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恋耳うさぎと紐勇者  作者: Lio×りお
第1章 野原で戯れ、魔王(草)を目指す。
5/11

第5話 聖女、襲来

〈ラフレシア・ガーデン〉

-ツクバネの街-


 俺たちが今いるこの場所、ツクバネの街はラフレシア・ガーデンの中で最も大きな街()()()。かつては魔王を討伐しようとする勇者が多く滞在し、あちこちに装備や食料なんかを売る店が立ち並び、宿屋や飯屋なんかは一日中賑わっていたらしい。だがそれも全て遠い昔の話だ。魔王も勇者もいなくなり、平和な世界になってこの街も変わった。俺が知ってるこの街は、人も少なければ店もほとんどない、その辺の連中の顔を見ればどいつもこいつも腑抜けた奴らばかりで、全く抜け殻みてぇなところだ。こんな場所、いるだけで嫌気がさしてくるぜ。俺がいるべき場所は戦場だけだ。

「ピョンピョピョンピョピョン」

 俺の隣を歩く恋耳うさぎとかいう女は意味不明な言葉を発しながら辺りをキョロキョロと眺めていた。明らかに不審な動きだ。頼むからやめてくれ。こいつの隣を歩くのが苦痛でしょうがない。俺をイライラさせるのはこいつの陽気な態度というよりも、こいつを見る周りの奴らの視線。さも珍獣を見るような視線だ。ただそれもしょうがないことではある。なにしろこいつのこの格好。肌を大きく露出した服装に頭から生えた長い耳。こんな奴が道を堂々と通ってりゃ誰でも目を向けるだろう。まぁこいつ自身はそんな視線全く気にしてねぇみたいだが、隣を歩く俺にとっては迷惑この上ない。俺までこいつの同類と思われるじゃねぇか。ふざけんな。俺をこんな変態と一緒にするなってんだ。

「どうしたピョン。サブロウ。さっきから俯いてるピョン」

「俺に話しかけんな」

「恥ずかしがってるピョン?サブロウも可愛いとこあるピョン」

「恥ずかしいのはお前の格好だ!」

「どうしてピョン。とっても可愛いピョン」

「そういう問題じゃねぇ」

「それにサブロウはこういうのが好きなはずピョン。だから私が着てるピョン」

「はっ!?ど、どうしてそんな話になるんだよ。俺がいつ好きだって言った!」

「サブロウの部屋でそういうのを見つけたってもう一人の恋耳うさぎが言ってたピョン。サブロウも男の子なんだピョン」

「なにっ!?」

 あの野郎!絶対に見つからねぇと思ってたはずなのに。いつ見つけた。まさか最初からか。なに勝手に他人の部屋あさってんだよ!今度見つけたら絶対に叩きのめす。

「ピョン」

「おい、いきなり立ち止まんな」

「もしかしてここがギルドピョン?」

 いきなり立ち止まったかと思えば、ようやく到着したのか。俺たちの目の前にあるのは中くらいの大きさの建物。周りの建物に比べて特別な見た目になっているためこれが目的の場所だと分かる。だが…...これがギルド?なんだかめちゃくちゃボロいな。強い風が吹けば今にも倒壊しそうなほどいたるところが崩れかかっている。

「お邪魔しますピョン」

「おい」

 なんのためらいもなく入ったな。それに今の勢いで扉が壊れそうになったぞ。本当に大丈夫か。

「お前はもっと大人しくしろよ」

「あれ?誰もいないピョン」

 中に入れば案の定、外見通り寂れたところだった。中にはいくつかのテーブルや椅子が置かれているが、どれにも埃がたかっていて近づきたいとも思わない。こんな場所に人がいるとは到底思えない。

「ごめんくださいピョン」

「……どちら様」

「うわっ」

 なんか辛気臭い奴が出てきたぞ。まるで幽霊だな。この女がここの責任者なのか?見た感じ俺の母ちゃんと同じくらいの年齢か。それにしても全く元気が感じられねぇな。

「私は恋耳うさぎって言うピョン。こっちはサブロウ。私たち、ギルドに入りたくて来たピョン」

「えっ……」

「おい。俺をサブロウって呼ぶなって何回言えば分かるんだ。それと俺は別に入りたいと思ってるわけじゃ」

「本当ですか!?」

「近っ」

 なんだ。急に元気になりやがって。それにこいつ、泣いてないか。怖えよ。なんだこの浮き上がり具合は。

「本当に我がギルドに加入希望なのですか!?」

「そ、そうピョン」

 さすがのこいつもドン引きしてるみてぇだな。

「も、申し訳ございません。つい興奮してしまい。どうぞこちらにおかけになってください」

「だから俺は別にギルドに入りたいわけじゃねぇよ」

「いいからいいから。まずは話を聞くピョン」

「ったく、しょうがねぇな」

 ここの責任者っぽい女に案内されて俺たちは部屋の奥にある席に座った。他に人はいなさそうだな。こいつ一人なのか?

