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第一章:崩壊の音
主人公・水瀬は、真面目で優秀と評される若手の社会人だった。配属されたのは多忙を極める部署。自分の能力を超えた業務量に押し潰されそうになりながらも、「期待に応えなければ」「やり切らねば」という義務感と焦燥の中で、自分を削り続けていた。
だがある日、糸がぷつりと切れた。
混濁する意識。母の制止を振り切り、深夜の街を裸足で歩き続け、警察に保護された。診断は「急性一過性精神障害」。水瀬は、静かに、世界から退場することになった。
何もできない日々の中、幻覚や幻聴が過ぎ去っていくのを感じながら、彼は問いを抱えはじめる。
「この世界で、“正常”って、誰が決めるんだ?」