近い天井
朝起きると金魚鉢の下が濡れていた。
不思議に思いながら周囲の水を拭き取り、金魚鉢の底を拭くために静かに持ち上げた。
すると、金魚鉢の水が大量に溢れた。
「えっ!?」
よく見れば金魚鉢の水は口切りいっぱいに揺れている。そんなに水を入れた覚えはない。
私は水槽を静かに置いて、中の様子を凝視する。
背中に嫌な汗が流れた。
──金魚が明らかに、大きくなっている。
金魚鉢の体積の半分以上が金魚。
その黒い瞳に、私自身の顔が歪んで映っていた。
私は後ずさりしながら理解した。
金魚鉢の水は、金魚の膨張によって溢れたのだ。
バサバサ、バサッ。
背後に響く羽音。私は悪い予感を悟りながらも、
ゆっくりと振り返った。
キィと鳥かごが軋む。
私は立ち尽くした。
鳥かごの柵は膨れ上がり、インコは狭苦しそうに羽をばたつかせている。
大きなインコの羽は部屋を舞っていた。
──生き物が巨大化している。
怖くなり、外に出たくなった。
外の様子を見たい。
真っ暗に締め切ったカーテンに手をかける。
しかし、震える手はそれを拒み続ける。
長年蓄積した外界への恐怖は、
そう簡単に拭えるものではなかった。
ドアに視線を向ける。
そこはどんよりと暗く、到底近づけるものではない。
「うっ……」
急いで視線を落とす。
目眩と吐き気。
その両方が急激に襲いかかる。
心臓の鼓動が早く、痛い。
私はゆっくりとベッドに戻った。
翌朝。
目を覚ますと、金魚もインコも縮んで見えた。
「やっぱり夢だった」
安心してベッドから立ち上がる。
ゾリッ。
急に頭頂部が熱を持ったように痛い。
頭を擦ろうと手を上げた。
ドン。
手は何かにぶつかった。
見上げた。天井が、異様に近かった。




