ボツ案②『百万人に一人の美少女アイドル』
「今日君を呼んだのは今後の方針について相談するためだ」
「はい。私もプロデューサーとは一度話すべきだと思ってました」
「そうか、相談があるなら先に言ってくれ」
「それでは遠慮なく。君は百万人に一人の美少女だ!てスカウトされたのに全く人気が出ないのはなぜですか?」
「あー……それかー。うん、それに関してはゴメン。初めてのアイドルスカウトで舞い上がってだいぶ盛ってしまった」
「私、百万人に一人の美少女じゃないんですか?」
「うーん、正直じゅう……」
「十万人に一人?」
「十人に一人ぐらい」
「99万9990人どこいった!」
「とにかく!話を進めよう」
「『とにかく!』で無理やり話を変えないでください」
「とにかく!!ここが生き残れるかの分かれ道だ。アイドルは顔だけじゃない。たとえ八人に一人の美少女でもトップを目指せる!」
「二人減ってる!」
「とにかく!!!これからは他にはないキャラクター、個性で売る時代だ」
「キャラクターって、プロデューサーにはなにか良い案があるんですか?」
「いや、具体的にはないけど……」
「はぁ……使えな。そんなんだから歯ブラシを事務所のトイレ掃除に使われるんですよ」
「え、ちょっと待って、なにそれ初耳なんだけど……」
「あ……やば。とにかく!今後の方針を考えましょう!」
「いやいやいや、けっこう衝撃の事実を『とにかく!』で流さないで!」
「とにかく!!キャラクターっていってもどうやって考えればいいんでしょう?」
「最近歯磨きの時になんかエグみがあると思ってたんだよな……。そうだな、好きなものからキャラ付けしてくってのはどうだ?ほら、何か好きな物をあげてみて」
「うーん、あ、こう見えて料理得意ですよ。お魚とか綺麗に捌けます!」
「料理系アイドルかー、かなり飽和してるジャンルだな」
「あとは、最近『刀剣輪舞』にハマってて日本刀とか歴史に興味があります!」
「オタク、歴史系アイドルか。その手のは中途半端な知識だとすぐ『ニワカ乙』って炎上するからなぁ」
「はぁ……。プロデューサー、あなた自分がなんでお給料もらえてるか分かってます?」
「え、あの、アイドルをプロデュースしてです」
「で、いつもなにしてますか?机の上の美少女フィギュア触ってニヤニヤしてるだけでしょう?」
「凛世ちゃんをガラクタって言うな!……確かに触ってる時間はちょこっとあるけども」
「挙げ句の果てにアイデアを出すのはアイドル任せで、これもダメあれもダメって言うだけ。それがあなたが憧れたプロデューサーの姿ですか!」
「っ!そうだ……。俺はアイドルと二人三脚で高みを目指す。そんなプロデューサーに憧れていたんだ!お陰で目が覚めたよ。俺に教えてくれ。君がアイドルを目指したキッカケを。君の理想のアイドルを!」
「プロデューサーっ!はいっ!私、子供の頃に映画で見たマリーアントワネットみたいな綺麗なドレスを着たお姫様になりたくてアイドルを目指したんです!」
「『マリーアントワネット』。それに好きなことが『捌く』『日本刀』……くそ!全く関連性がない!いや諦めるな、なにかもう少しでアイデアが……」
「ごくり……。プロデューサーのPオーラが高まっている。これは、もしかすると……」
「見えた……見えたぞ!君の目指すべきアイドルは──」
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処刑も出来るアイドルユニット『鮮血魔嬢 パステルカラーズ』がデビューシングル『会いたくて会いたくてアイアンメイデン』でアイドル業界に旋風を巻き起こすのは少し先のお話。




