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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

イケメン3兄弟とゆかいな仲間たち

作者: satomi

全面書き換えしました!よろしくお願いします!!

Case.1 亡き女の写真

 へぇ、ここがねぇ。SNSとかで大人気の喫茶店“お命頂戴致します。”ねぇ。確かにイケメン2兄弟が店を切り盛りしてるみたいだけど、信用できるもんかね?まぁいっちょ行ってみるか。

ふーん、外見は隠れ家的な感じか。で、内装は落ち着いた雰囲気丸出し。床は木材。テーブル席が2つに残りはカウンター席か。まぁ、こんなもんじゃねーの?兄弟で経営してるんだし。

「「いらっしゃいませー」」

 元気がいいな。マジイケメンじゃん。ま、俺の方が?

「入り口の人見てー」

やっぱり俺みたいなイケメンは注目度高いよな。

「イケメーン♡と思ったけど、やっぱりここで見ちゃうとね……」

「そりゃそうだよ。(たける)クンも(さとる)クンも超がつくイケメンだもん」

「だよねー。私の目が腐ってた(笑)」

「そこまで言っちゃうー?(笑)」

 なんだ?あの女ども目が腐ってるとかぬかして、気に入らないな。


「ご注文をうかがってもよろしいですか?」

「カフェラテ。ラテアートはドロップ」

 俺は単刀直入にカギとなる注文をした。

 店員の顔色が変わった。

「しばらくお待ちください」

 

待つこと2時間。かかりすぎだろ?繁盛してるのわかるけど。長すぎないか?

兄弟の兄の方が店の看板をcloseにして同じテーブルに来た。

「で、用件は?」

「この元カノとの写真を何とかしてほしい」

「捨てれば済む話ではないのですか?」

「彼女とは死に別れだ。俺はこれでも一途だ」

「うちは霊障は専門外ですけど?」

「ただ持っているのが辛いんだ。なんとかしてくれよ」

「わかりました。それではまた1週間後にここでお会いしましょう」



俺は女の部屋にいた。

やっぱイゴゴチがいいよな。

「お命頂戴って言ってもたいしたことねーな」

「えー、でもぉイケメンだったんでしょ?」

「まぁな。でもそれだけかな。結局1週間後とか言うし」

「うふふ、ヒドイなぁ。一途とかいろいろウソ言ったんでしょ?」

「そういう面じゃお互い様か。はははっ」

「きゃっ」

「なんだよ、楽しもうぜ?こーんな写真に1週間だぜ?笑わせる」

 俺はミホにも亡き女の写真を見せた。

「ワカゲノイタリみたいな?」

「しかもこの女の子、お堅そー」

「そうなんだよな。イマドキ、キスもなしだぜ?笑っちゃうよな?」

「え?それはナイはー(笑) オタキアゲ?すればいいんじゃない?なんか、あんたもすっごい若いじゃん。コレ丈でしょ?」

「馬鹿言うなよ。俺は無駄なお金を使いたくないのっ。ミホー‼」

「んもうっ、スケベなんだから!でも私も好きよ」

「んー、やっぱオンナは胸だよな」

「胸の谷間で休憩しないで!」

「休憩じゃないもーん!あの女はお堅くて、こういうのもなかったなぁ」

「ちょっとぉ!人の胸で休憩しながら他の女の話?」

「っお、ヤキモチか?」

「普通でしょう?」


―――1週間後

「約束通り1週間後に来た」

「うん、そうだね。1週間、俺達兄弟が何してたと思う?」

「何って…そりゃ、喫茶店経営だろ?」

「それもあるんだけどねー。まぁ、情報収集?」

「で?」

「結果だけ言うとねー。貴方、中野丈一郎氏は一途ではないし、エロい!」

「??」

 遠くに座る男?女?が後ろ向きで手を振っている。

「うちの専属情報屋。彼女は優秀で色々調べてくれたよ。貴方の彼女の事とか情事の手管とかいろいろ。それはもう事細かに。その結果エロいと判断しました。

 貴方はいったい何股してるんですか?少なくとも3股はしてますよね。1晩で2人相手にすることも…」


「ミホちゃんに言ったら涙目になってたワ。自分一人が愛されてる♡と思っていたのねぇ」

 派手なピンクのキャミワンピを着た、ガタイがいい彼女(?)が言った。

「そこの情報屋は顔を見せないのか?」

「職業柄そうでしょう?それと、写真の件ですがこちらで滞りなくお焚き上げしたいと思います。対価はそうですね…。貴方のココでいいですよ。手術代金もこっちもちですから安心してください」

尊は男のシンボルたる場所を指さして明言した。

「マジかよ。聞いてねーぞ?」

「そうですか。でもあくまでうちは“お命頂戴致します”なので、貴方の命ともいえるココをちょん切らせてもらいます。心配しないでください。術後の就職先まで斡旋いたしますので」

「そういう問題じゃねーだろ?」

「最初に嘘を吐いたのは貴方です」

 奥から一人の男が現れた。

「ここの長男です。医学部卒業。麻酔師の免許もあります。うちは3兄弟です」



「「「では、“お命頂戴致します”」」」



尊・「いつもありがとう、キャサリン」

キ・「なによ、他人行儀ねー。ここの3兄弟のためならガンバちゃうワ」

尊・「今は(さとし)兄が手術中かぁ。で助手が悟?悟もそんな年になったのかぁ」

キ・「何言ってるのヨ。尊クンだってまだピチピチなのに」

尊・「俺は体力と交渉担当、兄貴は頭脳労働と手術担当、悟はまだ助手かな?」

キ・「ワタシも仲間に入れてよ~」

尊・「十分入ってるよ、うちの専属の情報屋さんだもん」

キ・「嬉しいこと言ってくれるンだから。お店に来たらサービスしちゃう!」

 多分行かない…。おかまバー。



~その後の依頼人

キ・「なんか、性に合ったみたいでイキイキ働いてるワ」

 紹介したのおかまバーなんだけど…。

キ・「最近じゃ好みのタイプって男性を紹介してって頼まれるワ」

 命頂戴したつもりなんだけどなぁ…




Case.2 私の家族を守って!


 ここでいいのかしら?マユツバだけど、私にはもうここしか縋れるところはない!

「「いらっしゃいませー」」

 あらまぁ、イケメン兄弟が経営しているのねー。仲いいのかしら?ちょっと目頭が熱くなった。うちの子達と比較しちゃダメよね。

「カフェラテで、ラテアートはドロップ……」

「では、しばらくお待ちください」



 待つこと1時間。若い女の子が多かったわね。仕方ないわ、だってイケメン兄弟が経営してるんだもの。


「で、用件は?」

「私を殺してください!“お命頂戴致します”だからできるでしょう?」

(うーん、参った。実際には殺生はしてないんだよねー。自分の命を懸けてもいいものを依頼によりけりで壊してはいるんだけど……)

「ここに保険の受取人を貴方に変えた保険証があります。だいたい3000万かけました。主婦の限度額です。お願いします!私を殺してください。お金は、子供の養育費にしてください」

尊・「およっ?珍しい。兄貴が出てきた」

「お願いします!」

(さとし)・「貴女……隠していますけど……DV被害者ですね?私は医者です。動きとか古傷の痕でわかるんですよ」

 依頼人は涙ながらに語った。自分には夫との間に3人の子がいる事。夫が3人目を妊娠している時から浮気をしている事。仕事せずに酔っては暴力をふるう事。お金をせびる様になった事。

「うーん、コレはひどい。裁判沙汰で離婚成立ですね」

悟「あ、瀬蓮も思う?」

 瀬蓮とは、うちの執事のような…。‘お命頂戴致します。’の雑務を担当してもらっている。経歴とか不明だけど、俺らが生まれる前からうちに仕えているし、人脈がものすごくて助かってる。

