我が名は孤高の天使
ユグドラシルというMMORPGゲームで、私は「天使」という職業をしていた。
大抵の人はチームを組んで冒険や戦闘を楽しんでいたが、
陰キャの私は、ただ一人、天空に島を作り、自分好みのNPCたちを配置して、のんびりと過ごしていた。
その天空の島には、大きな城がひとつ建っており、中央には広々としたガラス張りの庭園がある。
私はその庭園で、一人静かに眠りにつこうとしていた。
理由は——
このユグドラシルというゲームが、間もなくサービス終了を迎えるからだ。
これまで頑張って作り込んだ家や、こだわり抜いたキャラメイキングがすべて無に帰すと思うと、私はただただ、悲しかった。
最後に、作成したNPCたち一人ひとりに別れの挨拶をした。
この美しい庭園も、もうすぐ消えてしまうのだ。
私は、キャラクターになりきって最後の言葉を告げた。
「この世界も終わる……全ては大いなる意志、我が仕える神のご意思によるものだ。
皆……今までありがとう。楽しい時間を過ごせた。
最後は、この世界が消える瞬間を、その目に焼き付けてくれ。
まもなく世界は終焉を迎える……私は、何もできず、眠りにつく……また会える日まで……」
そう言って私は、自ら作成した“超カッコイイ、美しい棺”に身を横たえた。
庭園のガラス張りの中央に設置した、その棺は中が透けて見える仕様で、眠る私の姿すら美しく見えるようにデザインしてある。
理想を詰め込んだ天使のアバター。
背には6枚の天使の羽、頭にも小さな羽根と豪奢な光輪。
髪はホワイトプラチナで、光に反射すると虹色のように輝く。
瞳は血のように赤く、中二病全開で他の天使とは交わらぬ孤高の存在感を演出した。
——まあ、実際に野良でずっとソロだったし、そういうバックボーンがあったほうが格好つくでしょ!
っていう、単純思考で設定しただけなんだけど……ふふふ。
私は棺に入り、そっと目を閉じた。
ログアウト処理はすでに完了していて、あとはこの世界が静かに消えていくのを待つだけ。
さぁ、もうすぐ時間だ。
すでに、世界からプレイヤーはすべて消えた……
私は目を閉じ、その瞬間をただ、静かに待った。
……
……
…
『…………』