信じる心と黒い稲妻
久しぶりです!(リアルの事情)
「あの巨人の正体が分かった。2年3組の早星秀樹という生徒らしいね。」
赤黒い空間の中で四人の巨人が話している。
「早星さんですか…」
「ダークブリザード、どうしたのかな?」
「私と同じクラスの生徒です。帰る方向も途中までは同じなので、自然に接近することも可能です。」
「それはいい!あの巨人の始末は君に任せたよ!」
「始末と言うことは…要するに…」
「殺すってことだよ。厳密に言えば彼らも持ってるオーパーツを壊せばいいんだけどね…」
「なんだよアイツ!絶対チート使ってるぞ!ズルくないか⁉」
アルギュロスには一切の攻撃が通用しなかった。それが悔しくてたまらない。
その上に味方であるはずの自衛隊から攻撃される始末だ。悔しくないわけがない。
「秀樹、私だって悔しい。せめてオーパーツが複数種類あれば…」
そうだ…オーパーツがもっとあれば…
「え?今なんて言った?」
「オーパーツが複数あればと言ったんだ。」
「オーパーツがいくつもあるのかよ?」
初耳だ。何で今まで黙ってたんだよ。
「ああ。使い手によって自然生成される。暗黒の巨人も変身の際にはオーパーツを使用する。そもそも変身の原理についてもまだ説明していなかったな。」
変身の原理って…初めて聞いたよそんな言葉。
「まずオーパーツとオーバーブレスについて説明しよう。オーパーツとは即ち巨人としての肉体で、オーバーブレスは肉体を失った私の魂を実体化させた物だ。オーパーツを突き刺すということは私の魂を君の体に釘で固定するということ。つまり変身とは私と精神を一時的に合成することに当たる。しかしその時間には制限がある。例えば今のオーパーツ『イーヴィルヒール』は5分程しか精神を維持できない。5分を過ぎると抜け落ちて変身が強制解除される。また、巨人の姿で一定以上のダメージを受けると肉体、要するにオーパーツに限界が来て変身が解除される。壊れることは無いが再変身には1時間程のインターバルが必要になる。」
分かったような分からないような…オーパーツが変身後は肉体になって…まぁ半分分かったし良しとするか。
「ちなみにオーパーツを直接刺すとどうなるんだ?」
「私の意識は介入できず、君の意思だけで動くことになる。他にも通常変身の場合、本来君に蓄積される物理的精神的ダメージを私が軽減、肩代わりしているから君には疲労しかないが、直接刺した場合その全てが軽減されずにダイレクトに君に伝わる。やってもいいがデメリットしか無い。」
うわぁ…てっきりオーバーブレスがリミッターみたいなもので、直刺しすると秘められた力が…みたいなものを期待してたのに…
「それにしてもアルギュロスって硬すぎないか?少なくともあと50分以上は戦えないんだよな…どうやってあの装甲を突破するんだ?」
「それについてだが秀樹、私にいい考えがある。」
そのセリフはヤな予感しかしない…
「で、どうするんだ?」
「腹部にフォトンストロームを照射しながら突進し、マウントをとる。そして光線を維持しながらその腹部に爪を突き刺し、表面の装甲を突破する。そしてゼロ距離光線で一撃粉砕。と言った感じだ。完璧な作戦だろう?」
それが正義のヒーローの攻撃かよ…
「だけど自衛隊に俺達ロックオンされてるんだぞ?それは大丈夫なのか?」
「空爆が始まる前に今の作戦を決行する。それだけだ。」
もしかしてヒーローマンって脳筋なのか?発想がゴリ押ししかない…
「何か言ったか?」
「いや、何も。」
それから再変身できるまでの時間、作戦を考えていた。結局ゴリ押しになったけど…
作戦会議の意味が…
「いくぞ…秀樹!」
「オーケー!ちょっと心配だけど…」
手首のオーバーブレスにオーパーツを突き刺し、ヒーローマンの姿へと変身する。
既にアルギュロスは学校のすぐ近くまで来ており、正にギリギリセーフと言ったところだ。
「まずは距離をとるんだ!アルギュロスは異常なほどに硬いが、体重は特別重いわけではない!タックルで突き飛ばすんだ!」
飛行能力で得たスピードを全て体当たりに利用し、アルギュロスの体が数百メートル宙を舞う。
地面に衝突した瞬間、まるで鉄球を砂場に落としたように大地が陥没する。
「ガガ…ギギギギギ……」
アルギュロスは両腕の刃に電気を纏い、刃として打ち出した。その刃は大気を切り裂き、俺たちに迫ってくる。
「エアロスパイクで相殺するんだ!」
手から光の刃を飛ばし、アルギュロスの光刃を撃ち落とす。
しかし攻撃の手は緩まず、異常な量の光刃が弾幕のように光の壁として俺たちを押しつぶそうとする。
「ヒーローマン!このままじゃ学校に当たる!どうすればいい?」
「バリアーだ!左手の手の平を前に突き出せ!」
ヒーローマンの指示通りに動くと、目の前に透明な壁のような物が現れ、光の弾幕を阻んだ。
「すげぇ!ヒビすらも入ってない!」
「だがその性能と引き換えに燃費が悪く、精々15秒しか張れないんだ!光刃を巻き込むようにしてバリアーを閉じろ!」
