを取り戻した。

 男は台所の下から日本酒の一升瓶を取り出し、卓袱台で湯呑に注いだ。惣菜はプラスチック容器のまま卓袱台に並べた。

「松本の事件か・・・・・やっぱりあいつやってしまったのか」

 男はテレビのニュースを見ながら呟いて、酒を飲みほした。

 三杯目を飲み終えたころ、アパートの前に車が止まった。安普請のせいで外の音がまる聞こえだ。

 しばらくしてドアを叩く音がした。

 男はドアを開けて客の男をすばやく招き入れた。

「誰にもつけられていないか?」

「大丈夫」客の男はわずかに笑った。

 二人は卓袱台を挟んで向き合った。そして極端に声を潜めた。

「まだこんな物食べてんですか?この間の金で少しは贅沢したらいいのに」

「俺は金で動いたんじゃない。いいんだこれで」

「それで、例の松本の事件は二つともお前の仕業だな」

「仕業はないでしょう。ここで説明してる時間はないんですけど・・・・・少し邪魔が入りましたがとりあえず終わりました。これで完璧です」

「俺はお前がそこまでするとは思ってなかった」

「すべての口を塞いだんですよ。仕方がなかった。先輩だってこうなることを望んだでしょう」

 男は口を真一文字に結んでしばらく考えた。

「もう終わったことですよ。とにかく隠し通すことです」

「お前も変わったな、昔はこんなじゃなかったのに」

「あの子のためにはやるしかなかったでしょう。先輩だってこれで安心ですよ」

「安心できても、一生怯えて過ごさなければならないぞ」

「もうお互い後悔するのはやめましょう。特に先輩は直接手を下した訳でもないのですから」

「これで本当にあの子は安泰だな?」

 男は煙草の煙を吐き出しながらフィルターを強く噛んだ。

「もちろんです」

 客の男は深く頷いた。

「これ置いていきますから。でも、これでもう最後です」

 客の男は厚みのある茶色い封筒を、二つ重ねて卓袱台に置いた。

「もうこんな物いらないよ。俺は金目当てじゃないんだから。あの子の幸せのためだけに・・・・・・そう、あの子のためだけに協力したんだから」

 男は鯖の空き缶で煙草を潰した。

「これは僕が用意した物じゃないのですから、遠慮なく収めてください。あの人の気持ちですよ」

 そう言って、客の男は部屋をあとにした。

 男は、警察の捜査はどうなっているのか、訊こうと思ったが・・・・・あとはひたすらに、身を隠していればいい。余計なことは訊かなかった。

 客の男が階段を下りる靴音が、闇の中にやけに響き渡った。


 2


 一月五日午後、竜也と聡美は宮益坂を青山方面に向かって歩いていた。二人は共に正月休みを六日まで取っており、まだ休みの最中だ。しかし昨夜一緒に東京に戻ったところを柳田に呼び出されたのだった。

