14話:元剣聖、姉妹を鍛える
セシリアが来てから三日。
シャルロットといつものように訓練していると、セシリアが気になったのか、参加したいと言い出したのだ。
シャルロットは、セシリアの参加を決めるのは俺だと言っていた。無下にも断れないので、参加を許した。
最初は嫌な顔をしていたシャルロットであったが、今となってはいつも通りになていた。
セシリアとも打ち解けることができ、エトワールさん曰く、『小さい頃の二人を見ているようだ』と言っていた。
俺は打ち解けあう事が出来て良かったと、二人が素振りをする姿を見て思った。
今はこうして俺の言った通りに素振りをしているセシリアであったが、重い木剣を渡すと驚いていたのを思い出した。
だが流石は現役騎士団長だ。開始は重さ2倍の木剣を持っていたが、今では重さ3倍の木剣をもって素振りを行っている。
それから二時間ほどの素振りが終わった。
「それじゃあ次は魔力トレーニングを始めます」
「魔力トレーニング?」
そう聞き返してきたのはセシリアだった。
シャルロットは一緒に行っていたので知っているのだが、セシリアは知らないようだった。
「ご存じないのですか?」
「ああ。どういったものなのだ?」
セシリアは魔力トレーニングの重要性を知らないようなので、俺は丁寧に説明をする。
「最初の保有魔力量は人によって様々なのは知っていますよね?」
「知っているとも。人の成長で魔力量は上がっていくことも」
「それは誤解ですよ。いや、合ってもいます」
「どういうことだ?」
「はい。魔力量は体の成長と同時に器が広がっていきます。ですが、出せる限界の魔力をギリギリで制御していくことでその器を広げることが可能です」
「本当なの?」
それを聞いたセシリアは訝しむ表情でこちらを見た。
どうやらこれだけでは納得してもらえないようだ。
一度見せるしかないだろう。
「セシリア様はどれくらいの魔力量がおありですか?」
「ん~、私の魔力量は一般人の2倍程度はあるはずだが」
「それは凄いですね。魔力制御はしたことはありますか?」
「それはある。でも限界まではやったことは無い」
「では私が現在保有する魔力量を見せましょう」
「お願いしよう」
「分かりました」
「私もアルスが魔力をどれだけ持ってるか知りたいわ!」
そういえばシャルロットにも見せたことは無かったな。そう思いながらも俺は魔力を放出した。空間が悲鳴を上げるかのように音を鳴らし鳴動する
瞬間、セシリアが驚愕の声を上げた。
「うっ、なんだこの濃密な魔力の量は……これは私の倍どころではない。それも数十倍、いや、それ以上はある……」
「ど、どんだけなのよアルス……それにここまでの魔力。見た事が無いわ」
二人は俺の魔力に当てられ顔色を青くさせ、ついには尻餅をついてしまった。
俺が魔力の放出を中断するころ、二人はホッと安堵の息を吐いた。
地面に尻餅を突いているセシリアとシャルロッテへと向き直り、「どうぞ」と手を差し伸べた。「ありがとう」と返事をし手を取り立ち上がる。
「失礼をしました。ですが今ので私が保有する魔力量が分かっていただけたかと思います」
「あ、ああ……」
「そ、そうね……」
わかってもらえて何よりだ。
「では魔力制御のトレーニングを始めましょう」
そうして魔力制御トレーニングが始まるのだった。