「それにしても人が全然いないのはどうしてピョン?今日はお休みピョン?」

「それは……」

「実はもう潰れてたりしてな」

「そういうこと言うのはひどいと思うピョン。そんなことないピョン?」

「……」

「これマジだぞ」

 さっきまでの興奮した勢いから一転、初めて見た時と同じような絶望しきった顔つきになった。起伏の激しいやつだな。

「申し訳ございません。お恥ずかしながら、現在ギルドの運営は大変厳しい状態にあります」

「どうしてピョン?」

「それは端的に言いまして、世界が平和になってしまったからです」

「ピョン?」

「ギルド設立当初は全ての人が魔物の脅威にさらされており、それら魔物を討伐するという依頼が多く持ち込まれていました。ですが、ある日を境に魔物の出現はピタリとなくなりました」

「それは魔王が討伐されたからピョン」

「はい。それによってギルドへの依頼が激減してしまったのです」

 世界が平和になることで困る奴もいるってわけか。皮肉な話だな。やっぱり魔王がいなくちゃこの世界はダメになるわけだ。だからこそこの俺がいずれ…...

「魔物がいなくても他の仕事はないピョン?」

「それが…...問題はそれだけではないのです。確かにギルドへの依頼は魔物討伐以外にもあります。ですがギルドには現在依頼をこなすことができる人員がほとんどいないのです」

「みんなどこに行っちゃったピョン?」

「かつてギルドの依頼をこなしていたのはいわゆる勇者と呼ばれた方々で、当時は多くの勇者がギルドに参加していました。ですが魔物が出現しなくなってから日を追うごとにその人数は減っていき、ついに誰も姿を見せなくなってしまったのです」

「変な話ピョン」

「人々の噂では、勇者は悪しき魔王を討伐するために神々が送られた戦士であり、目的を果たしたがゆえに神々の元に帰ってしまったと言われています」

 そんなの嘘に決まってんだろ。勇者なんてのは所詮魔王がいなければその辺の連中と変わんねぇただの人間だよ。どうせ戦う理由がなくなって剣を捨てたような腑抜けた奴らだったってことだろ。

「私ばかり長々と話してしまい申し訳ありません。ちなみにあなた方はどういう方達なのですか?お名前はお聞きましたが、一見したところまだ成人しているとは思えませんが」

「ふん。俺様を知らないとは無知な奴め。聞いて驚くなよ。俺様は将来魔王に」

「こっちはサブロウって言って、いつもナイフ片手に野原を走り回ってはラビットと戯れてる以外に何もしてない、まぁ要するにニートピョン」

「おいこらテメェ。何言ってやがる!」

「はぁ…...それであなたは?」

「私は、特にないピョン」

「特にない?それはつまり…...もしかして冒険者ですか?」

「そんな感じピョン」

「嘘つけ。お前はただのモンスターだろ」

「違うピョン。恋耳うさぎはれっきとした乙女ピョン」

 何が乙女だ。俺のことは散々適当言いやがって、自分だけなに脚色してんだよ。

「では念のため、あなた方のステータス画面を確認してもよろしいでしょうか。一応本人確認と、実力を知るという意味も含めて」

「構わないピョン」

 めちゃくちゃあっさり見せたな。そんな簡単にステータス画面を他人に見せていいのか?こいつ絶対何も考えてねぇだろ。すぐに騙されるタイプの人間だな。俺はそんなヘマしねぇが。

「恋耳うさぎさんですね。レベルは……20!?こんなに高いレベルは久しぶりに見ました。すごいですね」

「ピョンピョン」

「スキルは……【勇者見習い】?このスキルはまさか…...恋耳うさぎさんは」

「長いからうさぎでいいピョン」

「えっと……うさぎさんは勇者なのですか?」

「ちょっと違うけど、そんな感じピョン」

「これは驚きです」

「ちょっと待て!なにがちょっと違うだ!全然違うだろ!」

 そのスキルは元々俺のもんだろ。なに自分のものみてぇに言ってんだよ。それにレベルだって俺が稼いだのを奪ったんだろ。つまり全部俺のおかげじゃねぇか。なのになんでこいつばっかちやほやされてんだ。理不尽すぎんだろ。

