無題
迅速に、足音を立てず。
木々が生い茂る森の中を、闇雲に、ひたすら走る。
耳をすましても、静まり返った森には、自分の息づかいしか聞こえない。
空には満月が見えていた。
しかし、分厚い雲が月の輪郭をぼやかしているためか、辺りは漆黒の闇に包まれている。
体にまとわりつく闇に、身動きがとれない。諦めよう。怪我をした足は、もう、動かない。既に血は固まっているものの、止血せず走り続けた結果、血を流し過ぎた。
立ち止まり、木の幹に寄り掛かる。
何時間も走っているが、一向に着かない。
このまま走っていても、着くかどうかさえ分からない。それなら、早々に諦めようか。痛みだけならまだしも、絶え間なく襲ってくる眠気に、瞼を閉じる。
弾に何か塗っていたのか‥
躊躇せず俺に向かって発砲した男は、嬉しそうに笑っていた。
そして、俺が倒れたのを見て、興味を無くしたように他の的を探していた。
ぎりっと、無意識に奥歯を噛み締める。
このまま眠ってしまおう。そうすれば、楽になれるかもしれない。
ずるずるとしゃがみ込み、木に体重をかける。投げ出すように伸ばした左足は、既に感覚がなくなっている。
走りつづけたためか、空気がうまく吸い込めない。沢山吸い込もうとすればするほど、目眩にもにた感覚が襲い、空気を求めて空を仰ぐ。
不意に、遠くから声が聞こえてきた。それと同時に銃声が聞こえる。
無意識に全身に力がこもり、立ち上がっていた。思わず苦笑をもらす。
いざ心を決めても、所詮は死にたくないんだ。
ここにいた込もうとすればするほど、目眩にもにた感覚が襲い、空気を求めて空を仰ぐ。
不意に、遠くから声が聞こえてきた。それと同時に銃声が聞こえる。
無意識に全身に力がこもり、立ち上がっていた。思わず苦笑をもらす。
いざ心を決めても、所詮は死にたくないんだ。
ここにいたら確実に捕まる。どうせ捕まるのなら、最後まで足掻いてやる。
簡単になんか捕まってやらない。
深く息を吸い込む。澄んだ空気を肺に流し込み、目の前の闇を見据えた。