4話
生徒会室に置いてあるふかふかのソファの上。
俺はリコをそこに寝かせ、水で濡らしたタオルをリコの額においた。リコの体はとても熱かった。
こんな中、仕事をするとは対した度胸だ。目の下のクマも、遅くまで書類に目を通していたのだろう。
「無理してんじゃねーよ、ばーか」
俺は小声で誰にも聞こえないように言った。
「おい、カジ。どうだ?会長の具合は」
「レイか。んー、疲労による体調不良だな、たぶん」
「そうか。」
「おまえ、少しは会長の気持ち考えろよ」
レイはリコの状態を確認し、そう言って生徒会室をでていった。
「カジくん、たまには生徒会ちゃんと来てね」
レイを待つのに生徒会室の前にいたらしいカナセも、そう扉が閉まる直前に言い残して行った。
俺はソファのそばに正座して座った。リコが起きるまで、ずっと正座した。リコを見つめながら。
そして、生徒会長の仕事用の机に顔をむけた。
そこには、生徒会にまわされた仕事、書類が山積みになって置かれていた。
これだけの仕事を、この状態で1人でこなそうとしていたと思うと、俺は震えを覚える。
「んん…。カジ…?」
そうやって、生徒会室を見回しているうちに、リコが重たそうな瞼を開いて言った。
リコが俺を名前で呼ぶなんて、相当珍しい。
普段は、ブタ呼ばわりだし。
「まだ、寝とけよ。しんどいんだろ?」
「だめ、まだ今日中に終わらせなきゃいけない仕事が・・・」
「何言ってもダメだ。お前は寝てろ。仕事は…。俺がなんとかしておくから」
「カジじゃ、また失敗する」
「大丈夫だ。重要資料はさすがに無理だけど、簡単な仕事は終わらせとくから」
「じゃあ、あの左側においてある、書類の確認をお願いするわ。あとはいいから」
「はいよ。まだちゃんと休んどけよ」
俺は、弱っているリコにさえ何も逆らえないらしい。
そう思って、おれは、言われたとおりの資料をソファの近くまで運び、リコの様子を見ながら作業することにした。
「少しでも間違えたら、明日しばくから」
「わーぁったって。はよ、寝ろ」
「うん。ありがとう、カジ」
「はいはい。ゆっくり休みなさい」
弱ってるリコを前にするとどうも調子が狂う。
リコは小さい頃から、体が強かった。
風邪にもほんとんどかからないし、怪我もあまりしない。
容姿も整ってて、頭も良くて、責任感あって、言われたことはちゃんとこなす。
そんな子だ。そして、今でもそうだ。
・・・容姿を除いては。
そこまで考えた所で、俺は心を無にして作業にとりかかった。
今は、そんなこと考えなくてもいい。
そう自分に言い聞かせて、俺は明日リコにしばかれないように、
仕事に取り組んだ。