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第69話 一時中断

 続きの3D映像には、さっきは遠くにあった黒卵(ブラッグエッグ)が、目の前にそびえ立っていた。映っているノアとミーハから比較すると、高さは30mほどだ。日は少し落ちかけていた。


「日が暮れて、私達はここで野宿した。このプロキシマbの夜景は、さっきより星空が全開ね。幸い、怖れていた自転と公転の同期は起きていなくて、昼夜はあった。でも自転速度が地球の1/7だから、長い夜だったな」


「一年は何日ですか?」


 カトリーヌが聞いた。


「逆に短くて、約70日。四季のような季節変化は無かった。恒星との距離が近かったせいね。だからX線やUV照射量が地球より多かったけれど、多層化したオゾン層が防御していた。あとはさっきも見せたように、環境に合わせた建物が発達したみたい。


 これは野宿の様子だけど、念のためセンサーを四方に巡らせ更にシールドを貼ったんだ。雲があるせいか、黒卵(ブラッグエッグ)の周りは湿度が保たれ草原もあって動物達もいた。だからカメラをセットして、夜行性の動物達も映したの」


 赤外線カメラが撮影したのは、野生の動物達だ。ネコや狸に似た生き物が徘徊している。


「可愛い〜」


 女子生徒達からは声が上がった。


「どの星も、進化的な美は同じなのかもね。けれど、こんなのもいたわ」


 キリシアが映し出したのは、一見大きな植物だ。だが狐の子供が近くを通ると、何かに触れたか一気に花が広がり、その子狐は吸い込まれた。


「食生植物。移動はしないけれど、要注意だった。もしかしたら黒卵(ブラッグエッグ)の守護者の役割かも。他に印象的だったのは、高い樹木が無かったこと。多分重力の関係ね。鳥もいたけれど、骨格や筋力構造が全く違っていた」


 映像は朝に切り替わる。ただぼんやりしていて、光量は少ない。


「さて、ここからは黒卵(ブラッグエッグ)へ入るとこ。周辺を歩いても継ぎ目は無く、どこにも入口はない。ただ明らかに人工物。どうすれば良いか、フォルトナに残った皆も含め、悩みに悩んだ。それが確か三日目かな。いつものように一周して探索すると、人が入れる穴が開いたんだ」


 映像は、真っ黒な壁に穴が開いている姿があった。

 先も暗く、何があるか分からない。


『入ってみる?』


 ノアが慎重な声で二人に聞いていた。


『当然!どうせ自分達の存在を知って開いたんだから、入れって意味だよ!』

『そう考えるのが妥当ね』


 念のためサイトー達に連絡をした後、三人は中に進んだ。


「さあ、これがブラックエッグの内部よ」

 

 キリシアがそう言うと、黒卵の内部の映像に切り替わった。だが生徒達はざわめいた。


「何も見えないんですけど?」


 シュンの指摘通り、3Dホログラムは真っ黒だ。


「そう、最初はこの通り。何も見えない、真っ暗な空間だった」


 映像は真っ暗だが、音声で先に進んでいる事が分かる。


『明かりを点ける』


 3D映像にあるノアの言葉で、内部がほんのりと明るくなり、次第のその全貌が見え始めた。


『凄い……』


 感嘆するキリシアの声が聞こえるが、薄ぼんやりした映像では、良く見えない。


『あ、あそこに何かいるぞ!』


 ミーハが何かを発見したようだ。カメラがそちらの方に向いた。

 そこにいたのは、シュンとハルが知る存在だった。


 その存在がこちらを認識して言葉を発しようとしたその時、



 ガタガタガタガタガタタタター!



 突然、講堂を巨人が握りしめ叩き壊すかのように、激しい縦揺れが襲った。


 地震だ。


 ガガガガァーーーーーー!!!!


 かなり大きい。みな瞬時に机に潜り込み、揺れが収まるのを待つ。

 天井の壁が少し剥がれたが、幸いにして全員無事だった。


「外へ退避、急げ!」


 サイトー先生に誘導されて校庭に出ると、空は真っ黒な雲で一面覆われていた。

 シンジュ辺りの廃墟タワーは崩れたのか、普段の姿より細く見える。


「あれ!」


 ハルが指差す先には一際黒く渦巻く雷雲があり、中心部は雲が薄いのか光が差し込んでいる。そしてそこには、人がいた。正確には人そっくりの雲だ。それが誰なのかシュンは瞬時に悟った。


 ノアだ。


 その雲は微笑んだかと思うと崩れさり、直ぐに激しい雨が降り注いで瀑布と化し、雷が轟いた。時折余震もあり、NAGSSでなければ安全スペースの確保は困難だろう。


「残念だけど講義は中止ね。これは貴方に渡すわ。あの後の映像も、きっと役に立つ筈よ」


 そう言ってキリシアは、さっきのクリスタルディスクをシュンに渡すと、クロホウと似たスーツを着て、待機していたフネイルに乗り去って行った。


「これは、しばらく忙しくなるな」


 サイトー先生のつぶやきは、その後現実となった。

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