2話
徒歩高校の生徒会室は、広い。そして、ほぼ生徒会長の好みの装いになっているのだが、そんな生徒会室にリコだけが開けることのできる引き出しが存在するのだ。その中にはなんと、なんと!
俺をシバくためだけの道具が入っているのだ。
嘘だと思うだろ?俺もそう思っていたさ。
リコが生徒会長を務めるまでは。
別に、この風習が代々続いているわけじゃない。ただ、一応大事な書類などを入れておくための引き出しの一部が使われているだけらしいのだが、この引き出しの存在は生徒会長になった人しか知らないらしい。
そういうわけで、その書類たちに隠れて俺をシバく道具、すなわち鞭やら縄やら色んなのが入ってる…。という憶測。本当のことはリコしか知らないが、実際出てきたものがそんな感じだし、それよりも他に何を入れてるのか、そっちの方が怖い。
リコならナイフやカッターの一つや二つ入っててもおかしくないし…。
「さあ、そこに正座なさい。ブタさん」
「今日は何をするんすか」
「さあ?何でしょうね。今回は罪が重いわよ?」
あ、そうだ。俺がなんで、ブタと呼ばれているのか。それはまあ、単純な理由で仏田を全部音読みにしたらそうなるってだけ。
そんでもって、リコはドSだから。まあ、自然な流れだろう。
「は、はぁ」
「まさか、自分の罪が分からないなんて言う気じゃないわよね?」
「いえ、ちゃんと分かってます、はい」
「なら、仕事サボったブタくん。早速そこに四つん這いになりなさい。」
そう言われ、俺はそのまるで汚い家畜をみるような光のない目に逆らうことが出来ず、四つん這いになった。その瞬間。
ドスッ!
「なぁっ!」
おれの背中の上に、ズシッと重みが生じ、同時に暖かく柔らかいものが容赦のない勢いで乗った。
そして、俺の首に少し堅く、冷たいものが巻かれた。
「さあ、耐えなさい。1時間よ」
「おい、その俺の首に巻き付けたものはどうした」
「リードよ。分からないの?」
「いや、それは分かるよ。なんでそんなもん持ってんだ」
「なんででもいいでしょ?」
いつもこうだ。引き出しから取り出されるものに関して詳しくは教えてくれない。
まあ、知りたい訳でもないけど。
「てか!なんでリードつける必要がある!?」
「黙りなさい、1時間プラスよ」
「り、理不尽…」
「人聞き悪いわね、愛よ、愛」
リコはこのおしおき的なものを、愛と呼ぶ。
そりゃ、俺はダメダメだし?仕事しないし?
一応副会長だが、総会にもでないし?
サボり魔副会長で、それを改心させる為だから、そういう風に呼んでるのかもしれないけど。
残念ながら、直す気はさらさらない。
だって、だやいし。面倒くさいし。
「きづ……さいよ。」
「え?なんか、言った?」
「うるさいわね、何も言ってないわよ、プラス1時間」
「えええええ。」
「愛よ、愛」
こうして俺は計3時間、リコの椅子係を務めた。
そんな重くはないが…。
ずっとリード付けられてると流石に首を痛める。
だって、ずっと上に引っ張られてて、顔下げれなかったし…。つらかった…。
「ふん。今度はちゃんと来ることね」
「はーいはい」
「帰るわよ」
「ん。」
翌日。
当然、俺は生徒会室には行かなかった…。