正しい国の作り方ハロウィン
コメデイがかきたかった。だって本編シリアスなんだもん
目の前にはでかくて、でかくて、オレンジ色の。
巨大な・・・・・メロン・・・・・。
だふー。と。
何気に肩から、全盛力抜けちゃったよ・・・。
でも、でもさ。色といい、形といい、まんま、ハロウイン用のかぼちゃだね!
代替品よ!
心意気よ!
やるのよチヒロ!
と、「何ちゃってかぼちゃ」にペティナイフを突き刺そうと、振り上げた!
がきん!
なぜに、こうも、あらぬ音がするんでしょう・・・。しかも、折れたよ、ナイフ。ありえねえ。
しくしくと泣いていたら。
「・・・・・そろそろ、説明を聞かせてもらえるかな?」
と、アレクシス様とカーシャが、声を掛けてくれた。
「ほう、異界の西洋風お盆・・・????」
「とりっくおあとりいと?意味は?・・・・・まあ」
アレクシス様は、はてなマークを。カーシャは、トリック・オア・トリートの意味を聞いて赤くなって口ごもった。ん?
「あとは、仮装ですね!可愛い魔女とか、お姫様のドレスとか・・・・・あ、みんないつも通りですねえ・・・。もともとは、お化けの仮装するのが本当らしいんですけど、日本じゃ専ら、可愛らしいとか、かっこいい、が当てはまるなー」
「で、なぜそこに、メロウの実がでてくるの?」
「ジャック・オウ・ランタン作ろうと思って・・・かぼちゃの、ランタンなんです。中身くりぬいて、目鼻口開けて、中にろうそく入れて灯すんです!」
「目、鼻、口、ね。どんな感じにするのかな?」
アレクシス様の質問に、側にあった紙にさらさらと書いてみた。
カーシャの顔がぱっと明るくなって、そわそわとアレクシス様を見上げている。そんなカーシャと同じく、私も期待のこもった(気合かもしれない)眼差しでアレクシス様を見ていた。
交互に私達を見てから、アレクシス様は微笑んだ。
「厨房の料理人を呼ぶから、協力してもらうと好いね。カーシャは姫のお側に」
きゃあ!
カーシャと二人手を取り合って喜んだ。それをどこか微笑ましげに見つめるアレクシス様だった。
滞在中の王様達への説明は、アレクシス様にお任せした。
「ハロウイン・・・ね。仮装に、お菓子に、いたずら・・・ね」
なんか、妖しく微笑んでいたような気がするけど、気のせい!
カーシャとイザハヤ巻き込んで、レッツ仮装!
「カーシャはまんま、妖精の姫で良いと思うの!でもドレスはね・・・ティンカーベルみたいでー、こんな・・・かんじ。どう?」
紙にさらさら。出来たデザイン画をまじまじと見たカーシャが、真っ赤になった。
「短すぎますわ、チヒロ様」
「えー、絶対似合うっ!アレクシス様だっていちころです!だから、カーシャはこれ、ね?」
デザイン画を持って絶句しているカーシャの次は、イザハヤ!
「イザハヤは、やっぱり、ジャックスパロウで。・・・・ん、と、こんなかんじ・・・」
「・・・・・・・御意」
生真面目に頷く。イザハヤにとって、チヒロ良ければすべて良し!なのは、明白。
「それで、私は魔女!こんなかんじ」
さらさらさらり。黒いマントに、黒いドレス。黒い帽子に、黒い靴。腰のベルトのみ真っ赤な、魔女。
「あとは、お菓子を沢山作って、みんなに配りましょ!」
このお城に働いてる人だって、未だ甘いものを食べた事のない人がいるはずだから、こっちの世界では、沢山の甘いお菓子を、作って配ってあげようっと!
「私、キャンディ魔女になるんだ!」
お菓子を配ろう。お菓子を配って笑顔をもらおう。幸せになれるから!
「うわあ、デザイン画通り・・・。お針子さんすごーい・・・」
お城お抱えのお針子さんは、腕も良ければ、仕事も速い。その上、拙い出来のデザインからでもその示したところを最大限引き出してくれるので、素晴らしいできばえのドレスになっていた。
で、今、彼女達の羨望の眼差しを受けて怯んでいる、イザハヤとカーシャを見て、納得する。
衣装一筋の彼女達にとって、短いドレスってのは、結構衝撃だったらしい。
「あ、ねえ。人手はあったほうが好いので、お手伝いをおねがいしても?えっと、仮装に使えるドレスなんてのは・・・ある・・・のね?」
彼女達の目がキラーンと輝いたのを見たわ!創ってるね!創作意欲を刺激しちゃったんだね!