「私は法律もかじっていますから、やはり問題となるのは親権かと……」

尊・「その際の子供はどうなるんですか?」

「生活能力は完全に依頼人様の方にありますし、そのご主人は生活能力がないようで、このままだと、親権は依頼人様のものとなる確率が高いと思われます」

依頼人は俯き加減に話始めた。

「それが問題でね。夫といても虐げられるのでは?と私は邪推してしまって……」

 依頼者は涙を流しながら訴える。

聡尊悟・「「「いや、邪推じゃなくて普通考えるよ」」」

尊・「よし、3日間だけ、あと3日間だけ我慢してください。3日後にまたここで」

「わかりました。では3日後に」


尊・「だってよー、今回も頼むわ。キャサリン」

キ・「こっち見ないでー。あまりの事で涙が止まらないワ。化粧落ちちゃう。任せて頂戴。すぐに調査するんだから!」



―――3日後

尊・「色々調査しまして、結果旦那さんは貴女がわかっている相手の他にも浮気相手がいます。恐らく、過去にも。どこかに非嫡出子がいてもおかしくない状態です」

「覚悟はしていました。やっぱりそうなんですか……」

尊・「貴女には顔を変える形成手術を受けていただきます。名前も変えます。そこで貴女は亡くなります」

「え……、そんなお金はありません。形成手術代なんて……」

尊・「心配いりません手術代はこちらで支払います。術後の戸籍・住居・職場も用意致します。お子様たちは私たちが保護して丁重にお育て致します」

「ありがとうございます、ありがとうございます!」

尊・「では、さっそく手術を。手術は長男が行います。医学部を首席で卒業していますし、麻酔師の免許ももっています。安心をしてください」



「「「では、“お命頂戴致します”」」」



尊・「今回もありがとな、キャサリン」

キ・「あんなの女の敵じゃない!プンプンよ!!」

尊・「今回の手術はちょっと時間かかるかな?」

キ・「顔は女の命ヨ!」

尊・「どんな顔にするんだろ?兄貴の好みだったりして!」

キ・「見たいような、見たくないような。乙女心はウラハラねぇ」



~その後の依頼人

「いやぁ、君を目当てにこのスーパーに来るお客さんが増えて大助かりだよ!売上が右肩上がり!」

店長は扇子であおぎながら私の持ち場から離れていった。

(顔を変えるって…ブサイクになると思ったのに、美人になるなんて――)

その時、ドンっと背中の方に衝撃があった。

「ゴメンね、ボクー。ぶつかっちゃったでしょ?痛いところはない?」

(マズい!子供に関わらないで生きるって決めたのに)

「ママ?ママの匂いがする。ママー‼」

「ママのはずないだろ?……ママは死んだんだ。俺たちは兄弟で生きていくんだ」

 強くなったわね。泣きそう。そうだ!

「――ねぇ、怪我しちゃったかな?コレ、今日作ったお菓子なの。食べる?」

「知らない人から食べ物をもらったらいけないって言われてるだろ!ママも言ってただろ?」

「でも、この人ママの匂いするし、お菓子もママの匂いがする……」

「なんで、この味するんだよ?隠し味、ママしか知らないはずだ」

「この人、ママだもん」

 末っ子にくっつかれた。

「弟がすいません」

「あなたもおひとついかがですか?」

 結局食べるのね――

「本当におふくろなのか?顔が違うけど?」

「あなたたちが信じてくれるなら、私はあなたたちのお母さんになるわ」



キ・「ってね。ちょっと子供をお母さんの職場に連れて行っただけなのヨ。ホントよ。一番下の子が匂いで気づいちゃって。」

悟「野生の勘か?」

キ・「なんかロマンティックじゃないわネ。ワイルドなか・ん・じ♡ で、結局子供3人とお母さんが暮らすことになりました」

尊・「うーん最終目的はソコだったからいいかな?ところで、あの人の顔って兄貴の好みなんだろうか?」

キ・「それは思うワ。多分ね。アラ、貴方たちは気づいてないのかしら?あの顔、貴方たちのお母様に似ているのヨ?」

尊・「マジか?兄貴はマザコン?」

聡・「女の人の顔のイメージがなかったんだよ!おふくろか、キャサリンか…」

尊・「大学の時に見ただろう?」

聡・「よく見てない」

キ・「わたしの顔はよく見てるのネ。うれしいワ」

聡・「キャサリンの顔は採用しなかったけどな。今後形成外科の参考のために、いろんな雑誌見た方がいいんだろうか?」

 兄貴よ……反省点そこなのか……。

キ・「あー、ダメよ~。流行りの顔ってあって、似たような顔ばっかりだから。あと整形疑惑の人ばっかりだったりね」

尊・「兄貴もホールで働く?」

聡・「いや、それは俺には向いてない。尊みたいにうまくできない」

尊・「あー、そういうキャラだよね(笑)」

執事の瀬蓮が報告をあげる。

「子供様方は手術後、依頼人の旦那様とは隔離させていただきました。生命保険金もはいりましたし。そのお金もせびられる可能性がありましたので。ご兄弟で生活をうまくしていましたよ。もちろん影で部下に支えさせていましたが――」

聡・「瀬蓮はできる執事ってだね。確かに保険金を子供からせびりそうだな」

悟・「いやぁ、うまくまとまってよかったよかった」



Case.3 種がいっぱい。

 うむ、ここに頼むしかないな。では行かん!

「秘書も運転手も俺がここに来たことは忘れるように。いいか?『忘れる』んだぞ?」

「「わかりました。仰せのままに」」


「「いらっしゃいませー」」

 何と言うか、イケメンが対応なんだな。普通の喫茶店のようだが?見渡せば客は女性ばかりのようだな。

「ご注文をよろしいでしょうか?」

「カフェラテを。ラテアートはドロップで」

「かしこまりました。しばらくお待ちください」


(さとる)・「どう思う?」

悟は器用にもカフェラテを作りながら小声で話しかける。

(たける)・「うーん、来店前に黒塗りの外車が店の前に止まってたんだよなぁ」

尊悟・「「うーん」」

尊・「とりあえず、話を聞いてからだな!お前はラテアートを描いて」

悟・「兄貴はこういうの苦手だもんねー」

尊・「なにおう!!」


「ちょっとちょっとー、イケメン兄弟が口喧嘩よー。なんか眼福でごちそうさまですって感じよねー」

「うわー、私見逃した!」

「滅多に見られないもんね。ここだって、不定休だし、いきなりcloseになってたりするし」

常連になりつつある客が小声でザワザワと騒ぎだす。


―――2時間後

尊・「遅くなりましたが、ご用件は?」

(俺は交渉担当なんだよ!ラテアートとかは悟の担当だ)

「私はこういう者です」

 差し出された名刺には、有名企業の‘代表専務’とあった。

「私以外の代表専務を事故に見せかけて殺してほしい」

尊・「えー、当方は殺人はしませんが。とりあえず話を伺いましょう」

「‘代表専務’というのは名誉職でというか、作られた名誉職で私を含めた代表専務は7名います。その全員が父の愛人の子です」

尊・「本妻の子は?」

「本妻には子はいません。よって、代表専務が私だけになれば会社・その他諸々が私のものになるというわけです」

尊・「つまり、遺産相続ということですね?」

「まぁ、平たく言うとそうですね」

尊・「では、2週間後にまたここに来てください。そのときにお返事を致します」


 尊は聡と悟に説明した。

聡・「うちは殺人はしないと決めてる!」

悟・「こないだ偽装で殺人したじゃん」

聡・「それはそれだ!」

尊・「なーんか胡散臭いんだよねー」

 尊は名刺を指ではじきながら言った。

尊・「キャサリーン!悪いんだけど、この会社に潜入して調査してくれる?」

キ・「任せて!何のために日々男装してると思うの?男の格好してるとねぇ、男からは上司の愚痴、女からは同僚の愚痴が聞けるのヨ」

聡尊悟・(((男装……?)))



―――翌日

  ここに頼むしかないな。はぁ。

「秘書も運転手も俺がここに来たことは忘れるように。いいか?『忘れる』んだぞ?」


「「いらっしゃいませー」」

「ご注文をよろしいでしょうか?」

「カフェラテを。ラテアートはドロップで」

「かしこまりました。しばらくお待ちください」



―――2時間後

尊・「遅くなりましたが、ご用件は?」

「私はこういう者です」

 差し出された名刺には、有名企業の‘代表専務’とあった。

(マジかよ?俺、ため息出そう……)

「私以外の代表専務を事故に見せかけて殺してほしい」

尊・「えー、当方は殺人はしませんが。とにかく話を伺いましょう」

「‘代表専務’というのは名誉職でというか、作られた名誉職で私を含めた代表専務は7名います。その全員が父の愛人の子です」

尊・「本妻の子は?」

「本妻には子はいません。よって、代表専務が私だけになれば会社・その他諸々が私のものになるというわけです」

尊・「つまり、遺産相続ということですね?」

「平たく言うとそうですね」

尊「・では、2週間後にまたここに来てください。そのときにお返事を致します」


尊・「キャサリンが調査中だよな」

悟・「結果はまだ先だけどさぁ……」

聡・「これって、まさか……」

聡尊悟・「「「あと5人続く?」」」

尊・「俺、面倒。悟、替わって!」

悟・「えー、やだよ。俺は大人しくラテアート描いてるから。尊兄はラテアートできないだろ?」

尊・「……(どーせ俺は不器用だよ)」


翌日から続くこと5人、同じように自分以外の‘代表専務’の殺害を依頼してきた。予想通りだけど、対応が面倒臭い!


