5話:元剣聖、捜索に行く
俺は剣を抜き、シャルロットと対峙していた。
無言の静寂。
開始の合図などは無い。
先に動いたのはシャルロットだった。最低限の動作で俺へと駆けてきた。
だが俺は動かずに、構えて待つのみ。
シャルロットが俺の懐に入ると、剣を下から上へと振るった。
俺に当たるかと思われたその一撃は、見事に受け止められた。
「うそっ!?」
信じられないものを見たような目で俺を見るシャルロットだったが、すぐにもう一撃放ってきた。
その攻撃を剣で受け流し、俺は剣を振るう。
「くっ!」
シャルロットは俺の剣を受け止めたが、想像以上の一撃だったのか呻き声を漏らした。
さらに連撃を放つがシャルロットは辛うじてその連撃を防ぎ切った。
あれを防ぐのか。やるな。
それから互いに幾つもの剣撃が交わう。
一度距離を取った俺はシャルロットに賞讃の言葉を送る。
「やりますね。流石です」
「はぁ、はぁ……何が「流石です」よ。本気でやりなさいよ!」
本気でやっていない俺に対し、シャルロットは怒鳴った。
「あたし相手には本気でやれないっていうの!?」
どうやら彼女の怒りを買ってしまったようだ。
仕方ない。少しばかり本気を出そうか。
これ以上真面目にやらないのは彼女に対して無礼であろう。
そう思った俺は少し本気を出すことにした。
「分かりました。先ほどまでの非礼、どうかお許しください。次は本気で行きます」
「――ッ!?」
そう放った直後、俺の雰囲気は一変した。
シャルロットも気配が変わったことに気が付いたのだろう。先ほどよりも、剣を持つ手に力が入ったのが見て分かった。
「行きます」
「――え?」
俺は一瞬で彼女の目の前に移動した。
これはただの身体能力だ。魔力だって使ってはいない。
「これで終わりですね」
「――ッ!?」
シャルロットは自分の喉元に突き付けられる剣を見て冷や汗を流す。
「……降参よ」
「シャルロット様!」
そう言ってシャルロット早々に立ち去ってしまった。
その日の夕方、事件は起きた。
俺は屋敷が騒がしいことに気が付いた。
何があったのか使用人に尋ねる。
「あの、何があったのでしょうか?」
「ええ、君は確か、エトワール様とシャルロット様の命の恩人」
「そうです。何があったかお聞かせいただけないでしょうか?」
「私からは何とも。ですのでエトワール様の書斎に案内いたします。何か聞けると思います」
「分かりました」
俺は使用人の案内で書斎に通された。
書斎にはエトワールさんと、妻のアイーシャさんが深刻そうな表情をしていた。
「ああ、アルス君か」
「はい。あの、お屋敷が騒がしいようですが?」
「ああ、実は――」
エトワールさんは何があったのかを話してくれた。
「シャルロット様が何処にもいない?」
「ああ」
「あの子ったら、気にしているのかしら……」
アイーシャさんがなにやら気になることを言った。
「あの、アイーシャ様、その、何を気にしているかお聞きしてもよろしいでしょうか?」
「ええ。知っていると思うけど、シャルロットは姉のセシリアと比べられているのよね。それで今日、王家から来た騎士の人が言っていた陰口を聞いたらしくて。それで屋敷を飛び出して行ってしまったみたい」
「そうでしたか」
それには俺にも責任があると感じ、捜索に参加できないか聞いてみた。
「いいのかい?」
「ええ。本人がいませんと、騎士にもなれませんから」
笑ってそう言うと、エトワールさんとアイーシャさんは「頼む」と言って了承してくれた。
「我が娘を探してきてくれ」
「お願いします」
そう言って頭を下げる二人。
「はい。それではすぐに行ってきます」
俺はシャルロットを探しに、街へと出て行くのだった。
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