楽しみ!です。
厨房からは、ワゴンに乗せられた「何ちゃってかぼちゃ」のメロウの実が、見事なランタン姿でご到着。お城のそこここで、淡いオレンジの光を灯していた。今夜ばかりはお城の明かりも少し暗く、だからなおさらに、淡いオレンジの光は幽玄だった。
宵闇に淡いオレンジの灯火。
先だって、城下の孤児院のすべての子供達が、お城に招待されていた。
始めての事に、身奇麗にし、それでもびくびくと、お城に入ってきた子供達を待ち受けていたのは・・・・・。
「お菓子食べなきゃ、いたずらするぞー!」
と、言って駆けまわる太陽と月の巫女と。
「・・・お菓子、食べなきゃ、い、いたずら・・・します!」
と、普段は絶対にありえないミニスカドレスの風の神殿の長。
「姫の作ったお菓子ですよ、食べないなんていいませんよね?」
と、要らん殺気を込めて呟く、無頼者。
他にも色々な、ミニスカドレスの妖精や、魔女っ子が溢れていた。(お針子さん、厨房のウエイトレスさんなどなど)
子供達は、始めこそ警戒していたが、優しい眼差しで籠を差し出す巫女姫に、風の長に、お針子さんたちに、約一名怖い目の女男に、なれていった。
怖い、悲しい、寂しい眼差しが、どんどん優しく、明るいものになる。
うれしい。
「お菓子、甘いねえ」
うれしい。
「お菓子、おいしいねえ」
嬉しい。のに。ちょっとだけ、さびしい。だって口の中で溶けちゃうの。
嬉しくて、おいしい。でも、もうないの・・・。
それはきっと今宵が夢に相違ないから。
明日から、また、寂しくて悲しい日が続くから。
だから、しあわせで、ちょっとだけさびしくなる。
チヒロは、一抹の寂しさを伴なって喧騒が薄れていく頃、子供達を見て言った。
「あのね、来年はもっと沢山お菓子を作ってみんなの分の籠もつけて、みんなと一緒に、トリックオアトリートって言って回ろうね!お城のみんなも城下のみんなもおどかしましょう!」
わあ、いいですねえ。
お針子さんが笑う。
じゃあ、来年のためにドレスを考えなきゃ。
わあ、いいですねえ。
厨房のウエイトレスさんが笑う。
じゃあ、来年のためにお菓子の作り方をもっと知りたいなあ。
そして巫女姫は微笑む。
「だから、みんなも手伝って?」
子供達の歓声が上り、幕は下りる。
寂しさは、仕方が無いのかもしれない。
だって、お祭りの後だから。
「静かになりましたねー。あ、カーシャ、アレクシス様にその格好ちゃんと見せました?」
「お祭りが終わったら、伺おうと思っております」
「あ、じゃ、これ」
なけなしのお菓子、籠に残った最後の一個、をカーシャにわたした。
「だって、カーシャの格好じゃ、トリックオアトリートってアレクシス様に言われたら洒落になんないから!」
そう言って笑ったら、見る見る真っ赤になったカーシャが、途端に素足を気にし始めた。
「も、っもう、チヒロさまったら!」
駆け出す後姿に手を振って見送る。もう、カーシャッたらかわいいんだから!
くすくす笑っていたら、イザハヤがザーッと顔色を悪くしていた。なに?
「・・・姫、あれで最後?うそですよね?あと少しくらいはお菓子が残ってはおりませんか?」
「?ないよ?カーシャに上げたので、本当に最後の一個。・・・どしたの?」
イザハヤが絶句して固まった。
「ふうん。じゃ、今、チヒロに言えば叶うんだ」
何を?なにが?
扉の影から現れたのは、どこか嬉しそうなセイラン様。
人の悪さが滲んでるオウラン。(隠そうよ)
嬉しそうに麗しく微笑むリシャール様。
うわっちゃーって感じで、頭抱えたシャラ様。
そしてさらに真っ青な顔になったイザハヤ。
あれ?
も、もしかして、マズカッタ?
「イザハヤ!お菓子!お菓子残ってない!?」
私の声に、かぶさるように、声がした。
「「「「Trick or Treat!!!」」」」
この後の展開はご想像にオマカセシマス・・・。