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【STG】目指せアイドル!〜撃墜王の付き人

作者: 結城明日嘩

「私、アイドルになってチヤホヤされたいの!」

「はぁ、そうですか」


 僕はゲームする手も止めずに適当に相槌を打つ。

 幼馴染の暁里あかりが思いつきで突拍子もない事を言うのには慣れている。適当に聞き流していたらそのうち飽きる、これを待てばいい。


「でもアイドルが甘くないくらい分かっているわ」

「そうだねー」


 暁里の外見ルックスは、確かに可愛い部類に入る。クラスの内外で噂を聞いたり、告白された報告も何度かされた。

 でも歌唱力は可もなく不可もなく、リズム感は悪くなさそうだが運動神経は悪い。何もない所でつまずくし、キャッチボールもうまくできない。

 がさつで飽き性なので楽器を試しても長続きしない。他の趣味も同様だ。多趣味と言えば聞こえはいいが、基本的な部分も満足にできないまま止めている。


「アイドルもぐんゆーかっきょ。目立つ部分がないとダメなのも分かってるわ」

「そだねー」


 む、この敵、硬いな。一発のダメージでかすぎるし、調整なにやってんの。


「もう漫画やアニメ、ゲームなんかのヲタジャンルが好きなだけじゃダメなの」

「そ、だねー」


 あぶね、今のは紙一重だった。大鬼の一撃をパリィして、回避で回り込んで……与えるダメージこんだけかよっ。


「だから私をゲームの達人にしなさい!」

「そっだねーっ」


 ここで背後まで届く範囲攻撃とか酷すぎだろっ。ガードを弾かれたのをバックステップでキャンセルしながら、更にバックステップ……スタミナがねぇよ。振り向きざまに振り下ろされる棍棒にタイミング合わせてパリ……。


「ちょっと聞いてんの!?」

「おわっ」


 テレビと俺の間に割り込んできた暁里に仰け反る。一応可愛いんだから、あんまり近づくなよ。何かいい匂いもするしっ。

 もちろん、大鬼は待ってくれず、非情の一撃を防御する事はできずにキャラは死亡した。




「やっぱり、何か秀でた芸が必要なのよ」

「まあ、そうだろうね」


 邪魔されるくらいならと、ゲームは止めて話を聞く姿勢になる。僕はそんなにアイドル業界に詳しい訳じゃないけど、声優ですらアイドル化されてて外見を求められる時代。

 アニメや漫画が好きって人はごまんといる。それだけで目立てる訳はないだろうし、そんなに漫画好きって訳でもないもんな。


「じぁあ、アレだ。太鼓叩くやつ」


 リズム感は悪くなく、動体視力は結構いいらしい暁里は、太鼓ゲーならハイスコアを叩き出せる。他のリズムゲーになってくると、ボタンが覚えられずに続かないのだが。


「何か太鼓ってダサい」

「そうかなぁ」


 と答えながら思い出す。そういえば太鼓を叩くアイドルはもういたな。太鼓も点を出すだけじゃなく、叩き方で魅せるプレイができないと視聴は伸びない。バチを投げてキャッチしたり、回転しながら叩いたり、もはやダンスの領域で暁里には無理だな。


