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この作品には 〔ガールズラブ要素〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

女3人学生街でブラブラする

作者: 大石次郎

「お待たせ!」


駅から出て小走りしながら手を振る。マナミは背が高いからよく目立つ。


「あ、ルイその服可愛いと思う」


「ホントに? トップス古着だけど」


「色が好き。いい匂いしそう」


大きな犬みたいに顔を近付けてきたからギョッとした。


「匂いって! ちょっ? ホントに嗅がなくていいよっっ」


「高原! 夏の高原みたいっ」


「どんな匂いよっ? ・・普通のミント系の香水だよ。ま、いいわ行こ!」


「うんっ」


駅側の通りをゆるゆる歩いてく。日曜の学生街は何となくキャンパスの延長みたいな気楽さとだらしなさがある。


「・・・マナミちょっと肩出し過ぎじゃない?」


「暑い」


「暑がりだよねぇ」


出してる右腕をチョイと触ってみる。


「・・ひっ? 触った!」


「ふふっ、二の腕ムチムチしててお歳暮みたい」


「ハムじゃないよ!」


「マナミはライムの香水?」


「ライムだけど、香水じゃなくてデオドラントスプレー。ひんやりするヤツ」


「高校生じゃないんだから」


「違うって、『社会人女性用』のちょっと高いヤツ」


「社会人女性用ってワード強いね」


「ひんやりするヤツだから」


「暑がり~」


等と言い合いながら目当ての店の前まで来た。


「ルイ! ここ、ここ」


「結構並んでるよ~?」


十数人並んでた。同年代ばっかりで何か変な感じ。文化祭的な。


「つけ麺は回転早い」


「そうなの? 麺はお蕎麦屋さんしか行かないからわかんないや」


「お嬢様!」


「何でぇ?」


「手打ちのとこだよね? 普通、大学生女子はそういうお蕎麦屋さん行かないから」


「そっかなぁ? 同じ学部の子よく行くよ?」


「それは毎年女子アナを出してる大学だから」


「偏見だってぇー? どんなイメージよ? 社会学とか経済の人達でしょそれ? 私、毎日微生物とか顕微鏡で覗いてるよぉ?」


1日人と喋らないこともザラ何だっ。


「ルイも女子アナになればいいのに」


「何でよ? 意味わからないしっ」


真逆の人種でしょうに。

そんな不毛な話もしたけど、実際つけ麺屋の回転は早く、すんなり入れた。

イカつい店員さんとニンニクの臭いに気圧されつつ、簡単に注文を済ませる。

料理が出てくるのも早かった。


「これかぁ! 麺多くないっ?」


大きな皿にスープと麺以外の具。麺は別皿にガッツリ盛られてるっ。別に大盛りじゃないのに!


「すぐ入る。餃子も美味しい。半分こ、する」


「小学生の時を除くと『半分こ』て言ってくるの貴女だけだわ」


でも餃子は半分こした。可愛いマナミ。

スープはニンニクとガラが強いのかと思ったら、意外と魚介と野菜のベースが強くて滑らかで旨味が強い塩分浅めの物だった。


「美味しかったぁ? お腹一杯! マナミよく半チャーハン入ったね? 『半』ってボリュームじゃなかったよ、アレ!」


「余裕。どっかカフェ行こ」


「ああ、それね。蕎麦じゃないもんね。待って、ちょっとスマホで調べるわ」


「大体勘で歩いてもいい」


「いやいや、中高で6年バレーボールやってた人と同じ『機動力』と思わないでね?」


体力ある人にはわからないだろうけど、お腹一杯だと20分もズンズン大股で歩いたら余裕で具合悪くなるからっっ。


「小学校6年間は水泳やってたから水の中も得意」


「マナミ、水陸両用何だ・・お? おお? スマホの会社のSNSに・・あ、ユッコだ。近くに来てるんだって、合流しよっか?」


親とかピアノの先生とかは結局このSNSに落ち着くけど、友達でざっくりこれで連絡取ってくるのユッコだけだわ。


「する!」


という訳でお洒落なカフェは混んでたから1本通りを奥に入った純喫茶でお茶を飲みながら待ってると、


「うお~い」


何だか個性的なスカーフを巻いた小柄なユッコが入ってきた。


「ユッコ!」


「スカーフ可愛い」


「へっへっへっ、この間、台湾行った時買ったんだ。もっと褒めろよ?」


席に着くなり電子煙草を吸いだすユッコ。毎回、カルチャーショックだわぁ。


「つか、お前らしょっちゅうつるんでるよな? 住んでるとこ遠いだろ?」


「え~? 都内だし。週に3~4日だし」


「普通」


「目黒と日野市はほぼ違う国だぞ?」


「言い過ぎ~」


目黒、日野市論争から『そう言えば短大の友達に演劇のチケット買わされたんだけど、買わないか?』と差し出されてなし崩しで私達も観にゆくことになった。

絶対そのつもりで連絡寄越したよね・・


「ここだここ!」


何というか、『赴きのある』佇まいの小さな劇場だった。


「小劇場って私、初めてだ。ライブハウスともまた違う感じね」


『小汚い』とは言わないように気を付けてるっ。


「私、専門学校の演劇サークルの大道具手伝ったことある」


「へぇ?」


マナミ大道具の仕事似合いそう。


その後観た劇はまぁ『高校の文化祭の演劇よりかは本格的』ではあったけど、ちょっとこれ見よがしな感じもした。


「・・ん~、抽象的というか、社会風刺が利いてるというか、まぁ殺陣! 力入ってたねっ?」


「殺陣は同じ学生なのに演出と脚本がやいのやいの言うから、チケットも売れねーし宣伝動画にも使うって演者チームが反逆して勝手に入れたんだってさ」


「えーっっ??」


反逆とかあるんだっ。


「ルイには『殺陣』有った方がわかり易かったみたいだな? ひひひっ」


「何よぉっ」


「お腹空いたねー」


急に腹ペコっ?


「よしっ、マナミ! グラタン食べに行こーぜ?」


「行くっ!」


そんな犬を手懐けるみたいにっっ。


「ああっ、何か御飯食べてお芝居観てまた御飯食べるって退廃的だと思う! 1回古本屋とか服屋とかガラス工芸のお店に寄ろっ」


「んだよその件っ、ダリぃな~」


「ガラスの工芸品見たい」


「行くのかよっ?」


私達はユッコが推す店でグラタンを食べる前にガラス工芸の店に行った。私とマナミはお揃いの御猪口を買い。ユッコは「邪魔はしない」とか言って、一人だけガラスの『金魚のゼリー皿』を買っていた。


それから最後に食べに行ったグラタンも美味しかったし、マナミもユッコもまた休日に、遊びに行きたいね!

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