10話 ハロぼっちパーティー
次の日、フィン様の御公務の全容が明らかになった。何故ならば、メイリーンが学園に入学してきたからだ。
今は学園長室に呼ばれているという聖女メイリーンは、王宮の豪華な馬車に乗り、王太子フィン様と腕を組んで登校してきた。お陰で学園内の女子の嫉妬の嵐は、物凄い勢力で学園内を横断している。フィン様って無駄に顔面偏差値高いから、モテるのよね。
あれ?私の時はそんな感じじゃなかった気がするんだけど?……まあ、メイドだし、御者席に乗ってたしね。逆に、馬車から降りて来た御者の方が注目されてたような?
今日はだだっ広い講義室でミーアと2人、自習という名の女子会だ。何故か、机の上にはお茶とお菓子まで用意されている。振り向けばラディズラーオ隊長が微笑みながら去って行った。騎士団からの差し入れらしいけど……こんな小娘に一体どうしちゃったの?騎士団!美味しくいただくけどね!
「メイリーン様は大国デッセシュバームの聖女様なのですわ。デッセシュバームは先日隣国ドルバを落とした、戦に長けた国。自国を拡げる事に意欲的な王は、ティアラ王国を手中に収めたくて、聖女様を派遣したに違いありません!」
ミーアが、広げた本くらいのサイズの黒板に文字の書き取りをしながら熱く語る。
ティアラ王国の主な産業は鉱石。豊富な金鉱が有名だ。その為、今まで何度も他国の侵入を受けてきたらしい。ってのは知ってたけど……。
ユナはチョークを止めてミーアを見た。ユナも文字の練習中だ。読めても聞けても書けないってやつ?学力テストは数学だけ満点だ。
「ミーア、やたら詳しいのね」
「はい。ルービー様が教えて下さるので」
ふわふわと優しい微笑みが神!!って、あれ?
「ルービー様って、学園で出会った事ないけど、いつ何処で会ってるの?」
「お屋敷ですわ。ミーアは、ルービー様の婚約者なのですの……」
おお!さすがファンタジー世界!ミーアは公爵夫人になるのね!
「ミーア、素敵ね!おめでとう!」
ミーアは頬を染めながらも満面の笑みだ。
「ありがとう、ユナ!でも、内緒にしておいて下さいまし」
「どうして?」
「ミーアの御家は爵位凍結中なのですわ。ですので、ちょっとお手続きに時間がかかるそうなのですの。フィン様のお母様のエレ様が、今、ミーアの後見人になって下さってますのよ」
「なるほど。だから3人はいつも一緒なのね。話してくれてありがとう、ミーア。ルービー様は幸せ者ね!」
今日はお昼前にもう1講義あった。ボトルロックの絵が不評だった為に追加された美術の講義だ。ミーアはその間に魔法の講義を受けるらしい。……羨ましい。ユナにも魔法の才能があったらいいのに。
まだ学園に不慣れなユナを呼びに来てくれたのは大人しそうな女子で、オドオドしながらユナを講義室まで連れて行ってくれた。そんなに怯えなくても、ユナは意地悪したりしないのに……って思ってたら。
ついて行った狭い講義室には誰もいませんでした。振り向けば、その女子もいません。一応確認するけど、扉にはやっぱり鍵がかかっていた。
「ん――閉じ込められた?」
よくある新入生いじめ?心当たりはないから、ミーアの熱烈なファンとかかな?なら仕方ない。
窓から外を見てみるも、3階だから流石にどうする事も出来ないし。……ん?あれ、フィン様じゃない?
外で剣術の模擬戦をしているのはキラキラと眩しい金髪王子様と、剣術学科の生徒たちだ。フィン様はその中央で剣を奮っていた。
勝ち抜けなのか、連戦で疲れてはいるみたいだけど、強い!あっという間にフィン様の前に立つものは誰もいなくなった。
すぐにメイリーンを先頭にして、女の子達がキャーキャーとフィン様に駆け寄る。おーモテることモテること。ユナは何となくフィン様が遠く感じて、窓から離れた。いや、3階だからね。
「ま、そのうち誰か来るでしょ!」
サボる理由が出来てラッキー!って事にしよう!
