第3話 恋耳うさぎと紐勇者の出会い
〈ラフレシア・ガーデン〉
-ツクバネの街近郊-
▼民家
『サブロウ!早く起きなさい!朝ご飯はもうできてるわよ!』
「ふあぁぁぁぁ〜」
もう朝かよ。まだ全然寝足りないぞ。それに…...いてっ、いててててっ!体のあちこちが痛ぇ。くそっ。全部あいつのせいだ。あんなモンスターと急に戦わされたせいだ。いてててっ。寝返りすらうてねぇ。いずれ魔王となる俺がこんな無様な姿になるなんて…...こうなったらこのままもう一回寝ちまおうか。
「ほら!」
「うわっ!」
布団をかぶった瞬間、お腹のあたりに何かがのしかかってきた。この重みは……
「早く起きなよ」
「……」
あの忌々しい声が聞こえる。モンスターのくせに俺のアジトに住みついて飯まで食いやがって、あげくの果てにはいい狩り場を教えるとか言って俺がこんなになるまで追い詰められる状況に陥れやがったあいつだ。それに昨日も結局俺のベッドに俺より早く寝やがった。本当に図々しい奴だ。こんな奴は1日でも早く追い出さねぇと俺の安眠がいつまでたっても犯されちまう。
「起きなよ」
「……」
腹をグリグリするな。どうして家主である俺がこんな居候野郎の指図を受けないといけないんだ。こいつがなんと言おうと俺は絶対にここから出ないからな。
「ピョンピョン」
「……」
今度は飛び跳ね始めやがった。体に響くからやめろ。くそっ。こうなったら無視だ無視。
「意地でも起きないつもりか」
「……」
「…...早く起きないとまたお腹に頭突きしちゃうぞ」
「起きればいいんだろ」
「そうそう。素直でよろしい」
くっそう…...こいつだけは一生許さねぇ。
「サブロウ!なんだ、起きてるんじゃない。あんたもやればできる子なのね」
「起きたくて起きたんじゃねぇよ。この凶悪なモンスターに無理やり起こされたんだよ!」
「モンスター?」
「こいつだよこいつ!昨日もそう説明しただろ!」
「あぁその子。だからその子はあんたの友達なんだろ」
「違ーう!!!」
何度言ったら分かるんだ。こいつはどこからどう見たってモンスターだろ。ラビット族特有のこの長い耳に体毛で覆われた小せぇ体。人間と見間違う要素なんて一つも持ってないじゃねぇか。
「こいつは友達でもなければ人間でもないんだぞ」
「あんたもバカなことばかり言ってないで、友達は大切にしなさいよ」
全く聞く耳持たねぇじゃねぇか。自分の息子がモンスターと友達になろうとしてんのに止めねぇとか頭おかしいだろ。
「とにかく、早く朝ご飯食べに来なさいよ」
「は〜い」
「どうしてお前が返事してんだよ」
「ほら行くよ」
「こら!勝手に動き回るなって、いててててっ」
これ以上こいつに家ん中うろちょろされたら迷惑だからな。なにがなんでも外に追い出さねぇと。あれが見つかっちまう前に。それにしても体が……
「昨日ちょっと走っただけなのに筋肉痛とは情けないねぇ。それでも魔王になるなんて言えるの」
「何言ってんだ!昨日はお前が俺をふざけた場所まで連れ込んだせいでとんでもないモンスターと戦わされたじゃねぇか。本当に死ぬところだったんだからな!反省してんのか」
「君こそ何を言ってるんだい。昨日は僕と君が初めて出会ったんじゃないか。忘れちゃったの」
はっ?こいつはさっきから何言ってんだ。まさか昨日あったこと全部しらばっくれようとしてんのか。だがこいつならやりかねねぇ。こうなたっら絶対に反論できねぇような証拠を突きつけてやるだけだ。
「忘れてんのはお前だよ。俺は昨日の戦いで大量に経験値をゲットしてレベルまで上がってんだぞ。見ろ!」
ステータス画面を突きつければさすがのこいつでも言い逃れはできねぇだろ。明らかに一昨日の数値から大幅に上昇してんだからよ。
「これがどうしてたって言うんだい。君のレベルは元から6だったろ」
「ちゃんと見ろよ。俺のレベルは昨日の戦いで7になったんだ……ん!?」
んんんんん!?!?!?ステータス画面に表示されている俺のレベルは……6。なんじゃこりゃ!?一体どうなってんだ!?しかも経験値が一昨日のと全く変わってねぇ。確かに俺のレベルは昨日7に上がったはずだ。何度も確認したはずだろ。あれだけの死闘を繰り広げて、俺よりレベルが倍以上も高いモンスターを倒したんだぞ。それで経験値が1も増えてないなんてありえねぇだろ。これは何かの間違いだ。このステータス画面がおかしくなってんだ。