 宮益坂の途中から右に折れると、近代的な作りの背の高いビルが見えてきた。柳田が勤務する渋谷西署だ。


「すみませんねぇ。まだ正月だというのにわざわざお越しいただきまして」

 松本で柳田から、東京に戻ったら一度署に顔を出してくれ、と言われていた。

「構いません。今年の正月はないものだと思ってますから」

 粗末な作りの打ち合わせ室は、少し寒いような気がした。

「今日はパークシティーのメンバーの方が、そのぅ・・・・・大晦日から元旦までの間何をなさっていたのか、その辺を少しお伺いしたいと思いましてね」

「その日のアリバイということですか?」

 聡美は興味津々の顔で身を乗り出した。

「一応全員の方からその日の行動についてお訊きしたのですが・・・・・お二人の目から見て、それがどういうふうに見えるかと思いましてね」

「いくら同級生でも、他人の行動についてはちょっと・・・・・分かりかねます」

「いえ、感想で結構です」

「それなら、何とかなります。ねぇ竜也」

 よけいなことを言うな、と思ったが、聡美は俄然乗り気だった。

「まず、木戸さんは明らかに除かれます」

 柳田はハイライトを軽く銜えた。

「それじゃぁ、加奈子と坂井だって外していいんじゃないですか」

 聡美が分かったような言葉を吐いた。

「それは違うよ。聡美、よく考えてごらん。加奈子と坂井の死亡推定時刻はほぼ同じ午前四時から五時半の間。だからといって同じ犯人が二人を殺したとは限らないよ」

 竜也は軽率な聡美を制した。

 聡美は課長昇格をめざした時の棘々しさがなくなった代わりに、物事を洞察する鋭さがすっかり影を潜めてしまっていた。

「さすが永島さん。その通りです。坂井さんと池上さんがそのどちらかを殺すことだって考えられます。木戸さん以外の方はみんな容疑者の可能性があります」

 柳田は刺すような目を竜也に向けた。

 聡美は一瞬からだを震わせた。

「まず坂井仁志さんですけど、大晦日の午後七時ころ四谷の官舎を車で出ています。隣の住人が出かけるところを見ていたそうです。松本では坂井さんの実家の近所に住む男性が、夜中の十二時ころにその車が車庫にあったと証言しました。ということは東京から真っ直ぐ松本に帰ったものと思われます。そして実家で少し寝たあと四時ころに出かけたそうです。母親の証言ですが、まず間違いないでしょう。その状況から考えるに、明け方に女鳥羽川に行ったのだと思われます。池上さんを殺害したかどうかは別にして、会ったことは間違いないでしょうね」

 竜也は少し顔を俯きかげんにして腕を組んだ。

「でも、加奈子の子どもの件で、二人はかなり揉めてたみたいだから、坂井が加奈子を殺したんじゃないんですか?」

「今のところまだそこまでは・・・・・」

 柳田はハイライトを深く吸い込んだあと、でこぼこになったアルマイトの灰皿でもみ消した。

「改めてお訊ききしたいのですが、池上さんは殺意を抱くほど坂井さんに対する対応が大変だったのでしょうか?」

「あのクラス会が終わってからも、宅配便は度々届いたそうです。その中味はエスカレートして、クリスマスの日には、『ローストチキン用の生の鶏』『潰れたクリスマスケーキ』『女性の陰部を写した写真を貼り付けたクリスマスカード』それらが送られてきたそうです。いくら何でも頭がおかしくなりますよ。殺意が生まれて当然ですよ。だからカプセルを使って坂井を・・・・・」

 竜也の話に柳田は顔を顰めて唇を噛んだ。

「それは酷い。そこまでやりましたか。死人に口なしですから詳しいことが訊けずに困っていました。ありがとうございます」

「ただ坂井も最終的には、クリスマスの前に電話で加奈子を相当脅したそうです。殺人までほのめかしたようです。そうすると今回の件は、坂井が青酸カリを仕組まれたことと、子どもに会わせてもらえないことの腹いせに加奈子をやったんでしょうかね、柳田さん」

「まだ何とも言えませんね」

 柳田は大きなため息を吐いた。

「次は池上加奈子さんのことですが、彼女のアリバイはお二人がご存知の通りです。確かに坂井さんに殺意を持っておられたことは事実ですが、司法解剖の結果、坂井さん殺しは男性の犯行の線が強くなりました。心臓を細い鑿のような物で一突きされていました。刺し傷は心臓の奥深くまで達していましてね、とても女性の力では無理じゃないかと・・・・・それと刺した位置といい深さといい、こう言っては何ですが、それは見事なものでした。ですから坂井さんを刺したのは男性だと思います。池上さんは坂井さん殺しの犯人ではありませんね」

「と、いうことは」

 聡美が横から口を挟んだ。

「犯人の男が、池上さんを殺害して更に坂井さんを殺害したか、坂井さんが池上さんを殺害して、その後坂井さんが別の男に殺害されたか、そのどちらかだと思います」

 柳田はゆっくりとハイライトをふかした。

「私は足跡を見る限りでは、後者だと思います。土手に残っていた足跡は三つ、そして殺害現場である河川敷には二つ、更に公衆トイレには三つです。犯人の男は土手から、河川敷の方で坂井さんが池上さんを殺害するところを目撃、もしくは確認した。そのあと公衆トイレに寄った坂井さんを殺害した。こう推理してみたのですが、どうでしょう。ただ公衆トイレにあった三つ目の足跡がどうも納得いかないのです。二人で坂井さんを殺したことも考えられるのですが・・・・・」

「そうなると、加奈子の事件を目撃した男は誰ですか?」

 聡美が目を丸くして、また興味津々な素振りを見せた。

「それが分かれば苦労はしませんよ」

 柳田は軽く笑った。

「ただ、他にもパークシティーの夜いらっしゃったメンバーの方にはあたっています。橘健一さん、川瀬良二さん。そして女性の羽山玲子さん、谷村由香里さん。殺害時刻が早朝だということもあって、アリバイのほうがどうも・・・・・」

