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第22話 櫻菜ハルは素に戻る

「あ、うん」

「あーーーー、すっきりした!!」


 それは、あのハルだった。やっとのびのび出来るといった風に大きく背伸びをしている。天敵の犬をやり過ごした猫のようだ。


「え、何で?」

「ああいうタイプ、わたし大っ嫌い!!! 勉強もできてイケメンで優等生っぽくして、自分はモテると勘違いしてんの! 喋り方もナル入ってて、キモい! キモ過ぎ!!」


 よっぽど腹にたまっていたのか、淀みなく悪口が溢れてくる。


「この前も帰るとき偶々一緒になったら色々詮索してきて、チョー迷惑! イケメンに女が全員なびくと思うなよ、あのやろー!」


 さっき迄やけに静かだった理由は、そう言う訳か。

 少しホッとしたシュンだった。


「あんた鈍臭いけど楽なのよね〜 わがまま好き放題やっても、全部許してくれそうって感じ?」

「そりゃどうも」


 反論すら面倒だ。


 やはりこっちが本来の姿で、普段が猫被りなのか……

 色々つっこみたいが、今はとにかく、化け物から逃げるのが先だ。


「あ、そうだ! あんた、さっきドサクサに紛れておっぱい触ったでしょ〜! 乙女の純潔をどうしてくれるの! 責任取ってくれんの!!」

「あ、ご、ごめん……」


 急に思い出して文句を言い始めるハルからも逃げたいシュンだが、ここは我慢する。


「まあ良いわ。兎に角ここを脱出するのが先決ね! いくわよ!」


 やっと落ち着いたのか、ハルはブレーキを外し思いっきりトロッコを蹴っ飛ばす。するとトロッコは、ゴロゴロと勢い良く動き出し、二人は走って乗り込んだ。


 ガタガタガタ、ゴゴゴーーー


「うわーー!」

「うっひょーーー!!」


 前方が坂なのでどんどん加速し、滑るように走る。仁王立ちで指示棒を持ち運転する前方のハルと後ろの隅で子猫のように縮み上がるシュンを乗せ、トロッコは轟音をたてて走り下りて行った。


 どうやって作られたのかトロッコが走る軌道はアップダウン急カーブも激しく、シュンは酔って吐きそうになるのをぐっと堪えた。料理をするように楽しく指示棒を操作するハルの姿が、ちょっと信じられない。


 だがあの生き物(クリーチャー)は、これでは引き離せなかった。


「来たわよ! あんたの銃でやっつけて!」

「分かった!」


 命令を受け、嫌々頭を出して後方にライトをあてると、化け物達がさっきの三倍速はあろうかという物凄い勢いで駆け寄って来た。獲物の自分達が逃げると知り、本領発揮のようだ。


 10本ある手足は規則正しく素早い動きでロボットの歯車のように回転し、トロッコが坂を下るのと変わらない速度で駆け下りている。それに壁や天井も使って飛んで来るからシュン達に不利だ。こんな生物の存在が俄に信じられないが、現実はとにかくシュン達のすぐそこまで迫って来た。


「ほら、撃ちなさいよ!」


 ハルに促され上体を起こし、化け物と対峙した。流石にシュンも、命の危険は認識している。意を決して銃を取り出し、近場にいる化け物目がけ、青いレーザー光線を撃ち放った。


 “ギャオーーー!!!”


 奇声をあげて化け物は崩れ去るものの、次の化け物が休まずシュンに襲いかかってくる。幸いに坑道は狭く、襲いかかってくるのは化け物一頭ずつだ。


 日頃の鍛錬のおかげか、シュンが放つ銃の腕前はなかなかであった。投げ縄様に放たれた青いレーザー光線で、目前に迫るくる化け物達は次々と拘束され身動きが取れなくなった。


 敵の数は、確実に減っていった。


「なかなかやるわね、シュン!」


 感心するハルをよそに、シュンはひたすら自分の役割を全うし没頭した。


 ッギャーー ャーー


 坑道内で反響する叫び声も遠くなり始め、気付けば、後ろにいた化け物達の姿が見えなくなった。どうやら、一山超えたようだ。


 ミッションコンプリート


「終わったよ」


 シュンの呼びかけにハルは、「そう」とそっけなく答えた。ハルも安堵した様子ではあったが、それよりもトロッコの操作に熱中している。バランス取りが難しいらしく、F1レーサー並に繊細な動きを要求されていた。


 集中力を極限まで消費し切ったので、シュンは操作をハルに任せた。再び首を下げ、腰を落ち着ける。トロッコの中は外が見えない分、リラックスしやすい。


 何処に繋がってるのか、ガタガタと揺れながらシュンはぼんやりと考えいてた。


 ふと見上げたら、さっきの化け物(クリーチャー)と目があった。

 10本の手足はしっかりとトロッコを掴んでいる。

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