「もしやあなたも勇者なのですか」

「えっ、俺は…… 」

「良ければステータス画面を見せてもらってもよろしいでしょうか」

「いや……」

「サブロウのステータスを見たらきっとびっくりするピョン」

「まぁ。それはとても楽しみですね」

 さっきまでの陰気な顔つきはどこ行った。そんなキラキラした目で俺を見るな。それに勝手に話を進めるんじゃねぇ。

「お、俺は絶対に見せねぇぞ。なんせ俺のステータスは極秘中の極秘なんだからな」

「そこをなんとか」

「さっき私には見せてくれたピョン」

「秘密は厳守しますから」

「くそ……」

 こいつら…...見せるまで帰す気ないな。今すぐにでも逃げ出したいが、戦場でもモンスターに背中を見せたことのない俺がこんなとこで逃げていいわけがねぇ。こうなったら覚悟を決めるしかねぇってことか。もうどうにでもなれだ。

「ほら!これでどうだ!」

「……」

 なんだこの沈黙は。そんなまじまじと見てないでなんか言えよ。

「これは……なるほど。分かりました」

「何が分かったんだよ」

「あなた、()()なんですね」

「ちげぇよ!」

 こいつ頭おかしいだろ。どうしてそういうことになんだよ。

「ここまで低いレベルというのもなかなか見られるものではありませんよ。一般的な生活を送ってるだけでも経験値を稼ぐことができるというのに、一体どれだけ自堕落な生活を送ればこのようなステータスになるのか逆に興味が湧きますね」

「うるせぇな!こうなったのも全部こいつのせいなんだよ!」

「知らないピョン」

「おいこら!しらばっくれてんじゃねぇ!」

「まぁまぁ。落ち着いてください。なにも私は責めてるわけではないのです。あなたが例えどうしようも無い()()だとしても、私は心から歓迎しますよ」

 丁寧に言ってるようでしこたまバカにしてんじゃねぇか。ちくしょう。だから見せたくなかったんだ。こいつから俺のレベルとスキルを取り返すまでずっとこんなことを言われ続けんのかよ。屈辱だ。

「それではステータスの確認も終わりましたので、いよいよ恋耳うさぎさんを正式なギルドメンバーとして迎え入れましょう。おめでとうございます」

「うれしいピョン」

 おい。なにお前らだけで盛り上がってんだよ。俺はどこにいった。なんか俺だけ蚊帳の外なのは気のせいか。

「ではこの書類に必要事項の記入をよろしくお願いします」

「きゅぅ。私はこういう細かい作業は苦手ピョン」

「そうですか。では私が代筆しましょうか」

「よろしくピョン」

「それでは…...お名前は恋耳うさぎですよね」

「そうピョン」

「えっと…...うさぎさんは剣術士(けんじゅつし)ですか?それとも魔術士(まじゅつし)ですか?」

「特に決めてないピョン」

「それはどういう…...もしかしてうさぎさんは魔法も使えるのですか?」

「そうピョン」

「本当ですか!?」

「何か変ピョン?」

「私の記憶が正しければ魔法が使えるのはごく限られた人、それこそ勇者の中でも一部の人しか使えなかったという。勇者がいなくなった今となっては魔法が使えるのはカセンドラルの聖女くらいだと聞きます」