「既存のゲームだと、何だかんだで先駆者がいるのか……」


 そう呟きながらネット検索を行う。


「まだ始まってないゲームをやり込めば、製品版でデビューとかできるかもね」

「え、どういうこと?」

「実際に販売される前に、テストプレイヤーを募集するようなゲームがあるんだよ」


 βテスター募集のページを見せながら説明する。といって大抵のゲームは、既存の物をベースにしているから、全く新しいゲームというのはなかなかあるもんじゃないけど。


「VRゲームか、新しいと言ったらまだ新しいけど……ん、リストバンド型コントローラー?」


 VR自体は普及こそしてないものの、出て何年かは過ぎていて真新しいものって訳じゃない。まあ、普及が進んでないだけに、ライバルは少なそうだけど。

 リストバンド型コントローラーは新しいな。手や指の動きで直接操作するっていうのは、今までのコントローラーと違うんで、先に慣れるとメリットはあるな。

 でも題材が宇宙を舞台にしたシューティングゲームか。ハードルは高そうだなぁ……。


「なになに、何かあった?」


 僕の背後から身を乗り出すようにして手元のスマホを覗き込んでくる暁里。だから近いって。


「操作が新しいっぽいゲームがあるんだけど、ちょっと難しそうかなって」

「面白いの?」

「まだ始まってないから分からないよ」

「じゃあ、やるしかないわね」


 悩むより行動できるのは彼女の強みだ。まあ、そのせいで被害をこうむる事も多いのだけど。

 βテストなら無料だし、やって損することはないか。正直、僕自身がこのゲームに興味がある。


「じゃ、申込みしちゃうね」

「ええ」




 一週間ほどで機材が届き、暁里の部屋にセッティングしにいく。久々に入った暁里の部屋だが相変わらずのファンシーな雰囲気で、やや無骨なVRセットは浮いてしまっている。

 それでもミーハーな所が多分にある暁里は興味津々で機材を見ていた。


「これを被ればいいの?」

「先にこのリストバンドを付けるんだよ」

「そっか」


 気が早る暁里に説明しながら、自分もコードの接続やらをやっていく。勉強机に座るような形でセッティングして、後はゴーグルを付けた時のコード類をまとめるくらい。


「椅子に座ってゴーグル付けて」

「ほいほい……これ、全く見えないね」

「そりゃ、周りが見えたらVRの醍醐味が薄れちゃうよ」

「庸介、いたずらしちゃダメだよ?」

「っ……しないってばっ」


 今までそんな事考えてなかったのに、言われたら意識しちゃうだろ。

 当の本人はケロッとしてて、リストバンドの電源ボタンを押していた。


「うわぁ、すごい。これすごいねっ」


 VRの映像を近くのテレビに映せるようにしておいたので、暁里が見ている映像はそっちに映っている。

 暁里が首を動かすと、それに合わせて星空もスクロールしていく。


「周り全部が星だよ、星」

「そうみたいだね」

「で、こっからどうするの?」

「操作マニュアルを表示しますか?」

「ふえっ!? は、はい」


 どうやら音声入力が反応したらしく、視界の中に説明書が表示されていた。


「右のスティックが方向で、左のスティックがスロットル?」

「加速減速の事だよ」

「んん?」

「前行ったり、後ろ行ったりだよ」

「んん〜でも動かないよ?」

「加速エフェクトを表示しますか?」

「うん、お願い」


 サポートシステムが、暁里の困惑を拾ってサポートしてくれている。その認識力はすごい技術を感じた。

 そして暁里の指示に伴って画面内に細かな粒子が動き始める。


「わわっ、動いてる、動いてる」

「それでは、チュートリアルを開始しますか?」

「チュートリアル?」

「操作を覚える為の基本的なプログラムだよ」

「ふ〜ん、とりあえず始めて」

「はい、マスター。それではカーソルに向かって方向を合わせて、スロットルを押し込んで下さい」

「ええっと、スティックで〜んんん〜?」


 アナログスティックを思いっきり倒してしまうので、視界がグルグル回る。その上、左のスティックも押し込んでいるので視界がとんでもない動きに。

 更には暁里自身も視線を動かすので、画面を観てるこっちが酔いそうだ。


「簡易操作に切り替えますか?」

「うん〜お願い〜」


 上半身がふらつきながらスティックを離さない暁里に、サポートシステムが『こいつ無理』と判断したようだ。

 やがて回転が収まり、視界が安定する。


「行きたいポイントを見て、前進と言って下さい」

「ん、前進」


 グルングルンと回り続けた視界の中で、チュートリアルの目標だったカーソルを見失ってなかったらしい暁里は、すぐに視線を合わせて前進命令を出す。

 すると緩やかに視界が回転し、正面へとカーソルがやってきて、徐々に加速していく。


「うんうん、最初からこれで良かったのに」

「それじゃ操縦してる事にならんだろ」


 程なく目的の場所らしい小惑星帯に到着する。すると小惑星の間から、円盤状の標的が現れる。


「視線を合わせて、発射、もしくはファイア。または、右スティックのトリガーを引いて下さい」

「とりがー?」

「右手の人差し指辺りにあるボタン」

「あ、これかな」


 視線を円盤に合わせて、トリガーを引くと、光線が発射されて標的に当たっていく。一定回数当たると、標的が砕けて散っていった。

 すると次々と標的の円盤が飛び出してくる。それを暁里は即座に視線を合わせてトリガーを引いていく。その反射速度はなかなかのものだ。僕が円盤を見つける前に、視線が動いて画面の中央に円盤がやってくる。