尊・「はぁ、もう1週間は代表専務との交渉しなくていいな。なんだかスッキリ」

聡・「お前はそうかもだけど、そんな中キャサリンは調査してんだからお前も頑張れよ」

尊・「へぇーい」

 そう言って俺は店のホールの方に足を踏み入れた。窓の外、何だろう?黒塗りの車から車いすに乗った壮年の男性と車いすを押す女性が見える。


「「いらっしゃいませー」」

「ご注文、決まりましたらお呼びください」


「カフェラテ。ラテアートはドロップ」

「お義父さん、もうちょっと柔らかく……」

「すいません。カフェラテを一つ。ラテアートはドロップでお願いします」

「かしこまりました。しばらくおまちください」


尊・「不審だ…。二人なのに、注文が一つ……。キャサリンに任せてるし、肩の荷が下りたと思ったのに、嫌な予感。」

悟・「兄貴は心配性だなぁ。大丈夫だよ!」

「不肖、私も見ております故……」

尊悟・((瀬蓮!ありがとう!瀬蓮は壁に馴染んじゃって気配がよくわからないけど、頼りになる~))


―――1時間半後

尊・「で、用件は?」

「すまん!うちの愚息どもが!!」

尊・「??……とりあえず頭をあげてください」

「とにかく名刺を……。おい、頼む」

「わかりました。お義父さん」

 差し出された名刺には、最近ずっと来ては殺人依頼をしていた会社会長とあった。

尊・「……えー、息子さんたちは代表専務をしてらっしゃる会社でしょうか?」

「いかにも」

尊・「で、その会社の会長でお義父さまでよろしいでしょうか?」

「あー、息子たちが大変な迷惑をかけた。申し訳ない!!互いに殺し合うなど一族の恥!」

尊・「えーと、今日一緒にいらっしゃっている女性は?」

「おーおー、嫁にやらんぞ。私の身の回りの世話をしてもらっているが、恥ずかしながらこの子も愛人の子の一人でな。唯一の娘だ。可愛いかろう!」

(気のせいだよ。親の欲目100%だね、こりゃ)

尊・「えーと、それで私たちはこの後どのようにすればいいのでしょう?」

「息子共はおおかた私の遺産狙いだろう?」

(それ以外に何がある?)

「私の遺産だが半分は孤児院に寄付することにしている。顧問弁護士に書類を用意させている」

尊・「残りの半分は?半分でも相当な遺産になるのでは?」

「可愛い娘にと思っている」

尊悟・((へぇー))



尊・「はぁ、娘自慢が1時間続くと思わなかった……」

悟・「お疲れ~」

尊・「お前はいいよな。ラテアートの練習に逃げれるから」

聡・「娘、そんなに可愛いのか?護衛つけてるのか?」

尊・「それなんだよなー。可愛い自慢して、遺産も相続させるってのに護衛の一人もついてないんだよ。胡散臭くね?」

聡「キャサリンとも連絡とってみるか」



キャサリンはご立腹だった…。

キ・「もう!イケメン成分が補充できなくて、この会社なんなの?イケメンが全然いないじゃない!」

聡「キャサリン、調査してどうだった?」

キ・「まぁ、イケメンはいない。ってのはそうなんだけど、あの代表専務達ね。普段から仲悪いみたいなの。兄弟仲は最悪ね。いっつも会っては服装とかでいがみ合ってるみたい。受付嬢が言ってたワ。あと、上司としても最悪な評価ね。自分はたいして仕事ができないくせにって部下に言われてたワ。これは休憩喫煙室で聞いた。

 不思議なのは、会長といつも一緒にいる娘ネ。この子のことは社内では噂になってない。会長の娘ってのは認識されてるけど、ソレダケ。会社の会議にも参加するし、一日中会長といるみたいよ。

 私ならあんなむっさいオッサンと一日中一緒なんて御免だけどネ」

悟・「なるほどねー。確かにあの娘、胡散臭い。会社の中枢の会議にも地味ーに出席してるしな」

尊・「悟、お前が車いすに乗ったおばさん(むっさい)と一日中一緒って耐えられるか?」

悟・「何の修行だよ(笑)。俺にいくら入るんだ?無償ではむり有償でもあんまりやりたくない」

聡・「あの子は有償なんだよ。『莫大な遺産』っていう」

尊・「そこまでは理解できた。護衛がいないっていうのは?」

キ・「はーい。わたしが社内で聞いた少ないウワサだとね。あの娘、格闘技の有段者なのヨ」

尊・「それにしても、飾りでも護衛つけるよなぁ?」

悟・「信用してるか、彼女がすさまじく強いかだよ!」

聡・「お前は楽観視し過ぎだ。暗殺ってのもあるからな。彼女の盾になる感じでも護衛いた方がいいと思うんだけど。あのおっさん、けっこう食えないな。キャサリン、頼む!おっさんを含めて主に彼女についても調査を続けてくれないか?」

キ・「聡クンに頼まれたらやるわヨ。彼女にはちょっと殺気ぶつけてみたりもしてみるワ。あー、もぅ。早く終わらせて、私のオアシス‘お命頂戴致します。’に戻ってくるワ。イケメン成分を補充に♡」

聡尊悟・「「「頼んだ」」」



その頃の噂の一人娘。

 ふふ、男共はお義父さんに嫌われるかのように互いに殺し合い。遺産は半分になっちゃったけど、私が総取り!護衛なんていらないわ。私を狙う奴いないし、私自身孤児院で鍛えられたのよね。何故だか。弱いフリで狙われた方がイイかしら?ちょっと街のチンピラやとってみましょうか?護衛がいた方がソレっぽいわよね。



最初の依頼から2週間後

店に集まった面子を見て、代表専務の一人が言い放った。

「何だよ家族団欒じゃねーか」

「こん中の誰かがなんかやったんだろ?」


尊・「えー、お集まりいただき誠にありがとうございます」

「挨拶はいいから、結論を言えよ」

尊・「結論……よろしいですか?」

 尊はそれぞれの顔を見渡した。もちろん、娘と父も含め。

尊・「息子さん達はお互いに殺しを依頼してきました。そのことはお父様もご存じなので、親子でどうぞ話し合ってください。

 お父様の好きな娘様ですが、娘様はお父様よりもお父様が残す遺産の方がお好きなようです」

「ちょっと!勝手なことを言わないでよ。私はお義父さんが好きよ。信じて、お義父さん」

「もちろん信じているさ、娘よ」

尊・「遺産が半分になることには仕方なく了承したようです。それでも残りが『莫大な遺産』ですからね。不思議に思ったのは、彼女に護衛がいなかったことです」

「それはこの子が強いからだ」

 娘を見る目は相変わらずなんか分厚いフィルター越しでは?と疑ってしまう。

尊・「それにしても、弾除けとかそういう理由で護衛をつけている人はたくさんいます。この時代、物騒ですからね。彼女、最近街のチンピラに襲われたそうですね?」

「あぁ、それであわてて娘に護衛をつけたところだ」

尊・「そのチンピラ――彼女が金で雇った人たちです。完全なる自作自演です」

「嘘だ。嘘だろ?嘘なんだろ?」

「そんなのどこに証拠があるのよ?私が雇ったっていう。お義父さん、嘘に決まってるじゃない。どうせ、お金目当ての街のチンピラよ」

キ・「それがねぇ。貴女がのした後にここの聡クンが治療して色々教えてもらったのヨ。確かに街のチンピラだけど当面のお金目当てじゃないワ。お金は銀行振り込みだもの。銀行のカメラに貴女が映ってるんじゃないかしら?」

「そりゃあ銀行は利用するから映るでしょうね。うちのお金の出し入れは私が父の命を受けてしてるから」

聡・「銀行振り込みの話もそうだけど、街のチンピラからたしかに貴女から依頼を受けたと聞いた」

「嘘よ」

悟・「いやぁ、自分を治療してくれた人に嘘吐くかなぁ?」

尊・「命の恩人だもんなぁ……」

聡・「大袈裟だな。治療っていうよりか、手当てだなありゃあ」

尊・「えー、それでも何もしない人よりずっと信用できる。見ず知らずの人ならなおの事!」

「……」

「おい、お前の自作自演だったのか?」

「……」

「無言は肯定の意味だぞ?」

「……」

尊・「だそうです。調査の結果、息子さんたちは互いに殺し合い、娘さんは以上のようなことをしました」

「ふーむ、そうか。お前たちにはガッカリだ。失望した。では、子供たちに遺産を残すことはしない。人道に反するような人間に私の財産を残したくない」

聡・「どうしますか?あなたの御遺産?」

「4分の3を孤児院に寄付する。残りはここに寄付することとする」

聡尊悟・「「「いいんですか?」」」

「ふむ。ここにはうちの子がさんざん迷惑かけているからな。それに調査の情報屋さんにも払わんといけないだろ?店だって、我々が占拠しなければ営業できたわけだし」



~その後の依頼人

キ・「あの父は子供を一斉に勘当したみたいヨ。自分の世話には専門の業者に委託するみたい」

尊・「へぇー。うちに遺産の4分の1を残してくれるみたいだけど、あのオッサン……しばらく死なないよな」

聡・「医者の目で見てもそう思う。車いすはポーズだな」

悟・「今回の騒動はまさに自分で蒔いた種(子種)って感じだよね」

キ・「代表専務って名誉職だったみたいだし、彼女もそこそこ小遣い貰ってたみたいだから、贅沢しなければまともに食べていけるんじゃない?」


聡尊悟・「「「ゔぁー‼」」」

キ・「どうしたの?」

「いかがなさいましたか?」

瀬蓮は突然現れる。

聡尊悟・「「「“お命頂戴致します”ってやってない!むしろ頂戴してない!」」」

キ・「遺産でいいジャナイ?」



Case.4 喧嘩別れ


 ここだよな、SNSで噂の喫茶店‘お命頂戴致します。’は。物騒な名前だけど、大丈夫か?