見ればこの部屋は家庭科室っていうの?手芸道具が揃ってるじゃない?布の束もあるし、ちょっとくらい貰っても構わないよね!
「ユナ、クッション欲しかったんだよねぇ」
コスプレ衣装作ってたし、クッションくらい余裕!問題はフォルムね。中身に入れられる様なハギレはそんなに無さそうだから……。
「星にしよう!」
型紙をとるための紙はないから、布に直接下書きをする。ゆるキャラ的なのがユナは好き。
『ちょっと……なんで星に足生えてんの?』
「今から手を書くのよ!」
『手まで書くって……酷いわね。それは目?』
「頬っぺよ」
『なんで口の上にあるのよ』
「煩いわね……誰よあんた!!」
顔を上げれば女の子のプラズマ。出た!七不思議的なの!
ユナと同じ制服を着てる様に見えるから、ここの生徒だったみたい。スレンダーすぎる体型に低めのツインテール。アウトドアなユナとは真逆のタイプだった。
『ふっ。あなた、見えるみたいだから教えてあげるわ!私は裁縫室の白き妖精、アンナマリアよ!』
胸に手を置くオペラスタイル。
「私は青い彗星のユナ、よろしくね!」
ユナはアイドルっぽく顔に手を当て、ウインクをした。
『あなた……やるわね』
何故かそれだけで心が通じた気がした。
『ここよ。ここに目を書くの!』
「口はこれでいい?」
『そうね。星に顔とかどうかと思ったけど、確かに可愛いわね』
アンナマリアと話しながら、時間を忘れチクチクと縫い進み、クッションを作る。アンナマリアは作りたい!っていう想いが強いみたいで、ユナのクッション作りをめいいっぱいサポートしてくれた。
そして……!!
パステルカラーのごくごくシンプルな丸っこい星に、アンナが指示してくれた目と口を刺繍した、ユルいクッションが出来上がった!!
「出来たぁ――!!」
「ユナ!!」
同時に扉が開いた。なだれ込んでくるフィン様とミーアと騎士様たちと生徒たち……いや、多いな。どんだけ引き連れてきたの?
「ユナ、やっと見つけた……」
椅子に座ってポカンとしていると、そっとフィン様に抱き寄せられた。間近で見るフィン様の制服スタイル。ヤバいわ……。いい匂いするし。
途端、キャ――ッてフィン様の後ろで、大合唱が始まり、ミャ――ってアンリンが失神した。
あまりの騒ぎにビクンと怯えたユナの顔を、フィン様は膝を着き、覗き込んでくる。
「ユナ、大丈夫かい?」
そういえば、閉じ込められてたっけ?
ユナは恐る恐る頷いた。……怒られないわよね?授業サボって、勝手にクッション作ってたし。
「ユナ、1人で怖かっただろ?もう大丈夫だよ、ユナをいじめるものは、私が許さないからねっ!!」
ねっ!!って……フィン様はユナが1人でも平気だって知ってるでしょ?これは何アピール?周りの視線に刺し殺されるわ!
「……ん?それは?」
あ……フィン様がクッションに気が付いてしまった。
「クッションよ……可愛いでしょ……?」
震え声。
「そうか。本当に君は……」
フィン様は半分呆れて半分怒ってる感じ?いや、笑い堪えてるじゃん!!
グゥ……。その時、ユナのお腹の虫が鳴いた。あら、ヤダ、キャラがユルすぎてごめんなさい。
「ふっ……お腹、減ったよね。可哀想に。今すぐ食事に行こうね」
今、絶対笑ったよね?
「フィン様!見つかったのなら、もうよろしいでしょ?午後の授業が始まってしまいますわよ?」
ここで人垣が割れて講義室に入ってくる聖女様。ああ、この人も引き連れてきちゃったんだ、って思ったら、途端に血の気が引いた。
でも、ビクリと震えたユナの頭に、フィン様は真顔でポンと手を置き、立ち上がった。これは何?妹アピール?
