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HERO SAGA ~NOAH~  作者: 陰キャ怪獣ザトウクジラ
第一章 黒い吹雪と紅の刃
8/12

氷山旅行

 ~詐瞳高校 メインアリーナ~

 デルゼビュートとの戦いから翌日、秀樹はいつも通り学校へ行く。

 時空間の歪みによりデルゼビュートの存在はほとんど知られていなく、秀樹たちもそのことを認識している。

 秀樹が学校に着いた頃には既に朝礼が始まっており、頭の左半分を包帯で覆った彼為校長がスピーチをしている。

「生徒の皆さん、先日の怪獣事件のことをご存知でしょうか?私の頭の傷もその時に受けたものです。ビルをまるで砂の城のように壊す怪獣に皆さんも恐れ(おのの)いたことでしょう。しかし私たちにはヒーローマンという味方がいます!それに自衛隊も新たな対怪獣兵器を製造しているようです。我々は彼に助けられるのではなく、彼と共に戦うのです!」

「共に…ねぇ…氷咲はこれを聞いてどう思ってることやら…」

 秀樹は内心学校へ来ることを恐れていた。イヤでも氷咲麗=ダークブリザードに会ってしまうからだ。

「よく考えたらアイツと隣じゃねぇかよ…」

 秀樹は時々ダークブリザードの姿がフラッシュバックする。強大な力の前に手も足も出ない恐怖。それだけが頭の中に忌々しく刻まれている。

「いっつも同じようなこと言ってるけど…お先真っ暗だな…」

 ~2年A組~

「えーと、今日のHRは来週の山間合宿について話します。」

 秀樹たちの通う詐瞳高校は生徒たちの体力を養うため、一般的に言う『移動教室』を毎年6月と10月の下旬に行っている。

「では3人で班を作ってください。グループワークなどではこの班で活動します。」

 花枝先生がそう言うと、生徒たちは仲のいい友人同士で集まり始めた。

 秀樹はアリエと班を組み、あと一人が集まらない。

「あら?一人足りないみたいね?」

 秀樹はその声にヤな予感がした。

「氷咲⁉」

 声の主は間違いなく氷咲麗。声をかけた目的も一瞬で悟った。

「驚くことだったかしら?人数が足りないところに一人入る。何もおかしいとは思わないのだけど…」

「マジかよ…氷咲さん…何で秀樹何かに…」

「しかも石堀さんまで一緒だぞ…何というウラヤマ案件ッ!!」

 クラスからは秀樹を羨む声が聞こえるが、秀樹の頭には別の声が聞こえていた。

『氷咲…狙いは俺か?』

『そう、あなたのクレイジーな魅力に惹かれたのかしら』

『だったらお前も十分クレイジーだろ』

『フフフ…本当の理由はあなたの始末。一週間後が楽しみね…』

 秀樹は何とか平然を装っていたがそれは心の中に恐怖をため込むだけであった。

 ~一週間後~

「とうとう来たよ…来てしまったよ…」

 移動教室当日、秀樹は一人でブツブツとつぶやいている。

 このイベントに関して秀樹はいい予感がしない。その理由は二つ。

 一つ目は氷咲麗=ダークブリザードが何かしらのアクションを起こすことが確実だからだ。触らぬ神に祟りなしと言うが、向こうから手を出してきたときは別。一切の逃げ道を失うことになる。

 二つ目はアナザーワンの掛けた保険だ。彼女は何かを任せるということにおいてのリスクが非常に高い。プライド故の独断で失敗したことなど何度もある。それは秀樹もアナザーワンも理解していることだ。

 そしてアナザーワンは策士である。リスクのある行動をするのであれば保険をかけるのは必然だ。

 ダークブリザードが敗れた、寝返った場合でも問題が起こらないようにするための保険。即ちダークブリザード以上の戦力となる刺客が送り込まれているということ。

 秀樹はまずダークブレイバーを頭に浮かべた。そして次にダークスクリーム。しかし秀樹はヒーローマンの話を聞いて知っていることがあった。アナザーワンは決して他人を信用しない。

 そしてもう一つ浮かんでいた、最悪の結論に至る。

「アナザー…ワン…」

 恐怖を更なる恐怖で塗り替えられる寸前、ヒーローマンが秀樹をフォローする。

「秀樹、一見その結論は正しく見えるだろうけど…そもそもアナザーワンは肉体を再構成できていない。仮にいたとしても戦力に数えられない程度の戦闘力しかない。むしろそれはチャンスだ。アナザーワンの正体が分かれば勝利への大きな一歩だ!」