「OK!アドバイスありがとう!」
光の壁を包み込むようにバリアーを畳み、エネルギーの塊が左手の中に出来上がる。
「これを叩きつければいいんだな?」
「秀樹、よく分かってるじゃないか。」
左手の手の平をアルギュロスの装甲に叩きつけ、閉じ込めたエネルギーを開放する。
その瞬間、アルギュロスの体が後方へと吹き飛んだ。
「秀樹今だ!」
「分かった!いくぞ!」
両腕を伸ばし、体の前でクロスさせる。
手首の部分がどんどん熱くなり、力がみなぎってくる。
その時だった
「目標を肉眼で確認。これより攻撃を開始する。」
ヤなタイミングで来たよ…融通の利かない人たちだな…
「秀樹!バリアーで防ぐんだ!」
「分かってる!15秒以内に遠くに逃げればいいんだろ?」
「ああ、距離さえとれば光線を打ち込める。」
バリアーを展開し、爆弾の爆発エネルギーを後ろ向きの推進力に変換して一旦その場から離脱する。
「再チャージだ!この距離なら爆撃機もすぐには近づけない!」
再び両腕を重ね、フォトンストロームのエネルギーを腕に集める。
しかしアルギュロスも硬いだけのオブジェではない。両腕から無数の光刃を弾幕のように放ち、エネルギーのチャージを妨害する。
更にその光刃を上空に向けて打ち出し、爆撃機を撃ち落とした。
「こちら一番機!左翼に被弾!不時着します!」
「こちら二番機!同じく左翼に被弾!不時着します!」
二機の戦闘機が地面で機体を削りながら着陸し、コックピットから人が逃げていく。
「こちら三番機!主動力、姿勢制御系統!制御不能です!」
残りの一機が黒い煙を噴出しながら錐揉み状態で墜落している。どう考えても…いや、考えなくてもかなりヤバい状態だ。
「あれはヤバい!ヒーローマン!助けに行くぞ!」
「怪獣を倒すのが先だ!彼一人のために多くの人を犠牲にできない!それに彼は君を含め私達を殺そうとした人間だ!報いを与える必要はないが助ける義理も無い!」
「死ななきゃいけない理由だってないだろ!誰にだって間違いがある!話したことすらないんだから誤解するのも当然だ!それをねちっこく根に持ってよ…そんなどうでもいい理由で見殺しにできるかよ!」
エネルギーチャージを解除し、戦闘機の方へ飛び出す。
「届けぇぇぇぇっ!」
ギリギリまで手を伸ばして戦闘機を掴もうとする。
「三番機!地面へ激突します!……姉さん…さようなら……」
巨大な衝突音と共に、ビルも覆い隠すほどの土煙が巻き上がる。
「なんとか…間に合った…」
手の中にギリギリで尾翼が引っ掛かり、かなりの衝撃があったがパイロットは無事みたいだ。
そっと戦闘機を置き、再びアルギュロスと対峙する。
光刃の弾幕の中両腕をクロスし、エネルギーをチャージする。
プリミティブに放ったモノよりも巨大なエネルギーが腕に溜まり、赤黒い稲妻が纏われる。
腕を引き付け、再び正面に突き出す。赤黒いエネルギーの流れがアルギュロスの堅牢な装甲を真っ赤に焦し、熱エネルギーの塊が空気を押しのける。
光線を放ったまま全力で突進し馬乗りの体勢になる。夕日色に融けた装甲に爪を突き刺し、内部に直接光線を叩き込む。
「ギ……ゴゴゴ……ググ…」
全身にヒビが入り、そこから赤黒い光が漏れる。
「はあぁぁぁぁぁっ!」
限界まで力を振り絞り、持てる力を全て注ぎ込む。遂にアルギュロスの装甲に限界が訪れ、木端微塵に消し飛んだ。
それと同時に変身の限界を迎え、元の姿に戻った。
その後はそのままインフィシブに帰り、みんなと一緒にテレビニュースを見る。
「今日東京都流離市に出現した怪獣『レジストコードアルギュロス』に対し自衛隊の航空部隊が作戦を決行しました。しかし『レジストコードプリミティブ』に対しての攻撃を想定した今回の作戦ではあまり効果が見られず、爆撃機三機が撃墜されるという被害を受けました。その内一機はなんとあの巨人に助けられたらしいです!三番機パイロットの藍染誠さんがスタジオにいらっしゃっていますので、お話を聞いてみましょう。今回の件についてどう思いますか?例えばあの巨人とか……」
「彼は自分を攻撃したにもかかわらず私の命を助けてくれました。彼は我々と似た、又はそれ以上に平和的な知性を持っている。正に神様のような存在だと思いますね…姿こそ悪魔ですがあのマスクの下には菩薩の微笑みがあると私は思います。」
良いこと言ってくれるじゃん!っていうか藍染って…
「うん。そこに映ってるの私の弟よ。凄いでしょ?」
やっぱり……この人の人間関係は本当にすごいんだよなぁ…
「まさかアルギュロスの装甲を破れるまで強くなってるだなんてね…ワクワクするねぇ!ダークブリザード君!君は勝てる自信があるかな?」
「はい。ロッソグリンガーの力に目覚めていないということは所詮はその程度と言うことです。」
「相手を見くびるのが君の悪い癖だ。」
「ご心配なく。私の能力は今のヒーローマンに対し最高の相性です。」
「そうか。まぁどうしようと君の自由だ。木端微塵に砕いてもね……」
次回から本格的に闇の巨人『ダークブリザード』が登場します!