「「いらっしゃいませー」」

 うおっ、イケメンキラキラ☆ 慣れてるとはいえ、いきなりはビビる。そういえばSNSではイケメン兄弟が経営してるって話だったな。ここまでとは……。


「ご注文伺いしてもよろしいですか?」

「あー、えーと。カフェラテを一つ。ラテアートはドロップで」

 あんまり声出すと周りにバレるんだよな。ヒヤヒヤもんだ。人気者は困るぜ、全くよぉ……。

「かしこまりました。では、しばらくおまちください」


―――2時間後

「『しばらく』って2時間かよ?俺は少ない時間の中でここに来てんだ。時間がないから単刀直入に言う。

 うちのバンドをなんとかしてくれ。一応っていうか、確実に俺がヴォーカルだけどギャラが俺の方が多いって文句を言うんだよ。理由は単純。作詞も作曲も俺だから著作権で、カラオケやらTVやらラジオやらで曲が流れるたびに俺にギャラが入るんだよ。当たり前だろ?

 それをうちのバンドのメンバーは気に入らないみたいでギャラは平等にするべきだ。とかさぁ。そりゃあ、出演料とか公演料は平等だけど、曲作ってんのは俺だから勘弁してくれよって」

尊・「それ、メンバーに言いましたか?」

「もちろん言ったけど。聞く耳持たず」

尊・「あなたの望みは?バンドの解散ですか?」

「メンバーの説得を頼みたい」

尊・「わかりました。ではまた、1週間後にここで」

「ちょっとまて!ちゃんとスケジュール帳持ってきた。あぁ、ちょうど1週間後は俺オフだ。OK。1週間後にここに来る」



悟・「兄貴、兄貴ー!今最も売れてるIYEHOのhoujiじゃん。やっぱそういうバンドでも揉めるんだねー。しかもお金がらみって。醜い!しかも、サングラスかけてるけど、高級ブランドのサングラスだからかなりバレバレなんだけど(笑)」

尊・「顧客の守秘義務だぞ。家の中だけにしろよ。で、キャサリン。今回も頼む」

キ・「尊クンに頼まれたら断れない!イケメン成分がなくならないうちにさっさと終わらせてくるワ」

尊・「頼もしいよ」

キ・「イヤ~ン♡頼られるとクラクラしちゃう~」



―――1週間後

尊・「調査結果です。えー、バンドメンバーはギャラに関して平等であれ。って感じです。著作権含めてです。

  言い分は、『苦労を共にしてきて、やっとメジャーデビューして上に立ったのに、この仕打ち?ちょっと酷くない?』だそうです」

「いやいや、メジャーデビューできたのは俺が作った曲ありきでしょう?」

尊・「交渉決裂ですね。どうします?」

「バンドの解散はちょっとなぁ……」

聡・「では、喉の切除手術をしましょうか?ヴォーカルの貴方が声を出せなければバンドとして活動できません。しかしバンドの解散はありません。メンバーが言い出さなければ」

尊・「そうだねぇ。そうすれば、貴方には著作権でギャラが入ります。メンバーは知ってか知らずか。バンド活動してないからよくわかんないかもなぁ。ここのとこは神のみぞ知るですけど。少なくとも、出演料とかでギャラが……とかの苦情はないでしょうね」

「喉かぁ……」

聡・「もちろん、手術代はこちらでもちます。執刀医は私です。術後の専門スタッフも紹介します日常生活に不自由しない程度には、声が復活します。ただし、今までのような歌声は無理です」



「「「では、“お命頂戴致します”」」」



尊・「IYEHOはhoujiの歌声がバンドの魅力だったからなぁ」

キ・「悟クンは聡クンの助手なのね。あ~、その手術室も神々しい!」

尊・「ほーんと、悟は器用だよな。ラテアートといい、兄貴の助手といい」

キ・「よく手術の道具の名前覚えれるわネ」

尊・「あれ?キャサリンに言ってなかったっけ?悟、医療系短大生だよ」

キ・「うそ~!なんて素敵なキャンパスライフなの!悟クンは癒し系よね~」

尊・「そうなのか……」



~その後の依頼人

悟・「曲はよく聞くけど、houjiの声がもう戻らないのは悲しいなぁ」

尊・「その手術に立ち会ったお前がよく言う」

聡・「声って言えば、最初は筆談しかできなかったんだけど、最近ちょっとづつ声出てるらしいよ。専門スタッフって偉大だよなぁ」

尊・「本人は筆談でも昔みたいに書かなくてもタイピングすれば、世界の人と会話できるから楽しいみたい。ギャラについても今はhoujiが全くTV出演してないでしょ?だからメンバーからも何も言われないみたい。houjiとしては、メンバーが飼い殺しみたいだから、解散して他のヴォーカル探した方が…って思ってるみたいだけど」

悟・「尊兄貴はそういう意見かもだけど、houjiみたいな歌声の人はなかなかいないよ」

聡・「もう顔は売れてるんだから、どっかのバックバンドとかさぁ。新たにバンド組むってなると、薄情とか意見が出そうだろ?」

尊「・もう、成人越えてるんだからさぁ『後は好きなように生活してください』じゃない?」

聡悟・「「ああ、そうだな」」




閑話 悟の悲劇(?)~誰かタスケテ

 

とある日常、兄弟の末っ子・悟が普通に学校に行った。


「ラッキー!朝から眼福。悟クン見ちゃった♡」

「え~、わたしは見逃した。んー!くやしー!!」

「わたしは教室で見れるし~!」

「「い~な~」」

というのが悟の通う大学の朝の光景。


 朝から実にめんどくさい。悟は医療系短大に通っている。悟は看護学科。当然のように女子が多い。悔しがってたりするのは悟とは違う学科若しくは学年の生徒なのだろう。

「えー、今日は編入生を紹介する」

(看護学科にねぇ。モノズキがいたもんだ)

「名前は中野丈一郎君だ」

「「きゃー、オトコよ!男子歓迎」」

(中野丈一郎……ん?まさかな?)

「中野丈一郎です。で・も、性転換手術してるからジョナサンって呼んでね☆」

 もともとそれなりにイケメンなのでそこそこ美人で、サラサラロングストレート黒髪が彼女(?)の武器だろう。

(マジかよ?)