「次にミサイルの発射を行います。視線で標的を捉えていき、最後に右スティックの親指付近のボタンを押して下さい」

「見続けなくていいの?」

「はい、一定時間、見た事が認識されるとロックオンされます」


 先程よりも更に多数の円盤が出現し、結構な速度で飛び回る。しかし、暁里が視線を動かしていくと、ロックオンを示すカーソルが次々に円盤を捉えていく。


「ほんで、ボタンっと」


 全ての標的にロックオンカーソルが付いた所でボタンを押すと、次々にミサイルが飛んでいき、各標的を破壊した。


「この機体の最大ロックオンは、10個です。それ以上の敵を相手にする時は、随時発射ボタンを押して下さい」

「ほいほい」


 そこからは画面を見ているだけじゃ分からない領域に突入する。目まぐるしく視線が動き、ロックオンされた標的へとミサイルが飛んでいく。

 他人の視線を追いかけるのがこんなに辛いとは……画面を見ていると酔いそうになるので、僕は大人しく視線をはずした。


「これにてチュートリアル終了です。受付で名前を登録してください」

「はいはい〜、何かめっちゃ、敵倒せて気持ちよかった〜」

「……暁里、変な才能あったんだな」

「すごい? すごい?」

「多分ね……」




 サポートシステムの球体型カメラに誘導されて、受付まで到着。タブレット端末で名前を入力する。


「竜宮暁里っと」

「ダメダメ、本名禁止」

「え、あ、そうか、芸名か……考えてなかった。何にしよう?」

「芸名というか、あだ名みたいなもんだけどね。そうだな……フレイアとかどう?」

「ふれいあ?」

「北欧神話の戦いの女神」

「なんかゴツそうな人だね」

「どうだろ。一応、美の女神ヴィーナスの語源になったとかも言われてるけど」

「へぇ、いいね。強くて綺麗、まさに私!」


 それはどうかと思ったが、暁里はそのまま入力を済ませてしまっていた。

 フレイアは双子神で兄にあたるフレイがいる。僕の名前も同時に決まった。


「フレイア様、登録を確認しました。パーソナルルームで適性艦を確認してください」




 暁里の適性艦は、やはりというかミサイル艦だった。武装の殆どがミサイルに割り振られ、機動力はほとんどない。戦場に居座り、四方八方に攻撃するような艦らしい。


「じゃあ僕も自分の分を進めてくるよ」

「ん、それじゃね〜」


 ひとまず満足したらしい暁里に見送られながら、僕は自分の家に帰る。徒歩2分ほどの極近所だ。

 幼稚園の頃からの腐れ縁……と言うには仲がいい方なのか。暁里に振り回されて苦労はあるが、それで嫌いになるかと言われたらそうでもない。

 じゃあ初恋の相手かというとそうでもない。僕の初恋は多分、中学の頃のクラスメイトだ。意味もなくその姿を目で追ってた時期がある。まあ、暁里はもちろん男友達にも言ってないが。学年が変わってクラス替えがあると、淡く消えてったけどな。

 その時の感情を考えれば、暁里に恋するなんてのはなさそうだ。まあ、あまりに距離が近いとどぎまぎはするけどな。それは男の子として当然の反応だろう。


 なんて事を考えるうちに家に帰ってきた。早速、VRをセッティングしてチュートリアルのプレイを開始する。


「う……やっぱり、暁里は天才なのか?」


 さっき見た標的を攻撃するチュートリアルまで進めた時に、標的を目で追う速度が明らかに遅いのを実感する。

 というより、視野の広さか。1つの標的を破壊した後、迷いなく次のターゲットに視線を動かしていた暁里は、僕よりも広い範囲を捉えていそうだ。

 ゲーム好きとしてのプライドで、操縦はもちろんマニュアルのままというのはあるにしても、やはり標的を見つける速度で暁里に負けている。


「攻撃は暁里に任せて、僕が防御に回るのが正しいかな」


 幸いにして僕自身も防御の方が得意な自覚がある。格闘ゲームのブロッキングだとか、アクションRPGのパリィなど、相手の動きに合わせて防御する事はできる。


「問題はチュートリアルの適性判断か。サポートシステム、何か防御に関するチュートリアルとかある?」

「はい、マスター」


 それからは敵の攻撃を物理シールドで防いだり、ミサイルを迎撃する練習をこなしていった。

 そのおかげもあってか、チュートリアルの適性では無事にシールド艦が選ばれていた。




 それから2人で任務をこなしていきつつ、艦の強化をしていった。暁里はもうミサイルを積めるだけ積むというカスタマイズだ。機動力もほとんど上げずに、ミサイルの積載量を増やしている。

 僕の方は、シールド艦の中でもアクティブシールドと呼ばれる方に改造していた。

 シールド艦には大きく分けて2種類あって、大型のエネルギーシールドを張って、味方の艦が隠れられる拠点となる要塞型フォートレスと、機動力を上げて相手の攻撃に合わせて積極的に防いでいくアクティブシールドだ。

