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第56話 ミーハとイザベラ

「ガキ?どうせ分かってんだろ?」

星の子供達(スターチルドレン)

「せぇか〜いぃ」


 相変わらず頭を掻きむしっていて、二人をいかにも小馬鹿にした風の表情だ。

 彼にとって、これは単なる暇つぶしで遊びなのかもしれない。


「ミーハ?」

「聞いてんだな。サイトーか? あいつは良い奴だったが、所詮は俺やノアのサポート役よ。んで、お前たちはどうしたいんだ?」


「世界を元に戻す」


 シュンが答えた。


「元に戻す?」


 ミーハは呆れ見下すように笑った。


「そう言えばノアのM.O.W.が作動したが、お前の仕業か?」

「あともう一人と一緒に」

「ああ、あいつか」

「知ってるのか?」


 シュンは身構えた。


「バカな女だ。猫に釣られてヒョコヒョコやってきやがった」


 ミーハーは、不愉快な薄ら笑いを浮かべていた。

 あえてやっているのか、仕草の一つ一つが、癪に障る。


「ハルは無事なのか?」

「さあな」


 シュンは頭に血が上り、イメージブラスターをミーハ目がけて撃ち放った。

 紅いレーザーはミーハの眉間を捕らえたかにみえたが、ミーハは冷静によける。


「お熱いこって。おめえもブラスター使いか?んで、このM.O.W.をどうする?」


 相変わらずの薄ら笑いで、シュンのイライラも頂点に達しかける。だが、手持ちのカードはない。シュンは、怒りをこらえて答えた。


「僕たちの脳波はM.O.W.にアクセスできる。それでM.O.W.をリセットする。過去は戻せないけれど、最低限、これから起きる惨事を防ぐ」


「ふ〜ん。お前、あいつらからそう聞いているのか? つくづく、おめでたい奴らだ」


 ミーハは呆れた顔をした。説明自体がかったるそうだ。


「そもそもお前の脳波が幾らシンクロ率高くても、元に戻んねえよ。M.O.W.は一度発動したら、それっきりだ。不可逆なんだよ。跳躍した世界にシステムが書き換わるんだ。理想の世界に近づくんだぁよ!」


「理想の世界なんて、ない!!」


 シュンは、反論した。


「あるんだ。俺たちは見てきたからな。地球の未来が成熟したあの星と同じになるはずが、今は大きく外れちまってる。今の延長に未来が無いんだったら、誰かが跳躍させないといけねぇ。俺たちしか、いねぇよなあ? まあ、諦めるこった。今から世界的な浄化が始まっても、それは必然なんだ。だいたいなあ、汚ねえ生物なんだから、お前らだって聖人君主じゃねえだろ、おい」


「このやろぅ!」


 シュンは再び、ミーハ目がけて鋭いレーザーの刃を打ち放った。

 ミーハは額に当たる前に、軽くそれを受け流した。


「何だ、てめえ。やんのか?」


 ミーハはシュンを睨みつけると、瞬時にマントに右手を入れて腰から銃を取り出し、シュン目がけて撃ち放った。レーザーは火焔のように襲いかかったが、シュンはすんでの所で衝撃を避けた。


「イメージブラスターもなぁ、俺の発明品なんだよ!」


 ミーハは波状攻撃を仕掛け、四方八方からレーザーをシュン目がけて降り注いだ。シュンが打ち出す光は楯に変形し、ミーハの攻撃を受け止めた。


 次に楯は青龍刀へと形を変え、シュンはミーハに斬りつけた。だがミーハも体を後ろに反らしてかわし、更に薙刀レーザーで応戦する。カーン、カーーンと、打ち付けられる刃の音が鳴り響き、一進一退の攻防が続く。


 シュンは周辺の壁を使って、縦横無尽に飛び回った。クロホウの力もあって、シュンの跳躍力や馬力もアップしているようだ。戦闘力は、互角らしい。


 レーザーブラスターが脳波の作用を最大限に受容出来るようチューンナップされているため、双方が繰り出す威力は凄まじく、光速レベルの俊敏な動きで、二人の姿はキャサリンからは見えない。


 時々流れ弾が壁にぶつかり、えぐれた。M.O.W.への影響も一瞬頭をよぎる。だがシュンはそれ以上に、やらないとやられるという動物的本能で闘っていた。


「結構やるな、ガキ。んじゃこれならどうだ!」


 ミーハは更に、左脇からイメージブラスターをもう一丁取り出し、二丁一気にレーザーを撃った。


「うわっ!」


 その衝撃は二倍以上で流石のシュンも避けきれず、左肩をかすめた。

 一瞬よろめいたが、何とか立ち上がる。


 だが両手で駆使するイメージブラスターは、確実にシュンの攻撃力を削ぎ始めた。ミーハは一枚も二枚も上手で、シュンの動きも鈍り、不利な状況になってくる。勝利を確信し始めたのか、ミーハの顔には余裕が浮かび上がってきた。


「まだひよっこだな、つまんねえしこの辺で終わるとすっか」


(どうしよう)


 絶体絶命か。いよいよ覚悟を決めたその時、 


「シュン!」


 聞き慣れた声がしたと思うと、エレベータ入口からハルが走りよって来た。もう一人、女性もいる。ハルやシュンより小柄な、透き通った白い肌の北欧系の女性だ。


「イザベラ!」


 ミーハは後ろの女性に驚いたようで、闘いが止まった。

 ミーハは咎めるようにその女性を怒鳴ったが、彼女は何も堪えていない。


「そろそろ止めましょう。私達は潮時よ」

「うるせえなあ、どけ!」


 ミーハは聞く耳を持たず、シュンとハル目がけてブラスターをぶち放す。それに対しシュンは、シールドを這って防いだ。心持ちかさっきよりも、数倍頑丈になった。


「あの人達は、悪い人では無いわ」


 近くに寄って来たハルは、シュンにだけ聞こえる声で呟いた。イザベラもミーハに駆け寄り、闘いを終わらせようと三人の前に立ちはだかった。


「じゃあどうしろと?」


 シュンはハルに問いただした。


「まずM.O.W.にアクセスしなきゃ」


 確かにそうだ。ミーハがイザベラに気を取られている今なら、近づける。二人はM.O.W.に近づき、持って来た通信装置をONにした。するとコンピューターの起動音のように、ブォオオーーーンと低い音が鳴った。


 手に握る通信装置も点滅し始め、何かやり取りをしている。


「てめぇ、何してんだ!」


 一瞬の隙をつかれたミーハは、シュンにイメージブラスターを撃ち放った。先ほどより力がやや弱まったのか、シュンはすんでの所でかわす。

 

「あれ見て!」


 ハルが指摘するように、M.O.W.の色が赤く変わり始めた。


「これは‥お前ら何をした!」


 ミーハが焦った様子で問いつめる。


「これでM.O.W.を書き換えてるんだ!」

「なに?こ、これは『ジン』がハッキングしている!止めろ!!」


 ミーハがシュンを襲おうとしたその瞬間、


 バーーーン!!!


 一発の銃口が火を噴き、あっけなくミーハの胸を貫いた。

 

 ミーハは何が起きたか分からない顔で、倒れ込んだ。 

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