15話:元剣聖、学園に通うことに?
魔力制御トレーニングを始めて数日。
流石と言うべきか、セシリアは完璧とは言えないが、魔力制御をマスターしていた。
若干魔力が乱れる時もあるが、完璧といえた。
「セシリア様、少し魔力が乱れています」
「あ、ああ」
「……はい、問題ありませんので続けてください」
しばらくすると。
「シャルロット様、乱れていますよ」
「はいっ!」
そう言って魔力を制御し直し、程なくして魔力は安定した。
魔力制御を失敗すると魔力暴走が起きる。
魔力暴走が起きると大爆発する。それだけだ。だがその大爆発は制御する魔力量によって比例する。
俺レベルが限界の魔力量で制御の失敗をしたらこの街一帯が更地となってしまう。
前世の世界では度々爆発が起きていたが……
そんなこんなで俺たちは魔力制御を頑張るのだった。
夜の食事中、セシリアが明日帰ると言い出した。
「セシリア姉様それは急では!?」
シャルロットの言葉にエトワールさんとアイーシャさんも頷き同意する。
帰る理由をセシリアは説明をした。
「本当は明後日だったのだが、昼頃に連絡の手紙がきたのです。それが緊急の案件だったために帰らなくてはいけないのです」
端的だがセシリアは帰る理由を説明した。
「そうなのか。それは仕方がないな。もう少しゆっくり話したかったが……」
「そうね。現役騎士団長は忙しいわよね」
エトワールさんとアイーシャさんは残念そうに、だが仕事だから仕方ないといった複雑な表情をしていた。
「シャルもすまんな」
「いえ。それが騎士の仕事ですから仕方の無いことです」
シャルロットはそう言ってセシリアへと笑みを返した。
「ありがとうシャル」
しばらく無言の間が続いたが、それを破ったのはエトワールさんだった。
「そうそう。そろそろシャルの入学式がある」
「そうだったわ!」
エトワールさんが「そこで」と俺の方を見た。
何故俺の方を見たんだ? そう思っていたが、その答えはエトワールさんの次の言葉で分かった。
「アルス君」
「なんでしょうか?」
「君にもシャルの護衛として学園に行って欲しい」
「私が、ですか?」
「そうだ。護衛としてと言ったが、生徒としての入学だ。どうかね?」
俺に学園に行かないか? そう尋ねるエトワールさん。だが俺の答えはすでに決まっている。
「私はすでにシャルロット様の騎士です。シャルロット様が行くのなら、私は付いて行くのみです」
「そういうと思って入学試験の手続きを済ませている」
手が早いこった。
流石はエトワールさんだ。
俺の答えを聞いたシャルロットはドヤ顔をしていた。
「アルスならそう言うと思っていたわ」
ふふんっと胸を張るシャルロットが微笑ましくて、俺は笑みを浮かべた。
「そうか。アルスが付いていてくれるなら安心できる」
「セシリアの言う通りね。アルス君なら信頼できるわ」
セシリアとアイーシャさんが俺をそういう目で見ていてくれたのは嬉しい。
これは意地でも護らねば。
「しっかりと護らせていただきます」
「それは心強い。だがまずは入学試験を頑張らないとな」
エトワールさんはそう言って笑うのであった。