「恋耳うさぎは特別なんだピョン。えへんピョン」

 くそっ。ムカつくやつだ。俺のレベルとスキルを奪っておいて魔法まで使えんのかよ。そんなの反則だろ。

「どうしましょう。これは前代未聞です。剣術士でもあり、魔術士でもあるなんて。ここにはなんと書けば」

「それなら……魔剣士(まけんし)がいいと思うピョン」

「魔剣士?」

「魔術士と剣術士を合わせて魔剣士ピョン」

「なるほど」

 魔剣士か……悪くねぇな。こいつが考えたにしてはイカした名前じゃねぇか。くそっ。羨ましすぎる。俺も名乗りてぇ。

「では魔剣士ということで登録しておきますね」

「よかったピョン」

「これで登録完了です。お疲れ様でした。これがギルドのメンバーズカードになります。仕事を受ける際の身分証になりますので無くさないようお持ちください」

「分かったピョン」

「いや、俺は?」

 明らかに俺を無視しようとしてないか。元からギルドに入る気なんかなかったが、ここまでコケにされておいて黙ってられるか。

「あなたは…...うさぎさんのひも、いえ間違いました、従者ということでどうでしょう」

「今の完全にわざとだろ!」

「いえいえそんなことは」

「それと従者ってなんだよ。どうして俺がこいつの下なんだよ」

「それは単純にお二人のレベルとスキルを考慮した結果です」

「サブロウは私の従者ピョン!」

「誰がお前の従者なんかになるか!」

 こんなのやってられるか。どうして俺がこんな奴の従者になってまでギルドで働かなきゃならねぇんだよ。もう知るか。俺は帰る。

「もう行っちゃピョン?待ってピョン」

「あ、あの……」

「お姉さんさよならピョン」

「まだお仕事の話が……」


***


「サブロウ待ってピョン」

「ついてくんな。お前の顔なんか見たくねぇんだよ」

「まで怒ってるピョン?」

「怒ってねぇよ!」

「やっぱり怒ってるピョン」

 ちっ。イライラするな。こいつの顔を見てるだけで腹が立ってくるぜ。俺のレベルとスキルまで奪っておいて、その上俺を従者にしようとしてんだからな。今思い返してみてもこいつには最初に出会った時から迷惑をかけられてばかりだ。こいつが近くにいるだけで俺の身に次から次へと不幸が降りかかってきやがる。誰でもいいからこいつをなんとかしてくれ。

「どうしたら機嫌を直してくれるピョン」

「言っておくがな、俺がこうもイライラしてんのは全部お前のせいなんだからな。そこんとこ自覚してんのか」

「ピョン?」

 くそっ。俺がこいつを気に食わねぇのは今みたいにいつもヘラヘラしてて全く反省してなさそうなところだ。こっちは真剣に悩んでるってのに。

「お前はもっと真剣にだなぁ」

「見つけました!」

「今何か聞こえたピョン?」

「おい。話をそらそうとするな。俺は真面目な話をしてんだよ」

「そこの人。待ってください」

「何か後ろから迫ってる気がするピョン」

 後ろ?後ろに何がいるって……

「待ってください!待って、あっ……きゃっ!」

「なんだ?」

 何かが後ろで倒れたような音がした。それもかなり大きな音だ。

「うぅぅぅぅぅ〜」

「誰か倒れてるピョン」

「誰だよこいつ」

 振り返ってみると、俺たちの足元には顔面を地面にこすりつけながら倒れてる奴がいた。こいつ、女か?顔は見えないが、茶色い髪の毛は腰まで届くくらい長い。それにしてもなんの真似だ。まさか転んだのか。こんな何も落ちてないような平らな地面でよく転べるな。それも顔面からって。どんだけ運動神経ねぇんだよ。

「おい、大丈夫か」

「イタタタッ。はっ!」

 近づいて声をかけようとした瞬間、そいつは突然立ち上がった。どうやら間違いなく女だ。それにしても変わった服着てんな。足首まではある長いローブは白色をベースにしながら細かい装飾がいくつも施されている。めちゃくちゃ高そうだな。しかもこの服、転んで地面に触れたってのに汚れひとつ付いてねぇ。どうなってんだ?

「やっと追いつきました」

 ドジ女はそう言い放ったが、その声は妙に震えていた。こいつ今にも泣きそうだな。そんなに痛かったのか。確かにおでこのあたりが赤く腫れ上がってる。こいつ大丈夫か?

「どちらかと言うと、私たちの方から近づいたピョン」

「とにかく、あなた、私についてきてください」

「私ピョン?どうしてピョン」

「あなたから不穏な気配を感じるからです」

「そうピョン?」

「どう見ても怪しいです!特にその耳!それが動かぬ証拠です」

 驚いた。俺以外でこいつの格好に突っ込んだやつを初めて見たぜ。やっぱ俺はおかしくなかったんだな。少し安心したぜ。

「これは恋耳うさぎのトレードマークピョン。かわいいピョン」

「そういう問題ではありません。どうして人間の頭からラビット族の耳が生えてるんですか!ありえません!」

 こいつ分かってるじゃねぇか。最初見たときはやばいやつかと思ったが、かなりまともじゃねぇか。そうだ、もっと言ってやれ。こいつにはそれくらい言わねぇと意味ないからな。