 じっと耐えるというのは、僕の性には合ってないし、敵を引き込むための囮として動くことも考えると、このスタイルが良かった。



「ちょっと難易度の高い任務を受けましょうよ」

「え、大丈夫かな」

「もっとチュートリアルの時みたいに、ばばばーっとやりたいのよね」

「といってもなぁ」


 2人で受ける任務だと、多くても10機相手まで。ミサイルの積載量を増やしたフレイア艦の満足できる敵数じゃないらしい。

 実際、僕もまだ余裕はあるかなと思ってはいるんだけど、失敗はしたくない。


「失敗しても死ぬわけじゃないんだから、何事もトライよっ」


 そう言いながら適当な任務を受諾してしまう。今までより2〜3ランク上の任務だ。大丈夫か……。

 この時、僕は見落としていた。今まで受けていた少人数用任務ではなく連合向けのマルチ任務だと言うことを。




「他次元生物の巣を叩く任務みたいだよ」

「ふぅん。巣ならいっぱい出てくるわよね」

「どうだろう……」


 巣を叩くという事で、攻撃目標はわかりやすい。事前に索敵する必要もないので、すんなりと巣のある小惑星へと到着する。

 小惑星は基本的に固まって存在するはずなのに、周囲の宙域は拓けていて巣が丸見えになっている。

 その形は卵型でそれなりの大きさがあった。


「どこかで見た事あるね」

「これ、スズメバチの巣だよ!?」

「ふぅん、蜂かぁ」


 敵を作る際に実在の動物をベースにするのは良くある話。この他次元生物は蜂をベースに作られているって事だろう。

 となると、出てくる数はかなりのものになるはず。


「フレイア、慎重に……」

「長距離バンカーバスター発射〜」

「ふえぇっ!?」


 フレイアの艦から発射された大型ミサイルは、表層を貫通して内部で爆発するというバンカーバスターミサイル。基地の殲滅には適した武器である事は間違いないが、何の準備もなく攻撃を開始されてしまった。

 飛来物を感知した巣では、何匹かの他次元生物が飛び出し、ミサイルへとまとわりつく。表面地殻を突破する為に、外装が硬いミサイルを破壊する事はできないまま巣へと着弾。内部へと入る穴を開け、その後爆発。穴の内部が赤く染まるのが見えた。

 が、それと同時に大量の他次元生物が飛び出してきた。


「や、ヤバイよ、ヤバイよ」

「おっしゃ〜、パーティーの始まりだ〜」


 雲霞うんかの如く周囲の宙域を埋めながら飛来する蜂の群れ。それに恐怖するどころか、喜々として武装の展開を始めるフレイア艦。

 まずは中距離ミサイルが発射されて、群れの先頭へと突き刺さり爆発。しかし、その破片を蹴散らしながら、後続がやってくる。

 仲間をやられても恐怖は感じないのか、勢いを減じる事もなく突っ込んできた。僕の武器ではまだ有効射程には入ってないので、敵の攻撃に備えるだけだ。

 ただ蜂型他次元生物、サポートシステムによる名称でキラービー型も射程は短いらしく今のところは被害を出しながら、接近してくるばかりだった。


 僕の装備が使えるようになる近距離ショートレンジに入ろうかという時、キラービー型の動きが変わった。僕達の前を迂回するように円を描きながら周囲を取り囲むように移動してくる。


「か、囲まれた」

「同時に狙える数が増えるねっ」

「ピンチだよ、一斉に来られたらっ」

「片っ端からやっつけるだけだよ」


 能天気なフレイア艦へと船体を寄せる。少しでも盾になるしかない。

 悲壮な覚悟の僕とは違って、フレイアは次々にミサイルを打ち始める。近距離用の小型ミサイルが次々にキラービー型を迎撃していく。

 そして遂にキラービー型からの攻撃も開始された。蜂の尻にあたる部分をこちらに向けて、針を飛ばすようにして攻撃してきた。

 攻撃を続けるフレイアの方が敵性値ヘイトが高いのだろう、フレイア艦に向けての攻撃だ。そこに割って入りながらシールドで受ける。その衝撃はほとんどなくて、ダメージもしっかり盾で止まってくれた。

 連射性能も高くないらしく、一発撃ったら離脱という動きをしている。そこへフレイアのミサイルが当たり、破壊された。


 ただやはり数が多い。その上、周囲を囲むように展開されてしまったので、僕一人ではカバーしきれない。


「きゃっ、ちゃんと守りなさいよフレイ」

「だから数が多くて……」

「言い訳しないっ」


 攻撃を一手に引き受け、包囲するキラービー型を次々と撃破するフレイア。全方位をしっかりと見分けているって事なんだろうけど、僕にはそんな真似はできない。

 少なくとも自分に対して攻撃してくれないと、移動に掛けてる時間がない。


「トーントッ」


 周囲に電磁波をばら撒き、レーダーを阻害するシステムを起動させる。またレーダーと同じ様に電磁波で周囲を探っている他次元生物にとっては、耳障りな音を発生させているようなものなので、注意を引くことになるらしい。

 ミサイルのロックオンシステムにも干渉するが、チームを組んでいるフレイア艦が使用している帯域は外しているので、大きな影響は与えずにすむ。

 問題となるのは、今までフレイア艦を向いていた周囲のキラービー型の注目を一身に集めてしまうという事だ。


「ひっひぃっ」


 近距離といっても顔が見えるような距離ではない。それなのに、一斉に見られたという感触に、背筋が震える。

 包囲された内側の空間を使って必死に逃げる。正面から来るのは、粒子砲ビームを使って撃破できるが、側面や後方からの敵を攻撃するすべはない。となると、フレイア艦を中心に、グルグルと逃げ回る事しかできなかった。