「悟くーん、会いたくて編入しちゃった☆」

悟・「俺は会いたくなかった(一生)」

「えー、冷たいー。クールなとこはお兄さんに似たのかしら?」

悟・「真面目に授業受けろよ」


「先生!着替えとかトイレは女子トイレですか?」

「君はなぁ――戸籍は男なんだよ。男子トイレ…」

「キャー!天国ー!着替えも男子更衣室?」

 丈一郎はワクワクしている。

「そんなに喜ぶんなら、女子トイレで女子更衣室!反対の女子生徒はいるか?」

「「一応トイレはともかく更衣室はねぇ?」」

悟・「丈一郎は変態だ。男子が同じ更衣室にいたら、盗撮やら犯罪まがいの事されるぞ?」

「では、中野君は女子更衣室を使うように(学校から犯罪者を出すわけにはいかない)」


休み時間

「二人はどんな関係なの?」

(まぁ、聞いてくるわな)

「関係って。そうね、秘密の人には言えない関係かしら?」

「「キャー!」」

 俺は小声で丈一郎に言った。

悟・「余計な事は言うなよ?」

「もちろん、それは固くキャシー姉から言わるてる」

悟・「キャシーって誰だよ?」

「あら、キャサリン姉さんヨ」

 俺はため息がでた。


悟・「―――ってことがあったんだよ」

聡尊・「「ご愁傷様」」

悟・「キャサリーン、俺の通ってるトコ丈一郎にリークした?」

キ・「丈一郎何て呼ばないであげて~」

悟・「ジョナサン……」

尊・「あいつ、そんな源氏名なのか?」

キ・「わたしの事、慕ってくれて『キャシー姉』って呼んでくれるワ」

悟・「そうでなくて、リークしたか否かね?」

キ・「うーん、そんなに怒らないで~!ジョナサンがどうしてもっていうから~」

聡・「キャシーとジョナサンって仲なのか……」

悟・「俺のキャンパスライフが滅茶苦茶だよ」

「恐れ入ります、坊ちゃん方」

瀬蓮が現れた。

聡尊悟・「「「坊ちゃんはやめて」」」

「ご主人方。悟様、転校しますか?悟様の学力をもってすればどこの学校もウェルカム状態でしょう」

キ・「この方はどなた?初めましてよネ」

「初めまして、キャサリン様。わたくしは主人方3兄弟の後見をしております。後見といっても、ちょっとした資産の管理とか、術後の手配とかの雑務をしております。()(ばす)と申します」

キ・「まさにセバスチャンね。ところで、この兄弟の資産ってどのくらいあるのかしら?いっつも思ってたのヨ。手術代も取らないし、術後もなーんもかからないでしょ?」

「おおよそですが……国家予算の10倍くらいかと」

聡・「そんなにあったのか……。どうりで手術室が最新……」

尊・「親父とおふくろ、どうやってお金貯めたんだ?」

悟・「あはは。錬金術ー」


聡・「……で、悟は転校するのか?」

悟・「うーん。別に離れ難い友達がいるとかじゃないんだけどさぁ。ここから通いやすいし。キャサリンさえリークしなければねぇ」

キ・「いや~ん、三人に見つめられると照れちゃうじゃない!んもうっ、悪かったわよ!ジョナサンにはあんまり悟クンにくっつかないように指導しておく」

悟・「ついでに、あいつに学校に来るときは男の服を着るように指導してくれよ。初日でぶちかましてるから意味ないけど、世の中にはギャップ萌えと言うものもあるからな」

キ・「……わかったわ」

聡尊悟・「「「裏の事も口封じでな」」」

キ・「それはわかってる。表の喫茶店だって、いきなり女子大生だらけになったら鬱陶しいでしょう?表の話もしないように言う」

悟・「むしろ、俺に関わるな」




Case. 5 脱サラならぬ離農願望

やっぱ田舎から出てくると、迷うな。おのぼりさんに見えるんだろうか?‘お命頂戴致します。’って物騒な名前の喫茶店はここで合ってるよな?


「「いらっしゃいませー」」


 うおぅ、キラッキラのイケメンだよ。SNSの評判予想を上回る感じだな。


「ご注文はお決まりですか?」

「えーと、カフェラテを一つ。ラテアートはドロップでお願いします」

「では今しばらくお待ちください」


 カフェラテって何だ?ラテアート?もっとネットで勉強すべきだったな。


―――1時間後

「お待たせしました。ご用件はなんでしょう?」

「俺を見てわかると思うが、俺は農家だ。離農したいんだ。その手伝いをしてほしい」

「わざわざここに来る理由がわかりません。ただ離農するならば農地を売って…とか各種手続きをすればよいのでは?と素人ながらに思うのですが?」

「先祖代々の土地だ。親戚の反対とかもあるだろう。それでも俺は離農したいんだよ!」

(親戚の説得が面倒、各種手続きも面倒ってことか?)

「では、1週間後にまたここに来てください」



尊・「キャサリンはどう思う?」

キ・「ただの甘ったれネ。面倒だから。こっちに押し付けたーみたいな感じ」

悟・「俺もそう思う」

尊・「面倒だけど、今回も情報頼むはキャサリン」

キ・「任せて!尊クン。イケメン成分補給するためにもサッサと情報仕入れてくるワ」



―――1週間後

尊・「貴方の希望通り、離農させましょう。こちらも貴方について情報を仕入れました。

 まず、貴方は早寝早起きが嫌い。故に農家はやりたくない。違いますか?」

「……」

尊・「趣味は陶芸。自分用の陶芸の窯を持っている」

「……」

尊・「離農したアカツキには、陶芸で身を立てようとか考えていますか?陶芸の世界はそんなに甘くはないですよ?」

「お前のような若造に何がわかるんだ?」

尊・「その若造に依頼をしたのは貴方です。お命を頂戴する対価として、貴方の趣味の陶芸の窯を壊させてもらいます」

「はぁ?聞いてない」

尊・「今言いましたからね。離農後はお好きにどうぞ」



「「「では、“お命頂戴致します”」」」



尊・「因みに、農地も私共の方に権利を譲渡というように手配しました。農地は今後福祉施設として農地として利用していく予定です」

「……俺は今後どうすればいいんだろう?」

尊・「お好きにどうぞ」



キ・「ここに依頼すれば誰しも幸福になれるってわけじゃないのネ」

悟・「だって、あの人の場合早寝早起きが嫌だ。って子供みたいな動機だもん。それで先祖代々    の土地手放しちゃうっておかしくない?」

キ・「確かにねぇ」

尊・「で、親戚の説得も自分で出来なくて丸投げで離農後のん気に趣味の陶芸で生活していこうとしてたんだから、仕方なくない?今回はかなり瀬蓮に迷惑かけちゃったかな?」

「坊ちゃんにかけられるなら、迷惑でも本望です」

瀬蓮が現れた。

尊・「坊ちゃんはやめて。それに、ここに来れば幸福になるって変なジンクス出来たらやだよ」

悟・「あー、それはある」



閑話 ()(ばす)の日常

  久我3兄弟、聡・尊・悟様に仕えてもう20年以上。私、瀬蓮の日常は久我3兄弟と共にあります。

 起床後、身支度を整えたのち喫茶店‘お命頂戴致します。’へ出勤する。私の家から近いので徒歩3分で通える。

 ‘お命頂戴致します。’の中では隠密のように気配を消し、壁の一部のようになる。たまにお客さんに怯えられてしまう。これは商売の迷惑になりご主人方に申し訳ないとは思う。がしかし、壁のそば以外に私の居場所はない。

 3兄弟の店として知られているので(2兄弟?)、私が邪魔をするわけにはいかない。

 そんなわけで、私は今日も壁の一部のように気配を消して、立っているのです。

 お優しい聡様。私の膝を心配してなのか、コラーゲン?ヒアルロン酸?の入った飲料を勧めていただいた。大丈夫です。いざとなったら聡様執刀で私の膝を人工関節にしていただく。

 おや、今回の依頼人は術後のケアなどけっこう多いですね。

 ふむふむ。戸籍・住居・就職先の確保ですね。この中では、戸籍の確保が一番厄介ですけど、いつの世も役人というのは叩けば埃が出るもので……。

 ほう、珍しいプロの言語聴覚士を紹介ですか……。初めてのケースですね。この歳になると、嚥下障害を持った友人などがいますから、紹介など容易いことでしょう。

 へ?陶芸の窯を壊す?うーん、まぁ簡単なんですけどね。住宅を壊すような業者を手配しましょうか?

 農地をそのまま福祉施設に……。瀬蓮は感動です!坊ちゃま方は慈しむ心を持たれたのですね!農家は早寝早起きさえできれば……あと力仕事ですね。大型特殊の免許もあると農機の運転もできて心強いです。

 福祉……そうですね、時給がよくて住み込みの農家でも作りましょうか?やる気のある人さえ集まればできますね。管理は私直属の部下にやらせましょう。田舎で住み込みですから、コンビニよりも時給は高い方がいいでしょうね。福祉施設なので、就労者は障がい者限定にしましょうか?障害の程度、部位・種類によっては普通と変わらない生活が可能な場合がおおいですからね。

 そのわりに時給が低かったりと国の方針はどうなってるのでしょうか?一応『存在するよ』程度の扱いなのでしょうか?

 障がい者を雇うのですから、ともに生活をする私の部下には心して生活をするようにと指導をしましょう。『心して』というのは、『差別するな』ということです。

 世の中『区別』はいいんですよ。『差別』はよくないですね。今後坊ちゃん方の瞳の色が露見した時に『差別』されたりしないか、考えると胃が痛くなりそうです。

 あ、薬学もかじっているので自分で調剤もできます。東洋医学の方が得意です。胃薬は自作で毎日携帯しています。聡様には、たまに注意をされます。『自分を労わるように』と。なんとお優しい!