「それより早く朝ごはん食べようよ。僕もうお腹ぺこぺこだよ」
「モンスターならモンスターらしくその辺の草でも食ってろよ」
「う〜ん。雑草はあまりおいしくないからな。僕はこう見えてグルメなんだよね」
なにがグルメだ。どこの世界に人の家でご馳走になるモンスターがいるんだよ。お前なんか残飯で十分だ……って、昨日も同じこと言っただろ。こいつわざとやってんのか。そこまでして昨日あったことをなかったことにしようとしてんのか。だったらこのおかしくなったステータス画面もこいつのせいじゃないのか。
「はい。野菜と牛乳。パンもあるからね」
「わ〜い」
「おい!なにのんきに飯食おうとしてんだよ。俺のステータス画面がおかしくなってんだぞ。お前、なんか知ってんだろ!」
「知らないよ。ムシャムシャ。おかしいのはステータス画面じゃなくて君の頭だろ。ムシャムシャ。おいしい〜」
「てめぇ、喧嘩売ってんのか!」
「こらサブロウ。朝から大声出すんじゃないよ」
「はははっ。サブロウ怒られてるよ」
「くそ…...これ以上お前なんかに構ってられるか。こうなったらモンスター倒して俺の実力を証明してやるぜ」
「サブロウ!あんたご飯も食べずにどこ行くのよ!」
ユウガオの森に行ってまたあのモンスターと戦えば自ずと分かるはずだ。俺のレベルが上がってるってことがな。
「待ってよサブロウ」
やっぱりついてきやがったな。ふん。計画通りだ。こいつの目の前であのモンスターを倒して俺の実力が向上してくることを示してやればこいつも認めざるをえないだろう。その時が年貢の納め時だぜ。
「俺は今からモンスター狩りに行くんだ。邪魔するなよ」
「モンスター狩りって言ってもどうせまた〈ホワイト・ラビット〉ばっかりなんだろ」
「そんなんじゃねぇよ。俺が狩るのは昨日倒したあのモンスター。〈ブルータル・エクス〉だよ」
「ヘェ〜」
「なんだよその顔は」
「別に。それより頑張ってね。陰ながら応援してるよ」
お前の応援なんかいるか。昨日は確かにこいつの力に頼っちまったが、今回は俺の力だけで倒してみせるぜ。なんせレベルが上がったんだからな。昨日までの俺と同じだと思うなよ。
「俺は最強の魔王になる男なんだからな!」
***
〈ラフレシア・ガーデン〉
-ユウガオの森-
「ぎゃあぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
「ハハハハハハハ!」
すでに戦場と化しているはずの森の中に場違いな笑い声が響く。あの野郎…...何が楽しいのか俺の方を見ながらピョンピョンと飛び跳ねてる。完全に俺をおちょくってやがる。
「笑ってんじゃねぇよ!こっちは今にも殺されそうなんだぞ!」
「油断するからだよ」
昨日と同じく森の奥深くまで進んだところで俺は〈ブルータル・エクス〉に遭遇した。レベルは同じく15。まるで深淵を覗いてるかのような黒々とした全身に、頑丈そうな装甲、そしてその周りを包み込むこれまたおぞましく黒い瘴気のような霧。明らかに普通のモンスターとは違ったオーラを放つ。だがビビる必要なんかねぇ。なぜなら俺は昨日こいつを倒したからだ。そう。俺は奴に勝てる。勝てるはず……
「ヴィヒーン!!!」
「ぎゃー!!!」
どうなってんだ!?全く歯がたたねぇ。これじゃ初めてこいつと戦ってるみたいじゃねぇか。攻撃をかわしてるだけで精一杯だ。
「うまいうまい。逃げるのだけは三流じゃないんだね」
「うるせぇ!」
「だけど逃げてばかりじゃ倒せないよ」
くそっ。あいつの言う通りこのまま走って逃げてばかりいても俺の体力が尽きるだけで昨日の二の舞になっちまう。こうなったら昨日みたいにあのモンスターの攻撃を受け止めてから俺の攻撃を当てたいが、俺の今の力だけではおそらく不可能だろう。そうするためにはどうしてもあいつが昨日使った強化魔法とかいうのに頼らないといけねぇ。だが…...あいつにだけは絶対に頼りたくねぇ。
「僕の助けが必要になったらいつでも言ってね」
「誰がお前の助けなんか借りるか!」
あいつの助けなんか借りずとも俺一人の力で倒してみせるぜ。倒し方は分かってんだ。俺に向かって突進してくるモンスターから逃げるのではなく、その攻撃を真正面から受け止める。それさえできればこっちのもんだぜ。それさえできれば…...
