流離の日常
記念すべき第一話!
導入パートなので大量の『キーワード』『伏線』が存在します!
また、ヒーローマンが活躍するのは次回からです。
※ウ◯トラシリーズなどを見ている方は「このセリフはww」となるような小ネタが少々仕込まれているので気付いた方はクスリと笑ってあげてください!
俺の名前は早星秀樹。高校2年生だ。
小学生の頃に親を亡くして以来一人で日本各地を転々としていた。
カッコよく言えば風来坊。だけど実際そんなカッコイイものじゃなく、一人だけだったら今頃くたばっていただろう。
そこで俺を助けてくれたのが藍染小影さんだ。
コカゲさんは貯金が尽きる寸前だった俺を養ってくれた上に仕事まで提供してくれた。
その職場がここ、『インフィシブ』である。そしてこれは運命の悪戯なのか、インフィシブがあるのは愛しき故郷『流離市』じゃないか!
帰りたくても帰れなかったこの流離市!かつての友人もここにいる。幼馴染の石堀アリエ、小学校時代一番仲が良かった井出浩二、ハカセのあだ名で頼られてた識学博。
しかもこの三人、何とインフィシブの二階に超常現象特別調査隊SLCとしての事務所も持っているという。
「世界中が君の帰りを待っていた!」と言われて半強制的に入隊。二階の事務所は出入り自由だそうだ。
何て都合のいい運命だろう。
朝学校に行き、帰ってきたらインフィシブでバイトをし、そして二階で寝泊まりする。うん、完璧だ。
いつまでも自分語りをしていては時間が進まないのでそろそろこの話は切り上げよう。
普通の一日。それが今日も始まる。退屈だけど忙しいよりは楽しい一日。
そんな一日は一つの他愛もないやり取りと共に始まる。
「秀樹くん…起きてよ…もう朝だよ?」
華奢な声が聞こえたのでバレないように薄目を開ける。さらさらとした長い黒髪にちょっと赤い瞳。幼馴染の石堀アリエだ。触れてみたくなるようなきれいな肌。それが手の届く位置に。俺は欲を満たさずにはいられない男だ。女子の肌を触りたいという欲よりも睡眠欲の方が強い。
また目を閉じ、眠りにつく。
「起きてよ!遅刻しちゃうよ!」
可愛い声。素晴らしい睡眠用BGMだ。耳元で囁いてくれたら起きれるかも…
「コカゲさん助けてください…」
あっ…それは…
「秀樹くん?まだ寝てるの?」
アリエよりもクールな雰囲気の声が聞こえた。ここの宿主兼オーナーのコカゲさんだ。
いつの間に近くまで来ていたんだ⁉
「こういう時は呼吸を阻害するの。例えば秀樹くんの場合…」
直後、鼻をつままれる感覚があった。凄く苦しい。だけど俺はもっと寝ていたい。
数十秒の葛藤の末、睡眠欲が生存欲に敗北し、ベッドから出る羽目になった。
「早くしないと学校に遅れちゃうよ?」
一度ベッドから出てしまった今優先すべき事柄は睡眠から登校に変わった。確かに遅刻するのはマズい。
パジャマの上から赤いジャンパーを羽織って学校へ急ぐ。
「そんな格好でいいの⁉パジャマだよ⁉」
「制服は自由だろ?それに着替えだって持ってくよ。今は遅刻しないことが重要だ!」
俺は複数の目標を同時に目指すことが極端に苦手だ。だから目標を一つに絞ってそれ以外は目を瞑る。それが秀樹流現実逃避法だ!
全力ダッシュでチャイムと同時に教室へ駆け込む。
「ギリギリセーフ!」
「思いっきりアウトですよー早星君?」
担任の花枝先生は相変わらず融通が利かない。これだから最近の先生は…
「今のはどう考えても秀樹くんが悪いって!チャイムって1時間目終了のチャイムだよ!」
マジか…まぁたまにはこういうこともある。しかたない。だって人間だもの。
そして二時間目が始まる。アリエとは席が離れているしコウジとヒロシはクラスが別。
授業自体も聞き流していれば大丈夫。聞く耳など最初から持っていない。
なのでこの町について話そうと思う。
東京都流離市。人口13万人。高層ビルと自然が同居する大規模都市である。
再開発が進む臨海部に位置し、人口は右肩上がりだ。
そして俺たちの通う詐瞳高校についての話だ。
なんとこの学校は制服自由の長フリーダム高校!
