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ボツ案① 「超補給線」

「姫!敵国の軍勢が確認できました!」


「はるばる死にに来るとはな。兵力はいかほどだ?」


「敵戦闘兵約一万!」


「一万程度の手勢でこの国を攻めようとは片腹痛いわ。敵は我が国の内地に押し入っている。速やかに食料の補給線を断ち、飢え死にさせてやるがよい!」


「それが……敵戦闘兵一万に対して、敵補給兵約百万(・・・・・・・)です!」


「は?……いやいやいやいや。補給に百万の兵を使ってるだと?それはなんの冗談だ」


「いえ。確かな情報です。敵はめっちゃ補給してます!食料運んでます!」


「姫様。此度の敵、侮っては痛い目を見るかもしれませぬぞ」


「参謀長……いいだろう。妾が自ら前線に出る!馬を出せい!」



「補給兵が百万というのはどうやら本当のようだな。しかし、奴ら何やら見慣れぬガラクタを運んでいるな……大人数で運んでいるあの半球の物はなんだ?矢避けか?」


「姫様。あれは釜でございます」


「参謀長。なぜ釜を戦場に?」


「望遠鏡で見ていればすぐに分かるかと」


「どれ……釜の中から円形の物が。ごくり…。なんだあの食欲を唆る物は!」


「ピザでございます」


「なに!?なんの動物の膝なのだ!」


「ピザ、でございます。遥か遠く地中海付近で多く食べられているとか。彼の地では『ピザでも食ってろデブ』との格言もあり高カロリーは請け合い。戦場でのエネルギー補給には最適かと」


「そんな食物があるとはな……。ん?あちらで運んでいるのは竹か?組み立てて何をしている。何らかの兵器か」


「あれは流し素麺でございます」


「素麺は分かる。しかし素麺を流すだと?」


「左様。敵国に攻め入れば食料の補給線は伸び、食料を速やかに配給することは困難になります。そこで、竹で出来た長いレールに素麺を流す事で広い戦場に速やかに素麺を送る事が可能となります」


「なんと……。陸上にあって水力を活用するとは。どうやら敵にも一級の策士がいると見える」


「姫!敵兵を捕えました!其奴がこんなものを」


「これは……小型の爆弾と毒か?」


「なんとこんなものまで!」


「参謀長、これを知っているのか?」


「これらは戦場での兵糧食。『マカロン』と『タピオカ』でございます」


「なんだその愛らしい響きの食物は」


「タピオカは一吸いで水分と食物を同時に摂取し速やかな栄養補給を可能とします。マカロンは……おしゃれです」


「タピオカは良いとして、マカロンはどうなんだそれ?」


「異国の地では『おしゃれは我慢』との格言もあり兵の忍耐力に繋がるのです!」


「そ、そうか。いささか無理があるような気もするが、そなたが言うのなら違いないのだろう」


「勿論でございます。ん?敵兵に動きが……なん、だと!?やつらまさかあんな物まで隠し持っているとは!」


「なんだなんだ!物知りな参謀長が驚愕するほどのものとは!あの五重の塔のようなものか。表面を流れるのは……泥水?」


「私も生きているうちにこの目で見るとは思いませんでした。あれは『チョコレートフォンデュ』です!」


「ちょこれーとふぃんっ、痛!舌噛んだ」


「チョコレートフォンデュ。遥か南の地で取れる果実より作られる魔の液体。それを惜しげもなく流して様々な物に付けて食べます。見てください敵兵の士気の上がり方を。あれは食べる者のテンションを爆上げします」


「ふっ、どうやら敵を見くびっていたのは我々の方だったようだな。参謀長、此度の戦はこの国の未来を掛けた運命の分かれ道。激しいものになるぞ」


「最初から覚悟の上です。必ずや我が主に勝利を」


「姫お伝えします!敵将から伝令が!要求を出してきました!」


「なんだと、読み上げよっ!」


「はっ!『おっはー!私、姫やってるんだけど周りに姫友いなくて遊びに来ちゃった!よかったら女子会しよっ!』以上です!」


「敵国の将も姫であったか。しかし女子会とは……。姫様、これはもしや同盟の誘いなのでは?」


「あのような素晴らしい補給線を展開する国からの誘い。ふふ、そうとあっては礼を失する訳にはいかんな。母上の形見である『じぇらぴけ』の寝巻きを用意せい!妾はこれより女子会に打って出る!」



これが後に大陸を支配する二つの大国を結んだ『パジャマパーティー同盟』である。


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