「さぁこい!」
「ヴィヒーン!!!」
「グハッ!」
…...やっぱ無理だわ。俺の筋力だけじゃあいつの攻撃を受け止めきれねぇ。もしこのステータス画面が正しいのだとすれば俺とあいつのレベル差は9もあるんだからよ、普通にやって勝てるわけがねぇ。俺の体力もあいつの攻撃をあと一回受けられるか受けられないかのギリギリしか残ってねぇ。
「サブロウ大丈夫。そろそろ体力がやばそうじゃない」
「だ、大丈夫に決まってんだろ。この俺がそう簡単にくたばってたまるか」
「勝算はあるのかい」
「勝算だと。そんなもんは関係ねぇ。俺はなにがなんでもあいつを倒す!」
「つまり無いんだね」
こいつが何と言おうと俺はこの戦いに勝ってみせる。俺に残されたチャンスはおそらくこれが最後の一回になるだろう。なんとしても決めてやる。勝算は限りなく少ないが無いわけじゃねぇ。これまで何度もあのモンスターの攻撃を受けてきた俺だからこそ奴を倒すことができる方法。それは、突進攻撃が俺の体にまともに直撃する前にギリギリでかわしてそのまま俺の攻撃を当てる。〈ブルータル・エクス〉は確かに速いが攻撃する瞬間は減速している。そこが狙い目だ。さすが俺様だぜ。こんな弱点を瞬時に見抜くことができるなんて。
「本当に大丈夫」
「当たり前だろ。お前はそこで座って俺の活躍をしかと目に焼きつけとけ」
さぁ決着をつける時だ。モンスターが俺の方に猛烈な勢いで向かってくる。集中するんだ。あいつが攻撃してくる瞬間にだけ動く。
「ヴィヒーン!!!」
ここだ!攻撃が当たらないようギリギリで……かわせ…...やべぇ。このままじゃギリギリかわせねぇ。当たっちまう。くそっ。あと少しだってのに。こんなところでやられてたまるか。
「うおぉぉぉぉぉ!食らえっ!!!」
「ヒギィーン!」
モンスターの低い唸り声が鳴り響く。驚くべきことにモンスターの攻撃が俺に当たるよりも先に俺の攻撃の方が命中していたのだ。しかしその理由はすぐに判明した。俺の体を包み込む赤みがかった薄い光。それが動かぬ証拠。間違いなくあいつが俺に強化魔法を使ったということだ。くそっ。余計なことしやがって。
「早く倒しちゃいないよ」
「分かってるよ!破滅の暗焔惨殺剣!」
俺の攻撃によって怯んでいたモンスターの胴体にとどめの一撃を食らわせてやった。モンスターの体が跡形もなく四散する。やっと倒せたか、って休んでる場合じゃねぇ。俺はすぐにステータス画面を確認した。レベルは……7。やっぱり上がってる。
「おめでとうサブロウ」
「ほら見ろよ、俺のステータス画面を。ちゃんとレベルが上がってんだろ!」
「そうだね」
「ならどうして昨日の経験値がなかったことになってんだよ」
「まぁまぁ。細かいことは気にせずに、レベルが上がったんだからもっと喜ぼうよ」
「なんか話をそらそうとしてねぇか」
「別に」
やっぱりこいつどう考えても怪しいだろ。絶対に何か知ってやがる。
「それにしてもよくあのモンスターを倒せたね。僕の助けがあったとはいえ、驚いたよ」
「そう言えば!どうして強化魔法を使ったんだよ!お前の助けなんかいらねぇって言っただろ!」
「だけどあそこで強化魔法を使わなかったら君は間違いなく死んでたよ」
「そんなことねぇ!お前の魔法がなくても俺は勝ってたんだよ」
「本当かなぁ」
こいつ、俺の実力を疑ってんのか。生意気な奴だ。だがレベルも上がって能力が全体的に上昇した今の俺ならさっきのやつとまた戦うことになったとしても今度は余裕で勝つに決まってる。ふふっ。明日が楽しみだぜ。
***
〈ラフレシア・ガーデン〉
-ツクバネの街近郊-
▼民家
『サブロウ!早く起きなさい!朝ご飯はもうできてるわよ!』
「ふあぁぁぁぁ〜」
もう朝かよ。まだ全然寝足りないぞ。それに体もだるいし、このままもう一回寝ちまおうかな。
「ほらっ!」
「うわっ!」
布団をかぶった瞬間、お腹のあたりに何かがのしかかってきた。この重みは……
「早く起きなよ」
「……しょうがねぇな」
「なんだ。随分と聞き分けがいいね」
こいつの言うことなんかに従いたくはないがこれも仕方がない。俺も学習するんでな。それに、俺にはしなければならないことがあった。そう。ステータス画面を確認することだ。昨日俺のレベルは間違いなく6から7に上がった。こいつも一緒に確認した。ゆえに昨日の朝みたいなことには決してなっていないはずだ。絶対になっていないはず。ステータス画面を確認して…...俺のレベルは……
「なぜだぁぁぁぁぁぁ!?!?!?」
「うわっ!びっくりした」
「どうして俺のレベルがまた6に戻ってんだ!」
経験値も能力も全てが三日前の状態と全く変わりがない。これは明らかにおかしいだろ。俺の一昨日と昨日は一体どこに行ったんだ。
「急に大声なんか出しちゃって。どうしたの」
「どうしたのじゃねぇよ!これを見ろよ!」
「君のステータス画面なら昨日も見ただろ」
「そうだけだよ……」
