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1話:元剣聖、追放される

新作です!

見ていってくれたら嬉しいです!

 ――剣聖


 かつてそう呼ばれた男がいた。

 剣と魔法が支配する世界にて、彼は漆黒に染まる剣と絶技をもって、幾多の敵を打倒し切り裂いて切り裂いて切り裂いてきた。


 そしていつしか男は、剣の頂へと立っていたのだ。


 だがそんな最強の剣聖ですら、老衰には勝てなかった。

 子供の頃から両親に剣のみに鍛えられ、そして男は天涯孤独となり人生の全てを剣に注いで生きてきた。そんな彼は死に際に一つ、思い残したことがあった。

 それは……


『次があるなら、誰に何も言われなで自由に生きたい』


 そうして誰にも看取られることなく、最強と謳われた『剣聖』はその生涯に幕を下ろしたのだった。



 ◇ ◇ ◇



「アルス、お前はつくづく無能だな」

「ふぇ~、リヒト兄様強いです」


 アルスとは俺の名前だ。

 この通り俺は転生したようだ。勿論前世の記憶を有したまま。

 だが前世とは別の世界の、ハーヴェスト王国という国にある代々歴史に名を刻む名家、レーヴェン伯爵家に生まれ育った。

 そんな名家に生まれた俺だったが、この通り()()と言われていた。


 これには理由があった。自由に生きたい、ただそれだけのために俺はこうして無能を()()()いた。


「無能に教える時間がもったいない。お前は屋敷の掃除でもしておけ」

「わかりましたリヒト兄様」

「私の事を兄と呼ぶな! リヒト様と呼べ!」

「は、はい。リヒト様……」

「そうだ。それでよい。さっさと私の前から消えろ。目障りだ」

「すみません」


 俺は落ち込むようにして屋敷の中へと戻って行った。

 俺への態度は兄リヒトのみならず、家族ぐるみで行われていた。

 父ファールマとその妻フネル、つまりの俺の母も一緒に俺の事を無能と蔑んだ。

 これは俺が選んだことだから仕方ないと言えば仕方なかった。


 兄弟は俺の他に、長男のリヒト、次男のテロスがいた。二人はとても優秀で剣の腕は並みの騎士よりも上だった。だがそんな二人とは正反対の俺は、剣の腕もいまいち、さらにはどんくさいという印象を与えていた。


 俺は計画通りに進んでいることにほくそ笑む。


 これで自由に生きられる!


 さらに月日が経ったある日、俺アルスは15歳となった。この世界では15歳が成人となっている。


 外で洗い物をしていると、次男のテロスが俺に声をかけてきた。

 その表情はとても楽しそうだった。

 何かあるのだろう。


「おい、アルス。父上がお前を呼んでいる。どうせ成人したからお前を追い出すのだろうな」

「そ、そんな!」


 取り敢えずは「そんなことあるわけないよ!」的な反応をしておく。

 どうやら俺を追い出す時期が来たらしい。


 父ファールマが待っている書斎に向かった。

 扉の前に立ちノックをし名前を言う。


「アルスです」

「入れ」


 父の声に従って書斎の中に入ると、そこにいたのは父ファールマ以外に母フネルと長男リヒトまでもが揃っていた。

 特にファールマの体からは筋肉が浮き上がっていた。それもそうだ。父ファールマは元だが王国の騎士団長を務めていたほどなのだから。今でも肉体の鍛錬は怠ってはいない。

 だからか、見た目の威圧感が半端なかった。


「あ、あの父上、話とは一体……」


 父が口を開く前にフネルが先に口を開いた。


「あなた、自分が無能だってまだ気が付いていないの? あなたなんて生まれなければよかったんだわ。剣も平均以下、そしてどんくさい」


 母に続いてリヒトとテロスも口を開いた。


「母様の言う通りだ。お前はレーヴェン家の恥だ」

「良く今までへらへらと生きて来たな。レーヴェン家の家名すら名乗るのがおこがましいのに」

「静かにするんだ」


 父ファールマのその声で、二人は静かになった。


「アルス」

「はい、父上」

「テロスが言った通り、お前に我がレーヴェン家の名を名乗らせること自体してほしくない」

「……はい」

「たしか今日で15歳だな?」

「その通りです」

「ならアルス。お前を、本日をもってレーヴェン家から追放する」

「そ、そんな! 待って――」


 俺は「それはあんまりだ!」という表情で「待ってください」と言おうとし、ファールマによって遮られた。


「黙れ無能。これは総意による決定事項だ」

「……」

「以上だ。これからは好きにすると良い」

「わかりました。いままでお世話になりました」


 計画通りだ。これで自由に生きていける。


 そうして俺は自室に戻り服などの荷物を『収納魔法』へとまとめた。


 この収納魔法であるが、これは前世で何とか習得できた唯一の魔法だった。

 これがあるお陰で荷物の持ち運びが楽になった。

 だが容量は無限ではない。その人の魔力量の量しか収納できないのだ。


 俺は子供の頃から魔力量を上げるために剣術と共に鍛えたのだ。現在の収納量は相当だ。

 だがカモフラージュとして、怪しまれないように麻袋にある程度入れてある。


 こうして俺は屋敷を出て行くのであった。




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次に22時に更新します。

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