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16 レイル士官学校④

誤字報告を下さった方、ありがとうございます。


自分では確認したつもりになっていても、気付かないことが多々あるので、本当にありがたいです!


今後とも、よろしくお願いいたします。

 ――レイル士官学校にアリアが入校してから、1ヶ月が経過した。

 大体、士官学校での1日の流れは、こうであった。


 朝6時、起床を告げる音楽が外から聞こえて来るので、起きて、レイル士官学校の寮の外に、各組ごとに並ぶ。そして、人員が揃っているかどうかの朝の点呼を行う。その後、自分が割り振られている寮での掃除場所に赴き、掃除をする。1週間ごとに、掃除場所は変わった。


 掃除が終わった後は、食堂へ向かい、朝食を食べる。その後は、8時まで、自由時間である。大体、1組の入校生を見ていると、講義や訓練を受けるための準備をしているようであった。アリアは、前日に準備をしているので、その時間は、訓練場で自主練習をしている。朝の訓練場で1組の入校生を見かけることは少ないが、2組の入校生は、担当教官に怒鳴られながら、訓練を毎日していた。


 たまに、アリアが朝、自主練習をしていると、アリウスが近付いて来て、他愛もない世間話をしたりしていた。それか、2組の担当教官の手が足りないときは、2組の朝の訓練の手伝いをしていた。そのおかげか、最近、手加減というものを少し、出来るようになったとアリアは感じていた。それでも、2組の入校生が、アリアに軽く弾き飛ばされている光景は、よく見られた。


 そして、朝の8時からは、レイル士官学校の講義か訓練が始まった。訓練中に寝ることはないが、講義の場合は、どうしても寝てしまう入校生がいた。その入校生は、いつも通り、リールに教室の窓から、放り投げられていた。そして、その回収をミルがするのが、お決まりであった。


 午前中の講義か、訓練が終わると、食堂に向かい、昼食を食べる。1組の入校生は、ゆったりと昼食を食べられることが多いが、2組の入校生は、夜の訓練などの準備のために、ほとんど食事を食べる時間はなさそうであった。


 そして、13時から、午後の講義か訓練が始まる。昼食を食べた後なので、強烈な睡魔が襲ってくる。そのため、午前中よりも午後の方が、リールに放り投げられている入校生も多かった。アリアも、一回だけ放り投げられそうになったが、リールの気配を感じて、首をつかまれる前に起きたので、事なきを得た。


 17時には、レイル士官学校の講義か訓練は終了する。まだ、1ヶ月しか経っていないので、日をまたぐ訓練はなかった。そして、夕食を食堂で食べた後は、朝と同様に、アリアは訓練場で自主練習をしていた。ただし、夜の自主練習には、サラも追加されていた。大体、サラと剣の訓練をしていたため、実質的に自分の訓練が出来るのが、朝だけであった。


 相変わらず、夜も2組の入校生は、担当教官に怒鳴られながら、訓練をしていた。2組の入校生の動きを見ていると、レイル士官学校に入校した当初よりも、かなり良くなっていた。ちなみに、毎日、アリアと訓練をしているサラの動きも、相当、良くなっていた。


 そして、22時までに、自主練習と次の日の準備を終え、23時に消灯の音楽を聞きながら、寝るというのが、レイル士官学校での1日の流れであった。


 週末になると、アリアはハルド家に帰り、レリフと修行をしていた。ちなみに、サラも、週末は、ハルド家で訓練していた。自分の修行の時間が減るので、週末の訓練は断ろうかとアリアは考えたが、ルビエがまた、怒りそうなので、やめておくことにした。一応、ルビエもそこからへんの事情を考えてくれているのか、サラの相手は、ルビエが務めることが多かった。


 ルビエがいないときは、レリフが二人まとめて、相手をしていた。アリアとサラで、一気に別々の場所を攻撃しても、笑いながら、対処していた。その後は、いつも通り、アリアは。剣で弾き飛ばされ、ハルド家の訓練場の地面をゴロゴロと転がっていた。時間を置かずに、サラもアリアと同様に、剣で弾き飛ばされ、アリアの近くをゴロゴロと転がっていた。


 そんなこんなで、アリアがレイル士官学校に入校してから、1ヶ月が経過した。なんだか、最近、サラと一緒にいることが多い気がするが、気にしないことにした。






 ――アリアがレイル士官学校に入校して、1ヶ月が経過し、5月になっていた。今までは、講義が中心であったが、段々と、訓練の割合が増えてきていた。そして、初めて、レイル士官学校の外の訓練場で訓練をすることになった。それは、アスール王国の南部に位置するバース訓練場であった。


