5話
「悪かったわね、仕事させて。本来私がやらなきゃ行けなかったのに」
少し具合が良くなったらしい、リコは俺に申し訳なさそうに言った。しおらしいリコは何だか新鮮だ。
「違うわね。元はと言えば、あんたが生徒会サボって手伝ってくれないからじゃないの」
「………。」
「まあいいわ、今回は感謝してあげる。次からはちゃんと来る事ね。」
「はい…。」
そんな感じの会話をしながら、俺とリコはすっかり暗くなった夜道を二人で歩いた。
基本、無言でなんだか気まずかった。
そうやって、2人で歩いていると、いつの間にかリコの家の前まで来ていた。
「明日はちゃんと来なさいよ。今日来なかった分、たっぷり愛をあげるわ。じゃあね」
そう言ったリコの笑顔は、街頭のせいなのか、少しだけ輝いて見えた。
そうやって俺はリコと別れて、家路についた。
1人の帰り道はなんだかさみしかった。
そんな夜の道で俺は少しだけ昔のことを考えた。
俺とリコは昔から何かと仲が良かった。
容姿端麗で、頭脳明晰、運動神経も並よりかはある。
絵だけが生きる糧で、美専選択の俺とは違って、わりと社会にでても重宝されるようなリコ。そんでもって腐れ縁で何かと関わりのあったってだけってのが俺とリコの関係。
あれがあるまではね。
そんなことを考えていた時…。
ズっ!
「いだぁ!」
俺は、足を踏み外して、溝に足を突っ込んでしまい、転んでしまった。しかも、ビミョーに水が溜まっていたために、右足がぐしょぐしょになってしまった。
「くっそー」
そうして、俺は考え事をやめ、ぐちゅぐちゅと気持ちの悪い感触を感じながら、家に帰った。