目覚めましたけど、どうか夢と言って!
『…………』
……何かが聞こえた気がした。
私は目を閉じていた。閉じたまま、ゲームが終了して、すべてが無に帰るのをただ待っていたはずだった。
けれど——
「……起きて、天使様」
誰かの声がした。
——おかしい。これは、ログアウト後のはず。もうサーバーは止まっている。
なのに、私は意識を保っている。
視界がゆっくりと、まばゆい光に包まれていく。
私は、ゆっくりと目を開けた。
目の前にいたのは——
自分が作ったNPCの一人、「セラフィーナ」だった。
天界の巫女として設定した、美しい白金の髪を持つ少女。感情が薄いが、絶対的に主人公(つまり私)に忠誠を誓う設定だった。
「……セラフィーナ? なんで、君が……」
「天使様、世界はまだ終わっていません」
セラフィーナは静かに、でも確信を持ってそう言った。
「この世界は、あなたの意志によって保存されました」
「保存? え、でもサービス終了って……」
「ええ、ユグドラシルという**“ゲーム”**は確かに終了しました。しかし、あなたが創り上げたこの“天空の島”は、システムの外に保存され、別の存在として再構成されたのです」
私は言葉を失った。
「どうして……そんなことが……」
「あなたの想いが強かったからです。創造主として、あなたはこの世界を“作品”として残した。意思あるものとして、私たちはそれを感じました」
「……嘘みたい……」
「いえ、これは現実です。そして……」
セラフィーナが手を伸ばして、私を棺からゆっくり起こす。
「今、あなたにこの世界を“本当の意味で生きる”資格が与えられました」
「……“生きる”?」
そのとき、空が音を立てて裂け、まばゆい虹の柱が天から降り注いだ。
天空の島が静かに震え、庭のガラスの大地に新たな光が差し込む。
その光の中で、私は感じた。
これはもう、ゲームじゃない。
——新しい物語が、始まる。
って、本当にこれって夢じゃないの!?