「ユナ、食事はミーアと行っておいで。もう迷子になるんじゃないよ」
聖女様に腕を取られ、振り返り際に発したその声は、別人の様に冷たかった。でもユナはこくんと頷く。
チクチクと胸は痛む。でも、メイリーンは怖いから、早くどっかに連れて行って欲しかった。
ユナが閉じ込められていた時間は、結構長かったようだ。お昼を過ぎても帰って来ないユナに、慌てたミーアがフィン様に泣きつき、校内大捜索が行われたらしい。ごめんなさい!ご飯を食べればユナは元気なのに!
「ユナ、そのクッション、本当に可愛いですわね!」
「でしょ?アンナマリアデザインなの!勝手に作って怒られるかもだから、学園長様に貰っていいか許可貰いに行くつもり」
「ユナ……幽霊が出るって場所で1人で……さぞかし心細かったでしょうね。きっと、許して下さりますわ」
ミーア半泣き。誰よ!泣かしたの!!
そして今日最後の講義はマナー講習でした。
未知の領域に震えるユナを優しく迎えてくれたのは、フィン様のお母様、エレ様。
エレ様は長いゆるふわ金髪にクリっとしたオレンジの瞳。お母様とは思えないほど可愛らしい女性でした。
広い講義室の片隅に用意された豪華なソファーに座る美しいエレ様を見た途端、騒ぎ出すオレリアンおじ様。
『ユナ!!我が娘、エレメールじゃ!』
娘!?おじ様の?……確かおじ様、指輪を孫にあげたいって……オレリアンおじ様の孫ってフィン様じゃん!?
驚愕するユナの前で、ミーアが綺麗なお辞儀をする。ユナも慌ててお辞儀をした。
「ユナ・ブラヴォーさんね。ユナって呼ばせてちょうだい!挨拶もきちんと出来てるし、問題ないんじゃないかしら?」
エレ様が満足そうに微笑みながら、問いかける。
それに応えたのは、講義室の反対側の隅で腕を組み、様子を見守っていた学園長様だ。
「ですが、ユナはまだ1度も舞踏会に出た事がないのですよ。まずはダンスを教える事からでしょう」
ちょっと遠くて聞きづらい。
「ユナ、ダンスはできますの?」
エレ様に聞かれて、ユナは首を戻し、正直に答える。
「いえ、出来ません……わ」
前世でやってたダンスとはジャンルが違うでしょ?
「そう。今から覚えてもらうしかないわね。間に合うかしら……」
すると、対角から学園長様がユナを援護してくれる。何この距離感。
「とりあえず教えてみてはいかがですか?無理そうでしたら、今回の舞踏会は見送りで」
右側で学園長様が言い……。
「ダメよ!フィンにあの聖女をエスコートさせるつもり?私はユナがいいの!」
左側のエレ様が可愛く頬を膨らませる。
「それは同感ですが、公務ですので致し方ないと思います」
右から学園長様がピシリと言うのを聞きながら、ユナは隣のミーアに、小声で話しかけた。
「ミーア?この2人、仲が悪いの?」
「学園長のディディエラ様は王妃様ですので、国王様の側室であられるエレ様とは確執がおありかと」
「学園長様って王妃様だったの?なるほど……」
一夫多妻制?びっくりだわ。
「公務、公務って……本当にそれでいいとお思い?ディディエラ!!フィンにも選ぶ権利があると思うわ!」
どんどん喧嘩は加速している。
「あのぉ――」
ここでユナは、大変残念なお知らせをしなければいけないと悟った。だってユナのせいで2人が揉めるのは申し訳ないし、首が悲鳴をあげていたから。
「ユナは舞踏会は欠席になっております……わ」
「何故ですか、ユナ」右。
「どういう事ですの?ユナ」左。
グキッ。
「ごめんなさい。その……舞踏会の招待状は、家が火事になって燃えちゃったから……」
その時ミーアが体を前に出し、おずおずと口を開いた。
「エレ様、ディディエラ様。ルービー様からお聞きしたのですが……フィン様は聖女様と踊る所を、ユナに見せたくなかったのですわ。ですから、ユナ様を欠席させたとの事で……」
「「なんて事!!」」
ディディエラ様が声を荒らげ、こちらに向かって参ります。同時にエレ様も立ち上がっていらっしゃいました。何?私、怒られるの?
