6話:元剣聖、誓う
評価やブクマ、レビューして言ってくれたら嬉しいです!
是非この作品を日間1位に!
俺はシャルロットの気配を覚えているので、その気配を探りながら街の中を探す。
だが……
「シャルロット様の気配が無い? もしかして!」
嫌な予感がした俺は一度屋敷へと戻り、エトワールさんがいる書斎へと駆けこんだ。
入るとアイーシャさんはおらず、いるのはエトワールさんのみであった。
「どうしたアルス君」
「嫌な予感がするので私は街の外を捜索しようと思います」
「根拠はあるのかい?」
「あるとは言い切れませんが、シャルロット様の気配が見当たらないので、恐らくは街の外に出た可能性が高いと思われます」
「わかった。いないと分かったらすぐに戻ってきなさい」
「わかりました」
出て行こうとする俺に、エトワールさんが待ったをかけた。
「待ちなさい」
「はい?」
「これを持っていくとよい」
渡されたのは何やらカードみたいなもので、そのカードの表面にはルスキニア公爵家の紋章が彫ってあった。
「これは?」
「通行手形だ。その人の身分をこちらが証明するものだ。持っていきなさい」
「ありがとうございます」
そう言って俺は屋敷を出て門の外へと向かった。
門に着くと、門番さんに止められた。
「待ちなさい」
「すみません急いでいるので」
俺は先ほどエトワールさんから頂いたカードを提示した。
「こ、これは失礼しました! どうぞ!」
その身分証の高さに、敬礼をする門番。
俺は門番に尋ねた。
「あの、ここでシャルロット様が通りませんでしたか?」
「ん? シャルロット様? たしか結構前にここを通って森の方に向かいました」
「ありがとうございます! それとさっきの事をエトワール様に報告してください!」
「え? あ、はい。その君名前は?」
「アルスです。では」
そして俺は、門を抜け森の方へと気配を探りながら駆けて行く。
気配を探り探り探って数分。
「――見つけた!」
反応があった距離は1キロ先。しかも魔物の反応が複数というおまけ付きだ。
状況は最悪と言っていいだろう。
「なんとか耐えてくれよ!」
日が沈んだ月下の下、そう願いながら俺は身体強化を全力で使用し駆け付けた。
全力の身体強化のお陰で、1分数十秒という時間でシャルロットの姿が目視で確認できた。
狼型の魔物、グレイウルフ十数体に囲まれていた。そのうち何体かが倒れていることから、シャルロットが倒したのだろうと推測できた。
「やぁぁぁっ!」
さらに一体がシャルロットの剣によって倒される。
だがシャルロットの姿はすでにボロボロ。
後ろから一体の体当たりによってシャルロットは地面に倒れてしまう。
「うっ、ぐっ、こんなところで、こんなところで私は負けるわけにはいかないの! だから頑張って努力してきた! 姉様に、みんなに、認めてもらいたいから!」
努力しなかったら、諦めたら、そこで自分が『出来損ない』と認めてしまうから。
そして自分の積み重ねてきた努力を、姉に、周りに認めてもらいたいから。
ああ本当に、笑えない。
そう叫んだシャルロットに一体が襲い掛かった。シャルロットは遅れながらも気が付いたが、間に合わない。
次の瞬間、その一体の首が宙に飛び血飛沫が舞った。
「シャルロット様、ご無事ですか!」
「――アルス?」
「はい。遅れて申し訳ございません。もう大丈夫です」
安心しきったのか、シャルロットはその場に膝を突いてしまった。
だが、グレイウルフは突然現れた俺に対し、ガルルッとこちらを睨み警戒していた。
「さあ犬っころ共。誰に手を出したのか、わかっているのか?」
一歩、二歩と後ずさるグレイウルフ。どうやら俺のプレッシャーに当てられたようだ。
そんな中、数体が俺に襲って来る。
「遅い」
そのまま襲ってきた数体を斬り捨て、次々と俺に襲ってきた。
だがそのことごとくを斬り捨て、残り二体となったグレイウルフが逃走しようとしていた。
「逃がすと思うか? ――飛剣斬」
――一閃。
鮮血が舞った。
剣の刃が、圧縮された空気の刃となって残りの二体のグレイウルフを仕留めたのだ。
俺は剣を仕舞い呆然とこちらを見るシャルロットの下へと向かい、手を差し伸べた。
手を差し伸べられたシャルロットは、その手を掴み立ち上がる。
「遅れて申し訳ありません」
「い、いえ……迷惑をかけたわ」
そうか。ずっと一人、頑張っていたのか。
俺はこの少女が、この王国で一番の騎士となって輝く姿を見たいのだろう。
そのままシャルロットの手を取ったまま、俺は膝を突き誓う。
「シャルロット様。私は貴方様の剣となり盾となることをここに誓います。いついかなる時も、あなた様をお守りいたしましょう」
「……本当にいいの?」
「はい。この命、シャルロット様にお預けいたします」
シャルロットは俺の顔を見て、どうしたらいいのか迷っていたが――決断したようだ。
「わかったわアルス。あなたの忠誠、確かにこのシャルロット・ルスキニアが受け取ったわ。よろしく、私の騎士」
「はい。|My dear master《我が最愛なるご主人様》」
そして月明かりが差し込む森の中、俺はシャルロットの手の甲へと口づけをするのだった。