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地球至上主義

作者: 赤城イツキ

初めまして赤城イツキです。不思議な話を書いてみたくなりました。

「私たちはいつかお星さまになるんだよ」


 そういわれ続けてから何年経ったろうか。幼いころから言われ続けて疑問などとうに無かった。そもそも疑ってなどいなかったのかもしれない。父も、母も、ひいては仲のいい近所の兄ちゃんまでだれも疑っていなかったのだ。当時20の私は今考えるとまだまだ子供だった。だけれども今は違う。鳥かごの庭園であるあの農村に赤の切符が届き半強制的に連れ出されたときから私は初めて世界を見たのだ。

 時は昭和。のちに第二次世界大戦と呼ばれる戦いへ繰り出されてから私はたくさんのものを見てきた。戦友が凶弾によって倒れる姿、西日に照らされるように燃える大地、干上がった川と魚たち、崩れ落ちる家だったもの。たくさんのものを見たが誰一人、星になどにはならなかった。そして私もその例外ではなかった。

 さらに時がたって私は今、一つの時代を超えた。すっかりと平和になった日本の明るく照らされた暗い夜空を見上げる。街の光によって隠された数多の恒星たちは肉眼では見えず、一部の明るい星だけが鈍い光を放っている。


「空の景色がここまで変わるとはねぇ」


 このセリフも何度目だろうか。昔はもっと爛々と輝いていた気がする。子供のころ、よく夜空を見上げ、あふれんばかりの星屑をみて人々とその歴史を想像していた。あの星はどんな人だったんだろう。と。あの星はいつからあそこにあるんだろうな。と。幼き頃の胸中を思い出している中、この時、私の心に強烈な違和感が芽生えた。


「違う、私は空など見ていない」


 そう。見上げているはずがないのだ。だって私はあの戦時中・・・戦友の仇をとろうと無謀にも敵陣へと突っ込んでいって・・・

「私の人生はあそこで終わっているはずなのに。」

 なのに私は知っている。平和な日本。明るく照らされる夜の街。すっかり見えなくなってしまった満点の星空。最後に見た景色は崩れる建物の景色だったはずだ。どうして?

 しばしの思案の末、私は一つの結論にたどり着く。


「そうか、そうだったのか!」


 間違っていなかった!幼き頃、言われ続けてきて疑問を持っていなかったあの言葉は間違っていなかったのだ!


「私たちはいつかお星さまになるんだよ」


 いつか聞いた懐かしい母の言葉が頭の中に響く。現実を直視しないためのやさしさだと思っていた。だが違った!本当だったのだ!


「私は地球の一部になっている」


 お星さまとは私のいるこの地球のことだったのだ。私の身体は自然に還り地球の一部となった。確かにお星さまになっている。

 私はこれからもこの星を見守り続けるだろう。私の意識がなくなる最期まで寄り添い続けてみようじゃないか。それにどうやらこの時代も終わり、新しい時代がやってくるらしい。どのような時代となるのか楽しみに見ておこう。

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― 新着の感想 ―
[良い点] タイトルに惹かれて、読ませていただきました。 主人公が幼いころに聞いた「私たちはいつかお星さまになるんだよ」という言葉が、単なる慰めや希望に過ぎないものかと思いきや、主人公が最後に辿り着い…
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