新月
竜二が死んだのと同時に、四人を分けていた壁が変化する。
それによって竜二の死体が三人の前にあらわになる。
「兄貴!」
「「竜二!」」
「ヒール」
竜二を発見し、三人が声をあげる。と同時にテウスが回復魔法を発動する。
しかし、死んだ竜二が治ることはない。
「ヒール」
テウスが再び魔法を発動する。結果は同じ。
「やめろ。もう無理だ」
マルクがテウスを止める。マルクは理解していた。竜二は確実に死んでいると。
「でも!」
「冷静になれ! 俺だって悲しい」
「冷静さを失わせるのがあいつらの狙いだ」
テウスは深呼吸をし、冷静さを取り戻す。
その一方で、隼人は竜二の死体を見てからピクリとも動かなかった。
「おい! 隼人」
「聞こえてるか?」
「………」
「作戦通りですかね」
「こちらの人は動かなくなりましたし」
ラキウスが動かなくなった隼人の前に現れる。その手には剣が握られていた。
「これで二人目ですね」
ラキウスの剣で隼人の心臓を貫く。はずだった。
「なんだこれは!」
ラキウスの剣を新月から出た黒いオーラが弾き返す。
どうしてこうなった? 何が悪いんだ? あいつらを殺してやる! 隼人の心の中に黒い何かが生まれていた。
「大丈夫か隼人?」
「返事はどうした?」
「………」
「まずいな」
マルクに焦りの表情が浮かび上がる。
「チャンスは逃がさないよ」
「やれ!」
隼人に向かって魔人達の一斉攻撃が始まる。
「隼人を守れ!」
二人が隼人を守るために近づく。
『俺に体をよこせ! そうすればあいつらを殺せるぞ』
『いいよ』
黒いオーラが爆発的に広がり、二人もろとも魔法を吹き飛ばす。
「まずいな。新月に飲み込まれた」
「全員撤退! あんな化け物は相手にしないように!」
ラキウスは状況を即座に理解し、撤退の命令を下す。
「隼人はどうしたんですか?」
「隼人の持ってる刀、新月に飲み込まれたんだよ」
「あのままだと、命を使い切るまで暴走して最後に自爆する」
「自爆ってヤバくないですか?」
「ああやばい。新月に詰まってる力は計り知れん」
「魔王城だけじゃすまない」
「もとに戻す方法は?」
「新月を弱らすしかない」
二人が会話をしていると、隼人の姿が消える。
「どこに!」
「おそらく魔王のところだ。隼人の心が満足すればさらに新月に飲み込まれるぞ」
「女性のチームと戦っている魔人達も呼び戻してください」
「どうせ、あの黒いのがやってくれますよ」
魔王城から離れた丘でラキウス達は待機していた。
そこに何かが飛んできている。その反応をラキウスは逃さなかった。
「全員散開! ここから距離をとって避難してください」
ラキウスが言い終わると、黒いオーラで包まれた隼人が現れる。
「お前に罪はないが死んでくれ! この体を乗っ取るためだ」
「そういうわけにはいかないですよ」
魔人達がいなくなった魔王城の中にカルラのチーム、さらにロータスが合流する。
「隼人が新月に飲み込まれました」
「新月に?!」
この中で新月のことをしっかり理解しているのは、マルク・ロータス・カルラの三人だった。
「急がないと! 魔王を殺せば完全に飲まれるかもしれません」
「なら僕が行くよ」
ロータスが一人で行くと提案をする。
「本来なら、私たちのチームで対処しなければならないのに。ありがとうございます」
「気にするな。あれは本来アギトの所有物だ」
「人間が勝てるようなものではない」
マルクはロータスにお願いをする。
「できれば隼人を殺さないでください」
「それは約束できない。僕でもあいつに対してはそれほど余裕がない」
「そうですか」
ロータスは隼人の行った後を追いかけ移動を開始した。




