11話:元剣聖、令嬢の為に戦う
現在。シャルロットとセシリアの二人が、屋敷の庭で剣を構え対峙していた。
「構えがまともになったみたいね」
「ありがとうございます。でもここからですよ」
「見せてもいましょうか。来なさい」
「では遠慮なく!」
そう言ってシャルロットは駆けだし剣を振るった。
だがその一撃をセシリアは容易に受け止める。
「以前より早く、そして鋭くなったようね」
「……」
シャルロットは何も答えない。
それは今関係ないからだ。
一度距離を取って再びセシリアと剣を交える。
だがセシリアにはまだ届かない。セシリアとシャルロットの間にある実力の壁は高かった。
それでも諦めず立ち向かうシャルロットだったが……
「きゃっ!」
セシリアによって振り払われ地面を転がった。
「終わりのようね」
「ま、まだです!」
「諦めの悪い子」
シャルロットは立ち上がり剣を構えた。
その構えは――飛剣斬を放つ構えだった。
そして――
「――飛剣斬」
――一閃。
斬撃がセシリアに迫る。
だがセシリアはシャルロットが飛剣斬を放ったことに驚いていた。
「なんでその技をシャルが?!」
「練習したからです!」
セシリアは頷き一閃。
シャルロットが放った飛剣斬が、セシリアの一撃で打ち消されてしまった。
「驚いたけど威力がまだまだね」
一瞬でシャルロットの前に移動したセシリアは、手に持つ剣を喉元に突き付けられ決着が付いた。
「そんな、私の努力が……」
力なく座り込むシャルロットその目には涙が溜まっていた。
「驚いたけど剣は止めた方がいいわよ。努力の無駄だったわね」
「……」
そして――涙が零れ落ちた。
エトワールさんとアイーシャさんは何かを言おうとしたが、悲しそうな表情をし口を閉じた。
だが、そんな彼女の努力を馬鹿にされたのだ。俺が黙っているはずがなかった。
「セシリア様、それはあまりにも言い過ぎじゃないのですか?」
その発言に、その場のみんなが俺に目を向けた。
セシリアはそのような言葉を言った俺を睨みつける。
「……あなたは? 関係者?」
「はい。シャルロット様の騎士をしておりますアルスと言います。そしてシャルロット様の――師匠です」
「そう。それで?」
シャルロットの側に歩みながら続ける。
「私の主人の努力を『無駄』と言われたのです。何か言いたくもなります」
「それでシャルの騎士がその姉に歯向かう気?」
「いえ、滅相もない。ただ」
「ただ?」
「シャルロット様がしてきた努力を、『無駄』と言ったセシリア様には、謝ってもらいたいのです」
「成人したばかりの少年騎士が、王国騎士団長の私に、謝れというの?」
「私はシャルロット様の努力を近くで見てきました。正直に言ってしまうと、凄く不快でしかたがありません」
俺はシャルロットの肩に手を置いた。
「……アルス?」
「大丈夫です。シャルロット様が誰よりも努力していたのはこの私が知っていますから」
「……うん。でも」
「任せてください」
そう言って俺はセシリアに視線を向ける。
「そう。ならあなたが私に勝てたなら言うことを聞くわ。その代わり私が勝ったらシャルの騎士を止めてもらうわ。それで構わない?」
「姉様それはあまりにも――」
「シャルは黙っていなさい」
「ッ!」
怒鳴られ小さくなるシャルロット。
シャルロットの言いたい気持ちもわかる。
だがここは、あなたの騎士である俺に任せてほしい。
「ええ、それで構いません」
「アルス!」
「シャルロット様」
「……なに?」
「私は強いです。誰よりも。ですから安心して見ていてください」
「……わかったわ。あなたを信じる。だから――絶対に勝ちなさい」
「はい、|My dear master《我が最愛なるご主人様》」
俺はシャルロットにお辞儀をし、腰に付けている剣を抜いてセシリアの方を向いた。
「騎士ならそんな薄着と剣でいいの? 私の剣は――」
「これで十分です。それに私は騎士であって一人の剣士でもあるのです」
「……そう」
セシリアは何も言わなかった。
だた静かに剣を構えたのだ。俺も剣を構え対峙した。
そこにエトワールさんが俺に声をかけた。
「アルス君。くれぐれも気を付けてくれ」
「分かっております」
そして試合が始まった。
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