「フィンはあの聖女と踊るつもりですか?」
「まさかフィン、ユナを差し置いてあの聖女とダンスを?」
「は……い……」
ミーアがその迫力に怯えております。
「「……はぁ……」」
ここで2人は仲良くため息をついた。
すると、エレ様は大変不本意だといった表情で、学園長様を見据えた。
「ディディエラ、何故あなたまでため息を?公務なら仕方ないのでは?」
すると、学園長様はフンッ!と腕を組む。
「ダンスとなれば別です。決まった相手がいるにも関わらず、密着して踊るなど言語道断!許されない行為です!」
学園長様の憤怒に、エレ様が目をぱちぱちする。
「ディディエラ……確かに貴方がアルビーと踊っている所を、見た事がありませんわね。ダンスがお嫌いかと思ってましたけど、まさか……そのような理由で?」
「当たり前です。愛し合うお2人の邪魔など、したくはありませんからね。アルビーは公務だから踊ってくれと言いますが、全てお断りしておりますわ」
「ディディエラ!!」
エレ様は学園長様の手を取った。学園長様はちょっと照れた様に目を背けて、その頬を淡く染めながら不満を口にした。
「本当に殿方は無神経で困りますわね。公務ならば、相手の気持ちなど無視してもいいと思ってらっしゃるのでしょうか」
エレ様も、その手をブンブン振りながら不満をぶつける。
「そうよね!公務、公務って。まったく、フィンも何を考えているのかしら。今日も、ユナがいるというのに、あの聖女と腕を組んで登校して来ましたのよ!」
「先程、いじめにあったユナを放って、あの聖女と仲良く授業に出たとの報告も聞いております」
ここで2人は、キッ!とユナの方を見た。
「「ユナ!!」」
「はいぃぃ!?」
「舞踏会に出ましょうね。そしてフィンの前で殿方たちにチヤホヤされていらっしゃい!そのくらいしないと、男には分からないのですわ!」
「そうですね。ならばこうしましょう。課外授業ですよ、ユナ。授業ですので、飛び入り参加でも構わないでしょう。そう……エスコート役はあなた達の講師にお願いしましょうか。フィンに、あなたをエスコートしなかった事を後悔させておやりなさい!」
舞踏会に出るの?私が?
しかも、何かハードル上がってない?
「ディディエラ、ならば……」
「ディディでいいですわ、エレ」
「じゃ、ディディ?最高のドレスがあるのだけど……アルビーに貰ったとっておきなのよね。ユナに着せてもいいかしら?」
「素敵だと思います。……ずっと気にしてたのよ、あなたが私とアルビーの仲を疑っているのではないかと。誓って何もございませんから、じゃんじゃんアピールなさって下さって構いません。あの人も目が覚めるでしょう!」
何か誤解が解けた様子で、エレ様は満面の笑みを浮かべた。
「いいの?ディディ。貴女の気持ちも大切よ?」
「私は本の中の紳士が好きなのです。生身はどうも……」
なんと!ここで学園長様がいきなり2次元崇拝的な発言を!
「まあ、あなたもそのような本を読むのね、素敵!そんなに魅力的な本があるのなら、私も読みたいわ!」
「ええ!今度お貸し致しましょう!」
2人は熱く見つめ合った。その手は固く結ばれている。
それから2人は頷きあい、ユナの肩に手をやり、優しく語りかけてきた。
「ユナ、ありがとう。あなたのおかげでディディと心が繋がったわ」
「こんなに晴れ晴れとした気分は何十年ぶりでしょうか。ユナ、私たちにお礼をさせて下さいね」
距離が縮まって良かったね!ユナも笑顔だ。
ミーアも、そんなのいいわよーって照れてるユナに、蕩けるような笑顔を向けた。
「ユナ、良かったですわね!これで舞踏会に行けますわよ!」
嫌ぁぁぁぁぁ――!!
ユナの心の叫びは誰にも届かなかった。
ユナにダンスの講義が増えました。でも、ご褒美に好きな学科を取っていいと言われました!
