【レンタル義妹】~欲しがられ義姉を目指す令嬢の話
あ~、退屈だわ。私は、大商会の娘ルビア、下手な貴族よりもお金を持っている。
お小遣いは分からない。試しにお屋敷を買ったが、お小遣いは尽きなかった。
ドレスも部屋10個分ギッシリあるわ。靴は100から先は数えていない。ジュエリーは一個商会分あるわね。
「ちょっと、ハンナ、何か面白い事はない?」
「え、と、ボードゲームは如何でしょうか?お相手をします」
「いいわ。貴女程度に聞いたのが悪かったわ。じゃあ、ケリー、貴女が幸せを感じる時は何?」
「え、と、お給金で弟妹にお菓子や服を買ってあげる時に幸せを感じます」
何?これは・・・私は一人娘だ。これは知らない。試して見るか。
お父様に義妹をお願いした。
なるべく貴族の血筋がいいわね。
お父様は私に甘い。どこから連れてきてくれた。
「さすがに、相続があるから、レンタルだ。1年だ。1年で離縁となる」
「お父様、有難うございます」
聞けば、義妹ギルドがあるらしい。本当に何でもあるのね。
「メアリーなの~」
「私はルビアよ。今日からお姉様と呼びなさい」
「はいなの~」
まあ、可愛い。10歳、フワフワの金髪で、アイスブルーね。貴族の血筋かしら。ピンクのヒラヒラのドレスを着ているが、アンバランスな古い熊のヌイグルミを持っている。
ドレス室を見せて驚かせる。欲しがったらあげればいいのね。
あら、驚かない。呆気に取られているのね。
「さあ、好きなドレスをあげるわ。欲しがりなさい」
プィ!
「いらないの~!」
「な、貴女は使用人よ!」
「違うの~義妹なの~!」
私にパラッと契約書を見せる。確かに、1年限定の養子縁組だ。
「なの~!義妹として扱うの~」
「分かったわ。メアリー、好きなドレスある?」
「ないの~!そもそもサイズが合わないの~」
タタタタ~
背を向けて小走りでどっかに行った。
何だか負けた気になった。
「メアリー、ドレスを作ってあげましょう。私にお願いして見なさい」
「なの~!いらないの~!それよりもオモチャが欲し~の!ミディちゃんのおうちが欲し~の」
あ、そうか、この子はヌイグルミを持っている。更に高価なヌイグルミをあげれば。
オモチャの商人を呼んだ。ヌイグルミを部屋いっぱいに並べさせた。
「さあ、その熊のヌイグルミよりも最高の職人、生地で作ったヌイグルミたちよ。
欲しがりなさい。そしたら、買ってあげる。全部でもいいのよ」
「いらないの~、ミディちゃんがいるからいいの~」
「その安くて小汚い・・」
プィ!
「お義姉様、大嫌いなの~!グスン、グスン」
ダダダダダダ~
泣いていた?何故、こんなに、私が尽くしているのに・・・
どうしたら、欲しがる。そうだ。本人に直接聞けば。
「マリー、あの子付きよね。会わせなさい」
「お嬢様、メアリー様は泣いております。少し、時間を空けてからお会いして下さい」
「はあ、私は跡取り娘のルビアよ」
「私は旦那様よりメアリー様のお世話を命じられました」
何、いつもは言うことを聞くメイドが食い下がる。気に食わないわ。
まあ、いい。飽きた。他に面白い事を探そう。
しかし、メアリーは、これ見よがしに使用人たちに欲しがりをする。
「欲し~の、カップケーキ欲し~の!下さいなの~」
「フフフ、メアリー様、もちろん、メアリー様の分を作っておりますよ。良く焼いた時間が分かりましたわね」
「なの~!匂いで分かったの~」
「あら、メアリー様、半分個して、誰かにあげるのですか?」
「ミディちゃんにあげるの~、私はミディちゃんのお母様なの~!」
「グスン、まあ、なら、もう一個あげますわ。大丈夫ですわ。少し、型が崩れたものですが・・・」
「有難うなの~」
何、この三文芝居!
「なの~!」
ガタ!
肩を掴んだ。
「ねえ。貴女、ヌイグルミはお菓子食べないでしょう?」
「違うの~!分けることが大事なの~!優しい心が大事なの~」
「貴女、欲しがりなさい。私の物を盗ってみなさい!」
「ルビア様、お放し下さい」
「いいの~!お義姉様から欲しくないの~!」
「なら、どうしたら欲しがるの!欲しがりなさい!」
そしたら、とんでもない事を言った。
曰く。
自信がないが、本当は実力のある義姉様でなければ、欲しがる気が起きない。
「あるわよ。ついてきなさい!」
久しぶりに、家庭教室が控えている教室に行った。
「お嬢様!やる気になったのですね」
「ええ、この子に実力をしめしますわ!」
・・・・・・
「まあ、何ですの!文字と数字を混ぜていますわ」
「はあ、これは・・・代数でございます」
「私は計算をしませんわ!」
「でも、貴族学園に行ったらやりますよ」
「なの~、メアリー出来るの~!」
「正解でございます」
「なの~!」
何、貴族の相手もするから、ギルドで学んだ?!