 その間もフレイアはミサイルを撃ち続けているが、その数は減った気がしない。僕を先頭に帯の様に連なるキラービー型。追いかけながら撃ってくるモノもいて、ジリジリとシールドの耐久値を削られていく。

 僕の艦の耐久力がなくなるか、フレイアの残弾がなくなるか、キラービー型を殲滅できるか……ギリギリの耐久戦へと突入していた。




「ぐうっ」


 何度目かになる体当たりを受けて、機体が振動する。VRの視界と、スティックから伝わる振動で、その激しさを実感できた。

 しかし、ここで怯んでは2度、3度と体当たりを受けて、再起不能に陥ってしまう。

 必死に体勢を立て直し、キラービー型の体当たりを躱して、反撃の射撃を撃ち込む。

 追いかけっこしていたキラービー型だが、そのうち狭い範囲を飛び回っている事に気づいたのか、待ち伏せする奴が出始めた。

 そして、針射撃では効果的ではないと判断すると、体当たりを敢行するようになっている。

 当初に比べれば包囲に隙間が出始めて、巣に対してバンカーバスターを撃ち込めるタイミングも出来つつあるが、フレイア艦のミサイルも底を尽き、ミサイルを迎撃する為の対空レーザーで攻撃している状況。

 ミサイルに比べて射程の短いレーザーに合わせて、フレイアの近くを飛ぶ為にコースが限られてくる。となると、体当たりを貰う数も増えてしまっていた。


「ごめん、フレイア。そろそろダメっぽい」

「もうちょっとなんだから、根性だしなさいっ」


 対空レーザーを手動というか、視線で操作しながら敵を屠っていくフレイア。その合間に、巣へとミサイルを撃ち込む。その巣もかなりボロボロにはなっている。


「ああっ」


 巣へとちらりと視線をやったのが失敗だったか、また体当たりを受けてしまう。しかも受け流すのに失敗して、大きくコースをずらされて減速。そこへキラービー型が殺到してくる。再加速して抜け出すのは無理か。


「こなくそっ」


 そんな僕の側にフレイア艦が滑り込みながら、6発目のバンカーバスターを発射。着弾まではどうしても時間がかかる。その間にキラービー型が、僕とフレイアに突っ込んできた。


「きゃっ」


 僕を庇うような位置に入り込んだフレイアへも、突撃が行われ被弾する。突撃された衝撃で回転を始めながらも、四方八方にレーザーを撃ちまくるフレイア。それでも僕に撃ち込まないって事は、あの中でまだ見えているのだろうか。

 そんな中でようやく艦のコントロールを取り戻し、フレイアの盾になるべく加速を開始する。


「フレイアは僕が守るからっ」


 フレイア艦に特攻してくるキラービー型を撃ちながら前に出る。


「任務完了です、マスター」

「え?」


 視線を巣の方に向けると、内部からの爆発で大きな亀裂が入り、砕けていく巣の姿が見えた。




「ううぅ、ギリギリ過ぎだよ……」

「ミサイルが少なすぎたわね。もっと増量よ」

「ええっ、まだ積むの!?」

「だって足りなかったじゃない?」

「そもそも無理な任務だったんだって。ほら、8人用って書いてあるじゃないか」

「でもクリアできたわ。準備していけば、もっと楽になるわよ。それに稼ぎもいいしね」


 2人だけの連合『ヴァルハラ』に帰ってきて、疲労困憊な僕に対して、フレイアはやる気に満ちていた。


「ゲームなんだから、あれくらいズババーと倒せて、ピンチになるくらいが楽しいのよ」

「僕はもっと楽なのがいいよ……」

「でも守ってくれるんでしょ?」

「自殺志願者は守れません」


 前かがみに僕の事を覗き込んでくるフレイアだが、その容姿は遮光フィルターの貼られたフルフェイスヘルメット。体型も男性のものしかないらしく、普段の暁里とはかけ離れていて、仕草にどぎまぎさせられる事もない。


「ほらほら、すっごいコストもらえてるよ」

「そりゃあれだけ倒せばね……って、確かにすごいね」

「でしょー」


 任務自体は時間が掛かったせいもあって、Bランククリアで、ボーナスも少なかった。でも敵の撃破報酬がすごかった。

 キラービー型1匹辺りは、小型海賊船の10分の1ほどなのだが、撃破数が500近い。普段は10機ほどのミッションをこなしていただけなので、撃破報酬が50倍くらいになっている。