「それにしても相変わらずパッとしないステータスだね」
「そこじゃねぇよ!俺のレベルが下がってんだよ!」
「どういうことだい?君のレベルは昨日も6だったろ」
「嘘つけ!昨日お前も確認したじゃねぇか。俺のレベルが7になってることをよ!」
「そんなの全く記憶にないなぁ」
またすっとぼける気か。だが今度という今度は絶対に白状させてやる。二度も俺のレベルが下がったんだ。これ以上我慢できるか。
「おい、お前!今度こそ絶対に白状させて」
「こらっサブロウ!なに朝から大声出してるんだい!起きてるなら朝ごはん早く食べちゃいな!」
「そうそう。とりあえずご飯を食べようよ。僕もうお腹ぺこぺこだよ」
「おいこらっ!俺を無視するな!」
「さっきからどうしたの。そんなにカリカリしちゃって。もっと落ち着きなよ」
「これが落ち着いてられるか!俺の大事なレベルが下がってんだぞ!」
「レベルが下がったくらいで大袈裟だな。下がったならまた上げればいいじゃないか。過ぎたことをいつまでもぐちぐち言う男は嫌われるよ」
こいつ、適当なこと言いやがって。真面目に考える気があるのか。レベルが下がったんだぞ。何度も死にかけてまで戦ってようやく手にした経験値が根こそぎ無くなったんだぞ。そんなの許せるわけがねぇだろ。
「文句を言ってる暇があったらもっと戦って経験値を稼いだらいいんじゃないの」
「そんなこと言われなくても分かってるよ。けど俺のレベルが下がってるんだぞ。これじゃどれだけ経験値を稼いでも意味ねぇだろ」
経験値とはつまりレベルを上げるために稼ぐものであり、レベルを上げることによってステータス画面に表示されるような能力がだんだんと強化される。逆に言えば、レベルが上がらないってことは経験値を稼いでも意味がないってことになる。つまりあんな強力なモンスターと戦うだけ時間の無駄ってことだ。
「本当にそうなのかなぁ?」
「どういうことだよ」
「確かにレベルが上がることでステータス画面の能力は強化されるかもしれないけど、戦いにおいて勝敗を決めるのはなにもステータス画面が全てじゃないと思うけどね」
「他に何があるってんだよ」
「君が特に必要なのは実戦経験かな」
「実戦経験?」
「そう。自分よりも強い相手と生きるか死ぬかのギリギリの戦いをすること。こういう戦いで得られる経験は数値の上での経験値よりも何倍も価値があると僕は思うよ」
こいつにしてはなんだか妙に説得力のある言葉だな。ちっ。モンスターなんかに説得されるなんてみっともねぇ。俺だってそんなことは最初から分かってたっつうの。結局〈ホワイト・ラビット〉みてぇな弱い奴とばかり戦ってても意味がないってことだろ。いずれ魔王となる俺様にはあれくらいのモンスターがちょうどいいってもんだぜ。
「それでサブロウは今日はどうするの?また〈ホワイト・ラビット〉を狩るの?」
「そんなわけねぇだろ。俺の獲物は〈ブルータル・エクス〉だ。今度こそ俺の力だけで倒してやるぜ」
「そうこなくっちゃ」
***
〈ラフレシア・ガーデン〉
-ユウガオの森-
「ヴィヒーン!!!」
「うわっ!」
「うまいうまい」
俺の記憶では〈ブルータル・エクス〉と戦うのもこれで3回目。猛烈に速かった奴の動きも今では簡単に目で追える。さすがに攻撃をかわすことくらい屁でもねぇぜ。レベルがなんだってんだ。俺は確実に強くなってる。
「逃げるのはうまいけど、逃げてばかりじゃ勝てないよ」
「分かってるよ!」
そろそろ頃合いか。奴の動きは完全に見切った。今なら奴の攻撃をギリギリでかわして俺の攻撃を当てることができるはずだ。昨日みたいなヘマはしねぇぜ。
「さぁ来やがれのろま野郎!」
「がんばれ」
俺に散々攻撃をかわされてイライラしてるのか、モンスターは馬鹿正直に俺に向かって突進攻撃を仕掛けてきた。だがその攻撃が俺の体に触れるギリギリのところで俺はそれをかわした。そしてすかさず魔剣でモンスターの体を切り裂く。
「ヒギィーン!」
「やったぜ!見たか!これが俺様の実力だ!」
「すごいじゃん」
あいつの助けなんか借りなくても俺にかかればこの程度のモンスター余裕だったんだ。ようやく俺様本来の力が覚醒しようとしてるってことだな。我ながら自分の力が恐ろしいぜ。ふふっ。世界の破滅は近い。
「ヴィヒーン!!!」
「危ない!」
「えっ…...ぎゃぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
めちゃくちゃ痛いじゃねぇか。な、何があった。どうして俺の攻撃を食らってこんなすぐに動いてられるんだ。今までは動きを止めてたはず……そうか。そうだった。あのモンスターが俺の攻撃で動きを止めてたのはあいつが俺の魔剣に変な魔法をかけてたからだ。
「油断しちゃダメだよ」
くそっ。俺としたことが飛んだ計算ミスをしてたぜ。あいつの助けを借りない以上俺の魔剣の威力はいつも通りってことか。だがそんなの大した問題じゃねぇ。俺には奴の攻撃がかわせるってことが分かったんだ。後はあのモンスターがくたばるまで攻撃を当て続ければいいってことだ。