 柳田は右手の指を折りながら、鋭い眼差しを二人に向けた。

「でも、私たち二人も容疑者ですよね」

 聡美は不謹慎にも楽しそうにえくぼを見せた。

 竜也はわざとらしく咳払いをした。

「まぁ、とりあえずそういうことにしておきましょう」

 柳田は珍しく白い歯を見せた。

「その他の方ですが、橘さんは、二十九日から二泊三日で沖縄旅行に行かれていたそうです。ここだけの話ですが、女性同伴だったようですね。まぁどちらにしても、三十一日には那覇から福岡空港経由で松本に直接帰省されています。ただその日は信州まつもと空港に午後七時ころに到着されたのですが、実家に帰られたのが一日の午前八時ころのようです。その日は市内のホテルに泊まった、と言われるので、ホテルに確認したところ間違いありませんでした。ただなぜ、ホテルとは目と鼻の先にある実家に帰らずにホテルに泊まられたのか・・・・・それをお話しいただけません。もちろん参考人としての事情聴取なので、こちらとしてはそれ以上詳しいことを根掘り葉掘り訊けないのが現状でして・・・・・」

「へぇ―そうですか。健一も真面目なようで結構やるじゃない」

 聡美がまたよけいなことを口走る。

「聡美、沖縄でのことは関係ないよ。問題は大晦日に市内で宿泊したことだよ」

 聡美はペロッと舌を出した。

「確かにそうですが、何かの手掛かりになるかもしれません。同伴の女性におこころ当たりはありませんか?」

「そのホテルに問い合わせればいいんじゃないですか?」

「もちろんすぐに問い合わせました。それが・・・・・そのホテルは名護にあるんですが、コテージ形式になっていましてね。チェックインも、チェックアウトも橘さんが一人でされたようなんです。敷地はディズニーランドよりも広いそうで、敷地内の移動はカートを使うということです。当然宿泊中はフロントに顔を出す必要もない訳です。よってホテルの人間は誰もその女性の顔を見ていません。宿泊者名簿も代表者だけが書くようになっていましてね。極端にプライバシーを大事にするホテルのようですよ。ゴルフもされているようですが、セルフでしてね。その上女性はサングラスを掛けておられたようで、従業員の記憶も曖昧です」

 柳田は、いくぶん羨ましそうな顔をしながら言った。

「健一は仲間の間では結構有名人だけど、浮いた噂なんかなかったわ」

「そうですか。警察もそうですが、官僚は表向きは真面目に見えますからね。裏は分かりませんが・・・・・」

 柳田は嘲笑するかのように、唇の右端を上げた。

「お疲れでしょうね。コーヒーでも取りましょう」

「すみません。できれば私は・・・・・カフェラテをお願いします」

「了解しました」

 柳田も正月返上で疲れているのだろう、親指で眉間を何度も押さえている。

 じきにコーヒーが運ばれてきた。柳田は一口啜ってまた話を続けた。

「それから、もう一人の男性の川瀬良二さんですが。川瀬さんは元旦の早朝から白馬村のスキー場にいらしたそうです。その日の午前三時半ころに白馬村の『白馬グレースホテル』にチェックインされて、ひと滑りしたあと、また六時ころにホテルに戻られたそうですよ。フロントにいたオーナーが証言しています。大晦日から元旦にかけては、スキー場も稼ぎ時で、オールナイト営業をしていたみたいですね。東京からは車で行かれたようで、その車もずっと駐車場に置いてあったということです。私などには理解できませんが、スキーが好きな方はそんなにまでして滑られるんですね」

「彼はスキーが趣味ですからね。それとやはり医者はストレスが溜まるんでしょうね」

 竜也はさり気なく言った。

「しかしその日は、川瀬さんの奥さんとお嬢さんは、暖かい鹿児島に温泉旅行ですよ。私は家族がいませんのでよく分かりませんが、家族とは別行動で独りでスキーですよ―。よほどスキーがお好きなようですね」

 柳田は上唇をほんの少し舐めた。

「良二は子どもさんも大きいから、家族みんなが好きなことやってるんじゃないですか。私が結婚してれば、ぜったい家族と一緒に過ごすんだけどな」

 聡美は頬を少し上気させた。

「ところで女性のメンバーの方ですが・・・・・羽山玲子さんはお姉さんの嫁ぎ先である甲府に車でお子さんを送り届けて、そのあと独りで松本に帰って来られたそうです。二十九日のことです。そのあとは昨年お母様が亡くなられて空き家になった実家で、遺品の整理をされていたそうです。ですからアリバイはありません。特にどなたとも会われていないようです」

