表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

思春期ながい

自意識過剰な男に、腹が立った。遠くに住む友達の家に泊まりに行った夜のことだ。夜遅く、俺は腹が減ってしまい、いろいろあって一人で外食することになった。見慣れない街を、スマホのマップを見ながら、ワクワクして歩いていた。そんな時、事件が起きた。


スマホのマップから目を離し、前を見ると、前方に一人の女が歩いていた。俺も男だ。女が夜道に一人で歩いていて、後ろに男がいる。そのような状況になった時、女が不安を感じ、警戒することは理解しているつもりだ。俺だって、女に生まれていたら確実に警戒するだろう。


しかしここから、人々が助け合う、愛に満ちたこの社会を、ほんの少しだけ乱す者が現れたのだ。


俺がスマホ片手に道を歩いていると、コートを着た男が後ろから早歩きで俺を追い抜かし、女のところに行き、こう言ったのだ。

「後ろ気をつけてね。」

その時、俺は警戒させてしまった、怖がらせてしまったかと思い、少し焦ったり、悲しくなったりと感情がグルグルしていたが、平然とスマホを見ながら取り繕った。 そして女と道を外れ、一人道を歩いている状況になった。その時生まれたのだ。イライラの感情が。


イライラの感情が生まれる前に、まず自分を疑うことから始めた。俺はそういう性格だ。服装はどうだ?姿勢、立ち振る舞いはどうだろうか?黒のスニーカー、シンプルなグレーのズボン、暗い緑の上着。普通だ。いや、まてよ、寝癖がひどかったから被った黒い帽子。しかも、俺は髪が長い。不自然に見えたか?いやしかも今は夜だ。夜に帽子をかぶる、これは不自然にみえるか。姿勢、歩き方は普通だ、いや、歩くの俺遅いんだよな。先輩に「寒い時は早く歩くもんだろ」みたいな事言われたな。いや、まずスマホずっといじるのはおかしいか?いや、そうでもないか。


いや、待てよ。あの男はなんだ?


まず、俺の記憶から一番に飛び出してきたのは音だ。

「後ろ気をつけてね」

後ろ?夜道に気をつけて、ではない。俺個人に対して言った言葉か?それにしても、声が大きかったな。俺の後ろに歩いていた人たちにも聞こえる声量だったな。悲しいな。ワクワクしてご飯食べに行こうと歩いていたのに、女が夜道を警戒するとかじゃなくて、俺、不審者扱いされたのか?


YouTubeを見てお腹が減ったんだよな。外国人が日本食を食べて感動するやつ。カツ丼を美味しそうに食べるやつ。


いや、まてよ、後ろ気をつけてね言うのは勝手やけど、すぐ女追い抜かしてたやん、あいつ。

というか急に話しかけてくるやつの方が不審者じゃないか?いや、さすがに知人か。じゃあ一緒帰れや!危ない存在がいるんだろ?後ろに。なんだよ…


でも、靴紐結んで俺が追い抜かすのを待ってたんだよな、女の人。信用されてるのは男のほうか?なんなんだろう。もう疲れた。寒いし、お腹減ったし。とりあえず「後ろ気をつけてね」はクソだな。ファックだ。




評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