 と、毎日このように久我3兄弟に尽くしている次第です。



Case.6 東大一直線

 

ここで間違えないのよね?隠れ家的すぎてよくわからない。間違ってよその人のうちだったら恥ずかしい。


「「いらっしゃいませー」」


合ってた。それにしてもキラッキラのイケメン。彼らならこの世の『イケメンに限る』ってやつが全部適用されるんだろうなぁ。


「ご注文はお決まりでしょうか?」

「あ、えーと。カフェラテをそれでラテアートはドロップでお願いします」

「ではしばらくお待ちください」


―――2時間後

 待ったけど、仕方ないよね。だって混んでるんだもん。ほぼ女性客。皆さまよくここがわかったなぁ。


尊・「で、ご用件は?」

「えーと、言いにくいんですけど――」

聡・「両親に虐待されてるのでは?初めまして。長男の聡です。医者をしてます」

「はい。そうなんです」

尊・「具体的には?」

「家事一切全部わたしがやってます。生活費は一応家に入ってますけどカツカツで……」

聡・「尚且つ、暴力というわけですか?」

「そうです」

尊・「こちらでも一応調査をするので、また1週間後にここに来てください。それまでは我慢をしてください」

「わかりました」



尊・「キャサリーン、頼むわー」

キ・「そんな親がいるのねぇ。まぁ、うちの店の子も結構そんな目にあった子が多いけど。調査も早く終わらせるワ。」



―――1週間後

尊・「調査の結果、貴女のおっしゃる通り虐待が認められました。家事全般を貴女が請け負っていました。強制的に。歯向かうと暴力です。生活費について、一人暮らしのような金額を入金していました。これでは満足な生活は無理です。

  お父上は仕事をしていないようでしたね」

「はい。以前は仕事をしていたんですけど。何故か酒に溺れるようになったんです」

尊・「お父上は芸術家?のような仕事をしていたようで。知人がお父上の作品を盗作した上に名誉ある賞を受賞。お父上の作品で名を挙げたことが酒に溺れるようになった原因では?」

「そうですね。知人って私なんですけど。同じモチーフで絵を描いただけなんですけど?」

尊・「お父上としては手放しでは喜べなかったんでしょうね。では、お命の対価として貴女には東大に入学してもらいます」

「え?私の偏差値で今からじゃ無理ですよ(笑)。あと半年……」

尊・「やってもらいます。講師はそこの()(ばす)に頼みます。瀬蓮!」

「わかりました。彼女を東大に入れればいいのですね?」

瀬蓮が現れた。

聡・「彼は僕ら兄弟の家庭教師をした優秀な人材だよ」

「お褒めにあずかり光栄です」




「「「では、“お命頂戴致します”」」」



尊・「彼女、大丈夫かねぇ?」

聡・「瀬蓮がついてる。瀬蓮が仕事でミスをするか?」

尊・「だよな」

悟・「俺の時もかなりのスパルタだったー」

尊・「彼女はあと数か月だし、かなりのスパルタだろうね」

悟・「どこで勉強してるの?」

尊・「瀬蓮任せだからわからん。自宅ではないでしょう。両親が邪魔だ」



~その後の依頼人

尊・「彼女は無事東大に入学しました。瀬蓮、ご苦労様」

「仕事ですから」

尊・「彼女はその後、一人暮らしを始めた。もちろん両親は猛反対したけど、瀬蓮の部下も説得に参加しました。彼女は元々一人で生活するスキルがあるから一人でも平気。両親は今、地獄を見てるよ」

悟・「だろうね。まず、ゴミの分別から覚えないとね。汚部屋暮らしになっちゃうよ(笑)」




閑話 尊の意欲


尊・「瀬蓮、鍛錬を頼む」

「尊様は本当に武術に長けておられる」

尊・「瀬蓮には到底及ばないけどな」

「不肖ながら、私は各種武道から暗殺術まで幅広く身に着けています故」

尊・「……俺は暗殺術は覚えなくていい」

「尊様はどのような武術を身につけたいと?」

尊・「あの店とあの2人を守れるような武術だなぁ」

「なんと志が気高い!ご兄弟も守りたいとは素晴らしい!」

 はたから見るとおっさんが涙ぐんでいる。

尊・「あの二人が手術中は店を守るのは俺だからな」

 感動を続ける瀬蓮。

尊・「悟がラテアートを描いてるときは無防備になるし、兄貴はめったに人前に出ないからひ弱だし?」

 そんな会話をしている二人だが、会話をしながら手も足も出ている。感動で涙を流しているのに瀬蓮は投げ技を仕掛けたりもする。

 結局どんな武術をしたいのかわからないが、とりあえず瀬蓮の鍛錬は尊にされた。

「人体の急所を覚えると楽ですよ?」

尊・「股間とかか?」

「それは極端ですね(笑) ほら、これでいいんですよ。首の後ろを手刀でとんとついて終わりです」

 瀬蓮は言うが速いかで、尊の首の後ろを手刀でとんとついた。


尊・「はぁ、今回も負けたー。しかも気絶した」

「瀬蓮もまだまだですね。私ももっと鍛錬しなくては」

尊・「いやぁ、いいんじゃないか?基礎体力が落ちなければ」




Case.7 二人に一人?

  

うーん。ここでいいんだろうか?‘お命頂戴致します。’は。SNSで有名だが……。信用……するしか選択肢はないな。


「「いらっしゃいませー」」


イケメンだな。しかも特上の。うちに欲しいところだ。華道の実力があればな。

「ご注文はお決まりでしょうか?決まりましたらお呼びください」

「あ、えーとカフェラテを。ラテアートはドロップで」

「承りました。しばらくお待ちください」



―――2時間後

尊・「用件をお聞きしても?」

「あー、私は華道の家元をしている。それで、跡継ぎ問題だ。娘は双子でな。姉は前衛的な華道をする。妹は伝統的な華道を重んじる。双方対立しているわけで。派閥までできて私には手に負えん」

尊・「えーと、どちらがふさわしいのかを客観的に私共の方で判断を下せばいいのですか?」

「最終的にはお願いしたい」

尊・「かしこまりました。それでは、また1週間後にここで」



尊・「キャサリーン、今回もよろしくな。かなり面倒そうだ」

  キ・「そぅお?お姉さんの方は前衛的でメディア露出も多いわヨ。MIYUって名前で」

  悟・「華道なのに、ローマ字の名前かよ?微妙だな」

キ・「そうなのよネ。まぁ、そこも前衛的って主張だけどねぇ?そうだ!フラワーアレンジメントってやつじゃないかしら?」

尊・「客観的って俺ら華道に詳しくないじゃん」

「尊様お任せください」

瀬蓮が現れた。

尊・「おぉ、()(ばす)。ビックリした~」

「この瀬蓮が判断を致します。不肖この瀬蓮、華道の心得が少しはあります故……」

悟・「流石!助けになるぅ!」

「悟様!恐れ入ります」

 そして瀬蓮は再び壁の一部のように気配を消した。



―――1週間後

尊・「調査結果ですが……非常に残念なことが判明しました。お嬢様は二人とも貴方の血をひいていません。DNA鑑定もしているので確実です」

「嘘だろ……?」

尊・「本当です。跡継ぎは二人うちどちらかという話でしたが、今のところ妹さんの方を私どもは推します。理由は『華道』と言う伝統芸能だからです。お姉さんの方は前衛的と言えば聞こえがいいですが、『フラワーアレンジメント』ですね。これは私たち兄弟では判断が不安だったので、そこにいる男に判断を委ねました。彼は私どもの後見などをしています。信用のできる人間です」

「ご紹介に預かりました瀬蓮と申します。ご主人より跡継ぎの判断を委ねられまして、その任を全うしたと自負しております」

尊・「以上ですが、何か?」

「私は何も言えない……これからどうしよう?」

尊・「それはご自分で判断をしてください。では対価として、そちらに先祖代々伝わっている花器を頂きます」

「何!?それは聞いていない」

尊・「今言いました。私共も慈善事業ではないので。それにここは‘お命頂戴致します。’です。それなりの覚悟で来ていただくものです」



「「「では、“お命頂戴致します”」」」



「今回の報酬は『物』ねエ。珍しい」

尊・「あのおっさん、特に覚悟もなかったみたいだから」

悟「舐めてもらったら困るよねー。情報収集だってお金かかるし」

キ・「そうよぉ、悟クンわかってるぅ」

聡・「で、その『花器』はどうするんだ?ここには置きたくないぞ。もっと和室の方が……」

「坊ちゃん方、恐れ入ります。この瀬蓮が引き取り、うちに保管します。一応国宝クラスでしょうし」

聡尊悟・「「「助かるー」」」



~その後の依頼人

キ・「全くあのオッサンの血をひいてない子を跡継ぎに指名したみたいヨ。伝統重視の」

尊・「なんだよ、最初から血は関係なかったんじゃん。オッサンの趣味か?」

悟・「あり得るー」

聡・「最終的に跡継ぎって男性じゃないのか?それは大丈夫なのか?」

尊・「そこまで俺らが世話してやるもんでもないでしょ?」

聡・「それもそうだよな」




Case.8 取材しちゃいます!