ユナは迷わず剣術を選んだ。でも手合わせはボトルロック発動が怖いから、考えてみましょうって言われたのよね。ユナの相手なら藁人形くんで十分よ!
さて、今日の放課後はオレビンオヤジの捜査をしよう!とメイド姿で校門に行ったら、ラディズラーオ隊長に捕まりました。どうやら警備が厳しくなってるみたい。きっとメイリーンがいるからね。
「ユナ、どちらに行かれるのですか?」
「お墓よ、犯人の手掛かりを探すの!」
「ああ……あの事件ですか。我々に任せてはくれませんか?」
「やっぱり事件だったの?犯人は捕まった?盗まれた副葬品は見つかったの?」
「う……」
仕方ありませんね、と、ラディズ隊長は捜査の進展を教えてくれる事になった。その代わり、今日は温室で過ごすようにと釘を刺されたけどね。温室育ちのお嬢様ってこうやって出来上がるんだと思う。
温室で2人、雑草を引き抜きながら、墓荒らし犯について語らう。BGMはモルト爺の薬草うんぬんよ。
「犯人は有名な盗賊グループの下っ端でした。誰かに雇われていたようでしたが、我々がアジトを突き止めた時には消されていましたよ」
『雇い主は?分からないのか』
エリアスが参加してきた。
「誰に雇われてたかは分からないの?」
「ええ、今、捜査中ですが、分からない可能性が高いです」
『殺られた人数は?』
「何人殺されていたの?」
『薬草はまずはよく洗って裸のまま束にするんじゃよ』
「3人ですね。いずれも10代の若者でした」
『その殺害現場は?見たので?』
「その殺害現場はどこ?見たの?」
『吊るすのはユナの寝床の様な場所がいいのぉ』
「はい。王都の外にある廃屋の1つをアジトにしていた様なのですが……酷い有様でしたよ」
『酷いと言うと?』
「酷いと言うと?」
『頭を下にして天井に吊るしてよく乾燥させてから……』
「皆、頭を切り落とされておりまして……ユナ、大丈夫ですか?」
『ユナ!すまない』
気持ち悪い……。
「申し訳ありません。配慮に欠けていました」
そう言い、ラディズ隊長はユナ抱き寄せ、背中をトントンしてくれた。お父さんみたいで落ち着いた。
ユナは頑張って、想像の中の事件現場をかぼちゃ畑に置き換えた。今日の夢は多分、ハロウィンパーティだと思う。
副葬品はまだ見つかってないという。闇取引に出された可能性があるんだって。捜査は続けるから大丈夫ですよ、と言ってラディズ隊長は帰って行った。
「ごめんね、約立たずで」
温室のベッドの上でクッションを抱え、ユナはエリアスに謝った。
『いえ、私が要らぬ誘導をしたが為に、ユナに迷惑を。申し訳なかった』
「いいのよ。エリアスのおかげで色々聞けたし。で?あれで何か分かったの?」
『それは……』
エリアスは言い淀み、その後も教えてくれる事はなかった。ただ、短剣は離さずに持っておくように言われ、その使い方も教えてくれた。
『ラディズラーオがデキる奴ならいいが……』
「ユナが犯人探してあげるよ!」
『それだけはやめてくれ』
「え?なんで?」
ダンスの練習で疲れきったユナは、ベッドに横になるとすぐにウトウトとし始める。今日もプラズマの皆さんは温室の何処かで盛り上がってる。ユナも混ざりたいけど、クッションとフィン様の上着が気持ち良くて……。
ふわふわと、漂う女の人のプラズマを見ながらユナは目を閉じた。
「ユナ、今度デートしよう。どこがいいかな?君とならどこでも楽しいだろうね」
夢の中のフィン様は甘々だ。でも、沢山のかぼちゃが出てきてユナを笑うの。
分かってる。フィン様の隣りにユナは似合わない。舞踏会に出てもきっと、フィン様はユナの目の前で、メイリーンと踊るのよ。
でもね、ユナのダンスはジャンルが違うの。相手がいなくても大丈夫!!
ハロウィンパーティーは大盛り上がり。1人でも平気!イェイッ!最高――!!って。
ユナは深い眠りに落ちていった。