「よっしゃいくぜ!」
***
〈ラフレシア・ガーデン〉
-ツクバネの街近郊-
▼民家
『サブロウ!早く起きなさい!朝ご飯はもうできてるわよ!』
「ふあぁぁぁぁ〜」
もう朝か。今日も体は少しだるいがそれほどの痛みはない。むしろ気分がいい。昨日の戦いは苦戦したが最後まで奴の助けを借りることなく俺一人の力でモンスターを倒してやったんだ。最高に気持ちよかったな、あれは。そしてレベルが上がったのも確認した。間違いなく俺のレベルは昨日7に上がった。いっそのことステータス画面を夜通し見張ってやろうかとも思ったが、結局睡魔には勝てずにあっさりと寝ちまった。一応念のためもう一回確認しとくか。ステータス画面を開いて…...俺のレベルは……6。
「はぁ〜」
またか。3回目ともなるとさすがに慣れてきたな。朝になるとなぜか俺のレベルが下がってる。一体どういう仕組みなんだ。俺はこれから一生レベル6のまま生きてかなきゃならねぇのかよ。はぁ〜。
「朝から不景気なため息ついて、どうしたの?」
「お前は本当に知らないのか」
「何を?」
「俺のレベルが下がってる理由だよ」
「なんのこと?」
ダメだこいつ。絶対に口を割る気はないようだ。ちっ。ますます怪しいぜ。俺のステータス画面がおかしくなったのも全部こいつと出会ってから起きたことだってのに。こいつが何も知らないわけがねぇだろ。
「それより今日はどうするの?」
「決まってんだろ。モンスターを狩りに行くんだよ」
「レベルが下がってるのに」
「それでもやるしかねぇんだよ。レベルが下がろうとそれ以上に上げてやるぜ」
「えらいね」
レベルが下がる理由が分からないからって、そんなことで頭を悩ましてる暇なんかねぇ。俺はいずれ魔王になる男。強いモンスターと戦いまくって実戦経験をどんどん稼いでいく。レベルなんて関係ねぇ。俺はどんな奴にも負けねぇくらいに強くなってやるぜ。
***
〈ラフレシア・ガーデン〉
-ユウガオの森-
真昼の快晴な空から降り注ぐ太陽の光を遮るほど高い木々が密集し、じめじめとした陰気な空気が辺りを漂う。最初は気持ち悪い限りだったが、今となってはむしろ俺の肌に合ってる。それにこれだけ深い森の中まで来てもほとんど迷うことはない。この場所にも慣れたもんだ。とうとう〈ブルータル・エクス〉を自力で倒せるようになった今、ここは最高の狩り場だぜ。ただ一つ難点があるとすれば、〈ブルータル・エクス〉がなかなか見つからないということくらいか。これだけ森の奥深くに来てるにもかかわらず、〈ブルータル・エクス〉どころか他のモンスターの一匹も見つからない。今までの3回は結局あのラビット野郎がたまたま見つけたおかげで戦うことができたわけだが、冷静に考えてみればどうしていつもあいつが先に見つけるんだ。あんなチビなくせに。しかもあいつがモンスターを見つけた時のタイミングといい態度といい、妙にわざとらしいんだよな。そろそろだな。ちょうどこれくらい奥まで進んできたところであいつが立ち止まったと思えばこう言うんだ。
「この辺でいいかな」
そら来た。おきまりのセリフだ。そんでこの後に心が全くこもってないような声で言うんだよな。
「あっ……」
はいはい。どうせモンスターがいるんだろ。どこだ。あっちか。こっちか。まぁ俺がこうやってあたりを見渡しても結局見つからねぇんだよな。そんでまたあいつの方に振り向けば都合よくモンスターがいるんだよな。
「……やばっ」
ん?どうしたんだ急に。今までと違うじゃねぇか。不思議に思いながらあいつの方に振り返ってみると、異常な光景が俺の視界に入り込んだ。
「な、なんだよあいつ。お前の知り合いか」
「まさか。それと先に言っておくけどあれは人じゃないからね」
「何言ってんだ。どう見たって人だろ。あれが人じゃなきゃなんだって言うんだよ」
俺たちから5メートルほど離れたところに人の形をした何かが立っていた。背格好は俺と同じくらいだが、顔もよく見えなければ、全身を見たことのない鎧で武装していて中身がどんな奴なのか全く分からない。頭からは角みたいもんまで生えている。よく見れば見るほど確かにこいつの言う通りまともな人間とは思えねぇ。何よりおかしいのはそいつの周りから黒々とした霧みたいなもんが漂ってるってことだ。どこかで見たことがあると思えば、間違いなく〈ブルータル・エクス〉から出てたやつと同じだ。てことは……
「…...まさかあいつ、モンスターなのか」
「分かるでしょ、あんな見た目なんだから」
「マジかよ」
にわかには信じられねぇ。人型のモンスターなんて初めて見たぜ。こんなのがこんな近くの森にいるなんて街でも聞いたことがねぇよ。
「ちゃんとステータスを確認しときなよ」
「いちいち言われなくても分かってんだよ」
まずは名前だな。名前は……〈The Samurai KURAND〉…...?