 ここが噂のイケメンポイント‘お命頂戴致します。’ね。じっくりイケメンを見せてもらおうじゃないの!言っておくけど、私はギョーカイ長いから、ちょっとやそっとのイケメンじゃビビらないわよ?いざ、勝負!


「「いらっしゃいませー」」


何よ?SNSの噂よりもずっとイケメン。イケメン慣れしてる私でもちょっと引くレベルね。


「ご注文はお決まりですか?」

「えーと、カフェラテでラテアートはドロップで頼むわ」


 これで裏の仕事を注文できるのよね?情報戦線を生き抜いてる私を舐めないでよ!


「では、しばらくお待ちください」


 そうね、裏の仕事だしお客様を皆さばいた後にはなしになるでしょうね。


だからって2時間後ー?時間かかりすぎじゃない?

尊・「お待たせしました。ご用件は?」

 あら、単刀直入なのね。

「私はこういう者です。ある雑誌でというか、フリーでライターの仕事をしてます。つきましては、ここの仕事を密着取材させてほしいのです」

尊・「喫茶店の仕事を密着して何が面白いんですか?」

「ふふっ、知ってます。‘お命頂戴致します。’ってこと」

 あら、イケメン君の顔色が変わったわ。

尊・「では、また1週間後にここに来てください」



聡・「アレは明日とかも来そうだな、喫茶店の客として」

尊・「裏の仕事に密着って……メーワクだよな」

悟・「ライターさんって頭悪いの?」

キ・「最近の情報の拡散ってすごいわネ。SNSでイケメン兄弟が経営する喫茶店ってのはよく見かけるけど……」

聡尊悟・「「「よく見かけるんかい!」」」

「そうですね。裏の仕事の時に密着取材をされるのは迷惑ですね。私、瀬蓮が裏から手をまわしましょうか?」

瀬蓮が現れた。

聡・「なんか物騒だからちょっと待って」

尊・「俺らに関する記憶だけを消す方法ってないの?聡兄?」

聡・「無茶言うなよ」



―――1週間後

尊・「貴女に関することですが、別に調査しませんでした。(興味なかったし)」

「で?密着取材OK?」

尊・「密着取材はNGです。喫茶店を経営している姿もあんまり出したくないですね。SNSで勘弁です」

「そうですか。それは残念」

尊・「それにあなたはここを取材した後に、命の対価を支払わなければならなくなりますが……そのようなものありますか?」

「え?えーと……」

尊・「ないでしょう?ここを密着取材した後に残ったデータ全部とか?ですけど、それだと密着取材の意味がないでしょう?」

「データは私の頭に入っている分は復元できるわ!」

尊・「それを含めて命の対価ですか?」

聡・「今後、貴女がここについて記事を書くことを禁じます」

「あなたに何の権利があるのよ!」

聡・「では、貴女にはなんの権利があるんですか?ついでに、喫茶店の方も出禁で……」

キ・「いやぁねぇ、イケメン成分が足りなくなっちゃうワ」

尊・「キャサリンだけだろ?」

聡・「ここの記事を見つけた場合、うちの優秀な瀬蓮が対応します。場合によってはどこの出版社も貴女に依頼をしなくなるでしょうね?」

「坊ちゃま方、お任せください。雑誌という雑誌に目を通します」

瀬蓮が現れた

キ・「パソコンに投稿って手段もあるのヨ?」

悟・「そっちは信ぴょう性に欠けるから、無視しても構わないかなぁ?」

 

 こうして密着取材を申し出た女はいなくなった。



尊・「こういう輩がまた現れそう……」

聡・「今回のを取説みたいにすればよくね?」

悟・「そうそう!」



Case.9 押忍!


 ここが噂の場所か……。気は進まないが、背に腹は代えられない。よし、いざ参らん!


「「いらっしゃいませー」」


 元気な男兄弟か。痩せておるな。まぁ、俺が鍛えればそこそこ……。

 ??

 壁際に男がいる。気配を消しているようだが?


「ご注文がお決まりでしょうか?」

「えーと、かふぇらてというのを一つ。そしてそれにらてあーとをどろっぷで」

 呪文のようだ。イマドキの言葉はわからん。

「では、しばらくおまちください」


―――1時間後

「けっこう待ったぞ?」

尊・「今日はこれでもお客様は少ないほうなんですけどね。で、用件をお伺いしてもいいですか?」

 俺は咳払いしてから話を始めた。

 自分の道場の跡継ぎがいない。息子は遊び放題で道場を継ぐ気は全くないようでこのままだと、道場が潰れてしまう。と。

尊・「わかりました。ではまた1週間後にここで」

「あの?壁際にいる男性は?」

尊・「あ、気づきましたか?流石ですね」

 俺はちょっと喜んでしまった。不覚、この程度造作もないことなのに。

尊・「うちの執事のような?居場所に困ってるんですよね?本人。それで、あんなことに……」

「いいえ、気配を消すのが見事だったので」

尊・「それを見つけた貴方も流石ですよ」


尊・「さて、キャサリン!今回も頼むー」

キ・「多分、遊びまわってるって息子の方から情報がガンガン漏れてくるでしょうネ」

悟・「そういう予想つくんだ」

キ・「だって、あの道場主は口堅そうだしぃ?」

尊・「それ言ったらダメなやつだよ」


―――1週間後

尊・「残念なお知らせです。貴方の息子さん、道場の土地などを担保に金を借りて遊びまわっているようです」

「どこに遊びまわる金があるのかは不思議に思っていたのだが……」

キ・「結構、いろんなとこで吹聴してるわヨ。『うちの道場を担保に金を借りてる』って」

「えーと、彼女(?)は?」

尊・「ここの専属の情報屋です。非常に優秀です」

「ここは優秀な人材ぞろいですな、羨ましい」

尊・「今回の命の対価ですが、『道場』ということで」

「は?今聞きました」

尊・「今言いました。道場は正直借金まみれです。そこをここで引き取るんですから、いい話でしょう。跡継ぎについてですが、そこの壁にいる男・瀬蓮って言います。の部下から探しあてます。優秀な跡継ぎができる事でしょう。道場も再建されます」



「「「では、“お命頂戴致します”」」」




尊・「瀬蓮、大丈夫だろ?」

「お任せください、瀬蓮の部下から道場の流派にそった人材を探し当てましょう」

悟・「瀬蓮ってどんな役職なの?」

「それは坊ちゃま方にも秘匿させていただきます」

聡・「構わないよ、瀬蓮の忠心が変わらなければ」

悟・「瀬蓮が敵に回ると嫌だよね」

尊・「考えたくない」




閑話 久我兄弟の日常


 尊は鏡をじーっと見ていた。

(俺だけなんだよな、この眼の色。仲間外れ感が否めない)

聡・「どうした?尊。鏡を見つめて?ナルシストか?」

悟・「なになに?尊兄はナルシストなの?」

(気が抜ける……)

尊・「違う!眼の色についての考察をだなぁ!」

「黒い眼の色は父上の眼の色ですな。尊様は武術も得意で父上に似ていらっしゃいますし」

瀬蓮が現れた。

尊・「……そうなのか」

聡・「俺の薄茶の眼は母上の眼の色か?」

「はい。母上は聡明で手先も器用な方でした」

悟・「はいはーい!俺は?俺は?半分だよ?」

「悟様はオッドアイですな。お二人の良いとこ取りでしょう。器用ですし。ラテアートもお上手ですよね。容姿は皆さま良いとこ取りのようで……」


聡・「尊、俺大学の時カラコンでずっと通ってた。面倒だし。乾くし。裸眼がいいぞ」

悟・「俺も片目にカラコン入れて学校に行ってるけど、面倒。忘れると辛いし」

尊・「……そういうもんなのか」


「坊ちゃん方眼の色だけにこだわりすぎですぞ!その容姿は間違いなくお二人の良いとこ取り!聡様は手術もなんのそのの器用さ!悟様もラテアートがお上手な器用さ!間違えなく母上譲り!そして、尊様は武術が父上譲りで得意ですね。お三方皆さまいいとこ取りですよ。たかだか眼の色にこだわる事なんかないですよ!」

聡尊悟・「「「瀬蓮に言われるとなんか照れるなぁ」」」



Case.10 時間を返して!

