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世界の下層より  作者: plus 勇気
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突然の出来事

ここが世界の最下層ということを説明するには、リバイアスの歴史について語らなければならない。


約1000年前…。


魔王を討伐した初代勇者ダリル・ロードにより永続平和計画が打ち出された。


計画内容は世界を6つの空間層に改変すること。


この計画は当時の民衆や権力者達の度肝を抜いた。


社会構造だけではなく物理構造そのものを改変するという内容だったからだ。



禁断魔法と空間魔法を組み合わせ6つの空間に世界に分ける――



改変と言うより世界の創造だった。


この計画の目的は階層の一つ一つに強力な封印術を施し、


未来永劫に魔王の転生を阻止しようとするものだった。




ダリル・ロードは計画発表の演説でこう述べた。


「皆の幸せを永続的にするために、私は世界の改変を決意した」


「魔王が転生する世界そのものの仕組みを変えなければ、いずれ災いが訪れる」


「私は幸せを愛している」

  

「皆を愛している」

 

「皆の幸せを愛している」


「故に不幸の兆しすらも打ち消したいのだ」と。



これは後に【新世界宣言】と呼ばるようになった。



民衆は魔王の恐ろしさを心底理解していた。


魔王の発する魔力により、黒い雲が覆い、大地は荒れ、海は死に果てた。


食料や水が不足し、流行り病が蔓延した。


生きるために若者が老人を殺し、親が子を殺し始めた…。


そんな地獄の様な現実を目の当たりにしたからだ。


魔王討伐により絶大な支持を得たダリル・ロードの一言により、計画は動き出した。


数えきれない死者を出し、多くの不幸を生みながら…。


【新生リバイアス】は誕生した。





現在、冬馬達はいる階層は第一階層の【浄化の層】だ。


上層からの光は届かないため深い暗闇に覆われている。そのため住民は魔光石やヒカリゴケを工夫して使い、なんとか明かりを確保していた。


住民は9割が上層で罪を犯した咎人トガビトとその血族である。


軽微な罪なら咎人は空間道テレポロードで移送されるが、罪によっては空間穴デジョンホールに落とされ、足が不自由なる者も多かった。


運が悪ければ命も落とす。


【浄化の層】は監獄と廃棄処理施設を併設させたかの様な空間であった。





なんとなく上を見上げていた三人。





「まあ、愚痴ってもしゃーねーな!」


「ミラやホワンも腹空かせて待ってることだし、がんばるか!」


冬馬は気分を切り替え、少し高めのスクラップにヒョイと飛び乗り、周囲を魔光石の明かりで照らした。


魔光石は送り込む魔力量によって光量が変わる。


冬馬は魔力量を多めにして、キョロキョロと辺りを見回した。


「お!ゴブリンの死骸が落ちてるぞラッキー!」


嬉しそうに指をさして走り出した。


彼は切り替えが早い。


この環境下で育った子供は、大体が屈折していた。


瘴気で体を病む者、飢える者、殺される者、人さらいにあう者、自殺する者と死が溢れかえっていたからだ。


だが冬馬は違った。


性格は粗忽で短絡的だが、明るさは仲間の心を和ませ、励ましていた。


もちろん彼なりにではあるが…。


ニコラとは違った意味で、冬馬も仲間から信頼されていた。




取り残された二人。




「アイツぐらい能天気だとなんか羨ましく感じるな…」


「そうだね…」


苦笑いをしながらニコラとレオもそれに続いて歩き出した。




それは突然だった――




爆発とも言える大きさの地響きがスクラップ帯に轟いた。


冬馬達はすぐさま音の方向を照らし、目を凝らした。


物色していたすぐ隣の山で煙が上がっている。


どうやら落下の衝撃で上がった瘴気のモヤのようだった。


立ち尽くす三人。


あまりにも突然の爆音に彼らの思考は停止していた。








落ちてきたのか!?――








遅れた思考がそう理解させた瞬間、3人は走り出していた。

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