 ヒーローマンの言葉で恐怖が少し和らいだ秀樹だったが、本来の部分は未だに深く根を張っている。

 ~銀河山麓 旅館『一里塚』~

 旅館へ到着した一行は割り振られたそれぞれの部屋へ移動する。

 秀樹は運よく、くじ引きでコウジとヒロシと同じ部屋になった。旧知の仲、幼馴染が一緒にいるというのは精神的にも大きな支えとなる。

 ~233号室~

 秀樹たちの割り振られた部屋は比較的奥の方の233号室だ。

 窓は北側にしかなく、自然の光が取り入れづらい何とも意地悪な設計だ。

「で、今日の予定は何だったっけ?」

「19:00まで自由行動。実にこの学校らしいプログラムだね。」

 秀樹にとっては初めての移動教室。ヒロシのような人間がいるととても助かるものだ。

「そういえば秀樹、移動教室の裏ワザ、知ってるか?」

「なんだよそれ?」

「まず初日、この自由行動の時間にフラグを立てておくんだよ。そうすると二日目の夜にフラグ回収イベントが発生するという特殊効果が!」

「それは裏技じゃなくて噂だ。大体お前は試したことあるのか?」

 勿論、言うまでもなく。彼の回答はNoだった。

「だろうと思ったよ。噂なんか当てにしちゃいけないだろ。」

 口ではそんなことを話しているが、秀樹は頭の中で別のことを考えていた。

 秀樹は聖徳太子のように二人と会話していた。ヒーローマンとは声を出さずにダークブリザード対策の作戦会議を始めている。

「じゃあどうやったらイーヴィルヒールでも『熱』か『速』の属性を発揮できるんだ?」

「まずはイーヴィルヒールの技を整理しよう。まずはエアロスパイク。これは『風』と『斬』、少しだけだが『熱』の属性を有している。次にクロースパイク。これは『闇』と『斬』の属性を持っている。最後にフォトンストロームだ。これは『光』と『闇』の属性。この二属性が合わさることによってどんな相手にもある程度通用するが…強大な力を持つ者には効きにくいからな…」

「なるほどな…そうするとロッソグリンガーのオーパーツが必要になるのか…」

「ああ。『速』の属性はほとんどの敵に対して有効に働いてくれる。」

 そんな話をしているとき、秀樹はふと疑問に思ったことがあった。

「というかそもそも属性って何だ?誰が決めてどういう相性があるんだ?」

「そういえばその説明をしていなかったな。要するにこの属性とはこの星で言う剣術の構えの様なものだ。八相は下段に強く脇構えに弱い。それをあらゆる物の性質に応用したのが属性だ。その系統は主に八つ。

 まず熱エネルギーを基本とした属性群をまとめて『赤属性』。

 氷や水など流体に関するものを纏めた『青属性』。

 土や重量など自然の物体に重きを置いた『黄属性』。

 風や電気など自然のエネルギーが集まった『緑属性』。

 光エネルギーを主に集めた『白属性』。

 白属性と対を成す『黒属性』。

 物理攻撃など特徴的な性質が無い『無属性』。

 時間や空間など超越的な力を持った『紫属性』。

 この八系統には大まかな相性があり、『青→赤→緑→黄→青…』という循環の関係と『白⇄黒』という対立の関係、無と紫は相性が存在しない。しかしこの相性は特定の属性において変化することもある。水と熱の属性を持つ熱湯は青属性の氷と赤属性の火の双方に対し有効なのが分かりやすい例だ。」

 ヒーローマンの説明を受けて秀樹は少し納得したように頷いた。

「じゃあ技の一部をアレンジすれば『熱』と『速』のうちどちらかでも獲得できるかもってことか?」

「ああ。突破口はそこにあると思う。エアロスパイクの性質をある程度変質させられれば可能だろう。」

「なるほどな…エアロスパイクに少しだけ含まれる『熱』の属性…威力の底上げが必要になるのか…」

 秀樹は考えた。熱の属性を強化する方法を。

(そういえば…フォトンストロームを放った時アルギュロスの体が赤熱化していたような…確か属性は光と闇…光エネルギーは集まると熱エネルギーに…)

「なあヒーローマン…エアロスパイクのエネルギーをフォトンストロームに置き換えたらどうなるんだ?」

「フォトンストロームのエネルギーはとても収束しにくい。チャージに時間がかかるのもそのせいだ。恐らく発射直後に霧散するだろう。」

「じゃあクリスタルシールドでコーティングするのはどうだ?リング状にして回転をかければ疑似的にだけど『速』の属性も再現できる。」

 秀樹のアイディアにヒーローマンは感心したように頷く。

「なるほど…フォトンストロームは着弾時に強力な熱エネルギーへと変化するが霧散しやすい。それをクリスタルシールドでコーティングし、回転をかけることによって低エネルギーで『速』の属性を付与する…フォトンストローム自体はクリスタルシールドに衝突しているため外円の温度は上昇…本当に即席で考えたのか?」

「当たり前だ!なんせ運命でヒーローに選ばれたぐらいだからな!」

「運命が何だって?」

 秀樹は勢い余ってその言葉を声に出してしまった。そんな秀樹を見てコウジが心配そうに声をかける。

「話聞いてたか?ていうか大丈夫か?」

「あ、うん。問題ない。で、なんの話だっけ?」

「氷咲がお前のこと迎えに来たって…何回言ったらわかるんだよ?」

(はぁ⁉意識逸らしてる間にそこまで話が進んでたのかよ⁉聞いてないぞ!)

 部屋の扉を開けると、氷咲麗はかなり不機嫌な様子で待っていた。

「まさか一分間に30回も空返事をもらうとは思わなかった…まぁいいわ。行きましょう。」

 氷咲麗が秀樹の腕を引っ張り、人目につかない外へ連れ出す。

「いいか秀樹、さっきの技…『リングスパイク』とでもしておくか…リングスパイクは断片的にだが三つの技を同時に使用する。燃費も悪い。最後まで残しておけ。」

「ああ。ワイルドカード…切り札だからな。」

属性ですが…所詮「木は火で燃える」「火は水で消える」といった単純なことなので深く考えなくても大丈夫です。物語の中心軸にあるのは『光⇄闇』ぐらいなので…

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