「こんだけ稼げれば、もっとミサイル積めるわね」

「だからどんだけ積みたいんだよ……」




 1ヶ月に渡るβテストも終わりを迎え、製品版に向けて準備をする事になった。

 製品版に引き継げるのは、容姿やルームパーツなどゲーム内の性能に関わらないものだけ。

 フレイアは早速、自身のアバターを作っている。写真を元に3Dモデルを作成していく。元がいいだけに少し修正するだけで、かなり可愛いアバターに仕上がっている。

 髪の色は、赤寄りの金髪でポニーテールに結い上げていて、勝ち気そうな瞳が活発そうな元気っ子。まあ、暁里の雰囲気がそのまま出ている。

 クラスメイトが見たら暁里だとバレるだろう。


「けど、そんなに似せるとリアルバレするよ」

「いやいや、アイドルとして売り出すんだから当然でしょ」

「でもストーカーとかでると危険だよ」

「心配してくれるの?」

「近所の僕にも迷惑なんだよ……」


 もちろん幼馴染を心配しないというと嘘になるけど、直接言うのは照れくさいし、調子に乗ると後が面倒そうだった。


「そうだ。折角だからフレイのアバターも女の子にしようよ」

「やだよ」

「いいじゃん、いいじゃん」


 暴君モードに入ったフレイアを止めるのは労力が半端ない。顔くらいなら自由にさせた方がいいか……。


「顔はいいけど性別は男だからね。それは譲れないよ」

「えー、まあ、仕方ないか。じゃあショタ狙いな感じで〜」


 いつから用意していたのか、僕の写真から作ったらしいモデルデータを修正していく。元々が小学生の頃のデータらしく、丸っこい感じの顔が更に童顔に、男っぽさが削られて中性的に加工されていく。


「これ、僕のデータ使う必要なかったんじゃ……」

「だって庸介はリアルバレしたくないでしょ?」

「だったら用意されてるベースデータ使えばいいじゃん」

「それじゃ意味ないよ。私の側にいるのは庸介なんだから」

「……」

「ほらできた。これでいいでしょ」


 転送されてきたデータは、どこのジュニアタレントだってくらいキラキラした美少年。正直、元が僕だとは全然思えない。でもまあ、見た目が良い分には文句もない。


「他に使えるところは〜」


 フレイアはコストの使える所を探している。ルームパーツからカラオケセット、ダンスレッスン用に大きな鏡を選んだらしい。

 歌はまあ近所迷惑にならないように練習するのはいいとして、ダンスはモーション再生だからルームとか関係なさそうだが。


「ダンスモーションも色々買ったけど、その設定とかは自分でやらないと一曲踊りきれないからね。それを自分で確認するには、鏡がいるのよ」

「そう……」


 どこからその情熱が来てるのかはわからないが、本気でアイドルを目指すらしい。


「でもフレイア、製品版始めれるの?」

「へ、なんで?」

「ちゃんと機器買える?」

「機械はもうあるじゃん」

「これ、レンタルだからβ終わったら返さなきゃダメだよ」


 頭の辺りを指さしながら言うと、フレイアの目が見開かれて、口が半開きに固まる。

 このアバター、表情が変わるんだ。どうなってるんだろ?


「な、何よ、どういう事よ」

「いや、言ったまんま。製品版をやるなら機械を買わないと始められないよって話」

「そんなの聞いてない!」

「いや、βテストってそういうもんだから」


 単なるネトゲなら基本無料でプレイとかもあるかもしれないが、このゲームは専用のVR機器が必要なゲーム。始めようと思ったら、機器を購入しなければならない。


「体験させれば買う人が出てくるってメーカーの戦略なんだろうね。実際、よく出来たゲームだからお金を出そうって人はいるだろうし」


 実際、僕もお年玉の残高やら毎月のお小遣い。古いソフトの売却などで、予算を作っている。まだ値段は発表されてないけど、今の家庭用機として出てるのが5万だからそれくらいは覚悟しないとダメだろう。