 基本的に、西部のサビール山脈と森林地帯を除いて、アスール王国は、肥沃な穀倉地帯を持つ国であるので、平原が多かった。南部のバース訓練場も、多少の森林地帯はあるが、大部分が平原であった。南部の大都市バースを経由して、バース訓練場に向かうことなった。


 まず、1組と2組の入校生は、馬車に押し込まれて、大都市バースへと向かった。大都市バースは、西部の大都市アンティークと同様に、南部の流通の大部分が通る、南部の中心都市であった。その中心には、アンティークと同様に、大きな城であるバース城がそびえ立っていた。


 王都レイルからは、バースまで、馬で2日あれば余裕を持って着ける距離であった。そのため、バース周辺の都市を経由して、レイル士官学校の入校生達は、バースへ向かった。入校生達が押し込まれた馬車は狭く、『窒息してしまいますわ!』というサラの文句を聞きながら、アリアは、我慢して馬車に乗っていた。しかも、バース周辺都市に着いたとしても、都市に入って宿で休めた訳ではなく、都市の外で天幕を張って、夜を過ごした。出される食事も、食堂で出されるものと比べて、質素であった。


 そして、バースに到着し、各自必要なものを購入した後、バース訓練場へ向かった。バース訓練場は、バースからかなり近く、すぐに到着した。やっと馬車から解放された入校生達は、2泊3日の訓練を過ごす天幕を設営すると、すぐに訓練が始まった。


 訓練内容は、担当教官の指示に従って、目標に向かって、何度も突撃を繰り返すという訓練であった。レイル士官学校所属の敵役の兵士が、その道中に配置されており、目標に向かって突撃をする前に、入校生達は、倒されてしまっていた。


 アリアも入校生達とともに、突撃をしていたが、リールがアリアの前に立ち塞がり、アリアの突撃を阻止していた。ルビエの言う通り、リールは強かった。アリアは、突撃する度に、リールに倒されてしまっていた。


 結局、日が暮れるまでに、どの入校生も目標を奪取出来なかったため、罰として、夕食を食べることが出来なかった。


「お腹が空きましたわ! アリア、何か食べるものを持っていないのですの?」


「まさか、夕食を食べれないとは思っていなかったので、バースで食料は買ってません。明日の朝は、食事が出るようですから、今日は我慢して、早く寝ましょう」


 サラと同じ天幕になったアリアがそう言った。かくいうアリアもお腹は空いていた。一日中、リールと剣で戦闘していたので、かなり疲れてもいた。


「そんなこと言っても、我慢出来ませんわ! 決めましたの! 食料を調達してきますの!」


「ここら辺の森で、食料を探すのは大変だと思いますよ。森の規模が小さ過ぎます。それに、もう夜なので、暗くて、探すこと自体、難しいと思いますよ」


「いや、森には行きませんわ! もっと近くですわ!」


「もっと近く?」


 アリアは、サラに聞き返した。サラは、不敵な笑みを浮かべていた。アリアは、少し嫌な予感がした。


「ワタクシ達は、夕食抜きになっていますけど、夕食自体はあるはずですわ! その夕食が作ってある場所に、忍び込んで、夕食を盗んで来るのですわ!」


 この人、本当にこの国の王女なのかな?と思いながら、アリアはサラの言葉を聞いた。


「そうですか。それでは、頑張って下さい。私は、もう寝ますね」


「ちょ、お待ちになって! アリアもお腹が空いているでしょう? 一緒に行きましょう!」


「嫌ですよ。教官に捕まるに決まっています」


「大丈夫ですわ! ワタクシ、王城でのかくれんぼは得意でしたわ! 今回も、隠れながら行くぐらい、どうってことありませんわ!」


「そうですか。それじゃ、頑張って下さい」


 アリアはそう言うと、布をかぶって寝ようとした。それを、サラは強引にはぎ取った。


「アリアも行きますの! ほら!」


 サラに無理やり布をはぎ取られ、その後、サラがいつまで経っても駄々をこねたので、しょうがなく、アリアはサラについていくことにした。



 



 ――サラとアリアは、何とか、夕食が作ってある場所に忍び込むことが出来た。夜ということもあり、天幕を見て回っている教官に見つからずに到着することが出来た。


「ありましたわ!」


 サラが、鍋に入っているスープを見て、小さな声でそう言った。見るからに、美味しそうだなとアリアは思った。そして、サラとアリアはスープを食器に入れ、他にも、焼いてあったパンを盗んで、自分の天幕に戻ろうとした。