 えーと、確かここがSNSで話題のイケメン兄弟が経営する喫茶店‘お命頂戴致します。’よね?なんで物騒なネーミングなんだろう?私の依頼には丁度いいかなぁ?


「「いらっしゃいませー」」


 さっすが、SNSで噂になるくらいだもんね。イケメン度がすごい。二人して後光さしてる?


「ご注文はお決まりですか?」

「あ、カフェラテをラテアートはドロップをお願いします」

「では、しばらくおまちください」


 うーん眼福ー。と他のお客様も思ってるんだろうなぁ。めったにいないレベルのイケメンよねぇ。隠れた名店みたいな喫茶店に隠れた超イケメン!いい感じのシチュエーションだわー。

 弟さんがラテアートを色々やるみたいね。小器用だわ。

 お兄さんは接客担当かな?


などと分析していると、2時間がたった。

尊・「遅くなりまして。ご用件は?」

「この男を不幸にしてください。手段は問いません」

 私はこの男に時間を割かれたという事実を告げた。

「一応この男と籍を入れていました。しかしながら、この男には婚姻の意味がわかっていたのでしょうか?生活を続けなければいけないという事を理解していたのでしょうか?私ならATMの手数料も嫌だから休日は現金引き出しをしません」

聡尊悟・「「「わかるー」」」

イケメン増えたけど?とにかく!続けよう!

「しかしながらこの男は給料日の翌日が休日であろうとも全額引き出しているんです。全額ですよ?貯蓄は?と疑いますよね?」

聡尊悟・「「「わかるー」」」

「そして、生活費について言及すると、「好きでやってるんでしょ?」と宣う。つまり、家には一銭も入れていないのです。「俺の金を何で使うの?」らしいです」

聡尊悟・「「「まじで?」」」

「そんなこんなで離婚ですよ、私も無駄な時間と金を使いました。よって、この男を不幸にしてほしいのです。私が失ったものは時間とお金です。慰謝料も払わないんですよ?」

聡尊悟・「「「まじで?」」」

尊・「では、また1週間後にここで」


尊・「キャサリン、どう思う?」

キ・「そんな人間いるのねー。親は何考えてるんかしら?」

尊・「そんなだけど、調査頼むわ」

キ・「任せてちょうだい!」



―――1週間後

尊・「調査をしました。男はのうのうと独身を満喫していました。男を不幸にする方法ですが、社会的に抹殺しますか?」

「それでお願いします」

尊・「瀬蓮ー、頼むね」

「お任せください、尊様」

瀬蓮が現れた。

尊・「で、対価ですが。貴女の体をちょっと変えます。具体的には、性転換です」

「え…?」

悟・「性転換!」

聡・「私が執刀医です。全身麻酔でミスはしないですよ」

尊・「兄は優秀ですし、術後の就職先も斡旋します。安心してください」



「「「では、“お命頂戴致します”」」」



尊・「兄貴の執刀なら大丈夫でしょ」

キ・「聡クンなら心配ないワ。彼女か彼になるのよね。執事バーを斡旋すればいいかな?彼女なら元がちょっと童顔気味だからお姉様受けがよさそうね。すぐに慣れそう」


~その後の依頼人

キ・「思った通りに執事バーでお姉様方にモテモテ。本人も満更じゃない感じ。女心がわかるからか、受けがいいワ」

悟・「“お命頂戴致します” は罰みたいな面があったんだけど、彼女には褒美みたいだね」

キ・「なんと!ジョナサンにもヨー」



閑話 瀬蓮の休日

 どうしよう?休みをいただいてしまった。私には解雇宣告のようだ。

 どうしたらいいんだろう?休む。うーむ。睡眠時間はコト足りている。何もすることがない。無趣味というわけではない。

 そうだ!部下の様子を見て来よう。

 

まずは農場だなぁ。

 ふむ。障がい者には一見見えないが、障がい者なのか?設備には、医師・看護師・各種療法士がついているな。しかもATMまで完備か。

 うん、部下もなかなか手腕を挙げてきたようだな。アニマルセラピーなのか?酪農もてがけているようだ。そして自給自足のような感じで生活をし、余った分を売っているのか。ほー。


 あの東大に入れた娘はどうなったのだろう?

 正直、かなりのスパルタだったように思うが、よく耐えきった。あれは悟様よりもスパルタに指導させていただいた。期間が短かったからってのもあるが、仕事はきっちりとする主義だからなぁ。

 ほぉ、ESSサークルに所属しているとな。英会話を身に着け、卒業後を見据えたいい判断だ。入学に浮かれてハメを外していなくてよかった。


 さて道場はどうなったかな?部下を送り込んでいるが?

 道場の借金は無くなってるし、所有権もこちらにある以上ドラ息子も手が出せまい。部下が跡継ぎとして大成するまで、道場主は変わらずに依頼人のままだが、部下の具合はどうなのだろう?

「瀬蓮さん、お久しぶりです」 流石だ。私の気配を感じ取るのは。

「私の部下はどうですか?」

「かなり筋がいいですね。なにか武道をしていたんですか?」

「えー、色々としていまして。特定の流派というのがないんですよ」

「もうすぐ師範代です。周りの者!こいつが異常なんだからな!そんなに簡単に段位が上がったりはしないんだからな!

ところで、瀬蓮さんお手合わせをお願いできますか?」

 ――難しい。手加減が。師範でさえも私には及ばないだろうなぁ。

「いいですよ」

 両者、始め!

――あぁ、師範普通の武道だなぁ。私のは暗殺できちゃったりするんだよなぁ。さて困った。痛いのは嫌ですね。

 一瞬で師範の背後にまわり、うなじに手刀をちょいっと。

「一本!それまで!何をやってんです?」

 私は部下に聞かれ困った。

「うなじに手刀。今は師範が気絶してるけど、そのうち戻るでしょう」


以下は部下との小声の会話だ

「首の骨とか大丈夫ですよね?」

「殺人をするわけではありませんから、神経も骨も無事なはずです。手加減は骨が折れます」

 部下は苦笑いしている。


 師範が目を覚ました。

「いやぁ、やはり瀬蓮さんは強いですね。その部下ですもん強いはずです」

「恐れ入ります」


 そんなことをしていると、もう夕方になっているようだ。休日。スーパーマーケットで買い物をして帰ろう……。


Case.11 ここから始まった

 

「「いらっしゃいませー」」


「尊様、悟様いけません!伯母様です。父上の姉君です。」

「瀬蓮、久しぶりね。尊と悟は初めましてね」

 父の姉?

聡・「伯母様、お久しぶりです」

「あら、聡?ちょっと見ないうちに随分男前になったのね。その眼はあの女の遺伝かしら?」

 伯母様は母の事を嫌ってる?

「この店を始めたのは、私と弟と瀬蓮の3人でよ?知らないの?」

 伯母様に関しては全く知らない。今日初めて会ったし。

「あら、悟の眼も片方はあの女の遺伝なのね。まともなのは尊だけじゃない」

尊・「母を異常かのように仰るのはやめていただきたい」

「異常なんて言ってないわよ?」

 伯母様は挙げ足を取るかのように言い放つ。

「この店をあなた方の両親と瀬蓮で切り盛りして、あなた方に継がせて――まあ、悪かったわ」

 へっ?

「私もこの店の創始者としてずっとついているべきだったわ」


聡・「今の形態で満足ですから。これ以上関与しないでいただきたい。貴女の目当ては両親の遺産でしょうか?」

「わかっているなら話が早いわ。半分、3分の1でも私には権利があると思うのよ」

瀬蓮が言うには…

「恐れながら、ご両親の遺言は弁護士立ち会いの元に書かれています。全てをこの子供たちのために。と書かれています」

「瀬蓮が大きい顔をするようになったわね。子供達の意向は?」

聡尊悟・「「「両親の意向に沿います」」」

「面白くないわね。また来るわよ。そのくらいいいでしょ?可愛い甥の顔を見に来るんだもの」

尊・「つっかれたー。何なの?あのおばさん」

聡・「れっきとした伯母だ」

悟・「うちの両親の遺産目当てとはね」

「管理はわたくしがしております故、しっかりとお守りいたします」

聡尊悟・「「「頼みまーす」」」


尊・「今日も働きますか!」

悟・「俺は午前中は学校に行ってくる」

聡尊・「「了解!」」


「「いらっしゃいませー」」

 明るい声が今日もこの喫茶店に響く。


瀬蓮は思う。しばらくというよりもうあの女、坊ちゃん方にとっては伯母だけれども来てほしくない。関わらないで欲しい。今更遺産目当てなどの要求のために現れないで欲しい。





読了ありがとうございました!お疲れです!!

筆者はキャサリンか瀬蓮が好きです。悩むなぁ。瀬蓮はイケオジのイメージ。


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