「なんて読むんだよあれ」
「そうだね。まぁクランドとでも呼べばいいんじゃない」
「クランドねぇ……っていうかこいつ!?レアリティがSじゃねぇか!?しかもレベル19って、どういうことだよ!?」
「落ち着きなよ。どんな時も平常心さ」
「何言ってやがる!これはさすがにまずいだろ。俺よりレベルが10以上も高いんだぞ。間違いなくやられるっつうの!」
「そんなことないって。前にも言っただろ。戦い方の工夫次第でレベル差はいくらでも埋められるって」
「おい!動き出したぞ!」
クランドとかいうモンスターはゆっくりと俺たちの方に歩き始めていた。動くたびにガシャガシャと不気味な音が鎧から鳴り響く。その音を聞いた瞬間、背筋に冷たい何かが走る。まだ何もしてねぇってのに汗まで出てきやがった。やばい。あいつは確実にやばい。
「大丈夫、大丈夫。あいつは基本的に動きが遅いから。ちゃんと攻撃を見てればかわせるよ」
「どうしてそんなことが分かるんだよ」
「う〜ん……女の勘、的な」
女の勘って、全く信用できそうにないな……って、ん?女の勘?それってつまり……
「……お前、雌だったのかよ!?」
「あれ、言ってなかったっけ?」
「聞いてねぇよ!ていうかそんなこと話してる場合じゃねぇ!」
気づけばクランドは俺たちとの距離を一気に詰めていた。確かに〈ブルータル・エクス〉ほどの速さはないが、あの重そうな見た目に反してかなり俊敏な動きをしてやがる。このままだとすぐにでも奴の手が俺に届きそうだ。だがあいつ、どうやって俺に攻撃する気なんだ?パンチでもしてくんのか?
「サブロウ、危ない!」
「えっ」
一瞬何が起きたのか全く分からなかった。俺とクランドとの距離はまだ十分離れていた。なのに。あいつの攻撃は当たらないと思っていたのに……
「ぐはっ!」
「大丈夫かい」
「あ、あぁ」
こいつが俺を後ろに吹っ飛ばしてなければ俺は間違いなく死んでいただろう。俺の体が直前まであった空間を一筋の線が切り裂いていたからだ。その攻撃はあまりにも速すぎた。クランドが手にしているそれを見てようやく奴が何をしたのか分かった。腕の二倍近くはあるその刃は剣というにはあまりにも細く、奇妙な形に反っていた。
「なんだよあの武器は」
「あれは刀だね」
「刀?」
「攻撃範囲が普通の剣に比べて格段に広い上に切れ味も抜群。かなり危険な武器だよ。かすっただけでも致命傷になりかねないだろうね」
そんなの反則だろ。それにあいつが武器を振るう速さが尋常じゃねぇ。これじゃ迂闊に近づくことすらできねぇ。そんなんでどうやって攻撃しろってんだ。
「こうなったのも僕の責任だし、これはさすがに僕の出番みたいだね」
「お前の助けなんかいらねぇよ。俺一人でなんとかしてやる」
「今回ばかりはそういうわけにはいかないと思うよ。あれは君一人でどうにかなる相手じゃない」
「なんだと!」
「強化魔法をかけるからまずあいつの攻撃をかわすことに専念するんだ」
「どうしてお前に指図されないといけねぇんだよ」
「来るよ」
「なにっ」
すでにクランドは刀を大きく振り上げていた。こんだけ距離があるのに当たるってのか。やばい。絶対に当たるわけにはいかねぇ。
「かわすんだ!」
「分かってるよ!」
体の周りを赤みがかった光が包み込むと同時に全身から力がみなぎってきた。あいつの強化魔法か。余計なことしやがってと言いたいところだが、確かにこのモンスター相手にはそんなことも言ってられねぇ。あの速すぎる攻撃をなにがなんでもかわさなきゃならねぇからな。さぁ来やがれ!
