あたりまえだろ、神沢
はぁ……職員室で何を言われるのやら…
まさかさっきの生徒みたいにカンニングを疑っているのか?そうだとしたらかなり面倒だな…
俺はそんなことを考えながら職員室に入った。
「失礼します……神沢優です。」
そう言うと、中にいた俺達の学年を担当してくれている先生達は一斉に俺を見た。
まぁ…そりゃそうか……。
今まで赤点だったやつが急に100点を取ったんだからなぁ……。皆不思議に思って当然だ。
「おー神沢こっちだぞ。こっち」
田代先生(担任の先生)は出口扉のすぐそばの席に座っていた。足を組んで、偉そうにコーヒーを飲んでいる。
……全く、普通にしてれば美人なのだから普通にしてればいいのに…。
俺はそんな田代先生の元へと向かった。
「よっ、待ってたぞー。」
と、田代先生は言う。
「…はい。それで何の用ですか?」
「もちろんお前の留年の件だ。お前は今回のテストのおかげで何とか留年はしなくて済みそうだぞ。提出物もだしてるみたいだしな」
「はい……」
俺はそう返事をしたのだが…先生からの返事は返ってこない。
「あ、あの先生……?」
「ん?なんだ?」
「え、それだけですか…?」
「……そうだが?他になにか言うことがあるか?」
……これは拍子抜けだ。
てっきり不正を疑われると思っていた。しかし先生はそんな事を一切口にはしなかった。
「先生は…疑わないんですね。」
俺はあえて何をかは言わなかった。しかし先生は今の俺の発言の意味をしっかりと理解してくれたようだ。
「あのなぁ…先生が生徒を疑ってどうするんだ。私はそんなことをする三流の教師ではないんだぞ。」
先生は真剣な眼差しでそう言った。
俺のこの時確信した。この人は間違いなく一流の教師であると。
「先生は俺の実力を信じてくれているんですか?」
「あたりまえだろ、神沢。現に結果が出てるじゃないか。ただお前は少しエンジンをかけるのが遅い。私がお前に言いたいことはそれくらいだ。」
「そう…ですか。ありがとうございます先生。では失礼します。」
俺は先生に頭を下げて職員室を出た。
そして教室に帰ろうとしたところで……職員室の扉が開き田代先生が出てきた。
「神沢、もう一つ、いや2つ神沢に言い忘れたことがある。」
先生はそう言った。
「なんでしょうか?」
俺は先生にそう返した。何を言われるのか全く想像がつかない。
すると先生は歩きだし俺の目の前で止まった。
先生は右手を俺の頭にのせた。
「神沢…よくやった。」
そう言って田代先生は笑顔で俺の頭を撫でてくれた。子供扱いされている気がして少し嫌だったが俺はそれを拒むことはできなかった。
それにしても…田代先生って美人だとは思っていたけど……笑うと更に美人になるんだな。
「それで先生……もう1つはなんなんですか?」
俺がそう言うと、先生は少しだけ顔を赤くして体をモジモジとさせた。一体どうしたんだ?
「あっ、あぁ……もう1つな……。その…お前今日すごくカッコいいだろ?正直……す、すごくタイプなんだ。よかったら私と子作り(結婚)してくれないか!?」
先生はそう言った。
もちろん俺の返事は決まっている。俺は先生の目をしっかりと見て笑顔でこう言った。
「黙れよ。3流教師」