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HERO SAGA ~NOAH~  作者: 陰キャ怪獣ザトウクジラ
第一章 黒い吹雪と紅の刃
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凍てつく大地『ダークブリザード』

 アルギュロスとの戦いからから一週間、さすがに授業は休みになったけど部活や委員会は任意で行われている。

 今日は生徒会の活動で学校に来た。正直言ってめんどくさい。

「秀樹、ちょっといいか?」

「ん?何か話すことでも?」

 あの戦い以来、それまではちょっと辛口だった世間のヒーローマンに対する評価もすっかり良くなった。

 そのせいで今はヒーローマン関連の調査依頼しか入ってこない。分かってるけど教えるわけにはいかないから困ってるんだよなぁ…

「これから戦いはさらに激化する。命の保証はできない。なし崩し的に君は私と一心同体になったが決断の時間は与えていない。私と共に、命をかけて戦う覚悟はあるか?考える時間が必要だ。」

「いや、いらないさ。一度決めたことを曲げるつもりはない。」

「あれは決めたとは言わない。私が一方的に押しつけただけだ…」

「だったら俺は選ばれたってことだろ?なら問題ないじゃないか。」

「それは偶然君が近くにいただけだ!特別な何かがある訳じゃない!」

「その偶然をこの星では運命って言うんだ。」

 俺ってちょっといいこと言ったかな?適当に考えすぎな気もするけど…真面目になるよりは後悔しないで済む。昔漫画でそんなことを読んでからはあまり真面目に考えないようにしている。

「君はそれでいいのか?運命だというなら抗おうとはしないのか?」

「悪い運命だったら変えてみせるよ。だけどお前と出会ったのが悪いことだとは思わない。」

「いずれ後悔するかもしれないが…」

「自分の後ろにある沢山の命より目先の命を救おうとするような奴だ。目先のことしか頭にないんだよ。いずれ後悔なんて考えられるわけがないだろ。」

 正直言って自分でもダメな性格だと思う。それこそこの性格でいずれ後悔するだろう。

 だけどそれがいい方向に働いたこともある。この前だってそうだ。この性格のおかげで結果論ではあるけど一人の命が救われた。

「まぁ君がそう思うなら君の意見だ。私が否定することではない。君には君なりの流儀があるんだろう。」

「そんな大層な物じゃないけどまぁそういうことだ。あ、着いた着いた。」

 三階の廊下の突き当たり、無駄に豪華な扉がある。それが生徒会室の入り口だ。

「秀樹…これは一体どういうコンセプトなんだ?」

「いや…この学校って比較的アニメ特撮の普及率が高くてさぁ…ほら、アニメの生徒会って権力強いだろ?だから生徒会も見た目だけでも権力を強くしようってことでさぁ…俺が入学する前からずっとこうなんだよね…」

「理解に苦しむな…否定はしないが…アニメとかでは確かにこんな感じだな…」

「アニメ見るのかよ」

 かといってうちの生徒会も普通の高校に比べたら十分権力は強い。過去には教師を何人か辞めさせたこともあるらしい…ここ本当に公立高校なのかよ…

「早星さん…早くしてくれないかしら?」

「チッ…うるさいのが来たよ…」

「女と三つ書いて(かしま)しいと読む。耳障りなのは当たり前。それが何か?」

 この高慢でヤな感じの女子は同じクラスの氷咲(ヒザキ)(レイ)。才色兼備、家もお金持ちのお嬢様。学校全体からの人気が高いパーフェクトガールだ。ただし性格を除く。

 その人気故に生徒会選挙でも彼女が票を独占している。ちなみに俺は何故か彼女からの一票で入選できた。ホントになぜだ。

「ホントあなたには失望したわ。初めて会ったときは無口でクールでミステリアスな雰囲気だったのに…本性を表せばフリーダムでアナーキーでクレイジーな人だったなんて…」

 あ、そういうことね。確かに初期の印象は中々カッコイイな…人見知りこじらせてただけなんだけどなぁ…

「クレイジーは言いすぎだろ!」

 というかアナーキーってどういう意味だよ…聞いたこと無いぞ…

「一般的にはキ◯◯イ、混沌と近い意味らしいな…」

 ひでぇやそれは。

「というかなんなんだよその罵倒語のボキャブラリーは…」

 ブツブツと言いながら扉を開ける。

「ん?これはどういうことなのかな…」

 教室には誰もいない。他の生徒はもう少し早く来るはずだけど…

「学校は今貸し切りよ。私が校長先生に頼んだの。」

 貸し切り…そういえば学校の中で一度も他の生徒に会っていない。

「どうしてそんなことを?」

「あなたと二人きりになりたかったから。ってとこかしら?」

 っ!……そんなセリフ女の子に言われるのは初めてだぞ!これは告白なのか?

 いやそれにしては唐突過ぎるだろ!大胆な告白は女の子の特権とは聞いたことあるけど…

 仮にそうだとしてもフリーダムでアナーキーでクレイジーな俺に恋する女子なんているのか?