「次は、ダンスよ!」
「ヒィ、何で、男役も出来るの!」
「ワンツー、ワンツーなの~!」
「次はマナーよ!」
「まあ、メアリー様は、小鳥がついばむように可愛いですわ。ルビア様、お菓子を一度に二つ取らないで下さいませ」
「なの~!」
「ヒィ、この~」
・・・・・・・
もう、飽きた。後11ヶ月いるが、無視をしよう。
あら、ダンス室に魔道ランプの光がついているわ。使用人たちが不埒な事をしているのかしら。
男女の密会かもしれない。確認してから驚かそう。誰と誰かしら。
「ワンツー!ワンツーなの~!」
な、何、頭の上に本を載せて、ワルツを踊っている・・・
「フウ、久しぶりにダンスをしたから、半テンポおくれたの~」
鏡を見て、両手拳を顎の前において、体を左右に揺すっている。
「欲し~の!欲し~の!お義姉様欲し~の!・・・ルビア様からおねだりの型なの~・・・」
何、私からのおねだりの練習をしているの!
まあ、少し、付き合いますか。
私は静かにドアを閉め。寝室に戻った。
「ルビア様、しっかり!」
「フン、感謝のカーテシですわ!」
ポロ!
頭の上に乗せた本が落ちた。
「お嬢様、段階を踏みましょう」
「ええ、分かったわ」
「お義姉様、頑張るの~!」
メアリーは出来るくせに応援する。まあ、いい。すぐに欲しがらせて見せますわ!
一緒にお出かけもした。
「ええ、この串焼き屋邪魔だからどかせって?」
「ええ、そうよ。私はルビコン商会のルビアよ。せっかくの公園なのに景観を台無しにします。お金は払いますわ」
「ダメなの~!欲しがられ姉は、謙虚なの~!」
「まあ、いいわ。ここで営業しなさい」
・・・・・・・
☆11ヶ月後
「ルビア、どうした。何があった。貴族学園の入試、18位、上級クラスにいけるぞ。寄付金を用意したのに・・・」
「お父様、寄付金は私の為ではなく、皆様のためにしてくださいませ」
来月、貴族学園の入学式だ。
「ハンナ、ボードゲームをしましょう。持ってきて下さい」
「はい」
「メアリーも呼んできてね」
「かしこまりました」
「ケリー、弟妹の奉公先決まったかしら?」
「はい、おかげさまで、お嬢様が丁寧な紹介状を書いて頂いたおかげでございます」
「妹は一緒にメイド、弟は役人を目指すのね。書生から役人、結構いるわ」
「グスン、お嬢様・・・」
「大変でございます!メアリー様がいらっしゃいません」
「何ですってーーー」
「手紙が置いてあります」
‘’メアリーは、お姉様の心をもらったの~!欲しがり義妹の仕事終わったの~、楽しかったの~・・・・・
楽しくてすっかり忘れていたわ・・・
「お父様は!」
「はい、まだ、異国から帰っていません・・・」
・・・・・・・・
☆☆☆貴族学園
「ちょっと、私はシャルマン伯爵家のサビーネよ。平民がここでうろちょろしない」
「私は、食堂で働いています。申し訳ございません。つい妹が来たので、皆様がお使いするガーデンに・・・」
パチン!
「ヒィ、お許しを」
「お姉ちゃんは悪くない。お姉ちゃんを扇で殴らないで・・私がおねだりをして・・・」
「まあ、口答えするのね。じゃあ、妹の躾をしましょうかしら」
「サビーネ様、扇が汚れます。俺が、蹴っ飛ばします」
「まあ、紳士ね・・・ヒィ、ルビアが・・来るわ!」
「オ~ホホホホホホ、あら、サビーネ様とその婚約者かしら、いつから、ここは平民立ち入り禁止となったのかしら?
私も浅学な平民でございます。どうか、ご教授下さいませ」
「ヒィ、ガート様・・・行くわよ」
「ああ・・・家を潰される・・・」
「有難うございます。助かりました」
「フフフフ、いつも美味しい食事有難う。授業中だったらうるさい人いないわよ」
「有難うございます」
「お姉ちゃん・・・・」
「ミリー、行きましょう」
姉妹か。おねだりする妹・・・・
まあ、いいわ。
メアリーがいなくなっても欲しがられ義姉を目指す自分に気がついた。
最後までお読み頂き有難うございました。