 柳田は軽く首を傾げた。

「玲子も離婚とか、お母さんが亡くなったりして、疲れていたんだと思うわ。独りになりたかったんでしょうね」

「でも子どもさんがいらっしゃるのに、独りで正月を過ごされるのも何だか変ですよね。私なんかはもう独りに慣れていますけどね」

 柳田は聡美の意見に納得がいかないようだ。

 竜也はストーリーを整理しているのか、ブツブツと口を微かに動かした。

「最後になりましたが、残る谷村由香里さんのことです・・・・・この方もご主人と子どもさんは、ご主人の実家がある福島県の会津に帰省されていましてね。谷村さんは二十九日に独りで松本に戻って来られました。

 ずっと実家におられたようですが、元旦の午前一時ころから、初詣に行かれたようで、実家に帰ってこられたのはその日の午前八時ころだったそうです。ご両親が証言しておられます」

 柳田は考えを巡らせているのか、顎を触りながら軽いため息を吐いた。

「じゃぁ、あの夜パークシティーにいたメンバーは、全員松本に帰省してたんですね」

 聡美は両手で顔を挟んで口元を歪めた。

「そうではありません。川瀬良二さんだけは白馬のスキー場に滞在されていましたから、残りのメンバー全員が正月に松本にいらしたことになります」

「みんな故郷『松本』を愛しているんだよ。俺なんか久しぶりに松本に帰って来たっていうのにな」

 竜也は今日初めての煙草に火をつけた。

「いいえ、全員永島さんと同じですよ。久しぶりに帰省されています。中には六年ぶりという方もいらっしゃいます。それも・・・・・今回は偶然かもしれませんが、みなさん独りで帰ってきておられます」

「そう言えばそうですね」

 竜也は唇を丸めて煙草の煙を吐き出した。

「何か妙に引っかかるのです。三つの殺人事件は、単純な池上さんと坂井さんの確執が発端ではないような気がします。もっと根底に得体のしれない何かがあるような・・・・・。過去の忌まわしい何かがね」

 柳田はこころのもやもやを吹っ切るように、ハイライトの煙を天井に向けて強く吹き上げた。

「それじゃぁ柳田さんは、犯人はあの中の一人だと言われるんですか?みんな高校の時は仲がよかったんですよ」

 聡美は辛そうな顔で柳田を見上げた。

「あれから二十五年、変わらない人間なんていないよ。聡美が未だにそう思っているとしたら、それはただの幻影かもしれないよ」

 竜也は聡美を慰めるかのように言った。

柳田は目を閉じて深く頷いた。


 3


「大晦日のこんな時間だっていうのに、少し混み始めましたよ」

「どの辺りだ?」

「談合坂に差し掛かるところです」

「それを抜けたら大丈夫だよ」

 後部座席の男は黒いキャップを深く被り、シートに身を横たえている。

 メーターパネルで光るデジタル時計は、午後十時を表示していた。

「すみませんね。不自由な姿勢を取らせて」

「仕方ないな。Tシステムならまだしも、Nシステムにでも撮られたら、それこそやっかいだからな」

「高速を下りたら少し楽にしてくださいよ」

「でもICまでは、まだかなり掛るな」

「そうですね。スピードも出せませんしね。とにかく慎重に運転しますよ」

 運転手の男は優しい声を出したが、顔は強張り目は血走っていた。昨日は一睡もしていないのか、何度も瞬きを繰り返す。

「でもこの雪じゃ、ホテルから例の場所までは二十分以上は掛るな」

 後部座席の男は緊張のせいか、少しくぐもった声を出した。

「この車は四駆ですし、今じゃ道路も整備されています。そこまで

はかからないと思いますよ。十分程度でしょうか」

 運転手の男も嗄れたような声で答えた。

 しばらくすると、須玉ICの標識が見えてきた。

「あと五十キロで岡谷JCTですね」

「そうか、とりあえず順調だな。でも果して順調なのがいいことな

のか・・・・・」

「もうやめてください。計画は既にスタートしてるんですよ。すべ

て順調に進んでるんですから」

 運転手の男は苛立ちと緊張で何度も唇を舐めた。

「分かったよ。そう苛立つな。それよりあいつは、本当に例の場所

に来れるのか?」

「大丈夫ですよ。あいつは二十九日には戻ってきています。準備は

万全のはずですよ。約束の時間には必ず待機しています。携帯は足

がつきますから連絡は取っていませんが、まず大丈夫です」

「そうか、しかしあいつも大したもんだよな。あんな体なのに・・・・・

途轍もないことをやるもんだ」

「おっしゃる通りですよ。あいつがいなかったらこの計画も絵に描

いた餅ですからね」

 降り続く粉雪は、フロントガラスに纏わりつく度に、ワイパーに

弾かれて消えていった。

 しばらくすると岡谷JCTが見えてきた。車は滑るように長野自

動車道に進入した。


いよいよ山場です。ありがたい読者のかた、よろしくお願いいたします。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