部活も建て放題で、ソシャゲのギルドのように無人部もザラにある。
他にこの街は一部の道路をかなり広めにとっていたり、公園内に巨大な広場があったりする。
これらによってビル風が和らぎ、更に心地よい太陽熱を地面に直接取ることができるという。本当だろうか…
そしてこの街には都市伝説が数えきれないほどある。それらを調査して結果をレポートにまとめ、ブログに乗せて広告料で稼ぐのが超常現象特別調査隊SLC…長いからSLCだけでいいか。SLCの仕事だ。
ガセネタが多いけど、それでもロマンを追い求める俺たちにとってはこの上なく楽しい仕事だ。
しかしここ最近は全くそういうのが無い。退屈だけど忙しいよりは楽しい?前言撤回!何かこうアクションがあってほしいと思うこの頃。その願いは最悪の形で叶ってしまった。
突然大きな振動が大地を揺らす。
「地震?」「怖い怖い!」「何これ⁉」
教室中から悲鳴が聞こえる。そして俺は違和感に気付いた。
地震にしては振動が単純すぎる。本来地震というものは弱い縦揺れと強い横揺れから構成されている。
しかしこの揺れは弱い横揺れが断続的に届き、数秒間隔で強い縦揺れが届いてる。
耳を澄ますと遠くから「何かが地面に衝突する音」が聞こえる。
凄くロマンを感じる。音からしてある程度柔軟な何かであることはわかる。
それが数秒間隔で地面に叩きつけられているということは…
「巨大生物!怪獣!アリエ!今すぐ行くぞ!」
「秀樹くん⁉待ってよ!机の下に隠れなきゃ!」
何を言っているんだコイツは。ロマンは命より重い!何を言っているんだ自分は。
とにかく、大スクープが撮れそうだ!俺はビデオカメラを持って震源の方向へ走っていった。
学校の裏山の向こう側にそれはいた。
「マジかよ…50mはあるぞ…」
灰色をした巨大な何か。
恐竜の様な足と、爬虫類と人間の中間の様な腕。その腕からは赤い骨が刃のように後ろに向かって突き出ていた。
太く長い尻尾が生えており、首から先端まで赤い三角形の背ビレが一列生えている。
頭部は恐竜のようでありながら黒いアーマーのようになっている。これが本来の物なのか人工的な物なのかは分からない。
これだけ巨大な生物-怪獣がいるということはロマンを追い求める俺にとってはこの上ない朗報だった。
しかしこの時俺はうっかりしていた。怪獣の十八番を意識していなかったのだ。
俺が状況を整理するために独り言で「つまりこれは…÷2で…だから…エネルギー保存則が…」などとつぶやいていると巨大生…怪獣の口内から光があふれ始めた。
そして次の瞬間、俺は眩い光に包まれた。
目を開けると、なんとも表現しがたい不思議な空間が広がっている。
あぁ。天国っていうのはここなんだろうなと納得できるような光の空間。
その奥から赤い巨人が姿を現す。
「君の力を借りたい…今の私では奴に触れることさえできない…」
胸部には黒いアーマーを纏っており、頭部には3本の黒い角。黒目と白目が一体化したような青く光る鋭い目、顔の下半分を全て覆い隠す金属のマスク。例えるならば悪魔が最もふさわしいだろう。
「ここは一体どこなんだ?天国か?」
「君と私の精神をシンクロさせた世界だ。この星ではそのような空間を『精神世界』というのだろう?あの怪獣…プリミティブの破壊光線が君に届く直前にバリヤーを展開した。そして今君とこうやって話している。外から見たら君はバリヤーで守られている状態だ。私のエネルギーも無限ではない。今の私は実体を失っている。今の私では弱小怪獣の一匹でさえ倒せない。君と一心同体になれば5分間だけ実体を得て戦える。どうか君の力を貸してくれ!」
話は大体わかった。お前の命助けてやってるんだからちょっと手伝えということだ。問題はこいつがいい奴かどうかだ。もし悪い奴だったら…
こういう時に便利なのが秀樹流現実逃避法だ。目標はスクープを撮る事…だったけどこの怪獣にここまでの攻撃能力があるからには学校にも被害が及ぶ。
「お前!えっと…名前…」
「ヒーローマンと呼ばれている。どうしたんだ?」
「お前の力なら5分でこの怪獣を倒せるか?」
「ああ。十分だ。」
「じゃあ決まりだ!」
「力を貸してくれるのか?」
「ああ。難しいことは考えない。学校が守れれば今はそれでいい!」
バリアがはじけ飛び、破壊光線によって大爆発が起こる。
そしてその炎の中から赤い巨人が姿を現した。
第一話。かなり駆け足だったと思います。
詳しくは分かっていないワードは後に重要になったりするので注目しておいてください。
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