「うっ」
刀が一瞬で目の前を通り過ぎる。少しでも動き出すのが遅れていれば俺の体は今の攻撃で真っ二つになっていただろう。まじでやべぇな。強化魔法があってこれだけギリギリなのかよ。一瞬たりとも油断できねぇ。そもそもこんな見えねぇ攻撃そう何回もかわせるわけがねぇだろ。
「攻撃をかわす時は刀ばかりを追っちゃダメだよ。相手の体全体を見て、攻撃の軌道を予測しなくちゃ」
「わ、分かってるよ」
俺だって〈ブルータル・エクス〉の攻撃を今まで散々かわしてきたんだ。こいつの攻撃だってすぐに見切ってやる。この俺に不可能なことなんてないんだからよ。
「分かってると思うけど、一度でも当たったらアウトだからね」
「あぁ」
クランドはじりじりと距離を詰めながら次の攻撃を構えていた。今度は刀が地面すれすれまで下げられている。次の瞬間、刀を下からすくい上げてくるような攻撃が俺の鼻先をかすめる。どうだ。攻撃がだんだん見えてきたぞ。あとはどうやって俺の攻撃を当てるかだ。俺に思いつくのは〈ブルータル・エクス〉と戦った時と同じようにカウンターを狙うことくらいだが、試してみるしかねぇか。
「僕の助けが必要になったらいつでも言っていいからね」
「そんなもん必要ねぇよ。俺は俺の全力をやつにぶつけるだけだ」
「わお。かっこいい」
本当に思ってんのか。相変わらずわざとらしいやつだ。こんなやつに構ってないで、戦いに集中だ。クランドの攻撃をギリギリでかわしてから俺の魔剣を奴の体に当てる。そのことだけに集中だ。クランドは刀を構えながら近づいてくる。奴の周りから放たれる黒いオーラみたいなもんが不気味でしょうがない。だがビビる必要なねぇ。俺ならできる。
「さぁ来い!」
クランドが一歩を踏み込むと同時に素早い一振りが俺のこめかみを捉えようとしていた。だが俺は一瞬で奴の懐にもぐりこむことに成功した。あとはこの魔剣で攻撃するだけだ。
「食らえ!」
魔剣は間違いなくクランドの胴体を正確に切り裂いた。なのに奴の反応は薄い。まるで攻撃が当たらなかったかのように平然としてやがる。
「どうなってんだ。俺の攻撃は当たったはずだぞ」
「確かに当たったけど、ダメージはあんまり与えられなかっただろうね」
「どうしてだよ」
「レベル差の問題もあるけど、最大の要因はあの甲冑だね」
甲冑って言うのか、あの変な鎧みたいなやつは。めちゃくちゃ固そうな装備だな。
「あれはかなり防御力が高いよ。君のその武器じゃ歯が立たないかもね」
「俺の魔剣をバカにしてんのか!」
「バカにしてるわけじゃないよ。ただ事実を言ったまでさ」
「ならどうしろって言うんだ。俺にはこの武器しかねぇぞ」
「まぁ、その武器も使い方次第かな」
「使い方次第って、この武器でできることなんて限られてるだろ」
「そうかもしれないけど、ナイフだからこそできることだってあるのさ」
「ナイフじゃねぇ。これは魔剣だ」
「そうだったね。その魔剣だからこそあの甲冑を攻略する手立てがあるんだよ」
「なんだよそれ」
「少しは自分で考えてみれば」
こいつ…...こんな緊急時だってのに悠長なこと言いやがって。俺の魔剣であの甲冑を攻略するだと。そんなことできんのかよ。さっきだって完全に命中したはずなのに傷一つつけられなかったのによ。あんな固い装備がある以上ダメージなんて通りっこねぇって。あんな固い装備……固い装備……装備…...そうか!固いのはあの装備だけってことか。奴の生身に直接攻撃をぶち当てればダメージが入るってことじゃねぇか。さすが俺だ。こんなことに気づくなんてよ。
「その顔は何か分かったみたいだね」
「当たり前だろ。俺を誰だと思ってるんだ。いずれ魔王となる男、ディアボロス=シグマ……」
「来たよ」
「ちょっ、待て…...うわっ!」
俺が名乗ってる途中で攻撃してくるなんて反則だろ。許さねぇ。だがやるべきことは分かった。どれだけ防御力の高い装備をしてようが体全体を覆ってるわけじゃねぇ。必ず弱い部分があるはずだ。そして俺の魔剣なら小回りが利く分、どんな隙間だって攻撃できる。そして俺が狙うべきは…...