「私は普通の人間ピョン」

「そんなはずありません。それにその喋り方。全てが怪しいです」

「きゅぅ」

「あなたの正体を確かめます。だから私についてきください」

「…...そこまで言うなら仕方ないピョン」

「分かってくれましたか」

「外すピョン」

「へっ?」

「えっ?」

 …...今なんつった?外すって言ったのか?何をだ。何を外すんだ。俺たちが混乱している間にもこいつは頭から生えてると思われていたラビット族のような長い二つの耳に手をかけていた。そしてそれが………………...取れた。

「…...えぇぇぇぇぇ!?!?!?!?」

「はぁぁぁぁぁ!?!?!?!?」

「これは取り外し可能ピョン」

 頭から完全に耳が取れていた。二つの耳は根元が繋がっていて、明らかに偽物であることが分かった。

「お前、その耳。本物じゃねぇのかよ!」

「そうピョン」

「嘘だろ。けどその耳動いてたじゃねぇか」

「頭につけると自動で動いてくれる便利なアイテムピョン。サブロウもつけてみるピョン?」

「誰がつけるか!そんな気色悪いもん!」

 くだらねぇ。この世で一番くだらねぇアイテムだ。

「これで疑いも晴れたから私たちは行くピョン」

「ま、待ってください。どうしてもついてきてくれないんですか」

 このドジ女もなかなか食い下がるな。かなり動揺してるみてぇだが。

「何度もそう言ってるピョン」

「…...わかりました。それでは、私と決闘してください」

 決闘?いきなりとんでもないこと言い出したな。それにこいつ戦えんのか?どう見ても弱そうだが。

「どうしてピョン?」

「もし私が勝ったらおとなしく私についてきて、カセンドラルに来てもらいます」

「…...分かったピョン」

「本当ですか!それでは早速はじめ」

「ちょっと待つピョン」

「なんですか」

「私が勝ったときはどうするピョン」

「えっ。えっと、それは……」

「そっちだけ要求するのはフェアじゃないと思うピョン」

 こいつにしてはまともな意見だが、こいつにだけはフェアなんて言葉使わせたくねぇな。俺のレベルとスキルを奪っておいて。

「確かに…...わかりました。では、もしあなたが勝ったら何を要求したいんですか」

「ふふふっ」

 こいつ、なんて顔してやがる。ようやく本性見せたか。めちゃくちゃとんでもないこと考えてるぞ。

「もし私が勝ったら、逆立ちで街を一周してもらうピョン」

「……それなら」

「しかも裸で」

「へっ……え、えぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!?!?!?!?!??!?!?」

 ドジ女は甲高い悲鳴をあげながらものすごい勢いで俺たちから距離をとった。しかも自分の体を両手で抱えながら縮こまっている。相当警戒されてんな。

「どうして私がそんなことしないといけないんですか!?」

「ピョンピョン。どうするピョン」

「ひどいです!そんなの絶対に無理です!」

「別に私は勝負しなくてもいいピョン」

「うぅぅぅぅぅぅ〜」

 また泣きそうになってやがる。これはさすがにかわいそうだな。負けた時のリスクがあまりにも高すぎだろ。

「せめて、せめて逆立ちだけではダメですか」

「ダメピョン。裸のところに意味があるピョン」

「うぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅ〜〜〜」

 こいつ、マジ鬼畜すぎんだろ。俺よりも魔王みてぇなやつだ。これがこいつの本性ってことか。最初からヤベェやつだとは思ってたが、相当だなこりゃ。それにしても逆立ちか………...ん?あの格好で逆立ちをするってことは………...っ!?

「さっ、サブロウ。行こうピョン」

「いや、待て」

「どうしたピョン?」

「俺が許す」

「何をピョン?」

「こいつが勝ったら逆立ちで街一周。これで許す」

「本当ですか!」

「どうしてサブロウが決めるピョン」

 ふふっ。やばいことに気づいちまったぜ。こいつが勝でばいいもんが拝めそうだし、最悪負けてもこのドジ女がこいつをどっかに連れて行ってくれるんだからな。つまり俺にとってはどっちが勝っても負けてもいいことづくしということだ。ふふふふふふっ。我ながら魔王的な妙案だぜ。

「絶対にいかがわしいこと考えてるピョン」

「それでは私と決闘してください」

「はぁ〜。こうなったら仕方ないピョン」

 どうやら決闘が成立したみたいだな。この戦いの行方がどうなるか、見ものだな。

※公開情報※

・剣術士…剣術を主に扱う人のこと。大多数の勇者が剣術士であった。

・魔術士…魔法を主に扱う人のこと。特別なスキルがなければ魔法を使うことができないため、希少な存在。魔法を使う際に魔力を消費する。

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