「秀樹、まずは落ち着け。君の心の声がキャパを超えて私の方にも流れ込んできている。あと心臓の音がうるさい。静かにできないのか?」

 そんなこと言われても初めてのことだから…

「いえ、三人きり…かしら?ヒーローマンさん?」

「なっ!秀樹!距離をとるんだ!何かヤバい!」

 俺はヒーローマンの指示通り距離をとり、オーパーツを短剣の形に戻す。

「もしかしてだけど…暗黒の巨人の一人だったりしないよね…」

「察しがいいのね。まぁここまで明確なヒントがあれば誰でもわかるでしょうけど…」

 彼女はそう言うとカチューシャを外し、水色の短剣の形へと変化させた。

「って…何あの形?細くね?」

「スティレットという武器を象っているらしい…ダークブリザードのイメージにはピッタリだ。」

「ダークブリザードねぇ…氷咲のイメージにピッタリな名前だな…」

「そろそろいいかしら?」

「ああ。ソッコーで片付けてやるよ!」

 ほぼ同時にオーパーツを手首に刺し、裏山へ瞬間移動しながら変身する。

 空中で巨人の姿に変身し、巨大な音を立てて着地する。

「なるほど、考えたな秀樹!この音で他の人達にも異常を知らせたのか!」

「ああ。これだけの音ならすぐに怪獣関係だとわかるはずだ。そうしたら自衛隊なりどこかしらが力を貸してくれる。はず…」

「まぁ恐らく来てくれるだろう。それよりもまずは目の前の相手に集中するんだ。得意だろ?」

 土煙が晴れ、ダークブリザードが姿を現す。

 漆黒の体に氷咲の髪と同じ水色のアーマー。その頭からは二本の角が後方に流れるように生え、三つの瞳が赤く輝いている。

「暗黒の巨人っていうのはみんなこう禍々しい格好してるのかよ…」

「暗黒のだからな…」

「さぁ…かかってきなさい。」

 氷咲…ダークブリザードは挑発的に手招きをしてきた。何か強キャラ感出されてめっちゃムカつくんだが…

「感ではなく本当に強敵だ。恐らく今のままでは…」

 ヒーローマンの言葉が終わる前にブリザードは攻撃をしてきた。

 氷で形成された無数の刃が俺たちに向かって放たれる。それらをエアロスパイクで相殺するが、数が多すぎる。

「秀樹!『クロースパイク』だ!爪にエネルギーを集中させろ!」

 クロースパイク、この前教えてもらった技だ。光線発射時のエネルギーを爪に溜めることによって、振りぬく際に爪が長大なエネルギーの刃に変化する攻防共に優れた能力。

 その爪を次々と振りぬき、赤黒いエネルギーの軌跡が氷の(つぶて)を粉砕する。そのまま弾幕を切り裂くようにしてブリザードへ一撃を加えた。

 しかし…

「あら?案外大したことないのね…あなたの闇…」

 ブリザードの体から放たれる冷気で空気が凍り付き、その場に腕を固定していた。

 力を入れて砕こうとしてもヒビがすぐに凍り付いて埋まってしまう。

「フフフ…さようなら……」

 ブリザードは手の平に青いエネルギーを集中させる。

「秀樹!変身解除だ!急げ!」

 俺はとっさのところで変身を解除し、遥か頭上を青い破壊光線が通過した。

「アブねぇ…あとちょっと遅かったら…で、どうやって勝てっていうんだよ!同じようなのがあと6体もいるんだろ?」

「同じようなのと言うのであれば3体だが…まぁそこはいいか。あの氷の攻撃には二つの短所がある。一つ目はスピード、二つ目は高熱だ。ある程度の速さで動いていれば凍り付くことは無いし、温度が高ければそれだけ凍りにくい。そしてその二つを兼ね備えたオーパーツが存在する。それが『ロッソグリンガー』だ。」

「ロッソグリンガー…赤い刃ってことか?だけど今そんなものは…」

「ああ。まだその力は戻っていない。今手元にあるのは『イーヴィルヒール』のオーパーツだけだ。恐らく『ロッソグリンガー』と『メガロスライト』はダークスクリームが持っているはずだ…」

「ダークスクリーム?もしかして暗黒の巨人の一人か?」

「もちろんだ。暗黒の巨人は合計7体。アナザーワンを頂点としてその下にダークスクリーム、その手下としてダークブリザードを含めた5体の巨人がいる。その五体の中でずば抜けて戦闘能力が高いのがダークブレイバーだ。私は数百年前にダークスクリーム達六人と戦い、肉体を失った。そして精神のみの状態で彼らを追い、この星にたどり着いたというわけだ。」

「じゃあロッソグリンガーの力を使うにはそのダークスクリームっていうのを倒さなきゃいけないのかよ!」

「いや、決してそういうことは無い。ロッソグリンガーのキーワードは『勇気』。君のそれに呼応して再びこの手に帰ってくるはずだ。」

「勇気ねぇ…今までの勇気じゃ足りないのかよ…」

 お先真っ暗なこの現状。一体どうしたことやら…


 一方その頃…

「ブリザード、ヒーローマンを取り逃がしたみたいだね?」

「すいません。ギリギリのところで変身を解除されました。」

「それだから君はいつも…」

「まぁまぁそこまでにしてやれ。ダークスクリーム。指導せずとも使えなくなったら処分するだけだ。なぁ?カームにブレイバー…それにクエイク。カゲロウも来ているとは珍しいな。」

 赤黒い人型の影のような物がどこからともなく現れた。

「アナザーワン様…ヒーローマンを取り逃がしてしまったことはどうしましょう…」

「何も問題は無い。奴は計画の邪魔にはならない。むしろこの俺の役に立つキーアイテムとなるだろう。しばらくは奴に力を付けさせるために怪獣を何体か送り込むとしよう。8月までにはロッソグリンガーを手に入れるようにだ。奴が闇の力で戦うのはこちらとしても都合が悪い。」

ついに暗黒の巨人の名前が全て出ました!

今まで出ていたのは『アナザーワン』、『ダークブレイバー』、『ダークブリザード』、『ダークカーム』、今回分かったのは『ダーククエイク』、『ダークカゲロウ』、『ダークスクリーム』です。

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