 そして、夕食が作ってある場所を出ようとしたところ、サラとアリアの目の前に、人影が現れた。


「いや、中々、良い線いっていましたよ。もう少し、手早く、夕食を取っていれば、逃げられたかもしれませんね。少し時間をかけ過ぎましたね」


 そう言いながら、リールが目の前に現れた。一瞬でサラの顔に絶望が浮かんだ。対して、アリアは、無表情であった。


 それから、サラとアリアは、盗んだ夕食を没収され、教官の天幕の前で、次の日になるまでひたすら剣の素振りをすることになった。アリアは、無表情でひたすら剣を素振りしていた。対して、サラは、死にそうな顔をしながら、剣の素振りをしていた。他にも、夕食の奪取に失敗した入校生や、脱走してバースで食べ物を買おうとした入校生が、アリアとサラと同様に罰として、剣の素振りをしていた。


 そして、素振りを開始してから、4時間後。ようやく、24時を過ぎたようで、アリア達は素振りから解放され、自分の天幕に帰って行った。


「……し、死にそうですわ」


 サラはそう言うと、木製の簡易ベッドに横たわり、寝てしまった。アリアも、疲れていたので、サラと同様にすぐに、寝てしまった。






 ――バース訓練場での訓練が始まって2日目。1日目と同様に、今日も、担当教官の指示に従って、目標に向かって、突撃をする訓練であった。そして、サラとアリアの2日目の朝食は、昨日、アリア達が盗んだスープとパンであった。スープは冷め、パンは固くなっていたが、そんなことは気にせず、サラとアリアは夢中で朝食を食べた。


「今日こそは、目標に到達しますわ!」


 朝食を食べ終わった後、サラはそう言った。どうやら、復活したらしい。アリアも朝食を食べたことによって、体力が少し回復したと感じた。


 そして、2日目の訓練が始まった。入校生達は、1日目より、動きが良くなっていたが、疲労と空腹で、午後には、ヘトヘトの状態となっていた。アリアも何とか、リールを振り切って、敵役の兵士を倒そうとしたが、リールが執拗に攻撃をしてきたため、上手くいかなかった。


 結局、2日目も入校生達は誰一人として、目標に到達することは出来なかった。当然、2日目も夕食抜きであった。サラもさすがに、2日目は、もう夕食を盗みに行こうという気力もなく、天幕に戻ると、すぐに寝た。アリアも、疲れたので、すぐに寝た。






 ――バース訓練場で、訓練が始まって3日目。今日も、訓練の内容は、担当教官の指示に従って、目標に向かって、突撃をする訓練であった。そして、バース訓練場での訓練も今日が最終日であった。


「絶対に、今日こそは目標に到達しますの!!」


 天幕の中で、サラが闘志を燃やしていた。アリアも、今日こそは、目標に到達しようと、静かに闘志を燃やしていた。


「サラさん、私に作戦があります。その作戦には、サラさんが必要不可欠です。協力して下さい」


「何だか、良く分かりませんけど、私にお任せなさいですわ! それで、その作戦って、何ですの?」


「それは……」


 アリアは、サラに作戦の内容を伝えた。作戦が上手くいけば、今日こそ、目標に到達出来るとアリアは確信していた。



 そして、突撃の訓練の時間となった。銅鑼の音とともに、入校生達が、喚声を上げながら、突撃を開始した。当然、アリアの目の前には、リールがいた。アリアとリールの距離が近付き、リールの剣が振り上げられ、アリアに届こうかという、その時、アリアの後ろから、いきなり、サラが現れ、リールの剣を防いだ。


「アリア、行きなさいですわ!!」


「ありがとうございます!」


 アリアは、サラに感謝しながら、リールの一瞬の隙を突いて、敵役の兵士に近付き、凄まじい勢いで倒していった。当然、リールも、黙って見ている訳がなく、サラを剣で弾き飛ばすと、アリアの後を追った。弾き飛ばされたサラは、地面をゴロゴロと転がっていた。


 結局、サラがアリアの代わりに、リールの剣を受け止め、その一瞬で、アリアが敵役の兵士を多数倒すという作戦は成功し、1組の入校生は、人の多さで敵役の兵士を上回り、何とか、目標に到達することが出来た。


 その代わり、リールの足止めをしていたアリアは、リールの苛烈な攻撃を受け続けたため、体中がアザだらけになった。


 こうして、何とか、目標に到達した1組は、天幕を撤収して、レイル士官学校に帰る馬車に詰め込まれ、帰ることが出来た。ちなみに、2組は、目標に誰も到達出来なかったため、レイル士官学校への帰りは、馬車ではなく、歩きであった。

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