「そうだ。アンタの事だからしっかり貯めてるんでしょ。私の分も買ってよ」

「無理だよ、そんな大金持ってない」

「大金っていくらくらい……?」

「まだわからないけど、5万くらい?」

「ゲームに5万なんて無理に決まってるじゃない。そうだ、アイドルになって稼いだら返すから、先に私にプレゼントしてよ」

「無茶言うなよ、フレイアのプレイスタイルだと僕がいないと直ぐに死んじゃうよ」

「歌って踊って稼いでみせる!」

「だから無理だって」

「やってみないとわから……」


 くだらない言い合いをするうちに、βテストが終了してしまい、僕らは強制ログアウトさせられてしまった。




「こいつには成金王の称号をつけよう、そうしよう」

「何言ってんスカ」

「称号システムあるだろ。あれでβで活躍した奴に称号をプレゼント。いいね、誉れだね」

「成金って、そんなのいじめじゃないですか」

「何を言う。歩が敵陣に切り込んで、と金に成る活躍をしたという立派な称号だよ」

「絶対、そっちの意味じゃないでしょ」


「まあ、冗談はさておき、元々予定してた方の称号はどうなった?」

「撃墜王の方ッスよね。まあ、途中から予想されてましたけど、このフレイアって子ですね」

「やっぱりか〜。キラービーやらレッドアントの巣をやりまくってた子だよね。数を稼ぐにはアレが一番だった」

「でも実際のリプレイ見てたらスゴいッスよ。背中にも目があるのかと思うくらい、周囲を的確に判断できてる」

「短距離ミサイルって誘導はないロケット砲みたいなのだろ。それを的確に当てていってるんだから上手い。撃墜王にふさわしいね」

「しかも、操縦はからっきしで、簡易操作ってのが面白い」

「地味にペアを組んでるシールド艦もいい動きしてたな」


「で、彼らの最終日はどうだった?」

「自キャラのアバターを購入してますね。結構、可愛い女の子作ってました」

「なんだ、ネカマ野郎か」

「いえ、マイクの声聞く限り女の子ですよ」

「何、お前、盗聴とかしてたのかよ!? コンプライアンス違反だろ」

「ち、違いますよ、音声認識用のサンプリングボイスっす。会話の内容とか無いやつ」

「その辺はアメリカ(向こうさん)の監査が入るんだから、気をつけろよ。訴訟起こされたらクビどころか、賠償問題になるからな」

「わ、分かってますって」


「他に買ったのが、カラオケに全身の映る大きな鏡、ダンスモーション?」

「何でしょね?」

「何って、こりゃあアレだろ。ネット配信して稼ぐ系。歌って踊って戦ってって奴」

「バーチャルアイドルっすか」

「このアバターで女の子の声だし、それなりにアクセス稼げるかもな。うちのゲームの人気次第かもしれんが……いやまて、逆か。この子を利用したら、外から客を呼べるかも知れん」