「首を狙うといいよ。あそこならかなりの大ダメージが期待できるからね」
「言われなくても分かってるわ!」
くそっ。俺のセリフを取りやがって。だがそうと決まればこっちのもんだ。
「いくぜ!」
クランドは休む暇もなく連続で攻撃を仕掛けてきた。細長い刃が何度も俺の体をかすりそうになるが俺は全てを寸でのところでかわした。俺もかわすことに慣れてきたもんだ。それに一つ分かったことがある。武器が長い分、攻撃をした後に大きな隙ができているということだ。俺はその隙を逃さずクランドの首元を狙った。だが奴は俊敏な動きで器用にかわしやがる。
「くそっ。なかなか攻撃が当たらねぇ」
はぁ……はぁ……はぁ…...このまま俺の攻撃が当たらなきゃやべぇぞ。こっちは一撃でも当たったらやばい攻撃を毎回ギリギリでかわしてんだ。こんなの体力が持たねぇ。
「こんな時は急がば回れだよ」
「はっ?」
いきなり何を言いだしてんだ。そんな意味不明なこと言う前に、もっと役に立つ情報をよこせってんだ……って、しまった!?あいつの言葉に気を取られてる隙に刀がすでに俺の真上に達してた。やばい。これじゃ今からかわそうとしても間に合わねぇ。右行っても、左行っても、後ろに下がっても当たっちまう。どうする。
「前だ!」
とっさのことで一瞬自分でも自分が何をしたのか分からなかったが、俺はあいつの言葉に反応してクランドの足元に滑り込んでいた。俺の頭上を刃が一瞬で通り過ぎる。なんとかかわせたか。安堵したのも束の間、次に俺の目に入ってきたのはクランドの足だった。そこは多少の武装がされているものの、甲冑ほどの固さはなさそうだった。
「ここだ!」
俺は足首めがけて魔剣を振るった。案の定かなり手ごたえがあった。クランドは俺の攻撃を受けて地面に膝をついた。例によって痺れてるようだ。これもあいつの魔法の影響だ。これで首を狙える。
「食らえ!破滅の暗焔惨殺剣!!!」
俺の魔剣が首のかなり深いところまで切り裂いた。そして次の瞬間、クランドは跡形もなく四散した。終わった……のか。
「お疲れサブロウ」
「サブロウって……呼ぶんじゃ……ねぇ……」
「かなりお疲れな様子だね」
戦いが終わったことに安心した俺の体からは力が一気に抜け、座ることすらままならないほどの疲労がどっと襲いかかってきた。今回はマジでやばかった。何度も死を覚悟するような場面があったからな。
「それにしてもよく頑張ったね。正直勝てるとは思ってなかったよ」
「うっせぇ」
「それでステータスはどうなった?結構な経験値がもらえたんじゃない」
そうだ。ステータス画面を開いてレベルを確認する。すげぇ!レベルが8まで上がってやがる。こんなに経験値がもらえるなんて夢みてぇだ。
「ついでにあのモンスターはレアリティが高かったからいいアイテムもゲットしたんじゃない」
アイテム?そう言えば、最近は戦うことばっかに集中しすぎてモンスターがドロップしたアイテムを確認してなかったな。アイテム欄を見てみると、上には〈ホワイト・ラビット〉を倒してゲットした見慣れたアイテムがストックされていた。だが驚いたことに、その下には全く見覚えのないアイテム〈腐ったエクスのばら肉(中)〉なんてものがストックされていた。しかも3つ。これって確か……何か大事なことを忘れているような気がしたが、それ以上にさらにその下にあった2つの見たことのないアイテムが俺の目を引いた。〈魔界新参の刀〉と〈漆黒の装束・一揆〉。これ…...刀ってことは…...まさか新しい武器じゃねぇか!よっしゃ!
「うれしそうだね」
「当たり前だろ。ついにちゃんとした武器が使えるようになったんだからな」
早速外に出して装備したいところだが、さすがにこれ以上体が思うように動かねぇ。こりゃ早い所帰ったほうが良さそうだな。
「とりあえず帰るか」
俺は最後の力を振り絞ってなんとか立ち上がりつつ、その場を後にした。足取りはかなり重かったが、それ以上に今までで最高の高揚感と満足感が俺の背中を押してくれた。
***
〈ラフレシア・ガーデン〉
-ツクバネの街近郊-
▼民家
『こらー、サブロウ!早く起きなさい!』
「ふあぁぁぁぁぁ〜」
「きゅぅぅぅぅぅ〜」
もう朝か。まだ全然寝足りないぞ。体もめちゃくちゃいてぇし、このままもう一回寝るとするか。その前に、なんだかこのベッドいつも以上に窮屈だな。それになんか柔らかいものが俺の体に密着してやがる。なんだこの感触。柔らかい上に妙にスベスベだな。まぁどうせまたあいつが俺のベッドを侵略しようとしてんだろ。モンスターのくせに図々しい奴だ。ここはいつも以上にガツンといってやる必要があるな。
「おいお前!俺のベッドに勝手に入りやがって!さっさと出てい……け………………お、女!?」
ど、ど、ど、どうして女が俺のベッドで寝てんだよ!?布団を剥ぎ取った瞬間、中から現れたのは紛れもなく人間の女だった。おまけに服を一切着ていない。
「はぁ〜。よく寝た〜」
「お、おい!起きるなよ!」
見えちまうだろうが。
「ていうかお前、一体誰なんだよ!」
「私?私の名前は恋耳うさぎ。よろしくピョン!」
みなさんこんにちは。
かなり更新が遅れてしまいすみません。これからペースを上げられるよう頑張りたいと思います。
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※公開情報※
・レアリティ…レアリティには下からN、S、T、U、EXの5つが存在する。レアリティが上がるごとにモンスターの能力は大きく上昇し、倒した時にもらえる経験値やアイテムなどがよくなる。
・〈腐ったエクスのばら肉(中)〉…どんな腕利きの料理人が調理したとしても食べることができない。ただし一部のモンスターにとっては美味らしい。