「それこそコンプライアンス大丈夫なんすか?」

「今はSNSでの広告なんてのは当たり前、うちのゲームはストーリーのネタバレなんかもないから、配信禁止区間もない。製品版ならプレイを配信するのに制限なんてないよ」

「確かにそうですけど……」

日本支社うちのモデリング班が、日本受けしやすいように作ったダンスモーションとか、しっかり使ってくれたら奴らも浮かばれるだろ」

「あいつら趣味で作ってただけでしょ」

「作業ブースでアイドルの振り付け踊ってた時は、後ろから蹴ろうかと思ったよ」

「何であの体型でキビキビ踊れるんだろうね……」


「とりあえず撃墜王の称号は文句なくその子に決定。副賞どうしようか?」

「ゲーム内で優劣つくものはあげられませんよ」

「プレイを継続するモチベーションになるモノをあげれるのが一番なんだがね」

「末永く遊んで、広告塔になってもらわないとですね」

「アバターはいじる必要ないし、カラオケは配信サービスと提携してるから、そっちで買ったのがそのまま使える。ダンスモーションは既に買ってくれてるし……衣装とか?」

「確かにβのアバターはノーマルスーツだけでしたね。ちょっとモデリング班に掛け合ってきます」

「ん、任せた……ん、この子……」




「ちょっと、どうにかしなさいよ〜」

「どうにかって言われてもお金の事は流石に無理だよ」


 βテストが終了し、強制的にログアウトさせられた直後から、暁里の突撃を受けていた。


「もっと早くから言ってくれてたら、貯金したのに!」

「言ったけど聞いてなかっただけだろ」

「聞いてないもん!」


 我儘な暴君っぷりは、小さい頃から変わらない。今までは僕が泣く羽目になっていたが、金銭に関わる事で折れる訳にはいかない。

 実際のところ、暁里がここまでハマるとは思ってなかったから、具体的にいくら位必要なんて話はしてなかったかもしれない。

 PCに繋ぐタイプのVR機器は、8万くらいからスタートで、PCのスペック自体もかなり要求されるので1から始めようとすると何十万単位でお金が掛かる。

 家庭用ゲーム機の場合も、元々の機械とVR機器を合わせると5万くらいにはなってしまう。

 STGの機械は、1つのゲームに特化しているという事で、性能をフルに使えるために、普通の機器よりは高性能を出せる代わりに、汎用性がない。

 その分、値段で勝負しないといけない面もあるだろうけど、それでも5万は覚悟しないとダメだと思う。


 製品版まで数ヶ月くらいとしても、学生の身分でそれだけ稼ぐのは難しい。バイトもすぐに始めるってわけにもいかないしね。

 少しは貯金があればいいんだろうけど、暁里の性格からすると、そんなのも無いんだろうな。


「私のアイドル計画がっ」

「計画ってほど細かいこと考えてないから困ってるんだろ」

「こうなったら、シェアしましょう」

「どうなったらだよ。僕に得がないじゃないか」

「だからアイドルとして売れたら返すってば」

「そんなのアテにならないって」


 まあ暁里のプレイを見ていれば、多少なりと有名人にはなれそうな気もしている。ただそれで稼げるかというとそんなに甘くはないんだ。


「そもそもネットアイドルになるって言って、何が必要か分かってるの?」

「パパのお古のPCがあるから、動画アップするくらい余裕、余裕」

「編集とかできるの?」

「へんしゅう?」

「ほら、この辺の動画見たら、文字が入ってたり、場面が切り替わったりしてるでしょ。そういう動画の加工をやれるの?」

「へ?」

「撮ったままだだ流ししてるのを見てくれるほど、動画配信の世界は甘くないよ」

「えっ、えーっと、パパに頼んで……」

「暁里の親父さん、娘がアイドルになるとか言ってるのに協力してくれそう?」

「……無理」


 頭が固いって訳じゃないけど、娘を可愛がってるのは知ってる。僕もどれだけ脅されたか……それはさておき、娘を晒し者にするような行為を、あの親父さんは許さないだろう。


「こう、娘の成長記録とか騙して……」

「既に作ってそうな雰囲気はあるけど、嘘がバレたら怖いよ?」

「うわぁぁぁ〜」


 リアルに想像できたらしい暁里が頭を抱える。えがお


「地道にお小遣い貯めるしかないよ」

「うう〜」


 その時、暁里のスマホに着メールがあった。頭を抱えつつもメールを確認する暁里、その表情が落ち込みから真剣に、やがて驚きの顔になり、更にはニンマリとした笑みを浮かべるに至った。

 何があったんだろう。急に収入があったとか……誕生日もクリスマスもお正月もまだまだ先のはずなんだけど。


「見なさい、見てる人は見てる。私の活躍を望んでいる人がいるんだわっ」


 そう言って見せられたメールは、STGの運営からのものだった。


『この度はβテストへの参加ありがとうございます。

β期間中の成績を集計した結果、フレイア様が敵の討伐数でトップとなっており、【撃墜王】の称号と、副賞として特別な衣装をご用意させていただきます。

一部戦闘中の画像を広告として使用させていただきますのでご了承ください。』


 撃墜王か……単純な数ならあれだけ倒してたし不思議じゃないね。特別な衣装というのも気にはなるけど、暁里が喜ぶ理由はそこじゃないな。

 続きを見てみよう。


『また製品版に先駆けまして、当社にて広告チャンネルを開設いたします。そこで製品版の魅力を伝えていく予定なのですが、よろしければゲストとして出演願えないでしょうか。

β随一の実力を実演して頂く他、製品版で追加される機能などの説明をしていく予定です。

撮影自体はアバターにて行いますので、現在の機器を使ってログインして頂きます。

β申込の際に学生と記載がありましたので、平日なら放課後、休日などの時間で予定を合わせていければと考えています。


報酬に関しましては、ささやかではありますが製品版一式を検討しております。

よろしければ返答をお願い致します。』


「これは孔明の罠だ」

「コウメ? カリカリ梅?」


 あまりにも美味すぎる話には絶対裏があるはず。なんてタイムリーな申し出なのか。

 もしかして、僕達の会話を聞いてた?

 音声認識ができるゲームだ。録音したり、ネットを介して聞くくらいの事は当たり前で可能だ。

 ただ会話を聞いていたとして、フレイアが製品版を購入できない可能性を危惧して提案してくるか?

 撃墜王がいないというのは確かに拍子抜けかもしれないけど……いやまて、βが終わるタイミングじゃ発表もされてない。フレイアがダメとなったら次点を繰り上げればいいだけの話。

 僕達は2人だけで遊んでいたから、フレイアの戦果を知るものもいない。その辺もログを見れば分かるはずだし……。


 となると運営側がフレイアに価値を見出したって事だ。確かにアバターは可愛くできているけど……歌もうまくはないし、運動神経は悪い。アイドルに仕立てるには役者不足な感を否めない。

 いやいや、プレイヤーをアイドルとして育てるとか、どんなエロゲだ。

 そもそもフレイアがアイドルを目指しているのを知ってるのは僕くらいなもんで、運営は知らない。

 じゃあ一体何で……?


「ほい、返信っと」

「えええーっ、返信したの!?」

「だって悩み解決じゃない」

「こんな美味い話、罠に決まってるじゃないか」

「どこの陰謀論よ。単に私のアバター使えば広告が楽だ〜とか、女子高生撃墜王のネームバリューとか、実際にプレイしてた人の方が楽しそうに宣伝してくれる〜とか、簡単な理由よ」

「そんな馬鹿な!?」



 実際、学生の感覚ではゲーム機は高いものだが、会社にとってはそこまでの出費ではない。特に流通を通しておらず、原価で送付するだけとなれば販売価格より大幅に安くできる。

 人気のある動画配信者に広告してもらおうと思ったら、それなりのギャランティが必要になるし、そのチャンネルを利用して売上がでたとしても、いくらかのマージンを支払わなくてはならない。


 自前のチャンネルで、プレイヤーの一人がやってくれるなら、運営としてはそれだけでかなりの経費削減になるのだ。

 ただそんな事情など学生の僕には想像する事もできず、女子高生を狙って大人が罠にはめようとしていると危機感を募らせるのであった……。

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